6.13.2012

news from Manlay Sound, 2012 (part.1)


 スペイン・バルセロナのMANLAY SOUNDに関して、いくつかの最新情報を載せようと思います。まずはビルダーROMAN GILの最新インタビューです。これは既に世界的に有名なギター・エフェクターのデータベース・サイト EFFECTS DATABASE がメールにて行なったインタビューなので、聞き手はEFFECTS DATABASEの中の人、です(笑)。正直ここに書かれている内容の大半は当ブログで当方がいつも書いているようなことなので、多々重複する内容となりますが、いくつかの新情報もあるので、全文をそのまま翻訳しました(もちろん許可を貰って掲載してますよ)。ひとときおつき合いいただければ幸いです。



——どういうカンジでMANLAY SOUNDはスタートしたの?
ROMAN:僕がギタリストを目指したころから、自分のアイドル・ギタリスト——ジミヘンとか、エイドリアン・ブリューとか、ミック・ロンソンとか——の出しているサウンドがどうやって出来ているか、をずーっと長いこと調べてきたことから派生した、ってカンジだね。MANLAY SOUNDをやる随分前から、自分で使うためのペダルは自作してきたんだ。
 自作ペダルの最初の契機は、70年代にミック・ロンソンがどんなファズを使っていたかをどうしても知りたくて、それを研究し始めたことだった。当時ロンソンがどんなファズを使っていたかはハッキリしていなくて、情報が間違っていたりすることも少なくなかった。随分後になってから、デヴィッド・メイン(D.A.M.)によって「あれはSOLA SOUNDのTONE BENDER MK1で、1965年に50ケくらいだけ作られたものだ」と確定した。それから「本物を買う」よりももっともっと簡単に試すことが出来る、ってことで(MK1クローンを)自作してみた。最初は自分用に1ケだけ、ね。その後沢山の人がそれに興味を持ってくれたんで、eBAYを通じて販売もするようになった。2009年のことだ。MANLAY SOUNDを会社にしたのは2010年からだ。
 MANLAY SOUNDをやる何年も前から、趣味としてペダル制作することにはのめり込んでいたんだけど、GUITAR TUBE AMPSのホルヘ・ブエーノ(*1)には沢山助けてもらった。彼が僕にペダル制作のための参考書を1冊くれてね。その本に載っていたペダルをいろいろ制作してみた後、FUZZ FACE回路のファズを自作したり、FOXX TONE MACHINE回路を自作してみたり、という流れだね。
——ブランドの名前とか、ロゴとかはどうやって決めたの?
ROMAN:僕が小さかったとき、母ととても親しかった中華系の人がいてね、彼女が「万来」という言葉を教えてくれた(*2)。彼女はとても美しい人で、頭も良くて、見た目も素敵な人だった。彼女がMANLAYブランドのモデル、だね。
 2007年に僕のソロ・アルバム『VIA LACTEA』(写真左 *3)を録音したんだけど、そのアルバムは自分のレーベルから発売した。そのレーベルにMANLAY RECORDINGって名前を付けてたんで、エフェクター・ブランドの方にも同じ名前を用いたっていうわけ。ロゴも同じものを使ってる。AUTOCAD(註:フォント制作用ソフトウェア)で作ったフォントだよ。
——他のエフェクターとMANLAY SOUNDのペダルの違うところって、何だろう?
ROMAN:たいていのエフェクターよりは、見た目がいいんじゃないかな? 将来的にはもう少し手直ししようかなとも思っているけど。
 MANLAY SOUNDのペダルはハンドメイドで、ゲルマニウム・トランジスタを用いた回路の場合は、本当に慎重に選んで、勿論実際に耳で聞いて音をテストしたパーツを使うようにしている。当然、工場でライン生産されているブランドのペダルとの違いは、そういうことだろうね。
 自分で作っているペダルには本当に注意を払って手がけるようにしてるし、僕がミュージシャンなので、ミュージシャンとしての耳、いいギターといい真空管アンプ、そういうモノを使ってペダルをテストしている。
——ペダルの名前はどうやって?
ROMAN:うん。「RONNO BENDER」は、ミック・ロンソンが使ったことで有名なTONE BENDER MK1の回路。「66 BENDER」は1966年に作られたMK1.5の回路。「SUPER BENDER」はMK2回路だけど、名前は「MARSHALL SUPA FUZZ」と「TONE BENDER」のハイブリッドで考えた。「BABY FACE」はFUZZ FACE回路で、「XS FUZZ」はエレハモの「AXIS」の回路。
——それぞれのペダルはどうやって制作されてるか、教えてくれる?
ROMAN:全部僕が一人でやってる。いくつかのペダルのアートワークは、友人の日本人(販売もやってる)のTATSがやってくれた。彼はどんなペダルにすべきか、っていうアドバイスもくれる。サーキットはもちろんハンドワイアード、PtoP結線。ポットに直で配線するようにしてる。
 筐体は、いくつかのモデルではペイント済みのモノを購入して使うこともあるけど、たいていは自分で塗装してる。ハンマートーン塗装のものは全部自分で塗装してる。ラベルは手作りで、その上から保護クリアを吹く、ってカンジだね。
——見た目は重要?
ROMAN:当然一番重要なのは中身だよ。でも見た目だって重要だ。ペダルの見た目っていうのは「そのペダル/回路がどんな音を出すのか」を表現するべき、だからね。
——パーツのセレクションも重要?
ROMAN:もちろん。特にそこに気を使うね。質のいいパーツを使うことが重要なんだ——信号を通すキャパシタ、可変させるポット、出力するジャック、とかね。
——一番 “自慢したい” ペダルはどれ?
ROMAN:「RONNO BENDER」だな。は僕がペダルを(他の人のために)作るようになった最初のペダルだし、一番出来もいいと思う。そして一番売れてるペダルだね。だけど一番作るのが難しい。だから正確な音が出るトランジスタを探すのに時間と手間をかけている。ネルズ・クラインも買ってくれたし、ヘンリー・カイザー(*4)も使ってくれている。ヘンリーは「RONNO BENDER」を2ケ購入してくれて、彼からは「一番お気に入りのファズだ」と言ってもらえた。それから「THE SOUND」っていうオーバードライブも自信作だ。サウンドは最高だよ。多分誰にでも気に入ってもらえる、と思ってる。
—— 一番作るのが難しいのは?
ROMAN:「RONNO BENDER」は、回路を正確にチューニングさせるのが難しい。「THE SOUND」は基板がデカくて難しい。
——どんなジャンルの、どんなギタリストがMANLAY SOUNDのペダルを使ってるのかな?
ROMAN:僕が作ったペダルには、僕自身のテイストが出ている、って自分でも判ってる。自分が好きになれない音のペダルを「特別に」作る、っていうのが出来ないんだ。僕のテイストっておそらく「クラシックなサウンド」だろうし、だからそういう音がでるクラシックな回路を使って制作してる。
MANLAY SOUNDのペダルのユーザーは、ヘンリー・カイザー、ネルズ・クライン、ジェローム・ソリニー、(ストーン・ローゼズの)アジズ・イブラヒム(*5)、他にもいろいろ。そういえばヘンリー・カイザーは合計で4つのペダルを購入してくれてる。「RONNO BENDER」がお気に入り、ってことだけど、彼は「家に70種類くらいファズがあるんだけど、ライヴのためには「RONNO BENDER」と「(TECH21の)COMPTORTION」は外せない」って言ってたね。
——この先のMANLAY SOUNDの予定は?
ROMAN:今は、日本の販売元や、個人からのオーダーのためにペダルを作ることが多いんだけど、アメリカでの販売元が決まりそうなんだ。他の国でもいくつか話がある。一番の問題は、僕がセールスマンではなくて、販売の為に時間を使う事ができない、ってことだね。
——新作の予定は?
ROMAN:今ちょうどベース用のペダルを作っている。これはベース用のオーバードライヴ+ファズ、っていう2in1の複合ペダル(*6)なんだ。正式にいつ頃出るかはまだわからないけど、数ヶ月以内には発売にこぎつけたいね。



 そういえばROMANのアーティスト写真を載せるのは、ウチのブログでは初めてかもしれません(笑)。それもこれも含めて、当方が上記のインタビューに註釈を加えたいと思います。
*1 スペインの個人アンプ・ビルダーで、ROMANと仲良しだ、とのことです。MANLAY SOUNDのデモ動画の中で、いくつかブラックフェイスのFENDER系スタック・アンプを使っているものがありますが、その黒いアンプはこのGUITAR TUBE MACHINE製のカスタム・アンプだとのこと。
*2 どうでもいい事ですが、当然ROMANはこの言葉の意味を知らなくて、当方が教えました。勿論「千客万来」の「万来」なワケです。この中華系のオバサンが小さなROMAN少年が来るたびに「よく来たね」と笑顔で迎えてくれたのが嬉しかったんだそうです。初恋、でしょうかね(笑)。もちろん本来は「マンライ」と発音しますが、MANLAYとスペルされた単語は英語圏だと全ての人が「マンレイ」と発音します。
*3 今までも何度か書いた事がありますが、彼のこのソロ・アルバムはクラシックでメロウなロック・サウンドが満載の、面白いアルバムです。半分は英語、半分はスペイン語で歌ってる作品ですが、なんとこのアルバムには(デヴィッド・ボウイとの共演で有名な)ピアニスト、マイク・ガーソンが参加してます。マイク・ガーソンはROMANのオファーによって、彼が以前「ALADDIN SANE」に収録されたようなあのフリーキーなピアノ・プレイを披露しています。ボウイ・ファンは是非、聴いてみて下さい。
*4 詳しくは是非検索していただきたいなと思いますが、米西海岸出身のド変態ギタリスト、ヘンリー・カイザーは、その創造性/即興性/革新性で知られるベテラン・ギタリストです。30年以上にわたり、250枚のアルバムに参加した、という話もあるほど勢力的なプレイヤーでもあります。
*5 全部のギタリストに註釈入れようと思ったんですがスペースが足りません。アジズは有名ですよね?ストーン・ローゼズのジョン・スクワイアの後任ギタリストですが、シンプリー・レッドとかビル・ラズウェルとも共演してる人です。
*6 ベース用ペダルに関しては、既にほとんど完成しています。写真を貰ったのでここに掲載しますが、詳細に関しては実機を入手してから、あらためて紹介しようと思っています。
 その他、まだいくつか最新情報がありますが、続きは次回に持ち越したいと思います。

interview text courtesy of Effects Databass

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