11.20.2010

Manlay Sound - Baby Face (BC183L prototype ver.)

 
 気がつけば、もう創刊から2年以上経ってることに驚かされますが(2年とはいえ、まだVOL.10ですけど)、今月末にはTHE EFFECTOR BOOKの最新号が発売になります。恒例の先出し、というカンジになりますが、いち早くその内容をご紹介したいと思います。

 今号はモジュレーション系の第2回、ということでコーラス大特集号です。日本が世界に誇るROLAND CHORUS ENSAMBLEを大研究。また、単なる機材誌の枠を越えて、「コーラス名盤100」と題してコーラス・エフェクトが印象的/面白いアルバムをドドンと100枚紹介しています。時代的に、やはり80年代モノはAOR〜フュージョンからニューウェイブ、HRにいたるまで、コーラスってのはハズセないですねえ。アンディー・サマーズ(THE POLICE)もジョニー・マー(THE SMITHS)も、コーラスなしには語れない、てカンジのギタリストだと思いますし・・・
 それから裏目玉として、長年謎のベールにつつまれた、廉価エフェクトの大定番、ARION(当方も高校生の時、かなりお世話になった記憶があります)の社長インタビューまで掲載。なにげに今もプロでも愛用者の多いアリオン製品を研究しています。
 その他、PERSONZのギタリストであり、近年は氷室京介のバック・ギタリストとしても知られる本田毅氏のインタビューも掲載。11月末にシンコーミュージックより発売になりますので、お楽しみに。



 さて、今回はいったんTONE BENDERネタから離れて、FUZZ FACE関連のネタをひとつ書きます。

 1966年の終わり頃に、DALLAS ARBITER社が(TONE BENDER MK1.5の回路をそっくり用いて)FUZZ FACEという有名なファズが出来上がったことはこれまでも度々書いてきた通りですが、そのFUZZ FACEに使用されたトランジスタは、いくつものバリエーションがあります。
 一番最初に使用されたのがNKT275だ、というのも有名ではありますが、これまで「〜年頃から〜年頃までは○○が使われた」と断定的に書かれた文献がないのは、文字通り最初の数年はいろんなパーツが混在して使われた形跡があるからです。
 登場から1年強経たあたりから、トランジスタにはシリコン・トランジスタが使われたこともよく知られていますが、1968年あたりにはBC183Lが、翌年頃にはBC209BC108BC109あたりが使用されたということが判っています。
 写真に掲載したものは1970年製、とされている青い筐体のDALLAS ARBITER FUZZ FACEで、トランジスタにはシリコンのBC183Lが使われたものです。ロゴが(シルク印刷ではなく)デカールで張られたものは70年代初期製、とのことなのですが、正確な製造年を推し量るのが難しいことは致し方ありません。第一この頃のFUZZ FACEは、モノによって抵抗値なんかも違ったりする事が日常茶飯事のようなので、おおまかな時代性、と言ってしまえばそれまでかもしれません。

 で、話が一気に現代に帰りますが、スペインのMANLAY SOUNDにて、FUZZ FACEクローンを作ろう、という話になったときに、そのシリコン版に使用してみたらいいんじゃね?と考えたトランジスタはBC183Lでした。それは「一番最初のシリコン版FUZZ FACEはBC183Lだったらしいから」という、ちょいとヒストリックな意味合いを込めて考えたものでした。
 結局、現在商品化されたBABY FACEはBC337というトランジスタを使用してるワケですが、これは今までも御説明させていただいた通り、実際の音といいますか、十分なゲインとサスティン、それから入力レベルに反応するクランクの具合、そして歪みのトーン等を総合して選んだものです。

 そのBC337に決定する以前に、BC183Lで実際にプロトタイプを製作しました。これは今ウチにある現物で、同じトランジスタを使用したモノはこれしかないのですが、そのプロト版=BC183Lを使用したBABY FACEは、最終製品版(BC337)と比べて、やや(本当に若干、ではありますが)歪みは控えめでマイルド、という印象です。もともとFUZZ FACEはゲルマ版/シリコン版ともに、そんなにギンギンに歪むファズ・ペダルではないですが、それでもややマイルドな印象を持ちました。

 ただ、以前もチラっと書きましたが個人的には「これはこれでいいなあ、アリだなあ」と当方が思ったことも事実でして、語弊を承知の上で書けば、体で感じるテイスト、という意味では、ゲルマ版(BABY FACE青)とシリコン版(BABY FACE赤/BC337)の丁度中間的なサウンド、と感じました。

 ワザと悪く表現するとBC183Lは「中途半端」とも言えるわけで(笑)、MANLAY SOUNDとしてはシリコン版としてはよりシリコンらしいスムース&ストロング、な印象を持ったBC337を最終的に採用した、というワケです。よりマイルドでオーガニックなカンジをお求めの場合は、ゲルマ版BABY FACE青の方をお試しいただければ、と思った次第ではあります。

 TONE BENDER系とは違ったブっといミッドロー、またギターのボリュームを絞った際のクランクの鈴なり、というポイントがFUZZ FACEクローンであるBABY FACEの特徴、と言えると思いますが、是非お楽しみいただければ、と思います。
 

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