

このワウ「DEL CASHER SIGNATURE WAH」は当初2010年発売、とされてきましたが、実際にブツが出来上がったのは2011年になってからでした。当然当方でもその取り扱いを開始しており、日本でも現在入手可能です。早速そのワウの詳細を見ていただきたいと思います。
一見しておわかりのように、そのワウは67年の英国製VOX WAHのルックスを復刻したものです。これまでも数々のTONE BENDERリイシュー品の広告等でも打ち出してきたように、現JMIは「ブリティッシュ・メイドのブリティッシュ・トーン」にこだわっているので、ああナルホド、とその意図は判りやすいわけですよね。
ここで小さな余談を挟みます。JMIの本国ウェブサイトでは「限定200ケ」と書いてあり、商品の中に封入された保証書には「限定100ケ」と書いてあります。なのに、筐体の裏には「限定250ケ」と書いてあります。何やってんだJMI(笑)。



とはいえ、デル・キャッシャー本人の協力を得られたのはさすがJMIですね。実はデル・キャッシャー氏は大変気難しい人物としても知られ、つき合うのは大変だ、という話を聞いた事があります。JMIのスタッフからも「その噂は本当だ」という話を聞きました。今回の製品が完成に至るまで、その中身とか外観とかに関して、アレもコレも、とデル・キャッシャー本人から指示が出ていた、ということも聞いています。もしかしたらデル・キャッシャー氏は、自分が言い出しっぺのエフェクターなのに、なんで製品化されたブツにはクライド・マッコイなんてヤツの名前が入ってんだよ!といまだに40年前のことを恨んでいるのかもしれませんね。勿論未確認ですが(笑)。

まずそのひとつは、インプット/アウトプットの位置です。向かって右側がインプット、左側がアウトプットです。つまり、現在一般に知られるワウ・ペダルと同じ向きになっています。67年の英国製VOX WAHはそれが逆だったわけですが、ここに関しては「デル・キャッシャーの持っているプロトタイプに準じた」とのこと。
そしてそのインプット/アウトプットの周囲にある「WAH WAH」のレタリングですが、オリジナルはステッカーだったのに対し、JMIの復刻品は塗装で処理されています。オリジナルのグレー・ワウではそのステッカーを剥がしちゃう人が多いわけですけど(笑)、JMIのほうはそういうわけにはいかねえぞ、ということになりますね(笑)。
そして中身です。インダクターは60年代のNOSパーツだ、という250Kのインダクターが採用されています。誰がどう見ても、そのインダクターに掘られているロゴは(我が日本がほこる)TDKのロゴなわけです。


グチグチとその外見を書いてきましたが、問題なのは音、ですよね。このJMI製DEL CASHER WAHはデモ動画が既にあるので、ここでも掲載してみます。
皆様既にご承知のようにワウの音ってのは入力される信号の周波数成分と、そしてアンプ側の周波数成分に大きく左右されるので、どんなギターでもこういう音になるぞ、てわけではありませんが、さすがに音は現行品のワウとは違います。多くのエフェクター・ビルダーが過去にも苦労されたように、やっぱり100Kのポット、そして250Kのインダクタ、それらと相性を併せたワウてのは、古くさくて美しいスイープを生み出しますよね。実はJMIもデル・キャッシャー本人もこの完成品のサウンドにすごく満足してるそうです。
以前のポスティングも含めてここまでワウの歴史とかデル・キャッシャーに関して書いてきた通り、実際には60年代当時デル・キャッシャーはこういうワウを使ったわけではありません(彼が使ったのはプロトタイプだから)。そして60年代に英国でほんのわずかだけ製造されたJMI/VOXのグレー・ワウも、細部に関していえばこの復刻品と同じではありません。今回のJMI DEL CASHER WAHはその折衷案ともいうべき商品なわけで、その辺の細かい事情を知っていただければな、と思います。そして最新の英国産ワウが生み出すクラシックなスウィープ・トーンを楽しんでいただければ幸いです。
さて最後に余談です。もうちょっとなんとかすりゃ、もっと面白くなるのになー、という当方の個人的なワガママを、既にイギリスJMIにぶつけてあります。当方の案とは「デル・キャッシャー・ワウは米国製プロトタイプのままで」そして「グレー・ワウは英国ソーラーサウンド製VOXワウそのままで」復刻品を作る、という案です。あまり期待はできませんが、まあ言っとくだけは言っとこうかな、と(笑)。
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