5.04.2012

Park - Fuzz Sound


 そういえば今まで単体でこれを載せた事ねえな、と思いまして、あわてて書いてみます。PARKブランドのFUZZ SOUNDです。青い筐体に入った、SOLA SOUNDのOEM製造によるMK3です。

 ご承知のように、PARKというブランドはこのファズに限らず、マーシャル直系のアンプ・ブランドとして昔から有名ですよね。元々イギリスでマーシャルというアンプ・メーカーが、自社以外にも許可を与えてマーシャル製品を製造させてたことに起因するのですが、1965年以降、マーシャルはその方式をとりやめ、全製品を自社で製造/管理するようになりました。

 とはいえマーシャルも人の子(余談ですが、先日2012年4月5日ジム・マーシャルさんが亡くなりました。お会いした事はないのですが、伺いたいことは山のようにあったので、残念ですね…)。別ブランド製品として、それまでアンプを製造していたそれらの工場の製造を許していました。そんなこともあって、PARKのアンプはマーシャルのアンプと中身が全く同じものだった、とのこと。
 PARKブランドは1982年に終了しますが、現在ではマーシャル社の傘下ブランドとして、アジア生産の安いアンプ等を発売することで存続しています(PARK BY MARSHALL、というクレジットがされていますね)。

 さてさて、1966年に「マーシャル用のOEMファズ」として、SOLA SOUND社が製造し、翌67年にマーシャル社が「SUPA FUZZ」を発売した、というのはこれまでも書いた通りです。で、SOLA SOUNDが自社製品のTONE BENDERを「MK3」にアップデートしたときに、マーシャルはどうしたか、というと、古い回路(MK2)のママのSUPA FUZZはそのまま継続して発売されていました。もちろんその理由は不明ですが、SUPA FUZZは、同時に発売されたワウ「SUPA WAH」と共に、70年過ぎまで販売されていたことが確認できます。

 しかしマーシャル傘下ブランドとも言えるPARKから、そのアップデートされた新しいMK3回路を持ったファズが発売されました。それがこのPARK FUZZ SOUNDです。

 写真でもわかるように、PARKのFUZZ SOUNDには2ノブのものと3ノブのものがあります。基本回路はまったく同じモノで、一部の抵抗値が変更されています。下のほうに、信頼できるファズ系サイトである「FUZZ CENTRAL」の回路図を参考までに載せておきますが、ご覧のように2ノブの方では「FUZZ」のコントロールが固定されていることが判ります。
 しかしながら(興味深いことに)2ノブ版のFUZZ SOUNDのツマミには「VOLUME」と「FUZZ」と書いてあります。つまり「FUZZ」側のツマミは3ノブのMK3回路でいうところの「FUZZ」とは違う効果をコントロールするものだということになりますね。

 それから、PARKにかぎらず他のOEM製品でもよくあることですが、SOLA SOUNDの自社ブランド製品の「TONE BENDER(MK3/MK4)」とは、一部の抵抗値が異なるモノが確認されています。FUZZ CENTRALとか(以前紹介した)スチュワート・キャッスルダインさんとかはこういう細かい定数違いをマメに計測/研究されている方で、尊敬しますね。

 とはいえ、基本的にPARKのFUZZ SOUNDはTONE BENDER MK3とマンマ同じモノです。というわけで、既に世界中でいろんなクローン・ファズが発売されているのですが、2つほど簡単に触れたいと思います。
 まずは今日本でも容易に入手可能な、VINTAGE PEDAL WORKSHOP製のFUZZ SOUND。何度も書いてきましたが、このブランドは昔JMIでエフェクターを製造していたスティーヴ・ジャイルズ氏が新たに興したブランドで、ここから出たMK3クローンはPARKのFUZZ SOUNDを模してデザインされているわけですね。

 それから、D.A.M.が製造したMK3クローン「FUZZ SOUND」。こちらは2010年くらいに数十個だけ製造され、その後長らく作ってなかったのですが、最近また作り始めたモノがチラホラと売りに出される機会があるようです。写真に掲載したのは2010年11月製造品なので、初期の段階で作られたモノで、トランジスタにはOC76、OC45、OC71というゲルマ・トランジスタの組み合わせが採用されています。

 ただし補足として付け加えますが、D.A.MのFUZZ SOUNDには違ったトランジスタの組み合わせのものとか、シリコン・トランジスタを採用したものとか、回路を一部変更したモディファイものとか、いくつかのバリエーションも存在します。もともとデヴィッド・メインがこのファズを作るときに「ノブを2時以降まで回せばオリジナルのMK3/MK4回路より強力な効きになる」とわかって作ったモノなので、オリジナルを忠実に再現した、というワケではありません。

 最後になりますが、現在進行形で進んでいる話をふたつほど。スペイン・バルセロナのMANLAY SOUNDと当方で「新製品、どうすべ?」なんて話をよくしてたのですが、とりあえずTONE BENDER MK3のクローンを作ろう、ということになりました。勿論D.A.M.とかJMI、V.P.W.のクローンがあることを承知の上で作るので、何かしら考えなきゃなー、なんてことを相談しているのですが、「色どうすべ?」「MK1が金色、MK2が銀色だから、やっぱ青かなあ」「じゃあPARKスタイルだね」なんて話で落ち着いてきました。ということで青いMK3クローンを近々ご紹介できると思います。ラベル・デザインは当方がやることになります。
 それと、すでに企画開発が進んでいるMANLAY SOUNDの「POWER BOOSTクローン・ペダル」も、できれば同時に発売することになると思います。POWER BOOSTはTONE BENDERとはちょっと異なっていて、“ファズとディストーションの中間に位置するようなブースター” という、もの凄く面倒くさい位置づけの(笑)ペダルですが、MANLAY SOUNDでは1971年の初期POWER BOOSTの「18Vバージョン」を作ろうと思います。こちらに関しても詳細は続報をお待ち下さい。


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