
これはABRAXAS SOUNDというイギリスのブランドが出した、TONE BENDER MK1のクローン・ペダルで、MK1 FUZZというそのマンマな名前のファズ・ペダルです。見るまでもなく、ゲイリー・ハーストが65年に10ケだけ作ったプロトタイプの木製ケースのTONE BENDER MK1を元に制作されたことがわかりますね。ただ、こちらのペダルは筐体にホワイト・アッシュ材を使用していて、フィニッシュはワックスのみ、と思われます。実はこのワックスがちょっと臭くて(笑)、当方の好みではなかったので、到着後すぐに手持ちのビーズワックス(オレンジ・オイル配合)で磨きなおしててしまいました。写真がちょっと「しっとりと」してるのはそのせいです。その点はご容赦ねがいます。


オリジナルMK1ではフットスイッチが配置された部分がカパッと外れて内部の電池を交換するようになっているのですが、このABRAXASのクローン・ペダルでは、背面(裏側)が全部パッカリと外れるようになっていて、実用という面ではこのほうが全然ラクチンですね。オリジナルのプロトタイプMK1は「板を組み合わせた」筐体ですが、こちらは「木材をくり抜いた」筐体です。



ペダル製作に従事するようになって、何週間か「どうやれば正確なボルテージを得られるか」でモンモンと悩んだけど、やっとウマくいったのがこれ(MK1 FUZZ)だ」とのこと。「ピッキングのアタックやノブで可変できるクランクの度合い」の調整は大変だった、とも言ってました。
さて、音に関してですが、大雑把に断言してしまえば、これはゲイリー・ハーストが開発したMK1サウンドとは違います。だからダメ、と言うつもりは全くなくて、むしろ逆に「これはもの凄くコントロールがしやすいMK1風ファズ」と言えるかと思います。
オリジナルMK1もそうですが、例えば我がMANLAY SOUNDの65 BENDERや、JMIが復刻したTONE BENDER MK1 REISSUE等も含め、MK1というペダルはもの凄く「大暴れ」する大音量ファズで、回路自体は単純なクセに扱いがヒジョーに難しい部類のペダルです。例えば出力は非常に大きく、またファズのツマミも9時以降に回せばいつもギンギンに歪む、ギター側のVOLコントロールにはあんまり反応しない、といった具合です。オリジナルの回路に従順に組めば、そういう「暴れ馬」ファズになるのが至極当然なのです。
おそらくビルダーのマーク・ハリソン氏は、その点を改良しようと思ったハズです(というか、メールでもその旨を伝えてきました)。出力はオリジナルより控えめに設定され、単純に言えば今のフツーのギター・エフェクターの標準的な音量に近い、と言えると思います。また、前述した内部トリム・ポットの設定によって歪み具合は調整できます。ですから、ギター側のVOLポットに追随するような(語弊を承知の上で言えばFUZZ FACE風なクランクを得ることが可能な)ファズになっています。ハリソン氏は「ピッキングのアタックとネイル(食い付き/日本ではバイト感、などとも言いますね)、クラリティー(透明度/これはクリスタルな、という意味ではなく、明確に効果がわかる、という意味です)に一番重点を置いた」と言ってるので、こういう形のサウンドになったと推測されます。歪みの度合いよりは、一番おいしいハーモニクスを得られるスイートスポットを重視した、とも言っていました。

マーク・ハリソン氏はこれに続けて、最近新たに「MK1のファズにトレブル・ブースター回路をくっつけたペダルを製作した」という話をしてくれました。3つのチキンヘッド・ノブを使い、フットスイッチを2ケ採用したのがそのペダル(上の写真がソレです)で、これもMK1 FUZZと同様に現在ABRAXAS SOUNDのブランドから発売されているそうです。
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