3.15.2010
Tone Bender Professional MK2 (1966)
TONE BENDERという名のファズは、1966年の春以降になると、枝分かれして発展し、多岐にわたって商品展開されていくことになります。つまり様々な会社が様々な回路で様々なTONE BENDERを手がけるようになるのはここから、ということになります。
まず、前作MK1.5に引き継ぐ形で、ソーラー・サウンド社は自らのブランド・ネームのもとにTONE BENDER PROFESSIONAL MK2 を発売します。MK1.5と同じ形の筐体を使用しつつも、回路はムラード製OC75を3ケ使用したものに変更されました。回路的には、これはMK1.5回路(ゲルマ・トランジスタ2石)の前段に、増幅用のトランジスタを1ケ追加したもので、ゲイリー・ハーストによれば、このアップデートは「より太くてサスティンのあるサウンドを欲したミュージシャン達の要望によるもの」とのこと。つまり、このMK2の回路をデザインしたのは、これまで同様ゲイリー・ハーストでした。
計3ケのゲルマニウム・トランジスタ構成に「戻った」この時期のTONE BENDERですが、野太い音かつ深い歪みと、ヴォリュームに敏感に反応するゲイン・コントロール、その2つが特徴的です。ただし、デイヴィッド・メイン氏(D.A.M)いわく「MK2は製造が難しい機種で、しかも温度の変化にとても敏感な回路とパーツ構成」とのこと。個体差も激しく、なかなか一言でサウンドの特徴を列記できないことをご了解いただきたいと思います。確かに回路に関しては、当方も関わったMANLAY SOUNDのクローン・ペダル「SUPER BENDER」を製作した際に、「なかなかウマくいかない」という、同じ苦労(笑)を経験しています。
このソーラー・サウンド製PROFESSIONAL MK2はジミー・ペイジがヤードバーズ〜レッド・ツェッペリン初期まで使用したことで、ギター・ファンにはなじみ深いモデルですよね。やはりどうしても、MK2のファズにはテレキャスを刺して「HOW MANY MORE TIMES」をギュワギュワーンとやりたくなってしまうのが人の情、というものかと思われます(笑)。ちなみに、ジミー・ペイジは66年以降、ヤードバーズ〜ツェッペリン初期までこのPROFESSIONAL MK2を使用していますが、ZEP結成以降、人前でコレを使ったのは1971年8月8日モントルーでのライヴでのみ、なのだそうです。
ジミー・ペイジ所有のPROFESSIONAL MK2はロジャー・メイヤーによって(時期は不明ながら)改造が施されており、アウトプットバッファーをかませていること、更にミッドレンジをブースト(これは抵抗値の変更なのか、それともミッドブースト回路を付加したものかは定かではありません)したものになっている、ということが現在わかっています。ジミー・ペイジに関しては当方よりその詳細を詳しい方が世界中に沢山いらっしゃると思うので、ここでは以上に留めておきます。
そしてこの頃、VOXブランドを擁するJMI社も同じくVOX TONE BENDER PROFESSIONAL MK2と名付けられたファズ・ペダルの発売を開始します。ソーラー・サウンド製とほぼ同じグレー・ハマートーンの筐体で、トップ面に大きく「VOX」とプリントされたこのペダルは(註;写真右下のものは極初期のプロトタイプ、とされるVOX TONE BENDERで、こちらはソーラーサウンド製と全く同じラベルのプリント、更に小さくVOXとプリントが加えられたものであることがおわかりいただけると思います)、中身/回路も上記MK2と全く同じものです。ただし、これらは個体によってトランジスタにはOC75ではなくOC81Dが使用されたことも確認されています。これはVOX/JMI社からのオーダーによる、ソーラー・サウンド社のOEM製造商品でした。
TONE BENDERと言えばVOXのブランド名をすぐに思い出す方も多いとは思われますが、実はVOX/JMI社がTONE BENDERに関わるようになったのはこの頃(66年中頃)以降のことです。そしてそのVOXブランドが冠せられた最初のTONE BENDERは、ちまたに多く流通しているイタリア製(その詳細は後述させていただきます)のものではなく、イギリス/ソーラーサウンド製でした。回路も上述したような、OC75が3ケ(もしくはOC81Dが3ケ)の、MK2回路だったのです。ここまでが、1966年の中頃までのTONE BENDERの製品構成の流れになります。(この項続く)
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