9.26.2010

Tone Bender Professional MK2 (Reissue) Part.2

 
 90年代にSOLA SOUNDが復刻発売したTONE BENDER PROFESSIONAL MK2で、トランジスタにAC125を2ケ、もしくはAF127を2ケ使用したものを前回紹介しましたが、この復刻版が「オリジナルのSOLA SOUNDブランドから」「オリジナルと同じ筐体で」復刻されたため、当方を含めて喜んだユーザーは間違いなく沢山いるハズなのですが、オリジナルとは中身が違う、ということに気づいた人は当時は殆どいなかったと思われます。近年ネットの普及により圧倒的な情報が行き交うに伴って、やっと世間に知れ渡った事実なのだろうと思います。

 それを鮮明に当初から指摘したのは、カリスマ・ファズ・ビルダーとして名高いD.A.Mのデイヴィッド・メイン氏でした。SOLA SOUNDの復刻品の回路はゲルマ2石のMK1.5回路であり、筐体にプリントされた「MK2」の文字と相反する、というのはいかがなものか、というワケですよね。

 余談になりますが、それがいいか悪いか、ということと、いいファズかどうか、というのは全く別の話です。ファズ・ピュアリストこそ至高、というのであれば、皆オリジナルの(しかも回路がボロボロになった)50年前のファズを手にしないといけない、という道理になりますしね。そんな変な理論があってはたまりません。

 閑話休題。おそらく2000年を越えてから、の製造だと記憶していますが、SOLA SOUNDのTONE BENDER PROFESSIONAL MK2リイシューは、筐体はそのままに、更に回路を変更しました。写真にもあるように、回路がオリジナルのMK2回路、つまり、ゲルマ・トランジスタ1ケを用いた最初のゲイン・ステージがあって、その後にゲルマ2ケのボルテージ・フィードバック回路につながる、というものになりました。基盤の構成や使用パーツも変更されたことも、この写真から同時に確認できますね(ただし、この写真からはトランジスタの型番まではわかりませんでした。情報をお持ちの方がいらっしゃれば、ご教示いただけると幸いです)。他のSOLA SOUND製品(POWER BOOSTや1 KNOB FUZZ等)同様のポット、キャパシタが使用されています。このあたりから、製造もイギリス製になったハズです。

 そのMK2回路に戻されたイギリス製MK2リイシュー(我ながら、なんだかメンドクセー表記だなあ、とは思いますが、ご容赦願います。笑)がどれほど出回ったかは勿論わからないのですが、やや時を経て2009年、SOLA SOUNDはこのMK2リイシューの究極版を発売することになります。

 まず、SOLA SOUND/MACARI'SのHPからの引用です。
 昨年、最も有名な我々の製品であるTONE BENER PROFESSIONAL MK2の復刻を決めました。イギリスで最良の筐体製造工場を見つけたのち、我々はイギリス随一のブティック・ペダル・ビルダーであるデイヴィッド・メインにコンタクトをとりました。

 この辺りの事情はD.A.MのHPにもちょっとだけあったので、それを以下に引用します(意訳になります)。
 3年ほど前(註:2006年、ということになりますね)、ANTHONY MACARIからCOLORSOUNDのためにペダルを作ってくれないか、という要請を受けた。名誉なことだ。喜んで彼らのために、TONE BENDER PROFESSIONAL MK2を作ることにした。いまさらこのペダルのことをクドクドと説明する必要もないだろう。可能な限り、オリジナルに忠実にするよう心がけた。2004年にD.A.Mから「PROFESSIONAL MK2」を発売して以来、5年以上をかけてMK2を研究しまくった私(デイヴィッド)にとって、究極の製品、というわけだ。
 
 愛するTONE BENDERを研究しまくったおかげで、一介のファズ・レプリカ・ビルダーが本家のオフィシャル・リリースに関与する名誉を得た、というちょっとしたブリティッシュ・ドリームなわけですね。この話が実現して以降、D.A.Mブランドの製品からはPROFESSIONAL MK2レプリカは廃盤になっています。

 まったく、このデイヴィッドさんはTONE BENDERに関しては恐ろしいほどに執心する方で、だからこそ当方はそんなアンチャンを尊敬しちゃったりしてるわけですけど(笑)。実は2007年以来、TONE BENDERというファズの製品名に関しては、このデイヴィド・メイン個人が登録商標を持っています。ゲイリー・ハーストでもなく、JMIでもなく、SOLA SOUND/COLORSOUNDでもなく、デイヴィッド個人が、です。
 話が脱線しますが、1990年代に「TONE BENDER」の登録商標を持っていたのは、日本のコルグ社でした。コルグはVOXブランドでTONE BENDER(そのペダルに関しては改めて紹介します)を製造していた時期なので、その関連で商標を押さえたのでしょうが、今はあのD.A.Mのデイヴィッドが持ってる、というあたりがスゲエですね。(追記:2011年に、イギリスにおけるTONE BENDERの商標登録の権利は、SOLA SOUNDのブランドを保有するMACARI'S社に移譲されました)

 さてさて、ではその究極かつ最新版、ということになるSOLA SOUNDから発売されたデイヴィッド・メイン製作によるTONE BENDER MK2を紹介したい・・・のですが、実機がまだ届いておりません。以下、情報と写真はD.A.MやSOLA SOUNDの情報だけをもとに書きます。

 まず、デイヴィッド・メイン氏は「純粋なビルダーとしてだけ関与したかった」ということで、回路のみ製作し、組み込みまでを担当した模様です。基盤構成は、以前D.A.MからリリースされたPROFESSIONAL MK2レプリカ(これも、詳細は後ほど改めて紹介します)と同じ構成で、ゲルマニウム・トランジスタにはムラード製のOC84が3ケ使用されています。
 現在選べる中では最良のもの、ということでこのOC84を選んだそうですが、それでも総製造数は100ケのみ、とのこと。外観は90年代以来のSOLA SOUNDの復刻版そのままですが、D.A.M製作の究極バージョンは、写真にもあるように、裏蓋にD.A.Mのステッカーが張られています。

 さきほど「まだ届いていない」と書きましたが、実は昨年、そのD.A.M製MK2の情報を(シンコーミュージックのTHE EFFECTOR BOOKで)読んで、速攻でSOLA SOUND/MACARI'Sにオーダーしたのですが、社長のANTHONY MACARI氏から「オーケー、わかったよ。今ウェイティング・リストにお前の名前も載せた。うまくいけば1年くらいで届くんじゃないかな?」などというノンキな返事が帰ってきました(笑)。
 そして1年以上が経過し、まだこちらの手元には届いておりません(笑)。稀にeBayなんかで誰かが中古品を売りに出したりする度に、入札しようかなー、なんて衝動に駆られるんですが、一応オーダーしちゃったこともあり(正直に書けば、中古品でさえ10万円くらいの値段が平気でつくので、値段の問題もあり)、今は入札を躊躇しております。頼むよ、はやく俺のも作ってくれよーデヴィちゃんよお・・・。
 

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