3.09.2012

Masayuki Mori Interview - Part 3



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M:で、今日このへんを持ってきてみたんですが。
——あ、ホント申し訳ありません。重くてデカいのバッカリで、恐縮です。
M:これがね、OC81Dが使われてる、60年代のTONE BENDER PROFESSIONAL MK2
——えっ! うわー、僕ホンモノ触るの初めてです。開けて中見せてもらってももいいですか?
M:ええ。どこまでオリジナルかは、僕には断言できないんですけど。これねえ、ボリュームのノブが10時くらいでもう爆音。音デカくってねえ。
——あ、そうなんですか。MK2はそれほど出力がバカでかい、ってカンジではないものが多いんですけど、そのあたりは石のせいなのかもしれませんね。トランジスタが1ケだけホワイトジャケットなんで、もしかしたらトランジスタは後でちょっと弄られたっていう可能性も否定できないですね。
M:あと、マーシャルのSUPA FUZZね。これがまたスッゴクいい音なんですよね。これはねえビックリしました。
——こっちのトランジスタは?
M:OC75。さっきのOC81Dより出音はオープンなんだけど、枯れたカンジがして、音的にはこれが一番好きかも。SUPA FUZZもそうだけど、TONE BENDERは同じモデルでも中身はけっこう違うのが多いですね。
——さっきのOC81Dの入ったMK2とマーシャル SUPA FUZZとの比較でいうと、どういう差をお感じになりますか?
M:「コレでも食らえ!」っていう使い方をするなら、OC81DのMK2ですね。とにかくサスティンが凄いあるので。SUPA FUZZはそこまで強烈ってカンジではなく、枯れたイメージがあるから、音も控えめに出してやったほうがすっごいいい音になるんですよね。ストラトでこれ通せば、もうタマンナイ!って音になりますよ。
——OC81Dのほうでストラトを通すと、どういう印象でした?
M:もうストラトもなにも関係ない、ってくらい直線的ですね。ワビサビもへったくれもない、っていう(笑)。
——OC81Dはいわゆる“ジミー・ペイジ仕様”なわけですけど、レスポール使ってペイジはコピったりしましたか?
M:ん、まあやってみたけど、でもあのムチャクチャさは真似できないですよね(笑)。それに、レスポール使うくらいなら、テレキャス使ったほうが所謂ペイジっぽい音にはしやすいし、ね。
——TONE BENDERのMK1であれば、「爆音・爆歪」なんで、僕もツマミは9時くらいまでしか回さないんですけど。このOC81DのMK2も、そんなカンジですか?
M:うん、10時とか、そんなモンですね。いきなりピークが出ちゃうというか。コントロールは難しいですね。それから次が、VOXのこれ(イタリア製TONE BENDER)。これはシリアルが凄く若かった(1500番代)、ということもあって買ってみたんだけど、これ、凄くいい音なんですよね。同じモノでシリアルが6000番代っていうのもあって、ミントっていえるくらい奇麗なのをこの後に買ってみたんだけど、音がちょっと違うんですよね。若いモノのほうがまろやか、っていうか太い。こっちの若いほうは、完全に音で決めて買いましたね。
——一般に、イタリアのTONE BENDERは「MK1.5回路」の中でも、カリカリで音が枯れる印象があると思うんですが。見せていただいた限りこれの回路はフルオリですけど、音はそんなに太いんですか?
M:うん、フットイですね。もう一個もってるVOX TONE BENDERは、箱にビートルズの絵が書いてあるもので、ほんとにド・ミントなんですけど、すっかり飾りですね(笑)。もうプラグインすることもないでしょうね(笑)。イタリアのTONE BENDERも、見るたびに中身違いますよね。
——ええ、全く同じ中身のもの、見た事ないですね。まあこの時期のイタリアものの場合はワウも同様ですけど。
M:それから、この青いヤツ。
——あ、PARK FUZZ。お持ちですねー。スゴイ。
M:これもねえ、凄いいい音ですよ。銀色の(TONE BENDER MK3)も持ってるんだけど、音が違いますねえ。
——回路は同じハズなんですが、トランジスタがモノによって全然違うモノを使用してる、っていう噂がありますね。僕の持ってるSOLA SOUNDのMK3は銀色で無印の石なんですが。
M:これもトランジスタはそれ。「歪み」のツマミを回すと、それに従ってちゃんと歪んでくれる、という(笑)。
——(笑)。ホントはそれがフツーなんですけどね(笑)。TONE BENDERとしては、逆に珍しい、というか。
M:出音のね、上っ面の部分だけが歪むんじゃなくて、コシのある歪みというか、しっかりと歪む、というか。
——TONE(TREBLE・BASS)のツマミが凄い効きますよね、これ。
M:凄い効くよね。それと僕が大好きな、日本が誇るシンエイのファズ(UNIVOX SUPER FUZZ)ね。オクターブ・ファズもいくつか試したんですけど、ラバーパッドのついたモノより、こっちのほうが凄く良かった。
——ツマミが時代によって違うんでしたっけ?
M:そう。この最初のモデルはオクターブ成分のコントロールができない。これねえ、何故か12フレット周辺より高い音を出す時オクターブ成分がブワーって出て、そうでない時はフツーのファズ、というか単純なディストーション・サウンドになる、っていう。まあいい加減といえばいい加減な作りですよね(笑)。それから最後に、これ。これはあなどれない、っていうCARLSBROのSUZZ。そんなにレアでもないし、あっても値段は安いんだけど。
——うわー、SUZZもお持ちですか。
M:これ、まったく正当な評価を受けてない、っていう気がしますね。いわゆるディストーション的なファズなんだけど、すっごくコントロールしやすい。
——トランジスタはシリコンでしたよね。
M:そうです。サスティン&ファズだから「SUZZ」だと思うんですけど。ちょっとコンプがかかったカンジで、歪みはそんなにバリバリって強烈なものではないけど、ディストーションよりはエッジが思い切り立ちますよね。
——TONE BENDERと同じように、アンプは選びますか?
M:いや、SUZZはそうでもないですよ。一時、多分70年代かな?クラプトンが使ってた、という噂がありますよね。
——え、それは知りませんでした。今のクラプトンはもう「機材?何でもいいよ」ってカンジだそうなんですけど。
M:私はね、フェンダーが一番最初に出したレースセンサーの載ったクラプトン・モデルのストラトってやっぱり名器だと思ってるんですよ。でも使ってる本人が「どうでもいい」ってなっちゃうと、ねえ(笑)。なんだかアルバムも最近はどんどん企画色の強いアルバムばっかりだし。
——(笑)。話が脱線しますが、森社長的には今回のウィンウッド&クラプトンのリユニオンはどうですか?
M:一応僕はリアルタイムでブラインド・フェイスを夢中になって聴いた方ですが、我々のような口の悪いタイプのファンからすれば「できればバラバラで来てくれた方が嬉しかったなあ」と(笑)。
——クラプトンの昔の機材っていうのも、謎が多いですよね。クリーム時代の歪みが何かは画像等で確認できないんですよね。ワウは当然のように使ってるんですが、アンプもコロコロ変わるし。あ、そういえば森社長の「スタンダード」アンプって何ですか? さっきのストラトと同じで、基準にしてるアンプ、っていう意味ですが。
M:最近はすっかりマーシャルに戻った、というカンジですねえ。ちょっと前にマーシャルの小さいのが出たんですよね。家ではもっぱらソレ。
——あ、5Wのヤツですか?(CLASS5) あれ楽しいですよね。
M:手間も楽だし、スピーカーも1ケだし。でも5Wでも音でかいです。5Wなのにアッテネーターかますっていうのもなんだか馬鹿馬鹿しいんだけど。でもあの歪みはいいですよ。しかもなぜかイギリス製だという(笑)。
——ええ、CLASS5最大の謎が「英国製」ってことですよね(笑)。

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森社長のコレクション その3 Marshall Supa Fuzz (1968)
以前こちらこちらのポストでマーシャルSUPA FUZZの年代ごとの違いを比較検討しましたが、それに照らし合わせれば、こちらの個体は筐体のエッジが丸みを帯び、ロゴがラベルプリントになったもので、恐らく68年頃に製造されたと思わしきマーシャルSUPA FUZZ中期の個体。極端に言えば、TONE BENDERのMK2回路を持ったファズは、ギターのボリュームに敏感に反応するオープンな歪みのものと、モーモーに暴れ狂う激歪タイプと、おおむね2タイプに分かれると思われます。こちらのSUPA FUZZは実際にお話を伺うと前者の方に分類されることがわかります。現行商品でたとえるならば、ムラードOC75を使ったJMIのMK2は前者に、ムラードOC81を使ったJMIのMK2は後者に、というカンジでしょうか。それにしても森社長の所持するペダルはどれもすごく奇麗な状態のモノが多くて、それを伺った所「出会った時が買うときだから」と仰ってました。


1 comment:

  1. Did that OC81D MkII come from Music Ground? Oh dear.

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