
近年のTONE BENDER再評価の動きの中で、たとえばデイヴィッド・A・メイン氏の丹念な研究成果というものは、歴史的にもかなり面倒臭いTONE BENDERの全容を解明するのに圧倒的な価値として素晴らしすぎる程の成果だと思うんですが、一般的なギタリストにとってはちょっと専門的すぎますよね(笑)。やはり実機の復刻、つまり「昔のTONE BENDERてのはこんなモノだったんですよ」というものを現物で再現してくれた現JMIのTONE BENDER復刻品も、大きな影響力がある、と言って差し支えないと思われます。
さすがにTONE BENDERと名のつくFUZZをひと通り片っ端から復刻しまくってしまったJMIですから、今後という意味ではもう目玉が飛び出るほどの驚くような復刻はないだろうとは思われます。そんなJMIですが、やはり復刻当初には色んな試行錯誤があったことは事実です。

まず、MK1クローンです。JMIでの試作品として製作されたペダルなのでロゴなんかはないママですが、筐体や基本構造などは当然JMIのMK1リイシューと殆ど同じです。回路に関して何が違うか、というと、トランジスタの配置です。

余談ですが、プロトタイプに限らず、JMIのTONE BENDERリイシュー品の本体の中に入っているビルダーのサインですが、「SG」と入っていればスティーヴ・ジャイルズ氏が、「NB」と入っていればニック・ブラウニング氏(彼は今もJMIでペダル製作に従事してます)が作ったことを指しています。こちらのMk1プロトタイプはスティーヴ・ジャイルズ氏が作った者を、本人が所持していた、ってことになりますね。
これも書いた事があると思いますが、JMIが一番最初にMK1を発売(試作、でなく発売)した時、ゲイリー・ハーストが「回路が違うぞ、これ」と言って、結局その後自ら回路を作り直してもう一度発売をし直した、ということがありました。こちらの試作品は、おそらくそれ以前、つまりゲイリー・ハーストが指摘する以前に作られたモノだということがわかってます。

ところで音に関してですが、実はこのトランジスタがアベコベになった試作品MK1も、ほとんど正規版のMK1リイシューと同じ音がします。むしろ、ノイズや歪みのトーンという意味ではこちらのほうが使いやすいかもしれません。ただし、これはゲイリー・ハースト本人も言っていることですが、「65年当時とまったく同じでないと意味が無い」(註:これは恐らくJMIの会社からの要請だと思われます)とのことでリビルドされることになった、と思われます。
さてさて、おつぎはこちらもJMIの試作品で、MK1.5のプロトタイプになります。こちらは製品版とほぼ同じ回路で、筐体やロゴも殆ど同じ。トランジスタもブラックキャップのOC75が2ケ、という構成です。
じゃあJMIの復刻版/製品版と全く同じか、というと、チョットだけ違うところがありました。ひとつは(どうでもいいことですが)内部にプロトタイプとして製作した旨のサインが、2009年7月の製造日とともに記されていることです。こちらの回路はSG、つまりスティーヴさんではなくて、NB、つまりニック・ブラウニングさんが担当した模様です。


スティーヴ・ジャイルズ氏が今はVINTAGE PEDAL WORKSHOPというブランドでペダルを製作していることは上記しましたが、そのVINTAGE PEDAL〜も徐々に新しいファズのラインナップが揃ってきたようです。それに関しては次回で触れたいと思います。
No comments:
Post a Comment