4.27.2012

Jimmy Page, Dec. 1968


 ゴールデン・ウィークだそうです。皆様におかれましては、益々休日を利用したファズ探求に余念がない時期かと思われますが、当方はまたしても(毎年のことですが)仕事づくしの期間となります。なので今のウチにちょっとヨタ話を書いておこうかな、と思います。

 見てお判りの通り、ジミー・ペイジ先生の古いインタビュー記事です。データを先に書いておきますと、アメリカの音楽誌「ヒット・パレード」の1968年12月号に掲載されたページです。時期的にはニュー・ヤードバーズという名前を捨てて、レッド・ツェッペリンと改名した直後、となり、丁度この頃にジミー・ペイジはアメリカに渡ってアトランティック・レコードと契約を結んだ、という時期になります。
た だしご覧頂いてすぐ判る様に、写真には「むかしの」、つまりヤードバーズのメンバーの写真が使われていますね。インタビューの中で既に「古いヤードバーズは解体され、新しいバンドをやり始めた」旨が発言されています。キース(・レルフ)とジム(・マッカーティー/共に昔のヤードバーズのメンバー)が、新しい音楽をやることにウンザリしていた」「彼らはサイモン&ガーファンクルのような音楽をやりたがっていた」。そしてペイジ先生は素敵なひと言も残しています。「新しいバンドにはキーボーディストが欲しかった。しかし、ギターこそがメインなのだ」。
 それからこれは余談ですが、同インタビュー中に「なんでイギリスのドラム・サウンドはいつもあんなに貧弱なの?」という奇妙な質問に対し、ペイジ先生も「そうなんだよなー、エンジニアがあんまりよくないんだよな」なんて、ちょっと酷い(笑)話もしていますね。

 さて、このインタビューの一部は、60年代にペイジ先生がTONE BENDERに関して、リアルタイムで語っている貴重なインタビュー、として有名です。そのクダリを以下に引用してみます。

HP:あなたのギターに繋がっている、あの変わった機材は何?
JP:TONE BENDERっていうんだ。僕のためにカスタムメイドしてくれたものだ。僕のギター・サウンドの75%はこれで出来てる。“FUZZ BOX”に似てるけど、もしやろうと思えば、サステインを数分だって持続させることもできる。オン・オフのスイッチがついてて、ファズのサウンドも出せる。もう今では製造されてないんだけどね。僕の友人が、僕の為にハンドメイドしてくれたものだ(編集部註:ジミー・ペイジのTONE BENDERが欲しいギタリストは、ゲイリー・ハーストに連絡を取るといい。住所は英国WC2ロンドン・チャリングクロス通り100番地・マカリス・ミュージカル・エクスチェンジ内。価格は$35ほど)。


 既に当ブログでも、ジミー・ペイジがTONE BENDERを使うようになる以前からロジャー・メイヤーのカスタムメイド・ファズを使っていた、ということを書きましたが、60年代末にはもうTONE BENDERを使っていたことは周知の通りです。とても興味深いのは、上のインタビューにおいて「俺のサウンドの75%はTONE BENDERでできている」なんて発言もそうなのですが、「その気になれば何分でもサステインを延ばし続けることができる」(註:まあこれは多分に大げさに表現したんでしょうけど)なんて言ってることとか、ゲイリー・ハーストを「友人」と呼んでいる事等も面白いですよね。

 しかし、ペイジは後のインタビューで「ずーっとTONE BENDERをオンにしてたわけじゃない」という発言もしています。「HOW MANY MORE TIMES」のリフとか、「NO QUATER」「BLACK DOG」「TANGERINE」のような曲ではアンプの歪みに加え、ミキシング・コンソールでオーバードライブさせて歪ませた、なんてことも言ってます。ペイジ・サウンドてのはなかなか答えが難しい、永遠の課題ですねえ。

 というわけで、既にこれもネット上で有名になってしまいましたが、上の発言のウラを取るという意味でとても面白い画像です。ジミー・ペイジがロンドンのMACARI'Sで入手したTONE BENDERの納品書の記録です。凄いですねえインターネットてのは。こんなモノまで出てくるんですから。

 この画像は現在のMACARI'Sのアンソニー・マカリ氏が「こんなん出てきたよ」といってイギリスの掲示板に昨年秋(2011年10月)にアップしたものです。67年1月付けですが、66年の12月にペイジの元へ納品していることがわかります。これは「領収書」ではなく「納品記録」なので、記載されたペダルを全部ペイジ先生が買ったわけではありません(ペイジに2ケタダであげた、ということが書かれていますね)。ペイジ先生は66年12月20日にTONE BENDER PROFESSIONAL MK2を1ケ、それから同時に「TOP BOOST」と書かれた正体不明のブツを1ケ、MACARI'Sから入手しているのが確認できます。
 案の定この画像がアップされたその掲示板では周囲から「このTOP BOOSTてのはなんだ?」とマニアックな質問がされまくっていましたが、正確には不明なママです。推測では、AC30のTOP BOOST回路(当時部品として別売りされていたモノ)なんじゃないか、という話もありましたが、定かではありません。

 そして続いてはTHE BIG MUFF PAGEのキット・レイ氏からお借りした写真です。これは1970年2月イギリスの「ビート・インストゥルメンタル」誌に掲載されたSOLA SOUND社の広告です。MK2ではなく、リニューアル後のMK3になったTONE BENDERの広告です。そしてこの広告には「レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジが使用し、オススメするペダルだ」なんてキャッチコピーも踊っていますね。

 一目みてお判りの様に、このデザインはSOLA SOUNDがOEM製造したVOX TONE BENDER MK3と同じモノで、自社ブランドとしては(こんな黒いデザインではなく)銀色の筐体を用いてTONE BENDER MK3を発売したのはご承知の通りです(追記;この黒いカラーリングをもったSOLA SOUNDのTONE BENDER MK3も僅かながら存在するようです)。
 さらに、既にこれも書いてきたように、ジミー・ペイジが使ったTONE BENDER MK3はこれではなくて、ROTOSOUNDブランドから発売された、シルバーグレイの筐体を持った「ROTOSOUND FUZZ」だったことも、写真等からわかっています。

 とはいえ以前こちらのページで書きましたが、SOLA SOUND/MACARI'Sという楽器店はVOXブランドの取り扱い店でもあり(店の看板にはデカデカとVOXと書いてあったように)、VOXの名をさんざん使いまくって宣伝してきたお店ですから、これを自社製品としてではなく「VOXブランドで」発売したのも頷ける話でもあります。
 TONE BENDERに関する古い資料がこうやってポロポロと出てくるのは、TONE BENDERオタクとしては嬉しい限りなのですが、出てくるたびにこんな風にオカシな点がイチイチあるんですよね(笑)。まあ、笑うしかない、というカンジですが。

 さて、最後に動画を1本貼っておきます。「IT MIGHT GET LOUD」というドキュメンタリー映画に関しては以前にも触れましたが、今丁度YOUTUBEに全長版がアップされています。おそらくそのウチ削除されるかとは思いますが(笑)、もし未見の方は是非。ペイジ先生の歴史がよくわかります(ただし当然ですが英語オンリーですけど)。
 

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