5.10.2012
Orange Boxes from England
1970年代の半ばを過ぎると、COLORSOUNDのエフェクター製品は既にシーンのトップランナーとは言えなくなってしまいます。つまり、他にもバンバン人気エフェクターが発売されるようになった当時のシチュエーションの中で、時代遅れ感が先だってしまったのだと思われます。それがイメージの問題なのか、純粋に製品力の問題なのかはわかりません。ただ、そういう状況にマーケットが変わっていったのは、日本製品の質の高さと価格の手軽さ等も強く影響していることは間違いないと思います。
今回掲載するのは、1980年に一度会社を畳んでしまうことになったMACARI'Sの最後の方のリリース製品です。どういう経緯かはわかりませんが、当時MACARI'Sは「SOLA SOUND」でもなく、「COLORSOUND」でもなく、いろいろなブランド名を新しく用意して、製品ラインナップを拡張しています。実はその中身がまったく進化もないままの昔のママのブツなんですよね。
まずは1977年に発売されているGEMCOというブランドのTONE BENDERです。そう、これもTONE BENDERなんですよね。真四角でオレンジの鉄製筐体に入れられたファズで、ご覧のように回路は3トランジスタのTONE BENDER JUMBO回路そのままです。ただしコントロールは2ノブになっており、「VOL」と「TONE」のみがあてがわれています。内部に可変抵抗が入っているので、もしかしたら歪みはこの内部でコントロールする仕様なのかもしれません。
当初このTONE BENDERは(例えばVOXとか、B&Mとか、CARLSBROのOEM製品のように)他社のために作ってあげてたブツなのかな、と思っていたのですが、どうもGEMCOという会社は無かった模様です。ただし中身を見れば、これを作っていたのはSOLA SOUNDで、シリコン・トランジスタを用いたJUMBO TONE BENDERそのまんまだ、というのは一目瞭然ですが。
さらに続けます。正確な年代は不明ですが、おそらく1979年頃に発売されたIMP(INTERNATIONAL MUSIC PRODUCTS)というブランドのファズで、もう詳しく見るまでもなく、上述のGEMCO TONE BENDERとまったく同じブツのリブランド製品だ、ということがお判りいただけると思います。一部、トランジスタや可変抵抗のパーツが違うブツが採用されていることが確認できますが、このあたりは改造とかMODではなく、単に採用パーツの「誤差」ですよね。
さらにさらに。こちらはAMP(ASSOCIATED MUSICAL PRODUCTS)というブランドで発売された「FUZZ」。中身はいうまでもなく、外観にいたるまで上述したGEMCO TONE BENDERやIMP FUZZと同じモノですよね。
とりあえず3つほど70年代末に発売されたオレンジのTONE BENDERを並べてみましたが、これの正体がおぼろげながら見ることが出来る資料画像がありますので、下の方に掲載してみます。これは1980年に「AMP」ブランドの新製品をユーザーや楽器店に報せる書面なのですが、差出人は「ジュリア・マカリ」。会社名は「EUROTEC LONDON」。ブランド名は「AMP」となっています。
COLORSOUNDというブランドは1980年まで続いていたことは確認できていますが、マカリ・ファミリーは1980年に一度SOLA SOUND/MACARI'Sという会社を畳んでいるというのは前述の通りです。しかしその直後、(おそらくラリーかジョーのどちらかの奥さん、と思われます)代表者を変えて、別な会社を興した模様です。
で、この手紙の文言にもあるように、ユーロテックという会社の1ブランドとして「AMP」という名を用いたことがわかります。そして推測の域を出ないながらも、まず間違いないだろう、ということのひとつに、上で掲載した「IMP」とか「GEMCO」とかの正体不明のブランドも、同様にマカリ・ファミリーが新しく用意したブランドだろうと思われます。
以前1度だけEUROTECブランドの黒い「BLACK BOX」というファズの写真を掲載したことがありますが、結局EUROTECというのはSOLA SOUNDの再出発会社/ブランドだ、ということになりますね。
右下に掲載したのは1980年のEUROTEC社「BLACK BOX」の雑誌広告ですが、「BLACK BOX MODULES」というペダルを紹介しています。これは「FUZZ(中身はシリコンのTONE BENDER)」「WAH」といった同じデザインのモジュールを繋げて「あたかもマルチ・エフェクトのように」使える、という古くさいアイデア(笑)の製品だったのですが、EUROTEC BLACK BOXはそのシリーズの「ファズ部分」に相当するペダルだということが判明しました。
それはともかく、この広告で要チェックなのは、広告主の住所です。これはMACARI'Sのあった住所そのままなわけです。上の手紙や、この広告の住所から、それら2つ(それ以上)のブランドは全部同じ「元SOLA SOUND」がやっていたもの、ということの証拠になるわけですね。
当時既にSOLA SOUND/COLORSOUNDというブランドはなくなっていましたが、それでもしぶとく形を変え、社名も変えて「いにしえの」TONE BENDERというファズ回路はオレンジ色の箱に入って80年代をサバイバルしようとしていた、ということになります。
最後にオマケとして掲載しますが、この「AMP」とか「IMP」とかいうブランドからは、TONE BENDERだけではなくCOLORSOUND OVERDRIVERの回路を持ったペダルも発売されています。しかし、せっかく違う回路のエフェクターなんだから、色とかデザインとか変えればよかったのに(笑)。おそらくオレンジ色の筐体を余らせてしまってたんでしょうね・・・(笑)。
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