3.04.2010

Tone Bender MK1 (1965) - part.1

 木製ケースの試作品を経て65年夏、市販品としてTONE BENDERは製品化されました。この製品版はプロトタイプとほぼ同じ回路構成ながら、電源オン/オフ・スイッチを排除、イン/アウトのジャックを共に前側面にレイアウト、そして上部が金色のハンマートーンに、下部は真っ黒にペイントされた鉄製の筐体を採用、というブラッシュアップが施されていました。これが現在TONE BENDER MK1と呼ばれるモノですが、当然ながら当時は「MK1」と呼ばれる事はなく、ただ単にTONE BENDERと呼ばれていました。トランジスタは木製筐体のプロトタイプと全く同じ、欧州製ムラードOC75が1ケと米国製テキサス・インストゥルメンツ2G381が2ケという構成です。ここに掲載した中の回路写真を見ると、D.A.MのHPで掲載されているMK1オリジナルの回路写真と若干のコンデンサ・パーツの違い(加えて、スイッチも違うパーツだったりしますね)が拝見できますが、おそらくどちらもオリジナルだろう、と考えられます。なんといってもこの真っ黒で馬鹿デカいHUNTSのキャパシタ、サイコーですね(このHUNTSの黒いキャパシタは、あのDALLAS RANGEMASTERにも使用されたパーツですね)。

 実はこの“MK1”にも細かく言えば3種類程のヴァリエーションが存在します。ひとつは前述した楽器店MUSICAL EXCHANGEで販売するためにゲイリー・ハーストが作ったもので、一般に「GARY HURST TONE BENDER」と呼ばれています。2つ目はソーラーサウンドというブランドのためにゲイリー・ハーストが製作/納品したもので(実はこのソーラーサウンドもMUSICAL EXCHANGEグループが運営する機材ブランドなので、殆どそこには経営上の違いがあったわけではないと推測されます)、「SOLA SOUND LTD.」の文字がプリントされているものです。つまりその2つは細かなプリントの違い以外、全く同じモノらしいですが。

 左の白黒写真は発売当時の雑誌広告ですが、よく見ると「MUSICAL EXCHANGE(SOLA SOUND LTD)」とありますね。大げさにくくってしまえば、当時のMUSICAL EXCHANGEとSOLA SOUND、ゲイリー・ハーストはみなグルになって(笑)製品開発をしていた、と考えて差し支えないと思います。

 最後の3つ目は(ロンドンのソーラーサウンドではなく)リーズという都市に所在してたJHS(JOHN HORNBY SKEWES)という楽器メーカーが、上記した金色のTONE BENDER MK1をまるごとコピーして作ったモデルで、ZONK MACHINEと名付けられた青いファズ・ペダル(写真右下)です(なんと今年2010年冬、英JMIがこの青いZONK MACHINEを復刻しました。中身がMK1と同じとはわかっていても……機会があれば試してみたいですねえ)。本来はこのJHS製品をTONE BENDERとは呼べないのかもしれませんが、65年に発売され、全く同じ回路をもつファズ、という意味でも、かのデヴィッド・アンドリュー・メイン氏も「従兄弟と呼ぶべき存在」と語っています。ちなみにこちらも今ではほとんど現存していないほどレアで、おそらく今これを所有してるのはもしかしたらD.A.Mのデヴィッド氏を含め2〜3人位なんじゃないでしょうか。

 ゲイリー・ハースト製作による金色のオリジナルMK1は、65年の夏から冬まで数ヶ月感の間に、恐らく50個程しか出荷されなかった、と言われています。現在これらの「MK1」のオリジナルは全て合わせても世界に数人しか所有者がおらず、売買される機会があっても数十万を超える高値がマニア間で付きます。んー、欲しいんですけどねえ…… 先立つものがないっス。筆者の知り合いのロンドンの楽器屋さんのいう説によれば、「おそらく今8ケしか存在してない」とのこと。ますます絶望的ではありますね。(この項続く)

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