12.09.2011

Marshall Supa Fuzz (part.2)


 以前こちらのポストでマーシャルのSUPA FUZZについて書いた事がありますが、その続編、というか、新たにわかったこととか追加したい要素もあるので、書き加えることにしたいと思います。

 まずはその出自、に関してです。SOLA SOUNDのOEMを受けてマーシャルからこのファズが出たのは1967年、ということは変わりませんが、実はその前段階、つまり企画・検討段階があった、という話を聞きました。
 SUPA FUZZの中身はTONE BENDER MK2回路だ、というのはご承知のことと思いますが、実際にマーシャル・ブランド用にファズを企画したのはその前年、1966年のことでした。同年にはSOLA SOUNDが製造したVOXのPROFESSIONAL MK2があったり、ROTOSOUNDのFUZZがあったりしたので、同時期に計画した、というのは納得の話ではあります。

 しかし、マーシャルSUPA FUZZの場合は、他社へのOEM製品とはちょっとだけ事情が違ったようです。実は1966年に最初にマーシャル社向けのファズを計画したとき、その回路は「MK1」回路だった、ということです。これはゲイリー・ハースト本人がその中身をデザインして(正確にいえば、過去にデザインしたものを流用して、ということになりますが)、それを転用したということです。ただし、そのTONE回路に関しては(オリジナルのMK1と比べると)若干の修正が施された回路、とのことなんですが。

 なんで今さらこれが判ったかといえば、ゲイリー・ハースト本人がその試作品SUPA FUZZ(MK1バージョン)を作ったことがある、と認めていること。それと、その試作品を今所持している方が実際にいるから、というワケなんですね。ゲイリー・ハーストいわく「試作品は2〜3ケだけ作った」とのこと。ほえー、そんなのが現存する、ということがビックリですね。なんとかその写真を入手できないか、と画策してるのですが、現時点ではまだ実現できていません。もし入手できたら勿論このブログで公開するつもりですが。

 さて、以前も「いろんなバリエーションのマーシャルSUPA FUZZ」の写真を掲載したことがありますが、簡単にまとめれば同モデルは以下のように分類することができます。外観で分ければ 

 1. シャキっと角張った筐体
 2. 少し丸みを帯びた筐体
 3. 丸みを帯びて、ロゴが浮き彫りの筐体

の3種類です。実は外観だけではなく、中身、その回路基板でも分類することができます。

 A. 蛇の目基板のもの
 B. プリント基板で茶色いボードのもの
 C. プリント基板で白いボードのもの

の3種です。ただし上記の分類は、正確に年代でクッキリと境界線があるわけではないので、1Aというパターンもあれば、1Bというパターンもあるわけですね。以前のページで載せたマーシャルSUPA FUZZの写真は2Bというパターンに該当するブツになりますが、今回上に掲載した「浮き彫りロゴ」で「白い回路基板」のブツは3Cのパターンに該当する、ということになります。
 左に載せた広告は1969年イギリスのROSE MORRIS(楽器店)が出したマーシャル製品の広告ですが、こちらに載っているマーシャルSUPA FUZZは2Aか2B、ということになりますね。
 マーシャルSUPA FUZZの回路基板は、上記の分類によって設置の向き(角度)も変わっています。Aの時代のものはTONE BENDER MK2同様にトランジスタが手前(裏蓋を取ったときに見える向き)を向いていますが、Bの時代になると逆になり、プリント面が手前になります。また、Bの時代の途中から縦に(ナナメに突き刺すような角度で)設置されるようになり、Cの時代のモノは全てそれに該当します。

 で、右に写真を載せたオンボロのこのブツは分類でいうところの1Bに相当するモノになります。これは何かといいますと、ザ・フーのピート・タウンゼンドが1967年に実際に使ったマーシャルSUPA FUZZそのもの、の写真です。なんでこんな写真が今あるのかといいますと、今某所でこのブツは売りに出されているからです(ただし値段はASKなので、想像もつきませんけど)。

 左のモノクロ写真は67年8月25日のザ・フーのステージ写真、だそうです。アンプの前に鎮座しているマーシャルSUPA FUZZが確認できますね。68年になると、ピートはこれに変えてダラスアービターFUZZ FACEを使うようになるので、実質的には1年とかそんな程度しか使ってないハズですが、さすが現物を見るとオオ!と盛り上がってしまいますね(笑)。
 このSUPA FUZZは、1973年にザ・フーのローディーに渡されたもの、とのことです。完全な余談ですが、そのローディーさんは「ホンの僅かの現金と、このペダルがその日のギャラだった。ただしこのファズは、貰った時には壊れていて音が出なかった」とのことです。なんか、ちょっと可哀想、ですよね(笑)。



 追記です。上記ポストをアップしたところ、早速海外のコレクターさんから連絡が来ました。嬉しいですねえ。D.A.M.フォーラムの常連さんで、上に書いた1966年製マーシャルSUPA FUZZ MK1プロトタイプを実際にお持ちの方です。早速写真の使用許諾を頂いたので、ここに掲載しますね。ご覧のように、筐体はSUPA FUZZ初期の「シャキっとエッジのたった」筐体ですが、その中でもさらに「2つのツマミが中央に寄っているモノ」は最も初期のブツにみられる筐体です。ちなみにD.A.M.フォーラムの検証によれば、SUPA FUZZの「MK1回路」を持ったプロトタイプは合計4つだそうで、現在そのすべてが所持者が確認されています。



 それから、こちらに動画を1本張りました。実際にこのプロトタイプの音が聞けます。回路がMK1だ、とはいえ、見た目は勿論オリジナルの(金色の)TONE BENDER MK1とは配線方法が異なり、基板も蛇の目なのでパっと見ではわからないですが、回路構成、抵抗その他を追っていくとMK1だということがわかります。何より、その音はMK2回路とは結構違っていて、MK1タイプ特有の中域がグワワッと盛り上がる歪みですよね。ただし、抵抗値の一部が(オリジナルMK1に比べると)変更されていて、「FILTER」つまみはオリジナルのTONE BENDER MK1よりもよりスムースに効く、という変更がなされています。使われているトランジスタは3つすべて英国ムラード製ブラックキャップOC75です。

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