11.27.2011

J Mascis - Part 4

INTERVIEW BY KIT RAE. AUGUST 2, 2011
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KR:エレハモ製品はたしかにあらゆる(ペダルの)種類の中でも、トップ・ランクだったからね。他社製品を脇に追いやるほどに。
JM:そうね。僕はそんなに繊細に選定して選んだワケじゃないけどね(笑)。ペダルをオンにした時に、何が起こったか。それが重要なわけで、ビミョーに音がどうかわるか、とかじゃなくて。わかるでしょ?
KR:今まで出たBIG MUFFのクローン・ペダルって、アレコレと試してみた? BIG MUFFの回路、っていうフレコミのペダルだけで30以上のクローンがいろんなメーカーから出てるよね。何年か前だけど、僕の知り合いのひとつのSTOMP UNDER FOOTていうメーカーが、Jの所にSCREAMING PANDAっていうペダル(*1)を送ったでしょう? それから他のメーカーの人も、MUFFのクローンペダルを作って、Jの住所に送った、って言ってたよ。

(写真)D.A.M.のRAMHEAD(左)と、ロンサウンドのHAIRPIE(右)。ロンサウンドのロンはペダル・ビルダーというだけではなく、エレハモの歴史研究家でもある。
JM:うん、試した。最初に試したのはD.A.M.のヤツ(註:D.A.M.「RAMHEAD」のこと。現在は廃盤。イギリスのD.A.M.製の同モデルは、ラムズヘッド・クローンとして最も賞賛されたモデルのひとつ)。なかなかいいよね、これ。それからHAIRPIEも結構好きだ(註:アメリカのRONSOUNDというメーカーが作ったクローン・ペダル。ビルダーのロン・ニーリーという人は元エレハモのスタッフで、現在もHAIRPIEは生産されている)
KR:それらはスタジオ録音で使ったの? それともたまたま周りにあったから使ってみた、ってカンジ? もしくはライヴで試してみた、ってことかな?
JM:最後にBIG MUFFをレコーディングで使ったのがいつだったのか、ちょっと覚えてないなあ…… でも今はレコーディングでマフを使うことはないね。マフはもう、僕の「ライヴ・サウンド」のためのアイテムだから。丁度今、いろいろ実験するためにスタジオの中にこもってるんだけど、バッキングのためにはたいていアンプ直でやることが多いね。フェンダーのTWEED DELUXE、もしくはVOXのAC15あたりでね。基本的にスタジオではこの2つのアンプを殆どの場合使ってる。で、その環境でいろんなペダルを試してみてるんだ。
KR:新作『SEVERAL SHADES OF WHY』ではどんなペダルを使ったの? これ、僕の超お気に入りのアルバムなんだよね。多分毎日ってくらい聞きまくってる。音もスゴくいいし、曲も最高だし(註:アコースティック路線の作品をもっと出してもらいたい、と思うようになった程、このアルバムを愛してる僕にとっては、これでも自分のオタク心を極力押さえ込んで質問したつもりだ)。

最新作『SEVERAL SHADES OF WHY』はサブポップ・レーベルからのリリース。ソロ名義のスタジオ・アルバムとしてはこれが初の作品となる。
JM:あ、そう? ありがとう。あのアルバムでは、BUILT TO SPILLっていうバンドのジム・ロスが作ったTONE BENDERのクローン・ペダルを使った。アコースティック・ギターではなかなかいい味を出せてると思う。そのTONE BENDERクローンが、MK1なのかMK2なのか、どの時期のバージョンをコピーしたものかは知らないんだけど(註:ジム・ロスに確認したところ、このモデルはTONE BENDER MK1をベースにした、と言っていた。実際のペダルは下の写真のもの。ジム・ロスはBUILT TO SPILLのギタリスト。自分たちで使うペダルを片っ端から自作してしまう人で、過去にJと一緒にツアーしたこともある。ジムはJERMSというコテハンで度々DIYペダル系のネット掲示板に顔を出し、その正確なペダル製作スキルはいつも賞賛されている)
KR:あ、たしかにTONE BENDERっぽい音だよね。間違いなくファズの音がする、って判ったんだけど、アコースティック・サウンドのときに何をどうやったのか、すごく興味があったんだ。エレキギターのサウンドは「WHAT HAPPENED」「CAN I」あと2〜3曲くらいでしか出てこないよね。でもあのファズ・ギターのサウンドは、完璧に曲にフィットしてる。
JM:でしょ? アコースティック作品なのに、ね。ほんのちょっとファズ・ギターを付け足した、っていうだけなんだよね。手にしたペダルは、何かしら必ず後でトライしてみることにしてるんだ。もちろん様々な組み合わせでね。理由があったわけじゃなく、なんとなく、なんだけど、今回はBIG MUFFではないな、という気がしてた。最近はスタジオでBIG MUFFを使うことも殆どなくなったんだけどね(註:知る限りでは、Jが最後にBIG MUFFをスタジオで使用したのは、2000年のJマスシス+フォッグのアルバム『MORE LIGHT』と思われる。この時Jは50年代後半のビンテージ・テレキャスター、フェンダーのツイードBANDMASTER 310の間に、ラムズヘッドBIG MUFFを挟んでいる)

(写真)JERMSことジム・ロス氏がJの為にカスタムメイドしたTONE BENDER MK1のクローン・ペダル。Jの最新ソロ作で使用された。Photos © Jim Roth
KR:アコースティックで使うには、マフでは「歪み過ぎ」って感じ?
JM:いや、スタジオでもまだまだファズを使ったアイデアとかあるし、やりつくしたって感じはないね。ライヴでは、いつもの僕の音、なんだけど。
KR:ライヴでは、BIG MUFFと他のペダルを組み合わせてるよね。
JM:そういう場合もあるね。時々だね。いつもBIG MUFFはオンにしっぱなし。もし他のファズ、たとえばオーストラリアのMC-FXが作ったSUPER FUZZクローンなんかのことだけど、それがオンになってたとしても、ね。それから、たまになんだけど、DRサイエンティストが作ったFRAZZ DAZZLERもそうやって使う。これ、使ったことある? MUFFと組み合わせると、RANGEMASTER+MUFFっていう感じの音になるんだよ(註:Jは他にもアナログマン製の、RANGEMASTER回路とFUZZ FACE回路を組み合わせたSUN-LIONというペダルも使っている)


(写真)Jは自分の使うファズを熟知している。これは最近の彼のペダルボードの中身から。左上はDRサイエンティストのFRAZZ DAZZLER。右上はZ.VEXのDOUBLE ROCK(カスタムメイド)。左下はアナログマンSUNLION(RANGEMASTER+FUZZ FACE)、そして右下がMC-FXのSUPER FUZZクローン。FRAZZ DAZZLER+DOUBLE ROCK+SUNLIONはJオススメのセッティング。JはSUPER FUZZのノブはいつも11時で固定している。
KR:MUFFユーザーの大半の人がそうしてるように、Jも他のファズ、もしくはオーバードライブ・ペダルをブレンドさせて使うんだね。TYM GUITARSが作った、J所有のラムズヘッドをクローンしたFUZZ MUNCHKINの場合はどう? どうやって使うつもり?
JM:ティムともちょうどそんな話をしてたんだ。僕らがオーストラリアにいるときは、彼はほんとにいろいろと助けてくれるんだよ。ティムは自分でもいろいろと試したがっていたね。僕のラムズヘッドの回路をマジマジと眺めたあと、いろんな組み合わせで、どういう音の違いが生まれるか、とかをね。
KR:オリジナルのラムズヘッドとFUZZ MUNCHKINを比べてみて、どうだった?
JM:なかなかいいよ。もちろん完全に一致するわけなんてないけど、でも今まで自分が所有した物の中では、一番オリジナルに近い。今まで代用してきたどのペダルよりも気に入ってる。想像できると思うけど、一番最初にティムが完成したレプリカを試したときは、何故かわからなかったけど、あまり歪まない、ラウドじゃない、ってことに彼も気付いた。もう一度作り直したら、ちょうどオリジナルと同じくらいに十分な歪みと音量が出た。
KR:レプリカをライヴで試してみたことはもうあるの?
JM:いや、ライヴではまだだね。こないだまではD.A.M.のクローンと、HAIRPIEをライヴで使ってた。この2つもどっちもいい感じなんだよね。

(写真)Jが自分で手がけたFUZZ MUNCHKINのラベル。70年代のBIG MUFFバージョン2で用いられた、アーノルド・ベックリンの例の書体が使われている。art © J Mascis
KR:たしかFUZZ MUNCHKINのラベルは、Jが自分でデザインしたのがあるよね。
JM:そうそう。ティムが、彼の友人がデザインしたっていう案を僕に送ってきたんだけど、あんまりそれが僕には好きになれなかったんだ。それで…… まあ結局自分で、というわけで。だいたい僕は小学2年以来美術なんてものには縁遠かったし、それ以降上手くなったわけでもないけど、でもまあ、自分の思うようにはだいたいなったと思うよ。
KR:ラベル・デザインを見てすぐに、「これはJのペダルだぞ」ってことを主張してる、って思ったよ(笑)。とにかくいつもTYM GUITARSのカスタム・ペダルのデザインは最高なんだけど、このFUZZ MUNCHIKINは一風変わってていいよ。
JM:ティムには会った事ある?
KR:彼が作ったバージョン3のクローンとか、そういうカスタム・ペダルのラインナップをネットで見て知ってはいたんだ。で、随分前のことだったけど、彼が僕に一度メールをくれたことがあってね。ナイスガイっていう印象がある。僕がやってるBIG MUFFのウェブサイトを彼が見つけたらしくて、そこにはJのペダルボードの写真を何枚か載せていたから、彼が僕に、Jのラムズヘッドの写真を何点か送ってくれたんだ。おそらく彼がJのラムズヘッドのリペアを施したときの写真だと思う。それ以来、何度もレプリカのプロジェクトに関しては話し合いをしたよ。
(写真)TYM GUITARSのティムの作業場にて、Jが最もお気に入りのラムズヘッドBIG MUFFが解析されている模様。JのBIG MUFFは何年にもわたって多くのモディファイが既に施されているが、その殆どの作業はティムの手によるもの。
 サーキットはすべてオリジナルのままだが、唯一パワー・サプライのジャックにはDC(直流)ノイズのフィルタリング・パーツが追加されている。3つのノブはすべて交換されており、回路基板は保護のためにマウント・ポストの上に固定されている(筐体の上面から、その追加ポストのためのネジが見える)。ON/OFFスイッチも交換済み。オリジナルのDAKA-WAREノブはチキンヘッドのノブに交換されている。回路に搭載されたパーツの定数は、76〜79年頃にエレハモが採用していたものと同じもののようだ。
 Jのラムズヘッドのトーン・ポットは(昔のオリジナルBIG MUFFの仕様のような)一番上から真下まで可変するものではなくなっていて(*2)。この時入れ替えで交換されたポットは右側に回すにつれて可変する(最も一般的なポットの可動範囲)というものになっている。
Jはトーン・ポットを11時で固定して使用しているが、ポットの配線は内部で(通常のBIG MUFFとは)逆の向きで配線されているので、トレブル側/ベース側、の向きも逆向きで作用する。Jはボリューム・ノブとサステイン・ノブをフルで使用、これによって強烈な飽和サウンドを得ている。
 ティムは自身のブログの中で、このレプリカの製作経緯を公開している。Photos © Tym Guitars


*1 文字通りパンダ・カラーのフィニッシュが施されたSTOMP UNDER FOOTブランドのSCREAMING PANDAは2009年製造。現在は廃盤となっているが、その代わりにSTOMP UNDER FOOTと本インタビューの主、KIT RAE氏の共同開発でラムズヘッド・バイオレット・バージョンをクローンした(名前もモロの)RAM'S HEADというペダルがリリースされている。公式HPでデモ演奏を披露してるのはKIT RAE氏本人。
*2 今回当方のつたない英語力でこのインタビューを訳してみて、一番意味不明だった部分がここです。上記では英文をなるべくそのまま日本語にしましたが、これでは(当方を含め)誰もその意味がわからないと思います。そこでTHE EFFECTOR BOOK編集長に助けを乞い、概ねの意味を以下に記してみます。初期(トライアングル期〜ラムズヘッド期)のBIG MUFFのトーン・ポットは基本的にハイパス/ローパスのミックス・ポットとなっていて、理論上真上の位置で50:50、となるハズなんだそうです。しかしその初期のMUFFのトーンポットはモノによってその配置位置(向き)が異なり、50:50になるハズの場所が真上、つまり12時方向を向かない、というブツがあるんだそうです。おそらくJのラムズヘッドもそれに該当し、また更に上記で触れられているようにポットは交換されていて、ファクトリースペックとは異なるポットの作用/設置、となっていることは間違いなさそうです。。



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