7.16.2010

Manlay Sound - Baby Face (Germanium Version)


 ワールドカップはなんとスペインが優勝してしまいましたね。おかげでスペイン・バルセロナ在住のビルダー、ROMAN GIL氏も僕もすっかりその話で盛り上がってしまっておりました。というか今も興奮冷めやらぬ、という状態です。見た目も存在もあまり派手ではないMFアンドレス・イニエスタ(FCバルセロナの選手です)が決勝ゴールを決めた後にイエロー覚悟で披露した、ユニフォーム下のメッセージ、あれに涙した人は世界中に沢山いたことでしょう。スペインでは国中のアチコチで今でも大騒ぎなんだそうです。

 決勝戦ではスペインはアウェイのユニフォーム(紺)で戦ったわけですが、スペイン・チームはホームだと赤、アウェイだと濃紺のユニフォームになります。それとはまったく関係がないのですが(笑)、MANLAY SOUNDが発売するFUZZ FACEクローン・ペダル、BABY FACEにも、赤と青があります。前回ご紹介したように赤はシリコン版で、今回ご紹介する青はゲルマニウム版になります。

 これまでも書いているように、66年末の発表当時オリジナルのFUZZ FACEはまず最初にNKT275というPNPゲルマニウム・トランジスタを2ケ使いで採用していました。その直後にはBC183L、さらにその直後にはBC108というシリコン・トランジスタに変更されており、一番最初のゲルマ版は実質1年にも満たない限られた時期しか製造されていません。それがFUZZ FACEマニアの心をくすぐっていたわけですが、ゲルマニウムという魅力的な響きを持つ素材を利用したトランジスタを使って、わがMANLAY SOUNDもFUZZ FACEクローンを作ってみました。

 FUZZ FACEの回路自体は、以前にもご紹介したように基本的にTONE BENDER MK1.5とほぼ同じものです。また、BABY FACEで採用したゲルマニウム・トランジスタも、なるべく動作の安定している2SB324やAC125、MP20、CV7355といったトランジスタを使用しました。つまり、このBABY FACEのゲルマ版は単純に言えば、既に発売しているMANLAY SOUND 66 BENDERと中身は殆ど同じです。

 やはり、といいますか、今回はパーツの選定に難儀しました。オリジナルのゲルマ版FUZZ FACEは「一個一個音が全部違う」とまで言われるほどに個体差が激しいファズで、基本となるようなサウンドが特定出来ません。ファズの印象を決定づける重要な音成分として、歪んだ音のゲート感と、サステインの後半部分=減衰中の音のキャラクター、というものが考えられますが、回路自体は上記したように既に確定しているので、そのFUZZ FACEらしい音を何で表現するか、となった場合に、トランジスタの選定に頼らざるを得ません。

 そういうわけで、ゲルマ版BABY FACEはPNPのゲルマ・トランジスタを採用していますが、その銘柄はこれまでの製品同様固定させていません(とはいえ、主に上述したように2SB324やAC125あたりが主な選択肢になりますが)。なるべくベストなマッチングで、いわゆるFUZZ FACEらしい音、FUZZ FACEらしいサステイン、FUZZ FACEらしいゲート感とディケイが表現できるもの、を選定するようにしました。

 ご存知の方も多いと思われますが、10数年前にFUZZ FACEがアービター社名義でリイシューされたときに、ほんのわずかな期間ではありますが、AC128を使用したゲルマ版リイシューが出回った事があります。そんな記憶もあったので今回のBABY FACEゲルマ版作成に際してもAC128を試してみたのですが、どうも低域が無駄に出てしまって、しかも歪みがなんだか弱いなー、ということに気づきました。それが悪いわけではないのですが、今回はAC128は選択肢から外すことにしました。

 以下、音に関する当方の「感想」というか、インプレッションです。ユーザーそれぞれにそれぞれのFUZZ FACE感があると思いますので、異なるご意見を持つこともあろうかと思いますが、その点は予めご容赦下さい。実際に完成した「青」の実機を、ウチにある66 BENDER(MK1.5クローン)と比較しても、その音はやはり違います。どう違うか、と言われてもなかなか言葉では表現できない部分であり、かなり細かい違いだとも思うのですが、同じかと言われれば「やはり違う」と言わざるを得ませんが、66 BENDERよりはボトムがチョイ太め、というカンジです。

 また、これは製作当初からわかっていたことですが、ゲルマ版は元来それほどの歪み量とサステインが得られる回路ではありません(例えばTONE BENDER MK1やMK2のようには、という意味です)。逆に言えばシリコン版(赤)は、より歪み、サステインも得られる代わりに、ハウりやすくもなります(そう、丁度ジミ・ヘンドリクスのウッドストック・ライヴや、ワイト島ライヴでワウを踏んだ時にヒンヒンいってしまってるように、です)。ゲルマ版のほうはそこまでハウりやすいわけではなく、やはりまろやかな歪みの感触があるので「マイルド」と捉えられる方も多いのではないか、と感じています。回路がほぼ同じだ、とはいっても、セッティングではまったく違う音になっちゃうあたりがFUZZというエフェクターの面白いところでもあります。

 スペイン優勝で浮かれまくっているROMANに「気持ちはわかるが、はやくデモ・ビデオ作ってくれよぉ」とガンガン催促(笑)していたのですが、やっと今日アップしてくれました。このゲルマ版BABY FACEのデモ・ビデオはこちらになります。比較対象のために、アンプは今回もGUYATONE FLIP 2000、ただし今回はLES PAUL CUSTOMでの演奏になります。ハムバッカー・ピックアップとの相性、という観点や、66 BENDER(MK1.5クローン)との比較、という観点でもご検討いただけるのではないかと思います。このビデオでもワウをつないで、部分的にワウ+ファズのサウンドを披露しています。

 このBABY FACE青(ゲルマ版)も、他のMANLAY SOUNDのペダル同様、いくつかの楽器店を通じて、そして本サイトを通じてもすでに販売を開始しております。FUZZ FACEマニアの方も、そうでない方でも、是非お試しいただけたら幸いです。価格はこれまでのTONE BENDERクローンと同じ価格になります。他のペダル同様、手元にそれほど大量に在庫があるわけではないので、品切れの際がご容赦下さい。ご理解のほど、そしてご愛顧のほど、何とぞよろしくお願いします。他のペダルもそうですが、購入をご希望の方がいらっしゃいましたら、まずはこちらから直接メールをいただければと思います。

 なお、大変恐縮ですが実はこのページに掲載された青のBABY FACE、それから前のページに掲載された赤のBABY FACEは共にちょっとダークな色のスパークリング・カラーのフィニッシュとなっていますが、これらのスパークリング・フィニッシュは、初回限定のカラーリングとなります。というのも、スパークリングはちょっと値が張ることもあり(笑)、また当初のイメージよりダークすぎるキライがあったので、変更することとしました。今後出荷されるものは、テクスチャー・フィニッシュと呼ばれる、ボコボコの陰影がついたフィニッシュになります。そちらはちょうどオリジナルのFUZZ FACEで採用されているフィニッシュと同じカンジです。上の写真はそのサンプル画像ですが、メーカーのサンプル画像なので、イマイチ正確には判りづらいのですが、とにかく変更するという点はご承知置き願います。
 それと、こちらは予告を兼ねたご報告ですが、BABY FACEは通常の赤(シリコン)、青(ゲルマ)に加えて、スペシャル・バージョンを作る予定でおります。ひとつはゲルマ版の限定モデル「NKT275ヴァージョン」、それから、シリコン版の限定モデル「2010WCスペイン優勝記念モデル」です(笑)。そちらの詳細は追ってご報告させていただきたいと思います。
 

No comments:

Post a Comment