6.14.2011

JMI - Tone Bender MK3 Reissue


 「スッゴイ気に入っている」とダイナソーJRのJマスシス氏が仰ってたという、JMIの復刻版TONE BENDER MK3をご紹介したいと思います。このTONE BENDERも既に日本に入荷しており、随時出荷中ですので、もし興味をもたれた方がいれば是非お試しいただければと思います。

 まずはおさらいとなりますが、このMK3のオリジナルは1970年代にVOXブランドが発売したVOX TONE BENDER MK3になります。当時、その中身はSOLA SOUNDが製作しており、ゆえにその中身はSOLA SOUNDのTONE BENDER MK3とまったく同じもの、ということは以前もご紹介した通りです。

 ですがこの 真っ黒い筐体とサイケなオレンジのロゴは、インパクトが絶大であるにも関わらずなかなかお目にかかることがないですよね。70年代のMK3は多様なブランドから沢山のOEM製品が発売されたことや、「VOX」のブランド・ライツがウロウロと移動していたこともあって、殆ど有名になることもなく放置されていたモデル、という位置づけなのかもしれません。
 で、昨年イギリスのJMIは、その真っ黒い筐体のMK3を復刻しました。勿論「VOX」の名前は使えませんので、筐体下部にあるロゴは「JMI」と変えられていますが、他のJMIがリイシューするTONE BENDERシリーズ同様に、当時のスペックをそのまま再現して製造されたモデルとなります。

 外見でも判りますが、エフェクターを上から見たときに、左側にギターのインプット(INSTRUMENTジャック)、右側にアウトプット(AMPLIFIERジャック)がある、なんていうのは現在のエフェクター事情からいえばあきらかにオールドファッションで使い勝手がよろしくない(笑)仕様ともいえるのですが、その辺も「オリジナルに忠実に」というワケですね。

 コントロールですが、3ノブのTONE BENDER MK3回路は、FUZZノブ、VOLUMEノブにくわえてTONEのノブ(右上のツマミ)があります。このツマミがまたヤヤコシイんですが、左にひねればトレブリーに、右にひねれば暗い音に、という具合になっています。よってノブの表示は「TREBLE/BASS」となっています。これも、70年代のオリジナルと同様の仕様です。
 ジャックは例のごとく、ではありますが、TONE BENDER関連製品ではお馴染みとなった、MADE IN ENGLANDの黒いプラスティック製のクリフ・ジャックです。

 さてさて、中身を見ていきます。オリジナルのVOX TONE BENDER MK3では茶色のプリント基板でしたが、中身だけは時代を反映してか(?)緑色のプリント基板を使用しています(註:たった今検索して知ったのですが、本来PCB / PRINTED CIRCUIT BOARDは「基盤」ではなく「基板」と書くのだそうです。おそらくいままで多くの箇所で誤記してると思われますが、ご容赦願います。スイマセン)

 ちなみに左の写真の一番左にボンヤリと映っているのは白いスポンジでして、筐体内部で電池をくるむためにあるものです。古いTONE BENDER MK3もスポンジを使って電池をくるんでいたのですが、ヴィンテージものの内部を見るとドロドロにスポンジが溶けているものを見かけますよね。JMIが採用した、この新しくて白いスポンジがどのくらいドロドロに溶けるのか、は現時点では未確認です(笑)。

 裏蓋をあけても基板のプリント面しか見えませんので、回路は容易く確認できません。バラすのはちょっと面倒だったので(笑)、回路に関しては今回はJMIから貰った内部写真を掲載します。まず目につくのは赤いWIMAのコンデンサ「MKS4」ですね。それこそ60年代以降、イギリスのみならずヨーロッパ中では定番で人気の高いWIMA製品ですが、それが採用されていますね。

 そして気になるのはトランジスタですが、JMIのMK3ではNOSのブラックキャップOC75を使用しています。以前書きましたが、60年代後半〜70年代前半のオリジナルTONE BENDER MK3はトランジスタの特定ができません。カタログ・スペック上ではOC75、OC81D、OC71(シルバーキャップ)、完全に型番が無記載のモノ、他いろんなバリエーションが確認できてるのですが、モデルごとに変えたり、もしくは時代で変えられたり、というワケではなさそうです。
 いずれにしろ最初のMK3回路ではPNPのゲルマニウム・トランジスタが採用されてたことに変わりはなく、今回のJMIもゲルマ、しかも贅沢にOC75を3ケ使用してMK3を組み上げてます。

 で、音に関して。今イギリスJMIではこのモデルと、全く同じ中身ですが筐体の色/デザインだけが違う「JMISOUND FUZZ(ROTOSOUND FUZZのクローン)」のデモを制作中、とのことなので、サンプル動画はもうしばらくお待ちいただければと思いますが、MK2とは全く違う独特のMK3のディストーション・サウンドは豪快で楽しいモノです。

 シンプルながらも面倒くさい(笑)60年代のファズ回路とは違い、コントロールも明瞭で判りやすく、操作しやすいペダルです。また、低域は控えめで、中域はプリプリ、さらにTREBLEノブでシャリシャリなトーンにする事もできて、幅の広いサウンドを作ることができます。その辺も、冒頭で書いたようにJマスシスが気に入ったポイントらしいですね。

 なお、オリジナルのTONE BENDERは70年代前期のものまでがゲルマニウム・トランジスタを使用したファズになります。以前も書きましたが、黒い筐体に入ったVOX TONE BEDER MK3には、70年代後半に発売された後期バージョン(ロゴの位置が違う)があり、それはシリコン・トランジスタを採用し、回路も全く別のものに変更されたモデルとなります。

 先日このTONE BENDER MK3の回路図を探してたときに、興味深いネタに巡り会いました。それは(同様にJMIが復刻発売している)英国BURNS/BALDWIN社が発売した有名な「BUZZAROUND」は、このTONE BENDER MK3回路に非常に似ている、という点です。現在BUZZAROUNDの実機も手元にあるので、その辺を次回以降、あらためて検証したいと思います。
 

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