10.25.2013

Robert Fripp 1974 Interview - Introduction




 さて、すっかりTONE BENDERから話題が逸れてしまっていますが、そんなことはキニシナイ。オッと思った人、好きな人だけ読んでいただければそれだけでいいんです。ロバート・フリップ先生のお話です。

 ウィキペディアにもさっそく記載がありますが「2011年に音楽業界から引退した」ロバート・フリップ氏でしたが、最近やっぱり復帰するわなどと言い出して世界中をテンヤワンヤさせております。ただし、その復活キング・クリムゾンではリハーサルに1年以上費やす とも公言されているので、来年の今頃にどうなってるか、という遠い未来の話でもあります。そちらはそちらとしてまあ気長に&テキトーに待っておいた方が無難なような気もします。

 そこでキング・クリムゾンといえば、という話になるわけですが。1969年に発表された「クリムゾン・キングの宮殿」、1974年に発表された「レッド」、そして1981年に発表された「ディシプリン」。正直この3つのアルバムは音楽的にもジャンルから何から全く別モンだろ、と言わざるを得ない程バラバラな作品ではありますが、たったひとつ共通点を見いだすことができます。それは「ロバート・フリップがギターを弾き、思うような音楽を完成させた」ということです。クリムゾンはその誕生の瞬間、筆舌に尽くし難いほどの傑作(『宮殿』)を残し、解散するときにまた異次元の大傑作(『レッド』)を出して、復活したらまたまた大傑作を残す(『ディシプリン』)、という歴史を経ています。それを包括的に語れるのは、やはりフリップ先生しかいませんよね。

 さっき挙げた3つのクリムゾンのアルバムは、個人的に好きで好きでしょうがない、と言いますか、オオゲサに言えばこれを解明するために自分は延々と音楽を聴いているのかも、なんて思うことすらあります。少なくともフリップの影響でグルジェフの面倒臭い本を読んでみた、なんていう可愛らしいロック・ファンは、恐らく筆者だけではないと思うのですが(笑)……えーと、当方の話なんてどうでもいいんです。閑話休題。フリップ先生ですよね。

 いつもとっても哲学的なお話しかインタビューでも残されないし、ネット社会になって以降フリップ先生が続けてる公式ブログでも、そこに残されている文章はいつもどれも難解極まります。ですが、ここにとっても面白いインタビュー原稿があります。それは1974年、丁度「レッド」を制作する直前に行なわれたロバート・フリップ・インタビューです。インタビュアーはもちろんスティーヴ・ローゼン氏。例によってこのインタビューはアメリカのギター雑誌「GUITAR PLAYER」誌の74年5月号に掲載されたものです。

 このインタビューの何が面白いかといえば、まずひとつは機材の話を中心にインタビューが進められていること。フリップ先生が「BUZZAROUND使いだ」ということは、このインタビューが初出のソースなんです。そういう発見も多々あるわけで、それだけで必見、なんて思ったりします。まあ今はネットを中心に機材に関してはかなり解明されてはいますが、その全ての出発点はこのインタビューだったりもします。そういう歴史的な価値ももった文献、と言えます。当然ながら使用ギター、エフェクター、アンプ、セッティングに関してここまで集中的に回答したインタビューはなかなかありません。

 もうひとつ、おそらくインタビュアーのローゼン氏はそれほどクリムゾンの音楽に深く傾倒していない、というか、あまり知らないというスタンスでインタビューに臨んだと思われます。それが悪いってわけじゃなく、逆に面白い結果を生み出してるんです。ガッチガチのガンコ者イギリス人ロバート・フリップですから、アメリカ人を相手に流れるような会話が成立するハズもなく(笑)、そこもかしこもギクシャクしたインタビューなんですよね。でも、そのおかげでフリップ先生は自分のいわんとすることを丁寧に、何度も繰り返して(まるで子供を諭すかのように。笑)受け答えしています。クリムゾンの音楽は、どのようにして生まれたか、を探るのには格好の資料、とも言えます。

 ところで、個人的に最大の関心事は「魔法」です。フリップ先生はよくこの言葉を使うんですが、すごーーく砕いた表現で先生の言わんとする「魔法」を解析してみたいと思います。
 音楽を聴いてて、すっごく感動する瞬間って誰にでもありますよね? それって、演奏が上手いとかメロディーがいいとか、音楽的な予備知識とかそういうこととは一切関係なく、瞬発的に起こりえる現象ですよね。で、フリップ先生はその瞬間を「魔法」と呼び、それを永遠に研究してる人と言えると思います。フリップ先生がよくこの「魔法」のわかりやすい例として挙げる瞬間がビートルズの「A DAY IN THE LIFE」の最後の和音(Emajor)部分なのですが、そういう「魔法」に関して、ジミヘンの場合はどうなのか、クラプトンだったらどうなのか、バルトークだったらどうなのか、そして自分の場合はどうなのか、なんてことを喋っています(註:ただし今回のインタビューでは、ビートルズに関しては触れていません)。何がどうなったら魔法は生まれるのか、その永遠のテーマを研究しまくるギタリスト、と言えるかもしれません。実際にフリップ先生は「女性、魔法、音楽表現、その3つのために私は生きている」とこのインタビューでも語っています。

 なのになのに、自分はミュージシャンでもないしギタリストでもない、と断言するフリップ先生。それだけでうわー面倒臭い人だとお分かりいただけるでしょう(笑)。一応、インタビュー原稿に関しては今回もスティーヴ・ローゼン氏本人に当時のインタビュー・テープを(40年ぶりに)再度聞き直してもらい、全部を新たに書き起こしてもらいました。で、それを当方が拙い翻訳で日本語化したものです。例によってヘンテコな翻訳も多々あると思いますが、そこは平にご容赦いただければと思います。

 とっても面倒くさい人の面倒くさいインタビューなので、より多めに註釈文を入れました。ミック・ロンソンのインタビューもそうでしたし、このブログ自体もそうなのですが、ネットにポツンと存在してるウチのブログに(何らかの理由で)到達された方に「さらに興味を深めていただければ」という意図でやっています。なので、敷居は低く、でも内容はゴッツく、というコンテンツとなっています。当然ながら、このフリップ先生のインタビューが読めるのは、日本ではこのブログだけ(笑)。もしチラっとでも興味をお持ちでしたら、ひとときお付き合いいただければ嬉しい限りです。



 最後に余談を。昨今プログレ・オタク界隈を賑わせているアルバムに、こんなのがあります。CD24枚組のボックスセットで、先日レコード・コレクターズ誌でも表紙を飾り大々的に特集もされたゴッツイ箱なのです。まあ、マニアの方は何があっても買うんだろうとは思うのですが、74年のクリムゾンのライヴ音源が22枚(?だったと思います)入ってるから、といって全部聞くのはさすがに修練、ではなく苦痛でしかないだろう、と思うんですけどね(笑)。でも、単純に「クリムゾンが話題になる」ていうだけで当方は嬉しくなるんです。エヘヘ。

Young Person's Guide to
KING CRIMSON 69 - 74


IN THE COURT OF THE CRIMSON KING(1969)それまでのポップ・ミュージックの概念を丸々ひっくり返した、新しい次元の音楽の誕生。代表曲「21世紀の精神異常者」「風に語りて」「エピタフ」収録。



IN THE WAKE OF POSEIDON(1970)>ホルスト「火星」の改作「デヴィルズ・トライアングル」や、日本でTVCMでも使用されたタイトル曲を含むセカンド。ちなみに「WAKE」は「めざめ」ではなく「航跡」の意味。



LIZARD(1970)1stガンダム劇場版の音楽(「ビギニング」)でもマンマ引用された「ルーパート王子のめざめ」(ボーカルはイエスのジョン・アンダーソンが担当)を含む3作目。



ISLANDS(1971)サックスとフルートでメル・コリンズが大活躍(コリンズは2014年版クリムゾンにも参加するとこのこと)。だが本作を最後に、フリップと共に初期クリムゾンの世界を牽引したピート・シンフィールド(作詞)が脱退。



EARTHBOUND(1972)『ISLANDS』発表直後の72年2月のライヴを収録。とーっても音が悪いことで有名ですが(笑)、LP時代最も高値が付けられた貴重なライヴ音源、でもあります。



LARKS' TONGUES IN ASPIC(1973)フリップ以外のメンバーを一新、メタリックなサウンドと超絶技法を駆使したインプロ主体のサウンドを目指した新生クリムゾン。それにしても「太陽と戦慄」っていう邦題は、最高ですよね。



STARLESS AND BIBLE BLACK(1973)スタジオ録音とライヴ録音をミックスして作られた6作目。フリップ(G)ウェットン(B)ブラフォード(DR)クロス(Vl)というこの時期の布陣を「最強」と呼ぶ人も多いです。



RED(1974)一番ギンギンなフリップ先生のギターサウンドが聞ける「プログレ時代」のクリムゾンのラスト・アルバム。一説によるとニルヴァーナのカート・コバーンが最も影響を受けたアルバムとのこと。



USA(1975)74年米国ツアーを収録したライヴ盤。ライヴでのデヴィッド・クロスの演奏は、何らかの理由で後にエディー・ジョブソンの演奏に差し替えられている。こちらも30年近く絶版状態が続いたことでオリジナルは高値をつけた。



YOUNG PERSON'S GUIDE TO KING CRIMSON(1976)解散後に発売された、フリップ本人の選曲による2枚組ベスト。クリムゾン結成直前のデモ版「風に語りて」やシングル版「キャットフード」が収録してたりと、小技も効いたコンピ。


No comments:

Post a Comment