6.20.2011

JMI / Burns - Buzzaround Reissue


 先日、TONE BENDER MK3と回路がそっくり、と書いたBUZZAROUNDですが、その回路比較をする前に、現在JMIから復刻されているそのBUZZAROUNDを紹介したいと思います。

 面白いことにこのファズは、今から2年ほど前伝えられた話では「BURNS社から復刻・発売される」ということになっていました。2009年、ドイツのミュージックメッセにてその試作品がお目見えしているのですが、その時この製品はなんとゲイリー・ハーストが作り、メッセで宣伝までしています。
 ゲイリー・ハーストとオリジナルのBUZZAROUNDに関しては後ほど別項にて触れたいと思うのですが、2009年、とにかくそういう形で発表されたBUZZAROUND復刻版は、なんだかオリジナルとはあんまり似ていない風情/風貌でした(下の写真2点は、その時のオフォシャル・ショットです)。BURNS社は現在も会社があり、試作品は現在のBURNSロゴをまとっていることからも、当初はおそらくイギリスのBURNSからこの形状で発売される予定だったことは間違いないと思われます。
 実は、細かい部分までは当方も聞いてはいないのですが、まあ多少の紆余曲折があり、復刻版BUZZAROUNDはその後、オリジナルとまったく同じ筐体&回路にドレスアップされて、イギリスのJMIから発売されたわけですね。

 ちなみに、このJMIのBUZZAROUND復刻版はTONE BENDERなんかと比べてもベラボウにその価格設定が高いんです。もちろんこの独特のケースをわざわざあつらえたり、ゲイリー・ハーストに監修してもらうことになって、とか理由は思いつくんですが、それでもやっぱり高いです。で、バカなフリしてその理由を聞いてみました。んで、なるほどまあ仕方ネーか、と一応納得できる答えを貰いました。
 その答えは「このJMIのリイシュー品は、BURNS社にライセンス使用料を支払って製造されている」んだそうです。つまりBURNS社が正式に認めたリイシュー品なんですね。そんな話はあまり世間には伝わらないモノですが、その証として2009年に製造されたJMI BUZZAROUNDの認定書には、現BURNS社の社長BARRY GIBSON氏のサインも入っているそうです。現在当方の手元にあるブツはつい最近製作されたモノなので、もう彼のサインは認定書に入ってませんでしたが、そんな経緯もあってこの復刻品BUZZAROUNDのフロント・パネルには、JMI製品であるにもかかわらず現在も「BURNS LTD.」というブランド名がプリントされています(ちなみに60年代のオリジナルでは、ここにBALDWIN-BURNS LTD.というブランド名がプリントされていました)。

 さて、復刻版の紹介の前にサラリとだけオリジナルに触れます。実はオリジナルはもう殆どお目にかかることさえ不可能なほどレアなブツで、今まで当方は60年代のオリジナルを写真でも3ケほどしか確認した事がありません(もちろん、触った事もありません/D.A.Mのデヴィッド・メインは実際に2ケのオリジナルを確認したことがあるそうですが)。もう少し現存するとは思われますが、おそらくオリジナルのTONE BENDER MK1と同じくらいの現存数、と推察されます。数年前一度だけeBayで売りに出たのを見たことがありますが、やはり数十万という結果になっちゃってましたね。

 1965年の終わりころ、イギリスのBURNS社が大手楽器商のボールドウィン社に買収された後に製造がスタートし、1968年にははやくも製造が中止された、といわれているオリジナルのBUZZAROUND。1966年には雑誌にその広告も出されていたことがわかっていますので、実際には3年ほどしか販売されていなかった、との推測が成り立ちます(68年にはボールドウィン/BURNS社はギター業界から撤退していますので)。
 なんと言ってもBUZZAROUNDというファズに注目が集まった理由は、1969年にキング・クリムゾンのデビュー作『クリムゾン・キングの宮殿(まったくの余談ではありますが、当方が一番好きなレコードジャケットでもあります。なので、目一杯大きなサイズの画像を張りました。ご同好の方は画像をクリックすれば拡大表示できます)で、ギタリストのロバート・フリップがこのファズを使った、ということが一因であることは間違いありません。
 実際にはフリップ先生はクリムゾン結成以前からこのファズを使用していたとのことですが、のちの1974年、フリップ先生はインタビューに答えて「いままでで最高のファズはBURNSのBUZZAROUND。もう6年以上前に製造中止になっちゃったけど」と答えています。D.A.Mのデヴィッド・メイン氏は「フリップ先生が実際にBUZZAROUNDを使ってる写真をみた事がある」と言ってますが、さっきまで懸命に検索してみたんですけど、さすがにそれはネット上にはなかったですね。
 機材フェチ(しかもかなり偏った嗜好)のフリップ先生ですが、70年代中頃からはそのBUZZAROUNDに変えて、ギルドのFOXEY LADY(3ノブ・バージョン/BIG MUFFと同じ中身/写真右参照)を使うようになりました。恐らくデヴィッド・ボウイ『HEROES』での客演でも、そのFOXEY LADYが使用されたもの、と思われます。

 で、やっと本題です。JMIのBUZZAROUNDはオリジナルと同じ、NKT213という60年代のNOSゲルマニウム・トランジスタを3ケ使った回路になっています。TONE BENDER MK3の回路に似ている、と言いましたが、それは当然サーキット構成、という意味でして、トランジスタはもちろん違いますし、BUZZAROUNDでは(オリジナル/復刻品ともに)アンプで使用されるようなラグ板で回路を組んでいます。そのため見た目は違うモノのように見えますね。
 ノブは3つで、「SUSTAIN」「BALANCE」「TIMBRE」という表示になっています。実は1966年のオリジナルでもその通りの表記で、それをそのまま復刻しているわけですが、正直いってそのツマミの効用は覚えるのが大変面倒くさい、といいますか、理解するのにかなりの時間のテストが必要かと思われます。その辺は次回の「MK3とBUZZAROUNDの回路比較」で述べますが、JMIの公式(英語)HPでも「世界で最もミステリアスなファズ」と紹介されていることでもわかるように、わりと近年までその中身も外観も謎が多かったのは事実です。

 肝心のそのサウンドに関しては、恒例ではありますがJMIが公式に製作した復刻版BUZZAROUNDのデモ動画をご覧頂ければと思います。プレゼンターはすっかりお馴染み、のジョン・パーさんです。残念ではありますが、このデモ動画ではセッティングがあまり変えられておらず、ガリンガリンのファズ・サウンド1種類のみしか確認できません。しかし、これも後述しますが、その音のバリエーションは、ジョン・パーが動画の中で言っているようにTONE BENDER MK3同様に大きな可変が可能になっています(ギター/アンプに当然大きく依存しますが)。フリップ先生がクリムゾンのファーストで披露したような、モーモーのロング・サスティンを生み出すことも勿論可能です。

 強烈なロング・サスティンと可変幅の広いトーン、そういったポイントがBUZZAROUNDの独特な魅力なワケですが、アフロヘア時代の(笑)フリップ先生&クリムゾンのファンであれば一家に一台、と言いたくなるようなファズではあります。が、前述したようにお値段は多少張ります。当方でもこのJMI製BUZZAROUND復刻品を仕入れてはいますが、もし興味をもたれた方がいれば別途お問い合わせ下さい。(この項続く)



追記:とある方から情報をいただきましたので追記します。おおっ、まぎれもなくBUZZAROUNDをフリップ先生本人が使ってる、という証拠写真2点ですね。先生のペイズリー柄ジャケットも素敵ですが(笑)、それよりもいつものごとく足踏みペダル3台に混じってプラグされた現物のBUZZAROUNDに感動です(H様、情報提供有難うございました)
 

No comments:

Post a Comment