3.02.2010

Gary Hurst Interview Part.2

 
 そんなわけでインタビューです。一応時系列でゲイリー・ハースト氏の歩みをご紹介したいと考えているので、順番に今回は「彼がファズを作るにいたるまで」の回、というカンジですね。
——今はどちらにお住まいですか? イタリアにいらっしゃる、と噂で聞いたのですが、今はどんなお仕事をされていますか?
ゲイリー・ハースト(以下G):ああ、今はイタリアに住んでるよ。ここでJMIカスタムショップ製のTONE BENDER復刻モデルをデザインしたりしてる。
——あなたが個人的に一番影響を受けた、というか、お若い頃に大好きだったアーティストはどんな人たちでしたか?
G:初めて買ったレコードはデュアン・エディーのSOME KIND-A EARTHQUAKE※1 だった。それから、シャドウズなんかのインスト・グループに夢中になってね。最近ではマーク・ノップラー(ダイアー・ストレイツ)が大のお気に入りなんだ。でも、今でもシャドウズは大好きなんだよ。イタリアで私はシャドウズのコミュニティー・サイトを運営してるんだ(笑)。
——60年代の頃の話をお聞きしたいのですが、その頃はどちらにいらっしゃったのでしょうか?
G:住んでたのはロンドンから北西に50kmほど離れたプリンセス・リスボロウっていう小さな街。仕事はシティー(ロンドン中央部)でやってたけどね。
——あなたが楽器/機材関係の仕事をするようになったのは、どういった経緯だったのでしょうか? 初めはどこかの会社に入社されていたのでしょうか?
G:最初のころは「ウルトラソニックス社」とか「ハイファイ・イクイップメント社」※2 っていう会社に勤めていた。その後、60年か61年に、VOX、つまりトム・ジェニングス社※3 の工房で働き始めた。そこではVOX AC30のトップブースト回路を沢山作ったよ。あそこでは当時の新製品用にテープ・エコー・ヘッドを試作品として開発したりもした。後にVOX ECHOとして商品化※4 されたけど、あれは私がシャドウズのエコー・ギター・サウンドをイメージして開発したんだ。そんな頃に、トム・ジェニングス、つまり我々のボスが「VOXのテクニカルサービスセンター兼プロモーション用のショウルーム」をロンドンの真ん中に作りたい、と言い出した。そしてトムが私に、そこの責任者になってくれないか、とお願いしてきた。それを請け負ったんだ。チャリング・クロス・ロードのすぐ側の、ニュー・コンプトン・ストリートってところにあったんだ。しばらくしてJMIはそのショウルームを畳むことにしたんだけど、折角なので、それまでの経験を有効活用しようと思って、新たにすぐ側のデンマーク・ストリートに新しい物件を探して、そこの2階を自分の工房にしたんだ。
 だが、その数ヶ月後、急にイタリアに移ることになった(笑)。イタリアに行ったのはそれが初めてだったんだけど、その時エルカ(ELKA)というブランドのCAPRIっていう電子オルガンの設計をすることになってね。それ以来、フリーで仕事をするようになったわけだ。
——イギリスに戻られたのは?
G:65年の4月にロンドンに戻ってきた。イタリアに行く前に放ったらかしにしてた、新製品の開発とか電子回路のデザインを再びやりだしたんだ。帰ってきてからはデンマーク・ストリートにあるMUSICAL EXCHANGEのバックルームを私の工房にしたってわけさ※5。(この項続く)
※1 59年発表曲。デュアン・エディーは翌60年のPETER GUNN/ピーター・ガンのテーマでも有名ですね。
※2 どちらも懸命に検索してみましたが、これらの会社の詳細は不明でした。申し訳ありません。
※3 今でもよく間違われたりすることが多いですが、今も当時もVOXという名の会社はありません。厳密に言えば70年代にほんの一時期VOX LIMITEDという会社になったことがありますが、当初はトム・ジェニングス率いるJMI社のブランドの名、そしてその後1964年にVOXというブランド名の商標権がバラ売りされ、北米地域ではその商標権をTHOMAS ORGAN社が買ったことは有名ですね。その後前述したVOX LIMITEDや英ROSE MORRIS社なんかを経由して、今はVOXの商標権は世界的にKORG社が獲得しています。
※4 右に掲載した写真(クリックで拡大します)は、そのVOX ECHOを掲載したカタログ。インスパイアどころかちゃんと「シャドウズ・モデル」と書いてありますね(笑)。
※5 ロンドン中央部の地図写真をここに載せてみました。青く色をつけた大英博物館の左下、大きな(肌色の)道路の交差点がトテナム・コート・ロード(昔ここにVIRGINメガストアがありましたね)、その右下の方に楽器街があり、赤い部分がデンマーク・ストリート、赤茶色の部分がニューコンプトン・ストリート。つまりすぐ側ってことですね。この地図からは見切れてますが、地図右下のほうには有名なビッグベンや国会議事堂やらが、下のほうにはバッキンガム宮殿があります。ロンドンは狭いのに(全部徒歩でいけます)何でもあってホント楽しい街ですね。MUSICAL EXCHANGEは楽器屋さんの名前ですが、これに関しては詳細を別項にて紹介する予定です。

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