3.07.2010

Tone Bender MK1 (1965) - part.2

 
 TONE BENDER MK1の発売当時(そしてそれ以降も含めて)どんな使われ方がされたか。どんなエフェクターでもそうですが、流行や自分の流儀によって様々あるハズで、皆が皆同じような音を出してた訳ではありません。しかしゲイリー・ハーストが「最も新しい、変わったギター・サウンド」と自ら言っているように、やはりその音は奇妙奇天烈摩訶不思議なもの、と1965年当時はリスナーにとらえられたに違いありません。
 これは単独で作動する、フットスイッチ付きの電子機器です。サイズは20.3cm×10.15cm×5cm。トランジスターで駆動するこの機器は電池で稼働します。ギターやベースに繋ぎ、アンプのトーン・セッティングを更にいじることによって、あらゆる種類のトーンを生み出します。
 このペダルを使う事で、米ナッシュビル産の「号泣するような」ギター・サウンドは勿論、今をときめく英国産リズム&ブルースのような、最も新しい音色をも獲得できるでしょう。このTONE BENDERを使っているグループには、ザ・フー、アイヴィー・リーグ、プリティー・シングス、マージービーツ、ヤードバーズ等がいます。さらに、最新のヒット曲に多くの貢献をしているセッション・ギタリスト達もこの機材を使用しています。

 上の文は写真にあるTONE BENDER MK1の広告の宣伝文句を当方が今ササっと訳したものですが、そんなわけで、実際彼らはどんな使い方をしたのか。
 65年、ヤードバーズには初代のクラプトンに入れ替わり2代目のリード・ギタリスト、ジェフ・ベックが加入しています。そして前述のように、自らMUSICAL EXCHANGEにてMK1を購入したベックは、その年録音されたシングル曲HEART FULL OF SOUL(65年7月発売/YOUTUBE版はこちらで)にてそのファズを使用しています。実はこの曲のアウトテイク(YOUTUBE版はこちら)では、プロデューサーでもあったマネージャー、ジョルジオ・ゴメルスキーが「変わった音の演出」のためにわざわざシタールをレンタルしてきて、それをこの曲でベックに試させたのですが、結果楽曲のなかであまり効果的ではなく、その後このMK1を使用したファズ・リードが採用された、という経緯も伝えられています。

 「スペンサー・デイヴィスともスティーヴ・ウィンウッドとも仕事した」とゲイリー・ハーストは語っていますが、そのスペンサー・デイヴィス・グループの大ヒット曲「KEEP ON RUNNING」は、印象的なファズ・サウンドで有名ですが、おそらくこのファズがMK1だと思われます。この曲も65年に録音/発表されチャート1位になった曲です(意外に思われる方もいるかもしれませんが、スティーヴ・ウィンウッドはこの曲でギター弾いてますね。口パク姿も初々しいこちらもいいんですが、よりヘヴィーな67年のこっちもサイコーっす)。

 ザ・フーのピート・タウンゼンドは、写真にもあるように今確認できる限りでTONE BENDER MK1をステージで使っていたことがわかっています。ザ・フーのアーカイヴとしては他の追随を許さないTHE WHO.NETによれば、ピートは65年(つまり発売後すぐ)MK1を購入した模様です。ただし、同時期のステージではまったくペダルを使っていないことを確認できる写真も存在するので、実際にはそれほど頻繁に、もしくは重要なディヴァイスとして使用したものではないと思われます。
 ピートは翌66年にこのMK1を売却処分してしまっていますが、その後しばらくしてMARSHALL SUPA FUZZを購入し使用します。つまりピートはTONE BENDER MK1とMK2両方のユーザーだった、ということになりますね。

 そして、詳しくは後々ガッツリと(笑)紹介させていただこうと思ってるのですが、ザ・フーのピート・タウンゼンドが66年に売却したそのTONE BENDER MK1は1年後、それを中古楽器店で見つけた金髪の若いギタリストによって購入されたのですが、その金髪のギタリストこそがミック・ロンソン本人でありました。つまりこの2人が使用したTONE BENDER MK1は全く同じ個体、ということになりますね。この話はミック・ロンソン本人が73年に証言していること(彼は「66〜67年ころ、ピートが所有した機材をいくつも手に入れる機会があった」とも証言しています。とはいえロンソンが実際に購入したのはおそらくこのMK1だけだと思われますが)、さらには一時期このTONE BENDERを所有していた、ロンソンのバンド「RATS」のメンバーも同様に証言しており、その話は「THE WHO TABS」にも掲載されています(写真はRATS在籍時のミック・ロンソン。まだレスポール・カスタムの塗装を剥ぐ前ですね……ワウが先に、ファズが後に繋がれているところも要チェックです)。
 

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