10.03.2012

Schaller - Fuzz Wah

 
 さて、今回もファズ・ワウを1ケご紹介となります。こちらは60年代末〜70年代にドイツ(当時はもちろん「西ドイツ」でした)のシャーラー社で開発されたものです。以前のポストで「ワウのスイッチがカカト側にあって、使いにくいったらありゃしない」と書いた(笑)ブツなわけですが、実は音に関しては結構個人的に気にいってるブツでもあります。

 60年代末に、ドイツのシャーラー社は、エレキギター用のエフェクターを開発し始めています。実は自社開発する以前、50年代からシャーラー・ブランドのエフェクターというのは存在しており、例えば米ディアルモンド(外付けピックアップで有名な、あのディアルモンドです)・ブランドのトレモロ等をOEM製造していた時期もあります。早速の余談で恐縮ですが、実はその50年代のシャーラー/ディアルモンド製のトレモロっていうのがとてもユニークな機械式回路をもったエフェクターで、一部の好事家ではカルトな人気を誇るブツだったりもします(下にオマケで動画を掲載しておきます)。

 さて、60年代、つまりロック・ギターの時代、ですね。ドイツのシャーラーはトレモロ(そちらはこんにち一般的な回路になっていましたが)、ワウ、そしてファズを新たに開発し、発売しました。その後「えーい、くっつけてしまえ!」という豪快な(笑)シャーラーの方針によって、いろんな複合エフェクターが登場しています。その当時のラインナップの詳細に関しては、既にお馴染みだろうと思われるデータベース/サイト「EFFECTOR DATABASE」あたりをご参照いただくとして、今回のファズ・ワウもそのうちのひとつ、ということになります。

 実はこのエフェクターの面白いところは、まずワウ回路です。60年代末〜70年代という発売時期ですが、いわゆるHALOタイプのインダクターが採用されていて、つまりはVOXの初期型ワウ「クライドマッコイ型」の回路をクローンしたことが伺えるわけですね。当時も今も、ドイツとイタリアというのは工業製品に関して密接な関連があったので、ドイツのメーカーがイタリアの回路をコピーしたとしてもなんら不思議な点はありません。むしろ「独特の」スウィープ効果を持ったクライドマッコイ回路がこんな所にも存在したことが面白いですよね。実はこのワウ・サウンドが非常に当方の好みでして(笑)、それだけでも嬉しいわけです。
 ただし、前述したように、スイッチには不満を持っています。更に加えて言えば、インプットが左側に、アウトプットが右側に、という例の大昔の「逆配置」でもあるので、そこもイラっとしますよね(笑)。

 そして、やはり注目はファズ回路のほう、ですよね。簡単に言ってしまえば極めてシンプルなファズ・フェイス回路そのままです。ここに掲載したモデルでは、トランジスタにはBC239というシリコン・トランジスタが採用されています。ちなみに本機では、ワウ回路のトランジスタにもBC239が使用されています。

 基板回路は1つにまとめられていますが、この基板で面白いのは、やはり内部にファズ部のアウトプット・トリマーが1ケ、ワウ部のアウトプット・トリマーが1ケ、合計2つのトリムポットが採用されていることでしょう。ファズ・ワウの常識として、こちらのペダルもファズが最初で、その後にワウ、という構成順序になっていますが、内部のトリマーのおかげで微調整ができるのはありがたいことです。

 外部に唯一見える、INTENSITY と書かれたツマミは、もちろんファズの「ATTACK」に相当するツマミで、乱暴に言ってしまえばその効きはおおむねファズ・フェイスと同じ、です。ちゃんと他のファズ・フェイス系ファズ同様、ギターのボリュームには敏感に反応します。

 実は独シャーラーはこのファズ・ワウ以前に「ファズ」単体機も発売していますが、回路自体はこのファズワウの「ファズ部分」と全く同じです。ただし、極初期のモデルにはゲルマニウム・トランジスタを用いたものがあることが確認できています。また加えて言えば、シリコンに変わった初期のブツでは、BC108という、例の有名な(=ファズ・フェイスと同じ)シルバーキャップのシリコン・トランジスタが使われていたブツもあります。

 というわけで、実はこちらのブツも、今年の頭に出た「THE EFFECTOR BOOK」のファズ・ワウ試奏コーナーに登場したその現物です。掲載に際して前回同様M.A.S.F.さんによるデモ演奏動画がありますので、こちらに貼っておきます。まあ古いワウ回路の宿命でもありますが、もちろんトゥルーバイパスではなく、繋ぐだけで結構音ヤセします。ですが、逆に考えれば原音が痩せることによってファズ効果/ワウ効果はより強烈にかかることにもなるので、そのあたりは好きずき、ですよね。

 ちなみに、シャーラー社はこのエフェクターを随分長い間、80年代後半まで製造し続けています(若干の使用変更はありましたが)。初期のブツはグレー・ハンマートーン塗装で、ご覧のようにSCHALLERロゴが筆記体で入っているブツです。80年代には足踏みペダル部分に金属の四角いプレートが配置されます。90年代には色も黒になり、ジャックの位置も変更になります。20年以上延々と発売され続けたペダルで(しかもその途中には国の形がかわる、という激変の時代を挟みながらも)筐体や回路、パーツはほとんど変わらずに製造され続けた、というちょっと面白い経過をたどったペダルでもあります。90年代の黒い筐体になってからは、そのネームプレートには製品名として「WHA WHA FUZZ」とプリントされていました。

 その「一貫して変わらない」仕様ではありますが、この筐体はプラスティック製です。そして、裏蓋の鉄板だけでヤケに重量を稼いで安定させる、という作りなので、ハッキリいって壊れ易いです(笑)。



 さて、上記のファズワウとは一切関係のない、余談を兼ねたご報告(笑)です。いくつか英国JMIのTONE BENDER関連製品のアウトレット品を入荷させました。ワケあり特価品、みたいなカンジではありますが、次回のポスティングでそれらのいくつかをご紹介できると思います。ほんのわずかの入荷なので限定ではありますが、特価販売しますので、ご期待下さい。
 

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