4.17.2010

JMI Tone Bender Reissue Models

 
  JMIといえば、これまでも何度も記しているように、VOXという有名なブランドを所持した会社として既に広く名が知れています。1956年、イギリスのケントという所でトーマス・ジェニングスさんという人が興した会社であり、一番最初はオルガンの製造会社でありました。64年にはVOXブランドの権利を売却し、68年にはトム・ジェニングス率いるJMIは正式に消滅しています。

 歴史の真ん中部分を、ここではゴッソリと省きます(笑)。現在、イギリス/ロンドンのデンマーク・ストリートにMUSIG GROUNDという楽器屋があります。正確に言えばこのお店はイギリスに沢山チェーン店を持ってるので、今ではロンドンはおろか世界中で有名な楽器屋さんではあります。1997年、MUSIC GROUNDオーナーであるリチャード・ハリソンとその息子ジャスティン・ハリソン等がJMIのトレードマークの権利を獲得しました。それまで既に所有していたHIWATT(これも英国を代表するアンプ・ブランドとして有名ですね)に続いて、JMIブランドの名の元で商品開発/発売することになりました。
 もちろんその歴史を振り返り、いにしえのVOX AC15やAC30のクローン・アンプ(現在VOXという名前の権利はKORG社が持っているので、VOXの名は当然使えませんが)を完全な英国産で発売します。以降、JMIブランドは古き良き英国製品の復刻に執心します。
 2008年、その新生JMIブランドはNAMMショーに突然ギター・エフェクターを出品しました。その小さな記事がシンコー・ミュージック「THE EFFECTOR BOOK」に掲載された際に、編集長に無断で勝手に写真を大きく取り上げてしまったのは当方の独断の仕業です(笑)。申し訳ありません。堂々とTONE BENDERなどと書かれたそのデカい筐体を見て、盛り上がってしまいました。重ねて申し訳ありません(笑)。
 JMIはその後あらゆるTONE BENDER、更にそれ以外の英国産ペダルを片っ端から復刻していますが、ここではそのTONE BENDER関連商品のみを紹介したいと思います。

 まずは木製ケースに入ったMK1プロトタイプの復刻品。以前も書きましたが、再度ご紹介です。「ゲイリー・ハーストが65年に10ケほどのみ製造した、世界で最初のTONE BENDER」の復刻品ですね。この復刻品はゲイリー・ハースト本人が(44年の時を経て)全く同じパーツで全く同じ回路で製作したものです。ゲイリー・ハースト本人によるサイン入り。筐体の裏には「PROTOTYPE」とサインペンでデカデカと記されています。
 トランジスタはOC752G381が2つ。限定50ケのみの製造で、鉄製のノブ(これ、VOXのギターやアンプが英国で製造されていた時期のノブと同じパーツですね)やトグル・スイッチも本家そのままに復刻されています。

 続いてはメタルケース入りのTONE BENDER MK1のリイシュー。こちらは実は時期によっていくつかアップデートが施されています。一番最初に復刻されたモデル(外観はまったく同じ)を見たゲイリー・ハーストが「本物と中身が違う」と気づき、自らその回路をリファインすることになりました。そこでいくつかの抵抗値の変更が施され、2009年に再度お目見えした、というモデルです。2009年に発売された50ケのみ、ゲイリー・ハーストが直筆サインを入れたものが発売されましたが、以降出回ったモデルも中身は全く同じ、ゲイリー・ハーストが監修しリファインされた回路です。

 また2009年、このMK1のバリエーション違いではありますが、MICK RONSONシグニチュア・モデル、というものも発売されています。このモデルに関してはその詳細を別項にて検証しようと思ってますが、簡単に言うならば、デカい木箱のケースに入ってて、MICK RONSONの写真、それからバイオグラフィー本、鑑定書なんかがオマケで付いたモノです。ちなみにこのシグネイチャー・モデルも、中身はゲイリー・ハーストが監修したMK1回路であり、余計なことではありますが、MICK RONSONのご遺族の許可を得て発売されています。だからメチャクチャ高いんですが(笑)。
 それからTONE BENDER MK1.5のリイシュー・モデル。限定100ケの製造で、中身はこれもゲイリー・ハースト本人の監修で仕上げられたモノ(こちらも直筆サイン入り)です。トランジスタはOC75が2ケ。この復刻品が発売された時に、JMIは「ビートルズ・スペック」と堂々とうたっていました。既にその頃には本サイトでも触れていたようにポール・マッカートニーの使用したファズは何か、という論争にある程度のケリがついていたのですが、世界中にはそれでもまだ「違うんじゃないのか?」と疑問を持つ方も多かったようです(未だに世界中のビートルズ・マニアから質問される、とジャスティンもボヤいてました)。

 続いてTONE BENDER MK2のリイシュー・モデル。実はこの復刻品にもエピソードがあります、JMIが初めて復刻したTONE BENDERはこれだったのですが、当時(2008年)は「なんだこれ」という感想を持つユーザーが多かったのです。当時は、66年にソーラーサウンドがOEM生産したVOX TONE BENDERを知る人があまりおらず、まずこのデザインはなんなんだ、という話が起こりました(主にネット上で)。今ではもう良くしられる所になりましたが、最初の英国製VOX TONE BENDERのデザインを復刻したもの、なんですね(当然VOXと文字を入れることはできず、JMIとなっていますが)。
 加えて、一番最初にこのTONE BENDERが発売された時、回路はゲルマ2石でした。これは単純に、オリジナルがどんな回路だったか、を調べ尽くす前に商品化したからだ、と思われるのですが、JMIは(数ヶ月後には)トランジスタはOC75を3ケ使用したオリジナルと同じ回路で出し直ししています。我がMANLAY SOUNDのビルダー、ROMÁN GILなんかも「昨年JMIにMK1(金色の)をオーダーしたら、なぜかMK2が届いた。返却する前に中身を見てみたら、回路も全然違うモンだった。なんだコレ」というような率直な感想を持っていました(笑)。そんな経緯もあってか、限定生産ではあっても、製造数は正確には公表されていませんね。

 そして、これはつい最近出来上がったTONE BENDER MK2クローンの2つめのモデルです。外観はオリジナルのソーラーサウンド製のものを模した(面倒臭い話ですが、カラーサウンドが日本製で90年代に復刻したものとほとんど見た目の上では同じ、ってことですね)もので、最大の違いはトランジスタにOC75ではなくOC81Dを使用したものだ、ということです。ガラガラと荒々しいOC75のアグレッシヴなサウンドにくらべて、OC81Dはややマイルドでローミッドに特徴がある、ということですが、当方自身はこれ(OC81D)を試したことはないので、その辺の解釈はユーザー諸氏におまかせしたいと思います。ただし、今NOSパーツのOC81Dはほとんど入手不可能なんですが、その辺どうしてるんでしょうねJMIは。大変興味があるモデルです。

 まだあります。TONE BENDER MK2の亜流(?)ともいえる、マーシャルSUPA FUZZの復刻品です。勿論こちらもマーシャルとは堂々とうたえないので、JMI SUPA FUZZ、という名前になってます。中身の回路はOC75を3ケ使用した、2ケ上のMK2クローンと全く同じものではあります。こちらも100ケ限定での製造だそうです。
 そしてZONK MACHINEの復刻品。こちらに関しての詳細は、以前記したこちらのページを参照していただければと思います。65年製JHS ZONK MACHINEという青いファズの復刻品で、今年の春に250ケ限定で復刻されました(まだ日本に入ってきてはいないと思われますが)。回路にはJMIがリイシューしたTONE BENDER MK1とまったく同じものを流用してるので、トランジスタはOC751ケと2G381が2ケ、という組み合わせです。筐体も折り曲げ式のMK1のメタルケースの筐体を流用してると思われます。

 加えて、実は既にJMIは「JMI TONE BENER MK3」という商品の発売を既にアナウンスしています。これは70年代にSOLA SOUNDが製造したMK3回路を持つVOXブランドのTONE BENDERの復刻品だと思われます(少なくとも外観はそれソノママですね)。3ノブで、トランジスタはOC75が1ケとNKT223Sが2ケを使用している、という風にアナウンスされています。この春発売予定、とのこのですが、まだ出荷されてないようなので、もう少し先になるかもしれませんね。

 JMI製品は日本ではイケベ楽器のインポート部門が代理店をやっているようです。ほとんど店頭で見かけないのは、そのレア度もあってと思われます(だってどれも限定だし、イケベさんをフォローするわけではありませんが、ジャスティンはいつもダラダラ発送作業してるし。笑)。TONE BENDERのクローン・ペダルの中では、日本では今一番入手しやすいのがこのJMIの復刻品です。もちろんゲイリー・ハーストの監修といった作業を含め、すべて可能な限りオリジナルに近づける、というその手法には感服します。やるじゃんジャスティン。
 ただ、いちマニアとしてのつまらない苦言を呈するならば、JMI製品のあのハンマートーン塗装だけはイタダケませんね(笑)。MK1もMK1.5もMK2も、あんなにツブツブなサーフェイスじゃないんだけどな。でもそんなコマケーことはどうでもいいスね。何より、当方もROMANも、そして世界中のTONE BENDERマニアも皆喜ぶような、イカシた復刻シリーズであることは間違いありませんから。TONE BENDERと名のつくファズだけで9種類も復刻してしまう、そんな豪気なJMIさんの復刻品でした。



(2016年2月付記)これまで上記ポストにて、JMIのTONE BENDER MK1.5復刻品として掲載していた写真が、他の方が所有するJMI製ではないブツの写真であるとのご指摘をいただきました。お詫びするとともに訂正させていただきます。写真を変更しました。
 

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