4.03.2010

Gary Hurst Interview part 6

 インタビューの最終回です。現在ゲイリー・ハースト氏はイギリスのJMIブランドがガンガン復刻している各種ファズの復刻品に協力していることもあり、ここではその辺を中心に伺っています。
——あなたが60年代にデザインした各種TONE BENDERは、未だにギタリストに愛されて止まないわけですが、TONE BENDERに何か特別なポイントがあるとすれば、それは何だと思いますか?
G:どうだろうな。世界中のコレクター達が、オリジナルのTONE BENDERを探し続けているよね。だから、私自身で、全く同じ回路で、当時と同じものを作った。それがJMIのTONE BENDERのリイシュー・ペダルだ。だからどれも限定品なんだ。今の時代にあえてリイシューするなら、可能な限りオリジナルに近くないと意味がない。外観、つまり筐体から、回路、パーツの全てに至るまで、ね。ただし、古いトランジスタを回路に使えば、どうしてもオリジナルにはなかったハズの余計なノイズが生まれてしまう。だから昔やった時よりも難しい作業になるんだけどね。
——今、あなたは近年復活したJMIブランドのエフェクターに多く関わっていますが、その経緯は?
G:現JMIのリック・ハリソンは、もう何十年来にもなる私の友人だ。彼の息子ジャスティン(現在MUSIC GROUND店主/写真上の右側、黒Tのクールガイが彼)もね。彼らから「戻ってこいよ、また一緒に仕事しようぜ」と何年にもわたって頼み込まれてね(笑)。彼らには「またオリジナルのTONE BENDERを発売したい」というアイデアがあった。それでまたデンマーク・ストリートのバックルームの世界に舞い戻ったわけだ(笑)。TONE BENDER以外にも、私が昔デザインしたペダルがいくつかJMIから近日中に復刻されることになっている。
——JMI版TONE BENDER MK1には、今となっては極めてレアなのTI社製2G381(写真は最近当方が入手したNOSパーツ)が使用されていてビックリしたんですが、やはり重要なパーツなのでしょうか?
G:なぜ2G381を使用したかといえば、オリジナルに忠実に作ったから、それだけだ。勿論バイアスを正確に合わせたトランジスタであれば、他にもベターな選択肢が沢山あるのは知っているが、JMIのMK1に関しては「本物のMK1」であることが必要だった、ということだね。
——JMIからはMK1.5、MK2のみならず、RANGEMASTER(オリジナルはダラス社)やBUZZAROUND(オリジナルはBURNS社。ロバート・フリップがキング・クリムゾン「21ST CENTURY SCHIZOID MAN」で使用したことで有名)もリイシューされていますが、それらの回路もあなたが手がけたのでしょうか?
G:いや、私がやっているのはTONE BENDERの回路だけだ。MK1、MK1.5、それから60年代や70年代に私が開発したファズだね。そういえば、70年代に私が開発したDOUBLERというファズ・ペダルがあるんだが(オリジナルはCBSアービター社)、これはTONE BENDERとは全くカラーの違うオクターヴ・ファズ・サウンドを持つんだけど、これも近日中にJMIからリイシューすることになってる。雑誌のスペースを開けて、待っててくれよ(笑)。
 JMIが復刻したTONE BENDERに関しては、後ほど別項にて紹介したいと思っているのですが、ここではTONE BENDER以外のJMI復刻ファズを簡単におさらいしようと思います。
 まず、BUZZAROUNDは上記したようにロバート・フリップが使用した、ということで有名なファズで、デイヴィッド・メイン率いるD.A.Mからもこのクローン・ペダルFUZZAROUNDが限定で製作発売されたこともあります。オリジナルは極めてレアな個体なので、待望の復刻、ということにはなるのですが、掲載したオリジナルと寸分違わぬデザインで復刻されています。トランジスタにはNKT213というゲルマ・トランジスタが3ケ使用されています。

 それから、ゲイリー・ハーストが70年代に開発し、CBSアービター社から当時発売された英国産オクターブ・ファズ、DOUBLER。こちらも現在現物を拝むことは不可能に近いレア・アイテムですが、まだJMIから正式なリイシューのアナウンスはされていません。ノーマル・ファズとオクターブ・ファズ、それぞれ独立したフット・スイッチが搭載されている、ちょっと変わったモデルですね。

 そしておそらくファズ・マニアが一番驚いたのが、トレブル・ブースターの歴史的名品、と言っても過言ではないダラス社のRANGEMASTERの復刻品。実はこれ以前にJMIはRANGEMASTER回路をTONE BENDERのグレー・ハンマートーン筐体に収めた、というなんだかよくわからない(笑)トレブルブースターを発売していましたが、あのダラスの四角い筐体まで完全復刻して現在限定100ケのみ、発売されています(MUSIC GROUNDのお店までわざわざこの復刻版を買いにきたゲイリー・ムーアの可愛らしい写真が、今JMIのHPに掲載されていますね。笑)。実は今当方の手元にはオリジナルのRANGEMASTERがあるので、どこかでヒマがあれば、復刻品も入手し比較検証しようかな、とも思っています。
 インタビューは以上になりますが、何度か彼とやり取りした中でキツーく言われたことがあります。それは「TONE BENDERは2ワードだからな。よく繋げて(1ワードで)書く困った野郎がいるんだが、気をつけろよ」とのことです。コマケエなあ(笑)とも思いましたが、オリジネイターがそう仰るのだから、勿論従います。
 実はつい先日も別な用件で彼の話を聞きたいことがあったのですが「ん?わかったよ。じゃあドイツのミュージック・メッセ(3月末・フランクフルトで開催)に来い」とか言われてしまいました。そんなお金も時間も無かったのでその申し出は丁寧にお断りせざるを得なかったのですが、別な機会があれば是非お会いしてみたいです。

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