6.18.2013

Mick Ronson Interview - Part 4

INTERVIEW BY STEVE ROSEN, DEC 1976
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——アコギは、どんなのを使ってるの?
MR:1本だけ持ってる。ハープトーンのアコースティック・ギターなんだけど。なかなかいいギターだよ。音も凄くいい。ニューヨークで作られてるブランドなんだけど、ボウイと初めて回ったツアーの時にそれを使った。ハープトーンは、なんとかっていうNYの人(註:ロンソン本人は知らないんでしょうが、作ってたのはサム・クーンツというビルダー)が作ってるんだけど、彼が僕等に一揃えのアコギをまとめて提供してくれてね。6弦を2本と、12弦を2本。12弦は2本ともボウイが使ってた。それからアコースティック・ベースも1本貰ったな。ハープトーン製品だけで、僕等は全部の音域のサウンドをまかなえたってワケだ。皆それぞれ(ギターを)持ち帰ったんだけど、別の日にオフィスに僕が出向いたら、誰も持ち帰らないギターが1本あったんで、僕がそれを貰うことにしたんだ。
——ハープトーンのギターは、もともとボウイの為に与えられたギター?

※70年代にボウイがハープトーン製12弦ギターを(2種類)使用しているのは周知の通りですが、ロンソンが所持/使用したハープトーンの6弦はミディアムジャンボのボディーにブロックインレイの入ったネック、というもので、74年のソロ・デビュー・ライヴの動画でも確認できます。ハープトーンはNYブルックリンのブランドで、若き日のサム・クーンツが同ブランドにギターを提供していました。バファロー・ヘッド、アーチバック等独特の形状を持ち、ジョージ・ハリソンが使用したことでも有名だと思われます。
MR:何本か僕もアコギは持ってたんだけど、ハープトーンの人がどんな目的でオフィスに置いていったかは、直接会ってないから判らないな。誰がどこからやってきて、何を置いていった、とかそういうことには僕は無頓着だったから。誰かがギターを貸してくれたとか、アンプを貸したとか。そういえば、一度僕のアンプがなくなってしまったことがあったんだけど、なんでそんなことになってしまったのか、いまだに自分でも判らないままだ。判ってるのは、僕はそういうの(機材)を売ったことは一度もない、っていうこと。売った事がないのに、何故かそういうのがいろんなところに出回ってしまうんだよね。まあ、誰かがそれを使って満足してるなら、それでもまあいっか、なんて思って。今なら僕にはよく色んな所から電話がかかってきて「欲しいものは何?」なんて聞かれるようになったから。長年にわたってそれこそ山のような機材とかアンプとかを入手したけど、それらを全部持ち運びできるワケでもない、って誰にでも判ることだし、(紛失に関して)つまらない口論をしなくてすむしね。僕にとっては、山のような機材を持ち運びすることよりも、その時々で欲しいと思ったものを入手する、っていうほうが楽チンだから。どこに行こうが、どんな仕事をしようが、そのほうが楽。
——ソロ・アルバム、それからモット・ザ・フープルに加入してた時期には、どんなアンプを使ってたか、覚えてる?
MR:マーシャルだよ。でもモットの時は…… なんだったかな? アンプの名前、覚えてないや。モットが自前で持っていたアンプ——アンペグの100Wのもの——をそのまま使おう、とは思ってたんだけど、でもそれは凄く歪むアンプで、僕はそこまで歪まないアンプを使いたかったから。そのアンペグのアンプは、サウンドも細かったんだよね。トップエンドばかりが目立って(トレブリーで、の意味)、ボトムエンドはすごく薄いカンジで。もしそのアンプでトップエンドを目立たせないようにしよう、と思ったら、低音弦をもの凄く強くピッキングする、いや、椅子かなにかで低音弦を殴りつけるくらいしなければならなかったんだ。そんなアンプだった。
——アンペグのそのサウンドは好きになれなかった、と。
MR:だからマーシャルを使った。スタジオに入ってすぐ、アルバムのために何曲かやる必要があったんで、マーシャルをオーダーした。プラグインして音出してみてすぐに「あーコレコレ」って思って。ホントにいい音だったんだ、満足したよ。イアン(・ハンター)もすぐそのサウンドを気に入ってくれた。今まで聞いた事もないような素晴らしい音、と彼も思ったようだよ。「俺も買おうかな、俺もその音欲しいな」って、何度も(笑)。今じゃ彼も、すっかりマーシャル・アンプの虜だけどね。でも彼(イアン・ハンター)のギター・サウンドも、既に凄くよかったんだ。彼はフェンダーのアンプを使ってたんだけどね。そのフェンダーのアンプは驚くような素晴らしい音で、もう何年も何年も彼が使ってたアンプなんだけど。彼がマーシャルのアンプを使うようになってからは、もうすっかりマーシャルのサウンドにノックアウトされようだ。本当にパワフルだからね。以前よりもより良いサウンドを出すようになった。今も彼のギター・サウンドは素晴らしいよ。
——ジギー・スターダスト時代のアンプは?
MR:マーシャルの100Wと、12インチ×4発のキャビ1つ。
——キャビを1つしか使わないのは、何か理由があったの?
MR:2つ使うと、音がデカすぎたんだ。1つでも、十分に爆音なんだけどね。キャビ2つでは、トゥーマッチと思えるくらい音がデカすぎた。
——レコーディングでは、マーシャルさえ使っていれば自分が意図したギター・サウンドは大抵実現できた?
MR:そういう場合もあった。でも、いつでも全部マーシャル、っていうワケでもない。アンプをスタジオに持ち込んで、そこでいい音を鳴らすっていうだけでも結構大変なことだから。卓を通して、前に出過ぎないようにバランスを取って引っ込めて、全体を小さな音量でプレイバックした時でも素晴らしいギター・サウンドが聴こえてくるどうか。それはもの凄くタフな作業なんだ。ドアとか窓を開けた状態で、小さな音でモニタリングしてて、まあ外から犬の吠える音が聴こえたりすれば窓やドアを閉めることになるけど、すると途端にマッチ箱から音が出てんのか?って思うくらいサウンドの印象も変わる。アンプのマイキングをクローズ(スピーカーに近づける)にしたり、とか——今僕は、大抵の場合はマイキングはベタベタにクローズにして録音するんだけど——同時に部屋全体の鳴りを拾うために、アンプから離れた位置にもマイキングする、とかね。
——いつも、頭で何かギター・サウンドが浮かんだら、すぐスタジオに入って曲作りする、ってカンジ?
MR:そうでもないね。というのも、いままでは大体同じようなギター・サウンドばかりを使ってたからね。特にレスポールを使う場合、大抵は似たり寄ったり、もしくはいつもと同じサウンドで演奏してたから。アンプのスイッチを入れて、あとは演奏するだけ、だよ。
——ギターのトーンをいろいろと模索して、ベストなサウンドを探しまわる、なんてことにはそれほど執着しなかった?
MR:そりゃ僕も、いろんなところで違ったギター・サウンドを使い分けてはいるよ。でもギターはいっつも同じギター。丁度今、ギターから何から全部を入れ替えて、全く違った新しいトーンを出そうとしてるところだけど。昨日の夜、リッケンバッカーを使ってみたんだけど、なかなか良かったんだ。クリーンで使うと最高なんだよね。ギブソンのギターとは全然違う魅力。本当に新鮮で、素晴らしかったな。何本か新しいギターを購入、もしくはレンタルしようと思ってるんだけど、あのクリーン・サウンドはホントに最高で、僕もリフレッシュされたカンジだよ。そういう体験、最高だよね。
——ボウイのバンドの中では、既に何もかもやり尽くした、ってカンジ?
MR:うん。ギター・プレイヤーとしてはね。いつも「他のこと」に関心が湧いてしまうタイプなんだ。一介のギター弾きです、なんてことは一度もなかった。……ああ、でも思い返せば、あそこに居られたことは凄くハッピーだったよ。デヴィッドと出会うまでは、あんなにギターを弾くチャンスもなかったし。ギターを持って出かけて、それを弾く、なんて機会もなかった。そもそもギターもアンプも所持していなかった。でもステージやスタジオでは、ただギターを弾く、それしか出来なかった。むしろ、ギターを弾くよりも、他のスタジオワークのほうにものめり込んだりしたんで、あの頃はよく「うーん、今はまだギターを弾きたくないなあ」とか言ってたよ。ギターとかどうでもいいでしょ、みたいな態度で。
——何故そんなふうに感じるようになってしまったのかな。
MR:スタジオの現場では、僕のやりたかった事っていうのは「二の次」ってカンジだったからだろうね。プロデュースとか、エンジニアリングとか、そんな事。ギタリストなんだから、もっともっとギターを弾くべきだったんだろうね。でも、いいんだ。オッケー。ときどき自分でも自問自答してたんだよ。たしかに自分が考えていることは、一介のギター弾きの考えること、成すべきこととしては奇妙な部類のものだ、と。でも自分では実際にそう思ってしまった。どういう道筋で、そう考えるようになったのかは自分でもわからない。今はね、また、ただのギター・プレイヤーに戻ろう、って考えてるんだ。ギターを弾くのが楽しくなってきたしね。面白いよね。だから今、新しいギターが欲しくて仕方ないんだ。
——ボウイからギター・パートに関してああしてくれ、こうしてくれ、といった指示はあった?
MR:いや、全然。彼はいつもいくつかの曲のアイデアを出すだけ。彼は本当に素晴らしかった。デヴィッドがホントに頭がいい奴だってのは知ってるよね? 特に、音楽的にクレバーだと思ってる。彼のアイデアを聞いて、そのアイデアで僕のパートがすべき事を考えてみると、デヴィッドもそれと同じ事を既に思いついている、っていう具合に。僕等はそういうレベルで上手くいってたから、何曲も素晴らしい曲を共作できた。音楽がどうあるべきか、どういう道を歩むべきか、その辺りは僕等はまったく同じことを考えていたからね。本当に上手くいってた。で、それこそが僕がたった今、また見ている道なんだよ。今、たったひとりで朝起きて、沢山の物事を経て今自分流でセッションに参加したりするっていうのは、いままで経験したことのない立ち位置だからね。でも、たとえばボブ・ディランのような人と出会ったりすると、またそれも素晴らしい体験なんだよね。なぜなら彼は、ここはこうするべきだ、と教えてくれる人物だからね。それまでは、判らないことだらけでも「コレだ!」って思えるものでも、とにかくなんでもかんでもプレイし続ける必要があったから。
——ジギー・スターダストの頃のようなイメージに戻そう、ってこと?
MR:いや、今回は僕(が主役)だから。グリッターなメイクとかそういうのはしないよ。普通の赤と白のTシャツとか、白いスカーフを巻くとか、そういうの。


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