6.01.2011

JMI - Justin Harrison Interview (Part.1)

 
 JMI製品の取り扱いを初めてすでに数ヶ月になりますが、極少数の限定品ばかりということもあり「安定供給」などという言葉とはほど遠い(笑)出荷状況となってることは大変恐縮です。それでも多くのお客様のご期待を頂いていることは本当に感謝です。前にも書いた事があるのですが、困ったモンでイギリスのJMIはどうもダラダラと仕事する連中ばかりで(笑)、お待ちいただいている皆様にはその辺も情緒豊かな英国人の気風、とでも思っていただけると助かります。
 で、現在のJMIのボス、ジャスティン・ハリソン氏のインタビューを、今回から何度かにわけて紹介したいと思います。この原稿は2011年5月末にシンコーミュージックから発刊された「THE EFFECTOR BOOK VOL.12」の中で3ページにわたって掲載されたものと同じです。が、例によって雑誌ではスペースの関係で割愛した部分等を、こちらでは全てブっこんで再掲載します。また、新たに註釈も加えてあります。
 ジャスティン・ハリソン氏(上の写真で紙をくわえた右の人物)はJMIのボスであり、同時に現HIWATTブランドのボスでもあり、そしてビンテージ楽器店「MUSIC GROUND」のボスでもあります。多くの著名ギタリストと公私ともに懇意にしてる人なので、その辺を聞いてみたかったんですよね。
 雑誌に掲載された文章でも触れたのですが「JMI製品の宣伝になるからさ、よろしく頼むよ」ということでインタビューしてもらったんですけど、実は当方のタクラミとしては、JMIの宣伝をベラベラと喋ってもらうというよりは、イギリスの今の楽器屋さん事情とか、いつも仲良くしてる(と思わしき)ミュージシャンのネタとか、そういうのをポロポロと教えてほしかったんですよね。なので、製品開発の裏話とか、そういうネタはほとんど登場しませんが、TONE BENDERやJMIの製品にゼンゼン興味のない方(笑)でもそれなりに面白く読める話をなんとか引っ張り出せたかな、と思ってます。



——まず最初にあなたのお父さん、リック・ハリソン(*1)のことを訊きたいんだけど、彼が最初に「MUSIC GROUND」を始めた当初、どういう理由で楽器業を始めたのか聞いてる?
ジャスティン・ハリソン(以下JH):60年代の中頃から終わりにかけて、父はプロのミュージシャンで、いくつものバンドに参加してたんだよ。彼はベーシスト兼キーボード・プレイヤーだったんだけど、当然知り合いのミュージシャンが周囲に沢山いたので、1969年に小さな中古楽器のトレードショップを始めた。ミュージシャンは機材をトレードする機会が多いからね。それから、彼が取り扱ったヘッドアンプに特化した手軽なスピーカー・キャビネットを自分で作ったりして、そのキャビも周囲には満足してもらえたようだ。そうやって、最初の店は徐々に規模がおっきくなっていって、70年代の中頃には「MUSIC GROUND」はイギリス北部では一番大きなショップになった(*2)というわけ。
——以前ゲイリー・ハースト氏から聞いたんだけど、彼はあなたのお父さんともう40年以上の良き親友だってね。つまりジャスティンが生まれる前からの仲、ってことだよね?
JH:そう。僕は覚えていないけど、ゲイリーは生まれた時から僕のことを知ってる(笑)。父と彼の仲は、もう40年を優に越えるね。僕が実際にゲイリー・ハーストと仕事するようになったのはここ数年のことなんだけどね。新しいエフェクター製品のための、デザインや企画、いろいろと教えてもらっている。彼は人間的に素晴らしい人だ。もちろん開発者としても技術者としてもね。知ってるだろ?
——うん。いまだに音楽への愛情が熱い人だよね(*3)。ところで、古くからイギリスで楽器屋をやってたおかげで「MUSIC GROUND」は多くのミュージシャンと交流があるようだけど、なんかエピソードとかある? たしかポール・ウェラーがそこでギター物色してた、という写真をむかし見たことがあるんだけど(*4)。
JH:今ウチの店はロンドンのデンマーク・ストリートにあるわけだけど、ここにいるだけで有名なミュージシャンにはしょっちゅう顔をあわせるからね。つい先週のことなんだけど、フラリとロバート・プラントピート・タウンゼンドが店にやってきて、ギターとエフェクターをしばらく物色していったよ。他にもノエル・ギャラガー(オアシス)ポール・ウェラーポール・マッカートニーとかは、もう既にこの店の常連っていえるね(笑)。ポール・マッカートニーのオフィスはウチのお店から徒歩5分くらいの場所にあるからね(*5)。デンマーク・ストリートは、ちょうどアメリカで言えば、ニューヨークの48番街(*6)みたいな場所、と言えるかもね。
——ところで先日亡くなったゲイリー・ムーアに関しても教えてもらえるかな? 彼は逝去する直前にお店にやってきて、JMIのRANGEMASTERを購入してるよね。
JH:ゲイリー・ムーアはRANGEMASTERの音がずーっと大好きだったんだよ。本人に直接確認できたわけじゃないけど、エリック・クラプトンがやった組み合わせ、つまりレスポール、それとマーシャル(1962 BLUES BREAKER/30Wのコンボ・アンプ)、それからダラスのRANGEMASTERっていう組み合わせのことだけど、あれに彼が強く影響受けてるのは間違いないからね。(*7)。(この項続く



*1 MUSIC GROUND創業者。英国初のファズ、TONE BENDERの開発者ゲイリー・ハーストの長年の友人でもあるそうです。現在は息子ジャスティン・ハリソンと共にMUSIC GROUNDの共同経営者をやっています。
*2 1号店は1969年に英国サウス・ヨークシャー州ドンキャスターに開店。70年代から近年まで、ロンドンでの5店舗に加え、リーズ店等多くのチェーン店を運営しました。
*3 現在ゲイリー・ハーストはイタリアでシャドウズのファン・サイトをながらく運営しています。なのに自分のウェブサイトはいまだに「制作中」となってますね。やる気なくしちゃったんでしょうか(笑)。
*4 以前ネットで「MUSIC GROUNDを訪れたポール・ウェラー」という写真を見かけたことがあり、ジャスティン、ポール・ウェラー、それとたしかノエル・ギャラガー(オアシス)も一緒にそこにいたハズなんですが、今再度検索してみたんですけど発見できませんでした。その時のことを聞きたかったんですが・・・
*5 ロンドンを訪れたことのある音楽ファンであればたいていの人が知っていますが、ポール・マッカートニーのオフィス「MPL」は、ロンドンのド真ん中、ソーホー・スクエアという一等地にデデンとそびえ立っています(写真右)。当方も以前、何十回とそのビルの前を通りましたが、本人に会えたことは残念ながら/当然ながら1度もありません(笑)。
*6 60年代から70年代にかけて、ジミヘンやエリック・クラプトンが足繁く通った、ということでも有名になった、ビンテージ楽器店「SAM ASH GUITARS」や、(ベース・ブランドの)スペクターのオフィスがあったことでも知られる、NYマンハッタンのド真ん中にある楽器街。
*7 1966年のアルバム「ジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズWITHエリック・クラプトン」で、エリック・クラブトンが使ったセッティングのこと。以降、レスポール+マーシャル・アンプという組み合わせがロック・ギタリストに浸透したのはこのアルバムのサウンドに皆驚いたから、てことになっていますね。同様にRANGEMASTERという歪み系エフェクターがその「驚愕の」サウンドに大きく寄与していたことも知られています。RANGEMASTERに関しては、近日別項にて詳細を検証する予定です。
 

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