3.18.2010
Marshall Supa Fuzz (1967-)
まだPROFESSIONAL MK2のお話が続きます。66年以降、前述したVOX/JMIの例のように、ソーラー・サウンド社はゲイリー・ハーストが開発したTONE BENDERを、他社のために製造し、OEM提供するようになります。その中でもこれまでのTONE BENDERの中でもかなり大きな成功を収めたものに、マーシャルSUPA FUZZがあります。
マーシャルの為にソーラー・サウンドがOEMを始めたのは1967年とのことなので、VOXなどのOEMよりは1年ほど後の話になります。ちなみにこの時ソーラー・サウンド社はファズだけではなくSUPA WAHという名前のワウもマーシャルにOEM提供しています。その新しいワウ&ファズは、共にシルバーグレイのハンマートーン塗装で、マッチングを考えたのか、その筐体も(それまでのTONE BENDERが持っていた宇宙船のような筐体ではなく)、新たに角張った筐体を用意しています。ワウに関してはここで詳しくは触れませんが、その中身はソーラー・サウンド(後にカラーサウンド・ブランドになっても同じ)のワウと、コンデンサもインダクタもトランジスタも基盤も全く同じものでした。
そして、当然ながらマーシャルに提供されたファズSUPA FUZZも、その中身はソーラーサウンド製PROFESSIONAL MK2と同じものです。そういうわけで、TONE BENDERというファズはMK1からMK1.5の時代(1965年夏から1966年春まで)はソーラーサウンドという1つのブランドのみでの商品展開でしたが、66年中頃のこのPROFESSIONAL MK2というモデル以降は、多くの企業/ブランドによってそれぞれ展開していくことになります。
SUPA FUZZは1970年くらいまで、おおよそ3年ほど販売されていたようなので、細かな抵抗等のパーツ・チェンジはもちろんあるのですが、基本的にはトランジスタはOC75の3つ使い、ということもわかっています。もしかしたらオリジナルで製造されたMK2関連商品のなかでは、最も最近まで作られたものはこのSUPA FUZZかもしれませんね。
SUPA FUZZの筐体は、ややスリムで段差のついた筐体ですが、時期によって細かく筐体のデザイン等は変更されています。下にその写真を掲載しましたが(おそらくこれで全部だろうとは思うのですが)ビミョーに小さな、でも結構多くの違いをそれぞれに発見することができますね。青いSUPA FUZZなんてのがあったとは、この写真を見るまでは当方もまったく知りませんでした。
この写真は、左から順に発売順に並んでいるもの、と思われるのですが、左の2ケは筐体がやや幅広く、エッジに斜めの面取りが直線的に入っていますね。ロゴはマーシャルのロゴが筆記体、モデル名が太い文字で入っています。実はこの2ケはポットの配置位置が異なっています(左にあるほうが間隔が狭い)。真ん中の2ケは全体に丸みを帯びた筐体に変更になった後のものです。ロゴ・ラベルのデザインは、マーシャルの文字が太く、モデル名が細い筆記体になってますね。そして右の2ケは、筐体のシェイプ自体はかわりませんが、ご覧のように青やら黒やらというカラーがついています。そして青い方はロゴはプリントだった(ただし、既にはがれてしまっている)のですが、その後はロゴがプリントではなく筐体にそのまま浮き彫りで彫り込んである、というものに変更になります。更にこの時期から、FILTER(他のTONE BENDERでいうATTACKノブ。通常でいうとFUZZノブですね)とVOLUMEのノブの位置が左右逆になっています。写真にはありませんが、この時期のSUPA FUZZにももちろんシルバー・グレイのモデルもあります。
マーシャルSUPA FUZZは前述したように、ザ・フーのピート・タウンゼンドが使用したってことがわかっていますが(彼にとってはTONE BENDER MK1、ユニヴォックスSUPER FUZZ、ダラス・アービターFUZZ FACEに続くファズがこのマーシャルSUPA FUZZだったそうです)、個人的に興味深いのは、イギー&ザ・ストゥージズのギタリスト、ジェイムス・ウィリアムソンがこのファズを使っていた、ということです。名作の誉れ高い73年作品「RAW POWER」の裏ジャケには、たしかに(解像度荒いのでわかりにくいですが)ステージ上で足下にこのSUPA FUZZがおいてあることが確認できます。
以上、まとめると「ソーラー・サウンドの自社ブランド」「初期VOXブランド」「マーシャル・ブランド」から発売された3種が一般に“MK2”と呼ばれるTONE BENDER、ということが出来ると思います。このうち、初期の英国製VOXモノは実際には殆ど製造/流通されておらず、現時点でも発見・入手ともに極めて困難な状況ではあります。
余談ですが、数年前にイギリスのJMIが復刻したTONE BENDER MK2のデザインは、VOX TONE BENDER PROFESSIONAL MK2(66年製)を模したものでしたが、そのオリジナルを知っている人は復刻当時はほとんどいなかったと思われます。その推測を裏付けるひとつのエピソードとしては、JMIがそのMK2を復刻した一番最初の頃は、回路がMK2とは全然違うものだったからです。現在はゲルマ3石(OC75もしくはOC81D)のオリジナル回路に修正されたものが出回っています。
さらに余談を加えると、JMIの復刻より更にさかのぼること10数年、イギリスのソーラー・サウンド社も各種TONE BENDERを日本製造で復刻したことがありますが(90年代中頃の話です。SOUND CITY JAPANのロゴシールが張ってあるものをご記憶の方も多いと思われます)、彼らもPROFESSIONAL MK2を復刻した際にはオリジナルとは違う回路を使用して復刻した(AC125、もしくはAC128をそれぞれ2ケ、という回路)ために、当時のファズ・マニアは少なからず混乱したようです。D.A.Mのデイヴィッド・メイン氏も「むしろこれはMK1.5に近かった」と指摘してますが、その当時はTONE BENDERに関する資料も今ほどはなかったと思われるので、致し方ない部分ではありますが。(この項つづく)
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