11.04.2013

Robert Fripp 1974 Interview - Part 3

INTERVIEW BY STEVE ROSEN, MAY 1974
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——またあなたの初期の頃の話に戻るんだけど、何かレッスンを受けたりしたの?
RF:ああ。ギターを初めて3ヶ月程は独学で、特に基本的な譜面読みばかりやってみたのだが、その後ギターのレッスン、それから音楽理論のレッスンに通った。理論の方は、ピアノの講師をやっているという人——ただしギターなんて全く弾けなかったが——そういう人が私の家の近くに住んでいたので。だがそこでの音楽理論のレッスンこそが、私に音楽理論のバックグラウンドを与えてくれた。1年かそこらが経って、そのレッスンで私は最も優秀な生徒——これでも控えめな表現をしているのだが——になったものだから、今度はボーンマスに住むドン・ストライクのもとへレッスンに通う様になった。彼は30年代スタイルの素晴らしいプレイヤーでもあった。30年代の音楽に関してはマルチ・プレイヤーでもあり、マンドリン、バンジョー、ギターも演奏できた。彼のもとで、いわゆるエディー・ラングのスタイルを全て習得した。私にとって、楽器の基本的なトレーニングとなった。彼はよく私に言ったものだよ、「テクニックこそが、最も重要なものだ」と。
——さっき話にも出たように、あなた自身はそのコメントに異を唱えそうなのだけど。
RF:同意できない部分もあるが、それと同時に他の殆どの事に比べればテクニックというものの比重は大きい、という意味では同意できる。ただし、たいていの場合において私は「テクニック重視」というものを非難している。ドン・ストライクの元で2年レッスンを受け、その後程なくしてあるジャズ・ギタリストからのギター・レッスンを受けることにした。ドン・ストライクはあまりにもオールドファッションなスタイルで、彼の影響から抜け出すのに随分時間がかかってしまったんだ。だから今度は「ジャズ・ギター科」の単位が欲しくなった、というカンジだ。こういう言い方、好きだろう?
——我ながら馬鹿馬鹿しい、と思ってる?
RF:いやいや、違う。私は「ジャズ・ギタリストになろう」とも「クラシック・ギタリストになろう」とも「ロック・ギタリストになろう」とも、いずれも決して思ったことはない。私はそれらのイディオム(語彙)を全て複合したプレイヤーという存在でもない。私は、創造性に必要なものは、私自身から生まれるイディオムだ、と考えるのだ。私自身が演奏してハッピーだと思えるイディオム、だね。というのも、他のイディオムを使ったプレイでは、私は決してハッピーにはなれないのだから。
——ああ、やっぱりそう思うんだ。
RF:ああ。
——鍵盤のレッスンを受けた事は?
RF:ピアノ? ない。今から1年半くらい前にたった1度だけ、受けたことがあるが。
——どんなギタリストを良く聴いたりするの?
RF:えーと、私は決して「ギタリスト」の音楽を聴いたりしないんだ。なぜなら、まったく興味がないので。実際、ギターというのは非常に非力な楽器だ。アコースティック・ギターなんてのは、もう時代錯誤も甚だしい。ただしアコギには1つや2つ、どうしても魅力的なサウンドがあるのも事実だが。とはいえやはり「時代錯誤」だ。現代の音楽の編成にはまったくフィットさせることが出来ない。現代の音楽の編成、という意味ではエレキギターこそが唯一の「希望」なんだ。ギターという楽器が想像性豊かであり続けるための「希望」という意味だ。もちろん個人的な考えだが。
——ギターがあなたをそこまで魅了してしまうのは、何故なんだろう?
RF:いや、ギターに関して、何ら魅了なんてされてはいない。
——では何故、オーボエではなくてギターという楽器を選んだの?
RF:さっきも言ったように、理由なんてない。昔を振り返って、その時の生き方が見えて、実際の状況を確認して、望まざる方向に導かれたとかなんとか、そんなのはメロドラマ的に過ぎる。もしくは馬鹿にされてしかるべき考え方だ。その時その時で人々は何かによって確固たる状況に導かれるものであり、我々が最もすべきことというのは、その時正しいと思えた道、思えた方向を追いかけるだけだ。
——あなたはギターを弾くように、導かれた、と?
RF:時々思うんだが、人というのは得てして最悪の動機によって物事をなす生き物のようだ。例えば、もし君がヒーローになりたくて、ギターの演奏を選んだとする。その時君が私に言うであろうセリフは、私にとって全くもって意味をなさない言葉だろう。そんなことは誰にだって判る。しかし、私がさっき言ったように、私がもっとも酷い動機によって何か事を為すことがあったとすれば、他の誰かもそのシチュエーションにのめり込むことになるだろう。自らの動機を捨ててまで、ね。そしてその時その彼は気付くのだ。理由などどうあるかは関係なく、自分自身のモチベーションに基づいた行動こそが、自身を確固たるポジションに置いてくれることのできる唯一の理由なんだ、と。


※フリップ先生は47年生まれなので、50年代半ば、プレスリーのデビューをほぼリアルタイムで経験したことになります。動画はプレスリー初期音源の中でも最も有名な、サン・レコード録音の「MYSTERY TRAIN」で、もちろんギターはスコッティー・ムーア。実は同曲はヒドイ音質の音源が長々とCDに収録され続けていますが、是非このSP盤音源での収録をお願いしたいものです。
——クリムゾンは、シリアスなバンドだよね?
RF:私は一切シリアスに物事を捉えたりしない。
——いつもどんな音楽を聴いてるの?
RF:10歳とか11歳の頃、ロックンロールを聴き始めた。一番最初に私の心をつかんだのは、スコッティー・ムーアが演奏している初期のサン・レコードの音源だ。13歳になるころに、私がトラッドなジャズにのめり込んだ。そして15の頃には、モダン音楽/クラシック音楽にのめり込んだ。私がプロになる直前、ジミヘンやクラプトンの音楽も聴いてみた。ジミヘンの曲で、2〜3曲くらいは楽しめるものもあったよ。それほどロック色の濃い曲ではなく、スロウな曲だったと思うが。ただし私はそういう、後の人々が良く口にするような音楽的な意味では、ジミヘンやクラプトンからは影響を受けていない。私はジミヘンをギタリストだとは思ってない。私には、彼がそれほどギターの演奏に真剣に興味を持っていた、とはとても思えないのだ。彼は何か伝えたいことがある、というただのひとりの人間であって、そして実践し、ただそれを伝えた、というに過ぎない。クラプトンの場合は、私に言わせればもっともっと陳腐な存在だ。しかしながらクラプトンは、ジョン・メイオールと共に制作していた頃、彼の初期の物の中にはいくつかエキサイティングなものもある。『ジョン・メイオール・ブルース・ブレイカーズ(ウィズ・エリック・クラプトン)』、あのアルバムは本当に素晴らしい。クラプトンの演奏が特に素晴らしいんだ。クリームのライヴは、1度だけ見た事がある。こりゃ酷いな、と感じたね。クラプトンの仕事がどんどん退屈になっていったのは、あの瞬間以降のことだろうな。ジェフ・ベックのギター・プレイは賞賛に値する。なぜならとても楽しいから。多くのギタリストとか、もしくは「ポーズきめて、エゴ丸だしで、ロック・スターで、楽しませてやるぜ」とか言い出す輩は、今言ったようなどれかしらの一部に「パッケージ」されている。別に私はそれを卑下するつもりは全くない。楽しめる、エンジョイできる、エキサイトできる。だから私はジェフ・ベックには幸運がもたらされることを祈るよ。


(写真上)70年代クリムゾン在籍時のロバート・フリップの代名詞ともいえるレスポール・カスタムは59年製で、フロントのみゼブラ、他2ケがブラックボビンという3つのPAFを搭載。フリップは自身のブログではこれを72年に購入した、と発言していますが、69年7月のハイドパーク・コンサートの時点でこのギターを所持していることからも、おそらく勘違いではないかと思われます(多分下に掲載した2PUのLPCのことか、と)。59年LPCはロンドンのデンマーク・ストリートの楽器店にて購入してますが、その楽器店いわく、このギターはフリップが入手する以前はスモール・フェイセス時代のスティーヴ・マリオットが所有していたとのこと。

(写真下)また、72〜73年頃には2PU(ともにブラック・ボビン)でワッフルバック・チューナー仕様のレスポール・カスタムを使用したことも確認出来ますが、そちらはそのスペックから68年以降の再生産レスポール・カスタム(メイプル・トップ)であることが判ります。加えてフリップはもう1本3PUのレスポール・カスタムを所持していて、そちらは57年製。こちらはPUのカヴァーが外されておらず、ソロ作『エクスポージャー』以降の作品で使用されたもの。59年のカスタム、57年のカスタム、61年のストラト、ES345等は、フリップ本人によって08年6月に売却されています。

——キング・クリムゾンでは、どんなギターを使用してたの?
RF:レスポール。これは私が68年の12月(註:後に11月、と本人が訂正している)に購入したものだ。それまではギブソンのステレオ(ES-345)を使用していた。
——レスポールを選んだ理由は?
RF:あれはいいモノだ、と聞かされていたから。
——誰から聞いたの?
RF:皆、そう言ってたんだ。トレンド、だったんだろうね。だから私も「ああ判ったよ、試してみよう」となった。私は長い間フェンダーのギターが好きになれなかった。でもここ2〜3年前から、フェンダーも入手してる。投機目的でね。実際に今年から、試しに1本演奏するようにもなった。なかなか気に入ってるよ。レスポールに比べればよりコード演奏向きに特化してるとは思うが、やはりソロ・ノートという点ではレスポールに軍配が上がる。
——フェンダーの、どのギター?
RF:ストラト(註:フリップが所持したストラトは、61年製のスラブローズのストラトで、丁度この頃ジョン・ウェットンに一時期貸与されていたもの。オリジナルはサーフグリーンだったようだが、後にサーモンピンクにリフされている。80年代以降は、スタジオでもいくつかの録音で使用された、とのこと)。私が15歳のころ、親指の付け根をブリッジの上で支点として利用する、というスキルを習得してたのだが、今は親指の付け根の部分、それ自体を支点として使うようになった。
——演奏面で、フェンダーは使い勝手が大きく違う、と感じた?
RF:フェンダーのギターには(ギブソンのような)ブリッジ構造がないので、とても難しいと感じた。71年、今から2年ちょっと前の事だが、ブリッジから掌を浮かせて、今までとは違った右手のアプローチというものを研究するようになった。右手には一切干渉する箇所がない、という状態でね。手首は完全にギターの弦の上に浮いていて、各弦を横断するクロス・ピッキングというスキルにおいてはより容易になったと言える。しかしながら、私のプレイというものはそれだけで済むようなものではなく、まだまだ修行が必要となるだろう。完全に自分のものとし、それまでとの違いを明瞭化し、演奏力と完全に統合できるようになるまで、3年はかかるだろう。5年も経てば、流れるように流暢な演奏へと変わっていくだろう。私がテクニックというものに惹かれるのは、自己の可能性を広げるという意味で最もベーシックな部分だからだ。やってみて、すぐに「完璧にこれを習得しよう」と決心した。たまに自分でも自分の(左手の)親指がネックの真裏に位置していることに気付くのだが、これから習得しようというスキルのためにも、この場所は決してデメリットにはならないだろうと思う。故に、私の左手のポジションは、純粋にクラシック・ギターの奏法と極めて近いものだが、私の右手に関しては、完全にギターから浮いていて、何にも支えられていない。もちろんこれは、ギターをコントロールする、という指標に経って定めたものだ。
——他のギタリストで、そういうプレイ・フォームをしてる人って、誰かいる?


※ジョージ・ヴァン・エプス(1913-1998)は、ジャズ・ギターの世界に7弦ギターを持ち込んだ人で、7弦ギターのパイオニアと言われているギタリスト。フィンガーピッキングするので手首が浮いているのはある意味必然なのですが、彼の場合、使用しているギター(グレッチのVAN EPSモデル)にはフローティング・フォーク・ユニットというちょっと変わったパーツがついており、最初からブリッジミュートできない、という構造になっています。
RF:定かではないのだが、ジョージ・ヴァン・エプスはそういうスタイルだったと思う。私の言ったことを確認したいという人がいれば、「カルカッシ25の練習曲」を演ってみることだね。イギリスでそれをできたギター・プレイヤーは殆どいないが、クリス・スペディングはそれを試した事があるといってたな——全くマスターできなかったそうだが。まあ彼の場合は、そういう技術の習得に熱心になるというキャラクターではないから、諦めてしまったのだろう。彼にとっては「ギターなんて馬鹿げた楽器じゃねえか」という思いもあったのではないか。そういえば、以前ピーター・バートというギタリストがいた。確か彼は今学校の先生かなにかだったと思うのだが、いま彼はエセックスでギター・レッスンを開いてもいる。彼も私と同じくドン・ストライクの元でギターを学んだ人物なのだが、しかし彼はプロのギタリストにはなれず、私がドン・ストライクから学んだものと彼が学んだもので何が違うのかは全く判らない。彼も私も同じように、1〜2曲、ドン・ストライク作の曲の演奏方法を学んだだけなのだが。
——今ギターは何本持ってる?
RF:覚えてないな。
——(レスポールが)何年のモデルか、わかる?
RF:知らないな。私が使ってるレスポールは、シリアルに53と書いてある。53年製、の意味なのか?もっと若い時代のものだと思うが。
——何年製か、わからないの?
RF:さっきも言ったように、ナンバーは53とかなんとか書いてあるが(註:実際にプリントされてたシリアルは「9 0993」で、59年製)。いずれにせよ、ギブソンの初期のギターで、50年代のものであるのは間違いない。ギブソンのステレオ(ES345)は63年頃の製造。フェンダーのギターは1本が66年頃のもので、もう1本63年頃のモノもある。アコギでは(ギブソンの)J-45を持ってるが、いつの製造なのかはまったく判らない。ヤマハのアコギも——たしかヤマハの最も高級なモデルだったと思うが——それは私のギタープレイのファンだという人から貰ったものだ。戦前のアコギ、同じく戦前のギブソンのテナーギターも持っている。誰かから譲り受けた、酷い品質のソリッド・ギターなんか持っている。
——フェンダーの、正確な年代は判らない?
RF:長らくフェンダーのことが大嫌いだったので。フェンダーのギターを買ってみたのもここ2〜3年という最近の話で、使ってみたのも最近の話だし、もともと投機のつもりで買ってみたものだし。本気でストラトに取り組んでみたのは今年の話だ。まあ気に入ってるよ。レスポールよりもコード奏法向き。レスポールはソロ・ノート向き。


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