7.28.2014

Jext Telez - Dizzy Tone Fuzz


 1968年に発売が開始されたTONE BENDER MK3。その回路の由来に関して以前、66年に製造発売が開始された英BURNS「BUZZAROUND」、そしてそれとほぼ同時期に発売されたと言われているイタリアのELKA「DIZZY TONE」というファズに触れた事があります。またそれから40年以上を経過してバーンズBUZZAROUNDが復刻発売された際に、その初期試作品はELKA「DIZZY TONE」そっくりだった、というヨタ話も書いたことがありますよね。

 すでに言うまでもなく、BURNS BUZZAROUNDとELKA DIZZY TONE、そしてSOLA SOUND TONE BENDER MK3は回路がそっくりです。ていうかほぼ同じ、と言って過言でないでしょう。その回路の開発者が誰かは今もわかっていませんが、2000年代のBUZZAROUND復刻品(製造は英JMI、英BURNS社の正規ライセンスによって発売されました)に関しては、TONE BENDERの開祖(笑)ゲイリー・ハーストが製造を監修した、ということも以前触れた通りです。

 さてさて、今回ここでご紹介するのはそのELKA「DIZZY TONE」のクローン・ファズだ、とうたっている新製品です。米ミシガンにあるJEXT TELEZというブランドが発売した「DIZZY TONE FUZZ」です。
 製造に関して、ホンモノのELKA DIZZY TONEの回路を全部バラバラにし、パーツの数値を徹底的に計測し、その数値に基づいて設計された、と説明文に書いてあります。

 でこの筐体。ええ、ロゴのプリント以外はもう全部ELKA DIZZY TONEのクローンなわけです。これ作るの金かかりそうですねえ。そこまで執拗に細部にこだわるのは嬉しくなります。クローンですから、コントロールはオリジナルと一緒。「SUSTAIN」「BALANCE」「ATTACK」という、通常のファズ使いにとっては馴染みがある名前が並びますが、以前BUZZAROUNDのコントロールに関して書いたとき同様に、正直いって使い辛いったらありゃしない、というコントロールです(笑)。

 「SUSTAIN」がファズの歪み、「BALANCE」がボリューム、「ATTACK」がトーン、ということになってはいるのですが、それぞれのツマミが相互作用してしまうので、どれかをヒネると音量まで変化してしまう、という、例のヤツです(笑)。まあ、仕方ないですよね。オリジナルがそうなってるんだから。

 ちなみに「回路がほぼ同じ」と書いたTONE BENDER MK3に関しては、そこまで激しく使いづらいということはありません。MK3はトーンもハッキリと効用がわかりますし、VOLもゼロにすればアッサリと音量がゼロになります。「使いづらい」のはBUZZAROUNDとDIZZY TONE、と覚えていただければ幸いです(笑)。そういえばD.A.M.のデヴィッド・メインも「獰猛な猛獣」と表現していましたもんね。

 このJEXT TELEZ DIZZY TONEで使われているトランジスタはブラックキャップのムラードOC44を3ケ使用した、通称VER.2、それとイエローキャップのムラードOC44を使用した通称VER.3の2つがあって、共に40ケ限定製造、だそうです。

 なぜVER.2と3なのか、といいますと、その製造初期にプロトタイプ(通称VER.1)が制作されていて(そちらも現在売りに出されています)、そのプロト品はトランジスタに2ケのSFT352と1ケのSFT308を使用した、とのこと。その音の差に関して、発売元は「VER.2はバランスがとれた深い歪みでウーリーなトーン(えっと、音楽的な意味で訳せば「モワっとしたトーン」とでも言えるでしょうか)とのこと。

 で、VER.3はどうかというと「もっとスムースで、中域に高級感があり、タッチレスポンスが良い」とのこと。んー、中域に高級感、と言われても、わかんないスよね。トランジスタのお値段が高い事はわかりますけど(笑)。

 というワケで例によってサンプル動画。実はJEXT TELEZのホームページもそうですし、このサンプル動画もそうなんですが、ハリキってすげえ立派なデモ演奏が披露されています。デモの使用ギター〜アンプ〜スピーカーあたりも丁寧に説明してます。ギターもハムとシングル両方を使ってくれてるので、その効能が判りやすいですよね。ていうか、正直どっち使っても強烈なブットいファズサウンドになってしまうので「ギターはなんでもいい」というまさしく荒々しいファズと言えるかもしれません(笑)。

 実は当方は、実際のELKA DIZZY TONEに関して現物の音を聞いたことがありません。なので、それとの比較ができないのですが、JEXT TELEZの解説文にあるように、ミッドローに歪みが集中したクラシックなファズですよね。結構歪みのキメも細かいのがわかりますが、注目ポイントは「ATTACK」をイジったとき、です。デモ奏者が「ここをヒネると中域の量がバサっと変わる」と言ってます。つまり、トーン効果とはいえ、左にヒネルとローが出て、右にヒネるとハイが出る、というコントロールではないんですね。そのあたりがこの独特の古めかしい(笑)ファズ・コントロールのキモなのかもしれません。

 さてさて、DIZZY TONEといえばバーンズBUZZAROUND、で、BUZZAROUNDといえばフリップ先生ですよね・・・ 実はまだフリップ先生の81年インタビューの翻訳を終えていません(笑)。何ヶ月かかってんだ、と己に言いたくなりますが、もしお待ちいただいてる方がいれば、しばし猶予を頂戴したいな、と思います。
 

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