4.29.2010

circuit of MK1.5 / Fuzz Face / Vox Tone Bender


 TONE BENDERの歴史を振り返った際に頻繁に言われる事ですが、66年に短期間のみ発売された通称ソーラーサウンドTONE BENDER MK1.5の回路。これは後(66年末)に発売された、有名なアービターFUZZ FACEのソレとウリふたつで、MK1.5こそが(その後ロックの歴史に大きく関与することとなった)名器FUZZ FACEの母体となったファズである、という史実があります。
 たしかに回路は似ています。というか、同じじゃねえか、と思ったのは当然筆者だけではなく、D.A.Mのデヴィッド・メイン氏も、ゲイリー・ハースト氏も、世界中のファズ・マニア達なら誰でも同様だと思いますが、では実際どう似ているのか、実際に電気回路に詳しいMANLAY SOUNDのビルダーROMAN氏の考察を交えて回路図を比較しながら検証しようと思います。

 まずは前年に開発されたオリジナルTONE BENDER MK1回路をゲイリー・ハーストが「リファインした」という、66年製TONE BENDER MK1.5の回路です(ちなみに回路図はいずれも当方がおこしたもので、クリックにて拡大表示できます。他のモデルとの比較がしやすいように書き直してありますが、その中身にはトーゼン一切手を加えていません)。オリジナルのMK1.5のトランジスタはOC75が2ケ使用されています。
 ちなみにトランジスタのゲイン値ですが、D.A.Mのデヴィッドが所持機のMK1.5に搭載されたOC75の歪み値を計測したところ、Q1の位置にあるOC75のゲイン値は120前後、Q2の位置にあるOC75は90前後、と結構低い値であることがわかっています。2ケのゲルマ・トランジスタの組み合わせは、マッチングと言っても単純に同じ数値をたたき出したものを選別すれば良い、というわけではないので、こういう結果にも納得がいきますね。そういった事例はFUZZ FACE回路等を自作したことのある方なら多かれ少なかれ経験しているかもしれませんが。
 以前から何度か書いていますが、実際にはこの回路でOC75を使うのは(少なくとも経験上)かなり難しく、同じゲルマ・トランジスタでも他のものを使用したほうが結果的にいいことが多い、という事象は既に確認しています。

 そういう事象が66年当時すでに確認されていたかどうかは今ではわかる術もありませんが、アービター社がこの回路を使ってFUZZ FACEのサーキットを同じく66年に組んだ際には、トランジスタにはご存知のようにNKT275を使っています(これも良く知られていることですが、他にもSFT363EAC128といったゲルマ・トランジスタも当時使用されていた事がわかっています)。キャパシタに関しても、ご覧のように細かい抵抗値がいずれも若干違うわけですが、それでもやはり、こうやって見比べれば「同じじゃん」と思ってしまいますよね。
 ちなみに、オリジナルFUZZ FACEのアウトプットの位置にカマせてある0.1µFの抵抗ですが、「おそらくこれは何らかのミスで選ばれた/つけられたんじゃないか?本来0.01µFであるハズだ」というのがROMANの主張です。ちなみに、ネット上で発見できる殆どのFUZZ FACEゲルマ盤の回路図(例えば有名なサイトfuzzcentral等で見ることが出来る回路図)では、ほぼ全てここは「0.01µf」と訂正されていますが、他のサイトではここに挙げたものと同様0.1µfと記載されているものもあります。何せトランジスタから何から使用部品さえ違いまくってる60年代のFUZZ FACEのことですので今確実なことが言えた訳ではありませんが、どっちにしろ電気的には「0.1µf」は間違いであることは事実なわけで、FUZZ FACEの後のバージョンではここが(0.1µfでも0.01µfでもなく)0.047µFという数値のキャパシタに変更されたことが分かっています。

 そして、これは今まであまり語られる事の少なかった話ではあるのですが、VOXがイタリアのEME工場(後のJEN)に作らせたVOX TONE BENDER。これもMK1.5やFUZZ FACE同様に1966年に初めて製造されたものなわけですが、実はこの回路ももの凄くMK1.5とかFUZZ FACEのソレに酷似しています。イタリア製VOX TONE BENDERには若干の回路違いモデルがあるのですが(回路図上でピンクの文字になっている部分が、モデルによって違いがあったりする箇所です)、その辺は時期や行程によって区別されているわけではなく、モノによってあったりなかったり、というレベルのモディファイ、と言えると思います。

 それらの「個体によって違う」部分を除けば、これはもうMK1.5回路と同じジャン、というものなわけです。ゲイリー・ハーストは「イタリアのVOX TONE BENDERはイギリス(ソーラーサウンド製)TONE BENDER MK2の劣化コピーだ」などと言っていますが、この回路図を見ればイタリア版は明らかにMK1.5回路をコピーしたであろうことが伺えますよね。

 こうやって見比べてみれば、回路上だけの話ではありますが、ソーラーサウンド製MK1.5、アービター製FUZZ FACE、イタリア製VOX TONE BENDERは、いずれも2つのPNPゲルマニウム・トランジスタを用いた「ヴォルテージ・フィードバック回路」によるファズであり、理論上はいずれもかなり近い、1卵性とまでは言えないけれど、少なくとも2卵性双生児と呼べるほどには近しい存在のファズ・ペダルだということがお判りいただけると思います。

 現在スペイン・バルセロナのMANLAY SOUNDでは、既に発売されているMK1.5回路のTONE BENDERクローン「66 BENDER」に続いて、アービターFUZZ FACEのクローン・ペダル「BABY FACE」を製作中です。まだ完成には至っておりませんが、その製作途中で実感として判明した回路構成上の事実等もいろいろありましたので、その辺のことは次回、ROMAN GIL本人の弁を交えてご紹介したいと思います。
 

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