3.09.2012

Masayuki Mori Interview - Part 2



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——ビンテージ・ペダル、つまりオリジナルの古いペダルにこだわりはありますか?
M:いや。エフェクターの場合はね、フェンダーやギブソンの初期のギターのように(その差が)大げさではないでしょう。けれど例えば最初のファズ、マエストロのFUZZ TONEね。あれさあ、正直言って今使えないでしょう?(笑)
——(笑)。とても難しいですよね。少なくとも近代的なファズっぽい用途には全く向かないですね。
M:ブチブチブチブチーっていう、あの音(笑)。あれを使うと、ギターがギブソンかフェンダーかはもう全然関係ねえや、っていう。
——アハハ、そうですよね。ストーンズの完コピする以外に、なかなか用途が見つからないっていう。
M:そこで考えるんですよね、ファズの完成形ってなんだろう?って。Z.VEXのFUZZ FACTORYなんかを試してみても、よく言われるように飛び道具的な使い方にやっぱり終始してしまうんですよね。
——FUZZ FACTORYも基本回路はFUZZ FACEを参照に作られてるハズですが、FUZZ FACEでは絶対にできないような使い方を想定してるっぽい作りですもんね。
M:で、そこで今でもよく考えるし、考えるのがまた楽しいんだけど、石(トランジスタ)によって音が違うとか、回路をちょっと変えただけで使い勝手が思い切り変わっちゃう、とか、歴史を含めてそういういろいろといい加減な部分が、楽しいんですよねえ。
——いい加減ですよね(笑)。で、一番楽しいんですよね。
M:だいたいFUZZ FACEにしたって基板には9ケしかパーツが載ってないし、TONE BENDERだってあきらかに無駄に大げさな筐体だし。でもそのガタイによって出音は変わるハズなんですよね。
——それは以前、土屋昌巳さんも同じ事を仰ってましたね(註:ギターマガジン2010年5月号のインタビュー)。鉄製の筐体に落とされるグラウンドの量に影響する、と語っていたのですが。
M:まあアンプにしても同じですけどね。回路が同じであっても、ガタイが変われば出音は変わりますよね。エフェクターは小さい機材だから、それほど大きな違いにはならないにせよ。
——試すときって、ギターはどういう基準で選びます? 試奏するときのギター、って意味ですけど。
M:最近はストラトが多いですね。あのね、レスポールって、音が安定してないというか、基準にしにくいんですよね。ストラトなら、たいていどんなギターでも「ストラトらしい」っていう基準がしっかり出てくれるから、判りやすい。ホントはレスポールのほうが自分の欲しい音を測るのにはいいんだろうけど、外ではストラト。
——ジミヘンの使ったストラトのグレーボビンPUは、出力が低いってことで有名ですけど、シーザー・ディアス氏(註:ギターテック/アンプ&エフェクト・ビルダー。スティーヴィー・レイ・ヴォーンの親友でもあり、SRVのギターやアンプを片っ端からイジリ倒した人物。SRVと共にジミヘンの機材/サウンドを研究しまくった人でもあり、本人もプロ・ギタリストとしてボブ・ディラン等のバックを務めた。2002年逝去)によればジミヘンがあれを使ってた理由って「エフェクトのノリがいいからだ」ってコトだそうなんですよね。そういう視点ってありますか?
M:そこまではないですね。そこまで気にしなくても、(ミッドブースターを組み込んだ)クラプトン・モデルみたいによっぽど基本回路をイジってるモノでない限り、ストラトであれば基本的なトーンはイメージできる通りの音になるから。
——お持ちのストラトで、基準にしてるモデルってありますか?
M:いや、そんなに気にしてないなあ。よく使うのは、71年くらいのラージヘッドなんですけど、別にそれはビンテージどうこう、っていう基準で買ったギターじゃなくて、ただなんとなくラージヘッドの見た目に惚れて、なので(笑)
——ラージヘッドですか。たしか森社長ってリッチーもお好き、でしたよね?
M:んー、いや、そんなでもないですね(笑)。ジミヘンのほうが大好き。リッチーも嫌いじゃないですよ。でもディープ・パープルはそんなに特別ってカンジじゃない。ホラ、リッチーってなんか恥ずかしいこともたくさんやってるじゃないですか(笑)。
——ん、まあそうですよね(笑)。ジミヘンとリッチーって、音の出し方が真逆なんですよね。ジミヘンは出力の低いストラトで、弦は太くて、であんまり歪まないFUZZ FACEとマーシャルの100W。リッチーは出力のバカでかいピックアップのストラトに細い弦張って、トレブルブースターとAKAIのエコーを挟んでマーシャルの200Wで。
M:でもジミヘンはFUZZ FACEをブースターのように上手いコト使うわけですよね。
——ハイ。あれがすごいんですよね。
M:で、ジミヘンもリッチーも、ギターのツマミは神経質にイジりまくるっていう。あの辺が「巧み」なんですよね。あの辺はもう「鬼」だな、と思いますね。
——かなり昔のインタビューだったと思うんですが、森社長はたしかエディー・ヴァン・ヘイレンにもの凄く影響を受けた、と読んだことがあるんですが。
M:いえ、エディーはもうね、好きだった、ていうだけですよ。
——タッピングとかアーミングとかに衝撃を受けた、ってワケではないんでしょうか?
M:いや、あんなのできないし(笑)。でもエディーのギターの音のツヤ、っていうか厚みっていうか、あれはジミヘン以来の衝撃、っていうものに近いかもしれませんねえ。エディーの場合はシンセ使った曲のほう(註:84年のヴァン・ヘイレン「JUMP」以降の作品群)が有名だったりして、コンポーザーとしてはそれほど有名になりきれないですよね。間奏はいつも最強なんだけどなぁ。
——他に大好きだ、ってギタリストは誰になりますか?
M:エリック・ジョンソンはずっと好きですねえ。
——なるほど。最初にファズを意識されたのはベンチャーズで、大人になってからジミヘンとかクラプトンとかペイジの研究をするようになって、ファズ再発見、というカンジですね?
M:そう。逆に言えば、しばらく長い間、ファズっていえばベンチャーズとかストーンズの、あのジージーいってるようなイメージしかなかったんだよね。個人的には距離感があって、親しみはなかった。ファズの前にはオーバードライブものにさんざんハマって、その後ファズに手を出して、その奥深さにハマってしまって、という流れですね。

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森社長のコレクション その2 SOLA SOUND TONE BENDER PROFESSIONAL MK2 (OC81D / 1966)

 いやー。ビックリしました。森社長はTONE BENDERのMK2で、OC81Dが入っているのをお持ちだったんですね。お恥ずかしながら、当方はこの現物を見るのが初めてでした。許可をいただいて、中身も撮影させていただきました。「どこまでオリジナルがキープされたモノかわからない」とおっしゃっていますが、勿論当方にも断定的に「どこまでがオリジナルか」は言えません。写真からも判る事は、まず裏蓋がサイズがいい加減にカットされており、ピタリと筐体にフィットしないこと。ただし塗装はオリジナルと思われる古いモノでした。昔のTONE BENDERはこのくらいいい加減なモノはよくあります。
 そして回路基板。ご覧のように幅の短いショート・サーキット・ボード仕様です。ここから、MK2の中でも初期に(おそらく66年内に)作られたものであろうことが推測できます。やはり一番気になるのはトランジスタでして、3つのOC81Dのうち、2つはシルバーキャップのもの(ムラード製でMADE IN ENGLANDのプリント入り)、もうひとつはホワイトジャケットと呼ばれる白いOC81Dで、これもムラード製です。このトランジスタが「混在」しているものを見たのも初めてなので、これだけでオリジナルかどうかの判別はつきませんが、当時のMK2回路では「違うトランジスタを混在させる」こと(例えばOC75とOC81D、とか)はないと思われるので、オリジナルかなあ、と思います。
 ただし、ショート・サーキット・ボードのMK2回路の場合は、一部のキャパシタが基板横/もしくは基板上にはみ出すように設置されるハズなんですが、こちらの回路はそうなっていません。その辺は(当方の調査不足もありますが)もうちょっと詳しく研究してからでないとなんとも言えません。ただしここから確認できることは、一部抵抗と、基板の止めネジは交換されたモノだということがわかります。それよりも「超・爆音」だというこのMK2、是非音を聴いてみたいところですね。



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