6.21.2013

Mick Ronson Interview - Part 5

INTERVIEW BY STEVE ROSEN, DEC 1976
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——ボブ・ディランと一緒に演奏してみて、自分のギター・スタイルがより開拓された。みたいなことは感じてる?
MR:ああ、そう思うね。自分のプレイがどんどん良くなってる。開拓されてるとも思うし、よりスピーディーになったとも思う。とにかく自分でも、ギターをプレイするっていうことに興味が湧いてきたからね。重要なことだ。新しい奏法なんかもみつけたりしたんだ、しかも、けっこう沢山のスキルを身につけた。そういう事にまた興味を持つようになったし、いいギターがまた欲しいと思うようになったし、他のギタリストよりも、よりよいプレイをしたい、と思うようになった。
——ディランから最初に共演のオファーを貰った時って、彼のやっていた音楽と、自分のスタイルがフィットする、って想像できた?
MR:いや、判らなかったね。どんなことになるか想像もできなかったし、自分がどんなプレイを出来るか、出来ないのかも、それすらも判らなかった。どんなことが起こるのか、何も頭に浮かばなかった。だから大変だった。最初はホントに大変だったよ。でも、今ではそんなに大変でもなくなったけど。人を観察する方法とか、人と一緒に演奏する方法とか、そういうのを勉強したから。全部の面でよりシャープになったよね。大抵の人は「ハハン、アイツ何もできてねえじゃん。アイツそんなに良くねえな」とか思ってるのかもしれないけど、そういう人達は僕をほっといてくれるとか、激励してくれるとか、一切無関心でいるとか、まあ無関心でいてくれたほうが判り易いけどね。その時は、自分も本当にラフな演奏しかしなかったし、自分でもそう思ってたしね。


※75年のローリング・サンダー・レビュー・コンサートで「激しい雨が降る」を歌うディラン。同ツアー初期は、ディランが顔を白く塗っていることでも知られますが、動画中ディランの斜め後ろでレスポール・カスタムを弾くロンソンの姿が確認できます。
——ディランからオファーの連絡を貰う前って、ディランの音楽に詳しかった?
MR:いや、そんなに詳しくなかったんだ。ラジオでかかってるから聞いたとか、前に一度聞いた事ある、とかそんなカンジ。あの曲がアレだ、とか全然わからなかったね。どっちにしろ、ディランの曲で知ってた曲も、1〜2曲くらいしかなかった。だから共演するまで聞き込んだことはなかったんだけど、皆どれもいい曲ばかりだよね。
——ディランの昔の曲、昔のアルバムなんかも遡って聞いてみたりした?
MR:いや、そういうのはするつもりもなかった。2曲くらい聞いたことがあるってだけで、それよりも何よりも、自分自身を(ディランという)枠の中のどこに置くか、どんな立ち位置を確保するか、この場面で何が聴こえてくるかを耳で確かめる、そんなことのほうに集中しようと思った。でも結局は集中できなかったね。グルグルといろんなことの中でさまよってしまったカンジで。まっすぐにコレだ!って思えるものに集中することは出来なかった。ディラン・ナンバーを何曲か演奏しなければならない、てことで聞き込んでみたとしても、次の瞬間には同じ曲の別バージョンもあって、なんてカンジで、しかもその別バージョンてのは大抵オリジナルのアレンジとは全く違った形だったりして。「自分が好きになった曲だけ演奏します」なんて契約は絶対にしたくなかったから。それにもし自分が今後別なツアーで(ディランに)呼ばれたとして、そのツアーでは過去のアルバムの曲はやりません、て誰かが決めてしまうかも知れないでしょ。だったら最初から、何も知らないほうがいい、と思ってね。
——ディランの曲に、何かしら新しい解釈を持ち込もう、とは思わなかった?
MR:いや、むしろどんな解釈があるのかを学んだんだ。自分にとってはどっちにしろ「新曲」、フレッシュな曲だったから。レコードを聞き込んで、レコードと同じプレイを担当しよう、とか考える必要さえなかった。レコードを聞き込んで、大好きになってしまったら、その中のプレイをコピーしようとしちゃうでしょ、必然的に。他の方法を見つけることさえ困難になってしまう。だから僕は、そんなふうになるのを避けてみたんだ。
——ディランとは、別なツアーでも一緒にやる予定がある?
MR:いや、わからない。それはオファーがあってから、の話だから。
——もしオファーがあったら、参加する?
MR:もちろん。ディランのツアーに参加してた人達は、みんなホントにホントにいい人達ばかりで、一緒にいるだけで興奮するような人ばかりだしね。皆昼夜問わず、真夜中のパーティーでもいつでもどこでも一緒にいて、皆でジョークかましあって、皆で大笑いして、そんな素晴らしい時間を過ごせたんだ。最高だよ。だって知ってるでしょ? バンドがロードに出ると、沢山の人々が同行するわけだけど、大抵はその中の3〜4人がツルんで、他の3〜4人が別なグループ作って、更にあっちには別のカップルができて、あっちではひとりぼっちの寂しいやつがいて、みたいな事になるのが常、だから。
——皆が皆、一緒に帯同するってワケじゃないよね。
MR:変な話だよね。「御一行」なのに、皆一緒、てカンジじゃない。今回のローリング・サンダー・レビュー・ツアー程の大所帯ってわけでもないのにね。「ディラン御一行」は皆がホントに一緒に行動するんで、僕もビックリしたんだ。ホントにいい体験だった。満喫したよ。そう、だからもしオファーがあればまた参加するつもりだ。楽しいし、また更に多くのことを学習できる場だし。もっと曲も聞き込むこともできるだろうし、色んな曲のプレイを覚えることもできる。最高の機会だよ。
——ボウイと一緒だったときは、仕事じゃない時間でもボウイと一緒に行動した?
MR:ああ。クラブとかいろんな所にも一緒に行ったね。ディスコにも一緒に何度も行ったし、いろんな事で一緒に行動したし、いろいろ一緒に楽しんだよ。皆バラバラになって、それぞれ別行動でウロつくなんてことはなかったね。いつも一緒にツルんでた。これから出てくる新人のバンドにひと言アドバイスするとすれば、別々で行動するな、いつも一緒にいろ、ってことだね。だって、バンドのメンバーがひとりで飲み物を持ってどこかの角に座って、また別な遠くの角には同じバンドのもうひとりのメンバーが座ってるけど、互いのことは一瞥もしない、なんてシーンを、見たくはないでしょ? おやすみ、とかそんな言葉さえないとかね。一緒にいること、それは大事なことなんだよ。でも僕等は一緒にいたし、だから本当に楽しい体験をした。
——その体験は、ディランのローリング・サンダー・レビューでも似たような体験ができた、と?
MR:何が驚いたって、僕が今さっき言った事は、ツアーに参加したメンバー全員が異口同音に言ってた、ってことなんだ。皆カリフォルニアからきたとか、テキサスからきたとか、メキシコからとか、ニューヨークの人もいればイギリスの人もいれば、カナダの人もいる、っていうのに。20人とかそんな数じゃなくて、80人くらいのメンバーがバラバラの地域から集まってきて、ツアーの終わり頃には100人くらいの集団になってたんだけどね、本当にそんな大人数が、皆一緒になって行動したんだ。時たまロード・クルーもツアーに帯同するんで、全員がいつも常に同じ場所、1カ所に集合してる、ってワケじゃないけど、大抵は皆いつも一緒にいたね。バラバラで行動する必要ってのは、滅多になかった。でもミュージシャン、ミュージシャンに帯同する人、ロードマネージャーとかの人、クリス・オーデル(註:スーパー・グルーピーと呼ばれた、有名な女性。ミック・ジャガー、ボブ・ディラン、リンゴ・スター等多くのスター達のグルーピーをやっていた)、本当に皆いつも一緒にいたよ。えーと、どこまで喋ったっけ?
——ボウイの時代も、同じようにスタッフと連れ立って?
MR:そうそう。ボウイの時との違いは、今回はやたら大人数だったってこと。全てのミュージシャンは皆、エゴとかそういうのをそれぞれで持ってるモンだけど、それこそゲストも何もかも皆最初から一緒に行動するってこと。
——ミュージシャンは、何人くらいいたの?
MR:16人とか、そのくらいだったと思う。16人のミュージシャンそれぞれと一緒に演奏するだけで、その16人と話し合いしてるようなもんだよ。それぞれがキャリアを持ってるんだ。彼らと一緒にいれば、その各々のキャリアのバックにいた人々と一緒にいるような経験もできる。一緒にいるだけでどんどん良くなっていくんだ。最高じゃないか。部屋の中に足を踏み入れるだけで、10人くらいのアーティスト連中がいて、最高の時間を楽しめる、そんな経験なかなかできるモンじゃないだろ? しかも会話だって「あなたのアルバム、大好きです。本当に好きなんで……」とかそんな類いのものでは決してない、ていう。言ってる意味わかる?


※動画は、ロンソンのドキュメンタリー番組の一部で、ディランのローリング・サンダー・レビューに参加した時のロンソンを見る事ができます。また、インタビュー中に出てくるボビー・ニューワースの証言等もあります。この動画でロンソンが弾いてる白いレスポール・カスタムはレンタル使用していたギターで、同じギターをロンソンは76年夏にジョン・ケイル&ルー・リードのジョイント・ライヴにゲスト参加した際にも使用しています。
——わかるよ。
MR:そんなつまらない会話なんてしたくないでしょ。人は人なんだし、酒も飲むし、寝るし、ただそれを一緒にするってだけ。エゴを誇示したりなんて必要ないんだ。皆各々のエゴがあっても、別にわざわざそのエゴを剥き出しにして争う必要なんて一切ない。そのほうがいいでしょ。僕がツアーに出るのが好きなのは、そういう経験が仕事でもいい結果を生むって判ってるから。重要人物は、ボビー・ニューワース(註:ディランの友人でもあるSSW兼プロデューサーで、ローリング・サンダー・レビューにも参加)だったな。パーティーをやらせたら彼にかなう人物は他にいないね。人間的にもとってもいい人物。人が集まる場所で、何をやればいいかを知ってる人。何をやれば良くて、何がウケるか、そういう意味でとても頭の回転の早い人だった。物事を把握し、すぐに精通するっていう人でね。どんなシチュエーションでも彼が何かやれば、ウケるし上手くいく。素晴らしい人だよ。そんな彼がまとめ役になってたんだね。
——ディランと最初にやったライヴは、どんなカンジだったの?
MR:まずボビー・ニューワースと知り合いになって、彼が「ボブ・ディランがギタリストを探してる」と言ったんだ。最初はジョークだと思ってたんだ。だって僕は、ボブ・ディランのことを全然知らないし。でも彼が言うには、ディランがツアーをやる予定なんだけど、バンドのサウンドがオープンでルーズなんだ、と。最初は「何か僕は聞き間違いをしてるのかな? 何を言いたいのかなあ」と思ったんだよね。でも、そう、彼は僕に参加しないか、と言ってたんだ。すごく驚いたよ。
——それまでディランと同席してセッションしたりした経験は?
MR:いや、彼は「掛け合い」はしない。彼は歌を歌うだけ。曲中で短いソロを何度か織り込むようなプレイも好きだけどね。プレイヤーとの「掛け合い」のようなことはしないんだ。
——ディランとの共演では、いままでに演ったこともないようなプレイをしなければならなかったんじゃ?
MR:いや、そうでもないよ。僕はやりたいようにプレイしただけ。あ、でもいくつかカントリーっぽい奏法を勉強したけど。
——スライドなんかも演った?
MR:いや、やってない。今までやったこともない。好きじゃないんだよね。
——ディランの音楽には、スライドギターが似合いそうなモンだけど。
MR:たぶんそうなんだろうね。でも僕はスライドバーを使うのではなくて、エフェクトを使ったりしてそういう効果を狙おうとした。でも、言ってることはよく判るよ。スライドを借りてやってみれば良かったかもね。試してみようかなあ。色んな事をやるべきだ、と思ってるし。
——ローリング・サンダー・レビューでは、フェンダーの小さなアンプを使ったの?
MR:そう。バンドにはデヴィッド・マンスフィールドっていうペダルスティールのプレイヤーもいたんだんだけど。それはともかく、もし僕がギターでソロノートをプレイしたら、それはスライドギターの音みたいに聴こえると思ったんだ。ファズでも踏めば、エレキギターの音だってわかるんだけど。ファズでそんなサウンドを出したら最高だと思って。リードギターでね。
——ディランはイアン・ハンターとは面識がある?
MR:ああ、初めてディランと会ったとき、僕はイアンと一緒にいたから。その場にはボビー・ニューワースもいた。6月か、7月の頭だったな。


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