9.09.2010

Abraxas Sound - MK1 (with Hunts Caps) part.2

 
 前回からの続きになります。2号機は茶色いブラック・ウォルナット材の筐体でヨロシクねん、とお願いし、早速改良バージョンの製作にとりかかってもらったのですが、こちらは完成まで難航しました。というのも、MK1のサウンドを生かせばハムノイズが消せない。SNを良くしようとすると、ゲインやサスティンが稼げない、という、MK1製作時の「いつもの」悩みです(笑)。ごめんねマーク、ワガママばっかり言って。キャパシタもそうですが、トランジスタもやたらと古いので、個体差がスゲエあり、総合的なバランス取るのが大変なんだそうです。

 製作の途中で、2度ほどマークから「いやー大変なんだってば」とグチのメールをいただいております。彼もメールの中で触れていたのですが「だってあのD.A.Mのデヴィッド・メインでさえ、MK1回路は狂ってる、というくらいだぜ」と。

 その原文は、デヴィッド・メイン氏の個人ブログ(こちらです。ただしこのブログはここ数年は更新されていませんね)にもあるのですが、翻訳してもグシャグシャな文になりそうなので止めておきますけど、簡単にいえば「正気なら(MK1作るのなんて)やめとけ」という文です(笑)。

 そんなわけで、正気でない日本人のせいで何度か眠れない夜をマーク・ハリソン氏に強要し(笑)、なんとか2号機も完成しました。今回もトランジスタは初段にブラック・キャップのOC75、その後ろにはテキサス・インストゥルメンツ製の2G381を2ケという変わらぬ構成ですが、トリム・ポットを採用したこと、一部の抵抗値の数値も変えたことで、そのバリエーションに若干の差をつけてみました。ほどなくこちらも日本に到着し、さっそく試しました。

 ノイズはたしかにバッチリとなくなりましたが、音が若干おとなしくもなりました。これはもう、これ以上望むべくも無い、というほどの苦労の結晶と、現時点での最善の処置、と思われます。マーク・ハリソン氏には最大限の感謝をしております。どうでもいいことですけど、ABRAXAS SOUNDのTONE BENDERクローンFUZZを4つも持ってるのは、世界で俺だけでしょうねえ(笑)。

 今回使用した(あまり音自体には意味がない、と思われる)HUNTSのビンテージ・キャパシタは、あの有名なダラスRANGEMASTERにもオリジナルで使われていたパーツで、60年代英国電気製品御用達、ともいえるパーツかもしれません。ちなみに掲載したダラスRANGEMASTERの写真は当方の所有物でして、トランジスタにOC71を使用したオリジナルのものです(アウトプット・ケーブルのみ交換されちゃっていますが)。

 HUNTSのキャパシタはプラスティックの筐体を採用したかなり初期のキャパシタで、古いものは劣化とともにこの筐体が割れてしまうものが多いのだそうです。また、外見上割れていなかったとしても、古い電子パーツにありがちな「漏れ」(英語だとLEAKEY/リーキーといいます)と呼ばれる現象、つまり、設定数値通りの数値が出ないというパーツも多いのだそうです。

 つまり、開発時点での設計図通りにエフェクターを完成させたいのなら、パーツはすべて新しいものを使用したほうがいいに決まってる、ということでしょうね。でも、世間で高値で売買されているようなビンテージのエフェクターのような音を望むのなら、漏れがあったりショボくなった配線やパーツを使う方法もアリなのでしょう。けれども、その結果が必ずしも狙い通りにいくか否か、その実現の可能性はかなり低いだろう、ということも同時にお判りいただけるかと思います。

 以上でABRAXAS SOUNDへのMK1オーダーの話は終わります。これを機に、ますます一層のTONE BENDER MK1研究心に火がついてしまった当方でした。近いうちに、自分でもMK1を組んでみたいな、などと無謀なことを考えてしまっています。
 

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