9.27.2012

VOX - Wah-Wah Distortion (Late 60's / Made In Italy)


 前回VOXブランドの「HASTINGS SERIES」という英国カラーサウンド製ファズワウをご紹介しましたが、こちらはそれよりも前の製造による、VOXブランドのファズワウ・ペダルです。製造年は67〜69年、と思わしきブツですが正確な製造年はわかっていません。
 これまでも何度か書いてきたように、VOXブランドは66年末からイタリアの工場で自社製品の製造を初めていますが、以来、イタリアのEME(後にJENとなる工場)、それから同じくイタリアのEL-EFといった製造元でのOEM製品があります。で、こちらはそのEL-EF製造のOEM製品、と思わしきブツでして、ご覧のようにEME/JENでの製造品とはいくつもの違いを散見することができますね(折り曲げ式の四角い鉄製筐体とか、VOXのロゴの形とか)。

 製品名はVOX WAH-WAH DISTORTIONと名付けられているわけですが、勿論これは66年にVOXが開発し、イタリア工場で大量生産されたワウ回路、それから64〜65年頃に開発されたVOX DISTORTION回路をくっつけた複合ペダル、ということになります。
 もうお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、このペダルは雑誌「THE EFFECTOR BOOK」VOL.15にて、ファズワウのミニ特集コーナーに登場した実物なわけですが、ホントならワウの足踏みペダルの上部に「VOX」と書かれた黒い小さなステッカーが貼られていたハズです。しかし当方がこれを入手した時には既になかったので、ご覧のようなルックスでの登場、となったわけです。

 ご丁寧に、このペダルは内部に回路図が貼られており(本稿の一番下のほうに画像を掲載しました)、既にご推察のとおり、ファズ回路はシリコン・トランジスタ2ケのMK1.5回路、そしてその後にVOXクライド・マッコイ・ワウ回路が続きます。ただし、回路図にもありますが、ファズ回路/ワウ回路ともにトランジスタはBC149、という指示になっています。
 なのに、この実機では、FMPS5172が2ケ(こちらがファズ用のトランジスタ)、それからBC209が2ケ(ドーム型/こっちがワウ用トランジスタ)という構成になっています。さすがイタリア。そんな小さなことはおかまいなし、といったところでしょうか(笑)。回路図にもありますが、トランジスタは共にNPNトランジスタです。

 コントロールはDISTORTION(=ファズのATTACKに相当)、VOLUME(ファズのVOLUMEに相当)、そして足踏みペダル(ワウの可変)の3種類となります。また、ここが多少面倒くさい部分なのですが、フットスイッチも3種あります。ひとつはDISTORTIONと書かれた「ファズのON/OFF」、それからWAH-WAHと書かれた「ワウのON/OFF」、そして足踏みペダルの上部裏に配置された「エフェクトのON/OFF」スイッチ、となります。

 つまり、右側2ケのスイッチは「プリセット機能」、そしてつま先スイッチは「バイパス・スイッチ」と考えることができるわけですよね。切り替え方式としては面倒なカンジも否めませんが、これがあることで「ワウだけ」「ファズだけ」「ファズもワウも両方」を使い分けることができる、ということになっています。

 回路自体は単純なもので、ホントにワウ&ファズをくっつけたシンプルなサーキットです。白いProCondo製のキャパシタはもうイタリアン・ワウではお馴染みのパーツですし、500mHのインダクタは、FASEL製インダクタの標準値でもありますし。

 実際の音ですが、デモ動画としてTHE EFFETOR BOOK掲載時にM.A.S.F.のスタッフによって試奏されたデモ動画がアップされてますので、それを貼っておきます。いわゆるTONE BENDER系のファズ・サウンドとは遠いものですが、むしろFUZZ FACE系ファズのバリエーションの1ケとしては面白いサンプルだろう、と思います。ご覧いただけるようにギターはシングルコイルのストラト、アンプはJC120を使っての動画ですが、アンプのスピーカー経由ではなく、ライン出力したサウンドを用いた、と聞いています。
 また、この動画のサウンドは(ファズ部分をOFFにしたときのサウンドでわかるように)アンプ側がややクランチ状態になったセッティングでの演奏となっています。

 ていうか、おそらくファズとワウを一緒に踏む人は、当方を含めて、得てして大げさな(笑)エフェクト効果を期待する人が大半かと思われますので、むしろこのくらい極端な歪みのほうが使い勝手はいいのかもしれませんね。正直言ってしまえば、ファズ単体、ワウ単体としてはあまりカッチョイイサウンドにはならないペダルでもあります。ですが、動画でM.A.S.F.さんが試されているように、アンプ側のセッティングを凝らしてやるとかでいろいろ使えるペダルにもなるなあ、と今更の様に感心させられます。


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