9.07.2010

Abraxas Sound - MK1 (with Hunts Caps) part.1

 
 これまで2度ほど英国北部マンチェスターにあるABRAXAS SOUNDというエフェクト・ブランドの事を書きましたが、実は今夏、そのABRAXAS SOUNDのビルダー、マーク・ハリソン氏にTONE BENDER MK1のクローンを2つカスタムメイドで作ってもらいました。また長くなってしまいそうなので、2回にわけてそれらのカスタムメイドのMK1クローンをご紹介したいと思います。

 見た目はこれまで通り(笑)、ホワイト・アッシュ筐体のものと、ブラック・ウォルナット筐体、です。実は当初の予定では、カスタムオーダーは「ひとつだけ」だったんですけど、ちょっとした経緯がありまして、結局もうひとつ、ウォルナットの方も作ってもらうことになり、2ケとも購入しました。中身は共にMK1回路です。

 既に当方はこのABRAXAS SOUNDのMK1クローンを持っていたので、同じモノならオーダーする意味もないのですが、今回はちょっと特殊です。以下、その中身と経緯を記したいと思います。マーク・ハリソン氏は元々アンプのリペア等を生業とされている方だそうなので、電子パーツに関しては豊富な知識をお持ちです。そこで当方が質問してみました。「HUNTSの黒くてデッカいキャパシター使って、MK1作れるかな?」と。

 以前にもチラリと書きましたが、HUNTSはイギリスで大昔から使われているキャパシターのブランドです。現地でもいまだにビンテージ・ラジオやアンプのマニアの間では有名なパーツですので、割と多くの種類(数値)を持つパーツが流通しています。ただし、他のブランドも同様ですが製造から50年も経たパーツですので、その数値の信憑性よりも個体差が激しくて、使えるモノはどんどん希少にはなっているのが現状だそうです。

 なぜこのHUNTSにこだわったのか。勿論1965年にゲイリー・ハーストが製作したオリジナルのTONE BENDER MK1で使われていたパーツだから、ということもあるのですが、個人的にこの下品なほどデカくてゴツい、真っ黒な「見た目」が大好きだからです(笑)。ちなみに、HUNTSのキャパシタは全部真っ黒なわけではなくて、数値によっては赤茶色のものとか、グレーのものとか、他のものもありますが、ペダル用に使う数値のキャパシタはみな黒い色のようです。

 さて、そんな酔狂な日本人からの問い合わせを受け、早速「やってみようか」というお返事をマーク・ハリソン氏からもらえまして、このプロジェクトが開始しました。既に回路自体は以前に出来ているものがあるので、作業はあっという間です。まず、アッシュ・ボディのMK1クローンが完成しました。トランジスタは初段にブラック・キャップのOC75、その後ろにはテキサス・インストゥルメンツ製の2G381を2ケ。つまりオリジナルと同様の構成です。そしてHUNTSのキャパシタ3ケ、他のパーツも含めて、全てオリジナルのMK1同様に組んでもらいました。

 ほどなく日本に到着し、早速試しました。おおー。豪快なMK1サウンドそのものです。以前購入したABRAXAS SOUNDのMK1クローンとは音が違います(以前のMK1クローンのサウンドに関しては、こちらを参照願います)。ただし先に書いてしまいますが、その音の違いを生んだものは、黒いHUNTS製のキャパシタに由来するものではなく、明らかにトランジスタ(石)の違いによるものだと思われます(以前のものも、ビンテージのムラード製マスタード・キャパシタを使用しており、古さではそんなに違いはないハズです)。

 「数値が同じものでも、キャパシタの種類(ブランド)によって音は変わるか?」という問いはなかなか難しい問題でして、正直当方個人としては、エフェクターに限定して言うならば「体感するほどの違いを得る事は困難」だと思っています。じゃあなんで黒いHUNTS製にこだわったのか、それは見た目が好きだから(笑)。

 見た目はともかく、JMIのMK1クローンや、MANLAY SOUNDのMK1クローン同様に、ドデカい出力、ギンギンな中域の歪みなど、音はMK1の特色そのままです。ただし、ひとつだけ懸念がありました。それは当方の所持するMK1クローン・ペダルの中でも、最もハムノイズが乗ってしまうことです。我慢できる範囲のノイズではありましたが、そのハムは低域のノイズで、気になってしまいました。正直にそのことをマーク・ハリソン氏に、どうしたらコレ回避できるかな?と相談し、「じゃあ、もう一回トライしてみるかあ」ということになりました。そこでカスタム2号機の製作になりました。(この項続く)
 

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