8.14.2010

AXIS fuzz and the XS fuzz

 
 ただ今お盆休み真っただ中の時期なわけですが、当方は今月末に発売されるシンコー・ミュージック「THE EFFECTOR BOOK」最新号の制作に追われております。前回に引き続き、今回もその中身をちょろっとだけ先行する形でご紹介したいと思います。

 右の表紙画像(この画像は最終版ではないので、若干変更される可能性もあります)でもおわかりの通り、今回の特集はファズです。しかもBIG MUFFだけの大特集です。アメリカが生んだ偉大なファズとして、今もなお絶大な人気とシェアを誇るマフの、40年にも及ぶ歴史やサウンドを多角的に検証しています。
 その他、アーティスト・インタビュー・ページは、元イエロー・モンキー、現在は吉井和哉や吉川晃司のバック・ギタリストとしてもお馴染み、EMMAこと菊地英昭氏が登場。その他にも前号に引き続きとなるジョン・メイヤーのペダルボード検証や、「マスドレ」でお馴染みのトリオ・バンド、MASS OF THE FERMENTING DREGSのペダルボード検証も掲載されています。
 毎回驚かされますが、ここまでマニアックによくやるなあ、というギュウギュウ感たっぷりのTHE EFFECTOR BOOK最新号は8月末の発売予定です。お楽しみに。



 さて、前回MANLAY SOUNDのファズ・ペダル THE ALADDIN のご紹介の中で、「回路はエレハモAXISのサーキットを参照した」ということを書きました。なぜそうしたか、と言えば、オリジナルのエレハモAXISのサーキットはかなり異端と言いますか、大変興味深い回路でして、その面白さを生かせば「他にないような」鼻つまみファズ・サウンドが生まれることが判っていたからです。

 エレハモAXISは元々ギルド社FOXEY LADY(第2/3期バージョン)として生まれたもので、最初に開発されたのは1968年頃と言われています。ここではFOXEY LADYの歴史に関して(第1期バージョンは、モズライト社のエディー・ザナーという技師が設計した回路である、等)は省きますが、68年頃にはエレハモ(当時はまだ会社ではありませんでした)のマイク・マシューズ氏によってFOXEY LADYが制作されることになりました。後にマイク・マシューズ氏は自身のエフェクター・ブランド、エレクトロ・ハーモニクス社からこのファズを「AXIS」と改題してリリースした、というわけですね。
 その後AXISはさらにマイク・マシューズ氏が回路の再デザインを行い、パワーアップして「BIG MUFF」というファズに生まれ変わった、というのは有名な話かと思います。

 話を戻します。そのマイク・マシューズが最初にAXISに採用した回路はシリコン・トランジスタ2石を使用した回路で、後のマフに比べると結構単純な回路ではあったのですが、例えばモズライト社のFUZZRITEや英国アービター社FUZZ FACEと比べても全く違うサウンドを生み出すものでした。

 ノブはファズとボリューム、の2ケだけ、というあたりは、FUZZRITEやFUZZ FACEに通じるところもあるのですが、その歪みが大変特徴的なものです。数年前にとある海外の掲示板にて、ある所有者がAXISの歪み回路を簡単に説明するために書いた図版があるのですが、それがすっごく判りやすい図だったので、下に引用させていただきます。

 AXISのファズのツマミは、左に回せばロー成分がドライブし、ハイエンドが落ちます。右に回していくと、徐々にローエンドがカットされ、ハイ成分にドライブが掛かって伸びていきます。一般的な「右に回すにつれてどんどん歪む」というツマミではない、ちょっと変わった機能をもったツマミだと言えると思います。
 例えば現在もオリジナルのAXISのサウンド(=第2/3期のギルドFOXEY LADYのサウンド)はYOUTUBEでも確認できますが、セッティングを変えていないものが殆どなので、このノブによる歪み成分の変化はなかなか理解しにくいものとなっています(まあそこまで求めるのも酷かもしれませんが)。

 AXISに使用されたトランジスタは、後のBIG MUFF初期モノでもお馴染みの、ドーム型をした黒い2N5133というシリコン・トランジスタでした。ただし、後程別項にてその詳細には触れますが、例の鼻ツマミファズ・サウンドはこのトランジスタが影響しているというよりも、やはり回路自体の構成によるところが大きい、ということが判っています。

 MANLAY SOUNDのTHE ALADDINは、エレハモAXISのその特徴を利用し、ツマミがある位置に来た時に生まれる歪みサウンドを利用してできたファズです。そのために、セッティング次第では色んなサウンドが生まれるファズでもあります。また前回書いたようにAXISの回路からさらに改良を加えたものではあり、ピュアなエレハモAXISのクローン・ファズではありません。

 さてさて、実はこれまでもいろいろな箇所で触れた事があるのですが、そのTHE ALADDINというファズを検証している最中に、当然ながら筆者とMANLAY SOUNDのビルダーROMAN GIL氏の中にフツフツと変な欲が生まれてきてしまいました(笑)。つまり「せっかくだから、完全なAXISのクローン・ペダルも作ってみよう」というものです。
 オリジナルの2N5133トランジスタを入手するのは容易ではありませんでした(実はアジア製の再生産品2N5133というものもありますが、そちらは見た目もスペックもドーム型のものとは異なっていたので敬遠しました)が、なんとか数十個入手しました。試行錯誤を経てそのAXISのクローン・ペダルも完成する事が出来ました。名前は THE XS FUZZ というのですが、詳細は後ほど改めて紹介させていただきたいと思います。
 

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