9.24.2010

Tone Bender Professional MK2 (Reissue) Part.1


 90年代に英国のSOLA SOUND社は、60年代に人気を博したTONE BENDERを復刻しました。グレイ・ハンマートーンの馬鹿デカい筐体の復活。これだけでもマニアはワクワクしますよね。正確な発売時期は不明なんですが、90年代初めのころには既にあったような記憶があります。その復刻版TONE BENDERを見ていきたいと思います。
 ここに2台の写真を掲載していますが、それは「中身が違うから」なんです。実は、90年代に復刻されたTONE BENDERは他にもいくつかの細かいスペック違いが確認されており、少しずつ改良を経ていった、というその製作過程が伺われます。

 ブランドとしてはイギリスのSOLA SOUND(正確に記載するならば、会社の名前はMACARI'S MUSICAL INSTRUMENTSという社名で、これは2人の創業者LARRY MACARI & JOE MACARIが会社を始めた頃である1962年から現在まで変わっていないハズです。現在は創業者のご子息であるANTHONY MACARI氏らが引き続き経営しています)からの復刻なのですが、多くの方がご存知のように、この復刻版にはSOUND CITY JAPANというステッカーが張ってあり、日本でアセンブリを組んでいたことがわかっています(ただし、詳細は後述しますが全部ではありません)。

 正直申せば、SOUND CITY JAPANがどういった組織なのかは当方には詳しくわからないのですが、SOUND CITYというロンドンにあった楽器屋(この楽器屋の経営のボスは、上記したMACARI兄弟でした。その名のついたギター・アンプで日本でも有名かと思います)から社名をとったのかなあ、とは思います。正式な日本法人だったのか、イギリスでそういう名前のブランドを作る事にしたのか、そういった詳細もあまり判っていません。

 ちょっと前に、イギリスのANTHONY MACARIにその辺をメールで聞いたことがあるのですが、あまり正確な返答はいただけませんでした。「んー、たしかに今は日本ではウチの製品は取り扱いがないね」みたいな、関係ない返事が帰ってくるばかりで(笑)。

 現在のSOLA SOUNDに関しては別の機会をもうけますが、早速復刻版TONE BENDERを検証します。まず、これまでも本サイトでは何度も触れていますが、外観は1966年のTONE BENDER PROFESSIONAL MK2とほぼ完璧に同じです。ただし、中身は全く違います。ファズとしての回路は、TONE BENDER MK1.5を踏襲したものになっています。つまり、ゲルマニウム・トランジスタ2石を用いたヴォルテージ・フィードバック回路、というヤツです。

 まず最初のもの、黒い電池が内蔵されている方を見ると、ゲルマニウム・トランジスタはAC125を2ケ使用しています。パーツの構成はMK1.5回路と同様で、必要最小限の計9ケのパーツが基盤上に並んでいることがわかります。

 先に書いてしまいますが、少なくとも当方が所有している個体に関しては、このAC125を使用したTONE BENDER復刻版はあまり音がよろしくありません。おそらくトランジスタの個体差からくるものと思われますが、ギターのボリュームにあまり反応しないばかりか、ゲインもサスティンもあまり稼げません。ボソボソとした荒い歪みですが、ゲート掛かり過ぎでちょっと使えませんね。随分長い事このファズを所有していますが、毎回音を確認するたびに「アレ?電池がないのかな?」と誤解するほどです。毎回電池を入れ替えているのに(笑)。なので、近いうちに中身をゴッソリ入れ替えてやろう、なんて画策しています。

 さて、もうひとつの復刻版TONE BENDERですが、緑の電池が入った方を参照願います。こちらも回路は基本的に上掲したものと同じく、66年のMK1.5回路を踏襲しています。

 が、写真でも確認できるように、まず使用されたトランジスタが違います。こちらはAF127というゲルマニウム・トランジスタが使用されていますね。AF127はSFT307の互換パーツでもあるそうですので、ファズの歪み用パーツとしてそれほど違いがあるモノではないと考えられます。

 しかし、さらに違うポイントがあります。それも写真で確認できると思いますが、前述した通りのMK1.5回路で使用される最低限の9ケのパーツに加えて、緑色のセラコンが2ケ回路に加えられていることです。

 以前回路比較の項で触れたことがありますが、MK1.5回路は同66年にイタリア製VOX TONE BENDERとして生まれ変わったという経緯をもった回路ですが、イタリア製のソレは(このAF127版のように)追加のキャパシタをブっ込んだりしたものでもありました。

 これは完全に推測の域を出ませんが、もしかしたら90年代の復刻版は、オリジナルのSOLA SOUND TONE BENDER MK1.5でもなく、またオリジナルのTONE BENDER PROFESSIONAL MK2でもなく、イタリア製VOX TONE BENDERのサウンドを復刻しよう、と考えたのかもしれませんね。

 音に関していえば、こちらのAF127を用いた復刻版は、まっとうなMK1.5サウンドを奏でています。(それほど出力や歪みがデカいわけではありませんが)ちゃんとゲインもサスティンも稼げますし、ギターのボリュームにも反応します。

 上記2ツの復刻版TONE BENDERは、それほど離れていない時期に製造されたものと推察できるのですが、この後、復刻版TONE BENDERはさらにさらに改良されていくことになります。
 まあそれも今から考えれば当然ではあります。「PROFESSIONAL MK2」とデカデカとうたっている「復刻品」なのに、中身は全然違うものなわけですから。その後の復刻版TONE BENDERに関しては次回にて触れたいと思います。(この項続く)
 

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