12.11.2010

Hudson Electrinics - Shapes of Things (MK1 Clone)

 
 ここ数年、TONE BENDERのクローン・ペダルはそれこそ世界中で製作され、それなりにラインナップには幅広い選択肢があるわけですが、やはり英国におけるTONE BENDER人気は絶大なようです。カリスマ、と呼ばれてしまう程のデイヴィッド・メイン率いるD.A.M.製品はその筆頭格ですが、他にもイギリス産のTONE BENDERクローンが沢山存在します。

 HUDSON ELECTRONICSは、イギリスの中東に位置するビヴァリーという都市でマイケル・ハドソンさんという方が個人で製作と販売を行っているハンドメイド・ファズ・ブランドで、ラベルにもプリントされているように英国産です。今回HUDSON ELECTRONICS製のMK1クローンを入手したのですが、それがこちらに掲載した金色のペダルで、名前は「SHAPES OF THINGS」といいます。

 すぐにお気づきになった方も多いと思われますが、HUDSON製のファズには60年代ロックの名曲の名が用いられていまして、こちらのMK1クローンにはヤードバーズの、そして本稿後半に掲載したように、他のモデルにもニール・ヤングだったりヴェルヴェット・アンダーグラウンドの曲名だったりが採用されてます。こういうの、いいですよね。

 さて、早速そのMK1クローンSHAPES OF THINGSですが、カラーリングは他のブランドのMK1クローン同様金色なんですけど、こちらの筐体はハンマートーンではなくて、おそらくシャンパンゴールド(もしくはその類いの)カラーリングです。実はHUDSON ELECTRONICSではMK1クローン・ペダルは通常ラインナップには入っておらず、このペダルも(裏蓋内部に記載されているように)お客さんのオーダーがあったのでわざわざカスタムメイドしたペダルなんです。今回そのオーダーしたご本人から当方は譲り受けたのですが、これ以降、HUDSON氏がMK1クローンを継続的に製造したかどうかは定かではありません。公式HPにもこのMK1クローンは載っていないので、止めてしまったのかもしれませんね。

 で、その内部ですが、ジャックは英国人が大好きな、クリフの黒いプラスティック製ジャックを採用しているのは通例通り、ですね。ただ、内部写真で確認できるこの緑色のポット、OMEGと記載されたパーツですが、初めてみました。薄型で、構造も(通常の金属ケースに収まったポットより)シンプルなことが外観から見てとれるのですが、勿論音にはあんまり関係なさそうです。トラブル・フリーかどうかは、これから長期間ためしてみないとなんとも言えませんね。

 最近はあまりこういう作りをする人が少なくなってきたのですが、ちょっと前まではトランジスタをソケットに刺す基盤構造というのが、ブティック系ファズでは一般的でした。もちろんこれだとアレコレとトランジスタを試すことが簡単です。ただし、最近は「ハンドワイアード」であることは勿論ですが、接点が少ないことがヨシとされる風潮なので、だんだんソケットを使う人は減ってきたように思います。
 ていうか、ファズ(特にTONE BENDER系のファズ)はもともとパーツ数も少ないんで、そこまで神経質になる必要はない、と個人的には思っちゃうんですけどね。それよりは、奇麗なハンダであるとか、そういう方が重要かな、なんて思っています。

 トランジスタには、ブラックキャップのOC75が3ケ、という組み合わせです。「OC75の3ケ使い」という意味で、TONE BENDER MK2との音の比較が楽しみ〜とか一瞬だけ考えたりもしたんですが、そんなことよりも(これまで何度も書いてきたように)MK1とMK2は回路自体が全く違うので、正直比較対象としては意味がないですね(笑)。

 音に関してですが、他社製品同様、MK1はやっぱりMK1の音です。歪みはやや控え目ですが、とはいえ爆音/爆歪のMK1サウンドなので「おとなしい」等とはとても思えません。また、おそらく使用トランジスタの関係だと思うのですが、出力レベルは(例えばJMIのMK1クローンや、MANLAY SOUND 65 BENDERと比べると)ちょっとだけ控えめです。

 なお、実際にテストしてて改めて思ったことですが、当方が所持しているいくつかの(10ケ以上ありますが。笑)MK1クローンの中で、唯一このHUDSON ELECTRONICSのものだけが「アタック・ノブが左に/レベル・ノブが右に」あります。正直、それに慣れるのに戸惑いを感じました。まあすぐには慣れるんですけどね。

 HUDSON ELECTRONICSは現在も各種TONE BENDERクローンを製造し続けていますし、英国のみならずアメリカへも盛んに出荷されているようです。アメリカの楽器屋さんで、HUDSON製品を置いてる店も結構あるようで、レトロ・ファズ・ファンにはお馴染み、なのかもしれませんね。おそらく日本ではほぼ無名ですけど。

 で、その他のクローンを簡単に以下ご紹介します。まず、「STROLL ON」と題されたハンマートーン・グレーのもの。勿論名前はヤードバーズの名曲からいただいたものと推察されますが、これはMK2クローン・ペダルだそうです。ちなみに現在ではカラフルなラベルに変更になった模様です。トランジスタはOC75の3ケ使い。トリムポットが内部で2カ所採用されていますが、初段と(おそらく)最後段のバイアス調整のため、と思われます。

 続いて「MR. SOUL」と名付けられたもの。こちらは「VOX TONE BENDERとアービターFUZZ FACEのいいとこどり」と銘打たれたファズで、つまりは単純に「MK1.5回路」ってことですね。オフィシャルHPでは「ファズ・フェイス・クローンでもある」なんていう説明文もありますが、随分と大雑把な説明だなあ(笑)と思ってしまうのは、病的にマニアックな日本人くらいのものなんでしょうね。ちなみにMR.SOULはニール・ヤング在籍時のバッファロー・スプリングフィールドの名曲からタイトルをいただいたもの、だと思われます。トランジスタにはOC76を2ケ採用しています。

 そして「WHITE HEAT」。これはおそらくヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「WHITE LIGHT WHITE HEAT」から引用したと思うんですが、それはともかく「ブリティッシュ60Sファズ・トーン」という宣伝文句が用いられています。
 中身は「イタリア製VOX TONE BENDERクローン」ということで、ブリティッシュ?アメリカン?イタリアン?全部がゴッチャになってますね(笑)。まあどうでもいいんですけど。トランジスタにはどうやらシルバーキャップで違う型番のものを2ケ組み合わせて使用しているようですが、記載がないので詳細は不明です。

 なお、これらHUDSON ELECTRONICSの現行品(他にもゲルマ.トランジスタでTONE BENDER MK4回路を組んでみた、という「FUZZ」や、レンジマスターのモディファイ回路を使用したブースター「SOUL BOMB」「GOSPEL BOMB」等といったファズもリリースされています)は、内部写真と共にそのサウンドサンプルも公式HPで聴くことが出来ます。
 

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