4.09.2012

Silicon Powered Tone Bender (Part 1)


 別にシリコンがダメってワケじゃないんですよ。ていうか音だけの話なら(回路さえ同じなのであれば)もはやシリコンもゲルマもそんなに違うわけじゃない、ということは確証してますし。ただし、どちらが好きか、といえばゲルマのほうが好きなんです、個人的に。理由を聞かれても困るんですが、出来ない子ほど可愛いっていうちょっとマヌケな定説に、一番近いかもしれません(笑)。

 さて、冒頭で掲載した雑誌記事のような写真は、海外のギター雑誌のカラーサウンド特集ですが、雑誌名が判別できません。が、この原稿を書いているのは世界的なTONE BENDER研究家として知られるジェイムス・スティーヴンソンさんという方で(彼は各所がTONE BENDERクローン・ペダルを製作する際に、オリジナルの実機をよく提供している方でもあります)、彼が「COLORSOUND製品の歴史を紐解く」という原稿になっています。が、実は当方もこの文献をちゃんと読めていません(この画像しかないので)。是非全文を読んでみたいですねえ。

 ところで今回は、COLORSOUNDというブランド(何度も書いていますが、イギリスのSOLA SOUND社が70年代に新しく作ったブランド名)から発売されたTONE BENDERで、シリコン・トランジスタを用いたモノの紹介です。上の雑誌記事でもSOLA SOUNDとCOLORSOUNDの分別をはっきりさせていなかったり、という点も問題を複雑にしているキライがありますけど、COLORSOUNDといえば、やっぱりシリコンのTONE BENDER、ってイメージは強いと思います。記事で掲載されているTONE BENDERの大半がシリコンものだってことからもそういう点が見えますよね。

 ハッキリした時期、そして発売順に関しては、未だ正解が見えてはいませんが、その時期はおそらく1975年前後に集中しています。先ずご紹介するのは70年代中期に発売された銀色の筐体に収められたTONE BENDER(3ノブ)です。
 ご覧頂いて判るように、このペダルにはどこにも「COLORSOUND」というブランドが入っていません。というか、外見は以前掲載したゲルマ版のTONE BENDER MK3とまったく同じです。つまり、ある時期をさかいにして、TONE BENDER MK3が完全に回路をリファインしシリコン化たモデル、ということになります。

 ほぼ時を同じくして、OEM製品であるVOX TONE BENDER MK3もシリコン・バージョンに変更になりました。これの回路は上記したTONE BENDERと同じものです。外観に関して言えば、以前もちょっと触れた事がありますが、黒い筐体、オレンジのロゴ、という共通点がありながらも、TONE BENDERのロゴが筐体下の方に移動されています(註:ただし、シリコン版が全部ロゴが移動している、というわけではありません。回路が変更になった時期と、ロゴの位置が変更になったのは同時ではなかった、ということです。とはいえかなり近い時期なのは間違いありませんけど)。

 両方とも、回路は同じです。一部キャパシタや抵抗のパーツが違いますが、定数もほぼ同じもののようです。トランジスタにはBC184Cというシリコン・トランジスタが3ケ使用されています。以前紹介したB&MブランドのOEM製品「FUZZ UNIT」もこれと同じ回路を採用していましたね。

 シリコン・トランジスタを使用したTONE BENDERの殆どは、ワイドケース(=幅広の新しい鉄製筐体)というイメージもあるかと思いますが、それは間違いではありません。というかその通りなのですが、いわゆるスリムケース(ここに掲載したもの)でもシリコンものがあったんですよ、という意味でまとめています。デカい筐体になってから、に関しては次回別項にて改めて触れます。

 ところで、(現行COLORSOUND製品を発売している)現在のMACARI'Sのラインナップにも、スリム・ケースに入れられたTONE BENDERと名のつくファズ製品が2ケあります。ひとつはグレーのケースに収められたTC TONE BENDERという名のファズ。もうひとつはその名もズバリの黄色い筐体に入れられたYELLOW TONE BENDERというファズです。今回これらも同時にここで触れてみたいと思います。

 グレーのほうは「現行品のスタンダードTONE BENDER」という位置づけで製造・販売されているモデルで、商品説明いわく「70年代中期のJUMBO TONE BENDERの音を再現するファズ/どんな音かを知りたければエドウィン・コリンズ “A GIRL LIKE YOU” を聞けば一発でわかるでしょう/もしくは70年代中期のシン・リジー、アイズレー・ブラザーズ、バーナード・バトラー、プライマル・スクリームを要チェック」と書いてあります(大意)。回路の配置は一部違う箇所もありますが、結局このグレーの現行品TONE BENDERは、上のほうで掲載したシリコン版TONE BENDER(3ノブ)を復刻したもの、ということになります。

 さて、では黄色いほうはなんなのさ、というワケですが、限定版という触れ込みで(でも今も売ってますけど)発売されたこのモデルは、回路はそのマンマなんですが、トランジスタが違います。製品説明文には以下のように書いてあります。「これは72年のTONE BENDERをもとにして復刻したものだ/我々はSUPA TONE BENDERの基板回路に、60年代のBFY71というシリコン・トランジスタと、同じく60年代のOC72というゲルマ・トランジスタを搭載した/これにより、クラシックなファズ・トーンを再現した」

 ただし、データ通りであれば、BFY71はNPNトランジスタで、OC72はPNPトランジスタです。72年のTONE BENDER(=3ノブのMK3)は、3つともPNPのゲルマ・トランジスタを使用していた回路なので、そのまま同じではありません。また、トランジスタ以外の回路もシリコン・サーキット版の回路を踏襲していることからも、ハイブリッド仕様である黄色い復刻品が正確な72年製TONE BENDERと同じではないことは確かなので、どこを狙ったのかはいまいち定かではありません(註;ただし、もしかしたらこういう回路のモノがどこかにあったのかも知れませんので、断言はできないんですが)。ちなみにこの黄色いスリムケース入りのMACARI'S復刻版TONE BENDERには、上記した組み合わせとは異なるトランジスタを持ったバージョンも存在しています。ここに掲載したブツでは、ゲルマ部分にOC75(ブラックキャップ)、シリコン部分にBC184Cを使用していることがわかります。(この項続く)

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