1.16.2011

New Line-Up from Vintage Pedal Workshop

 
 前回でちょっと触れたように、今回はイギリスのスティーヴ・ジャイルズさんというビルダーが製作したVINTAGE PEDAL WORKSHOP(以下、VPWと略します)のファズを、まとめて紹介したいと思います。実はちょっと前に本ブログのこちらの記事で、一通りおさらいしたこともあるのですが、当時は「MK1クローン」「MK1.5クローン」「ZONK MACHINEの復刻品」のみでした。現在はいろいろラインナップも増え、またそれにまつわる状況も変わったようなので、改めて検証したいと思います。

 一番大きな状況の変化は何かといえば、かつて1965年に「世界初のMK1クローン」を発売したJHS社のファズZONK MACHINEに関して、VPWが商標登録した、ということです。つまり正規リイシュー、てことになりますね。ご承知のように、実はVPW以前から現JMIが「ZONK MACHINE」の復刻品を製作・発売していたのですが(とはいえ作ってる人は一緒=つまりSG氏なので、製品自体のクオリティーは全く同じだ思いますが)、正式にパテントを取得し、VPWがリリースすることとなったようです。

 VPW製のZONK MACHINEでは、初段トランジスタは固定せず(ローノイズのものをその度に選んでる、とのこと)、後段にはOC75を2ケ、という構成です。基本回路はMK1とまったく同じなので、音に関しても由緒あるMK1の系統、と言えると思います。

 また、面白いことに、VPWはこのZONK MACHINEを「コンテンポラリーな」、つまり、フツーの四角くて小さな筐体にいれたバージョンも発売しています。VPWではこれを「PBバージョン」と呼んでいるようです。

 さらにはON/OFFのダイオード・インジケータや、9Vのアダプターも使用可能にする等、まさしくコンテンポラリーなアップデートが施されています。回路自体は上記のデカい筐体版と全く同じですが。

 そして次には、同じく1960年代にJHS社が発売したシリコン・ファズSHATTERBOXも、VPWから復刻されています。オフィシャルHPによれば「70年代のB&M社が発売したSHATTERBOXの復刻」とあります。B&MはBARNES AND MULLINS LTDという会社で、自らは製品の製造をせず、SOLA SOUNDやJHSにOEM製造してもらっていた、というブランドです(余談になりますが、タテに3つツマミが並んだFUZZ UNITという名のファズが70年代にB&Mから出たのですが、そちらの中身はSOLA SOUNDのTONE BENDER MK3と全く同じものでした)。60年代にあった金色のオリジナルJHS製SHATTERBOXとどういう差別化を計っているのか、そのあたりの正確なことはわからないのですが、こちらのファズに関しては小さな四角い筐体での復刻のみが発売されていますね。

 それから、こちらも大きな状況変化、と言えると思うのですが、67年にマーシャルから発売されたファズSUPA FUZZが、VPWから復刻されています。これまでも紹介したように、オリジナルのマーシャルSUPA FUZZはその中身はSOLA SOUND TONE BENDER MK2と全く同じで、筐体だけが違っていたというファズなわけですが、今回VPWでは、その67年、つまり極初期のSUPA FUZZの筐体を復刻し(角張ったエッジの筐体/後年のモデルではややエッジが丸みを帯びています)、発売していますね。何が変化か、と言えば、なんとVPWは「SUPA FUZZ」という名前の商標登録まで獲得したんだそうです。

 上記ZONK MACHINEと話がカブリますが、SUPA FUZZもこれまでJMIからリイシュー品が出ていましたが、今後はこちらが(一応の)正規版てことになるんでしょうね、多分。
 トランジスタには王道のOC75を3ケ使い、とアナウンスされていますが、内部写真を見る限りはブラックキャップではなくシルバーキャップのものを使用していますね。昔からムラード等では伝統的に黒いケースをOC75に採用していますが、例えばNKT等では写真のような銀ケースのOC75(これはD.A.M.製品等でも採用されていますね)が以前からあり、サウンド的にはまったく遜色ない、と思われます。

 さて、以前まだVPWというエフェクター・ブランドが無かったころに、スティーヴ・ジャイルズさんは個人でMK1クローンを製作したことがあり、その筐体(以前こちらで紹介したもの)は「ちょっとマヌケじゃね?」と思わず言ってしまったほどなんかマノビしててそんなに好きになれないんですが、そのちょっとマノビした鉄製筐体を使用してVPWでは新しくFUZZ SOUNDというファズを作った模様です。
 こちらはその名からもわかるように、PARKのFUZZ SOUNDのクローン、ということになり、つまりはその中身はSOLA SOUND TONE BENDER MK3と一緒、ということになりますね。よって筐体も青いハンマートーンに仕上げられています。

 PARKのFUZZ SOUNDはD.A.M.からも(そのマンマのFUZZ SOUNDという名前で)、そしてJMIからも復刻(註:JMI版はJMI SOUND FUZZという名前で、筐体はPARKのデザインではなく、ROTOSOUND FUZZのデザインを模したグレー・ハンマートーン・カラーのものでした)されていましたが、3社めのFUZZ SOUNDクローンが登場、ということになりました。VPW製品では、トランジスタには3ケともAC128を使用しているとのことです。

 また、以前VPW製品で「VOX TONE BENDERみたいな筐体に入ったMK2クローン」を紹介したことがあり、それに触れて「なんでこんなワケワカンナイ復刻しちゃったのかな」と書いたことがありますが、そんな筆者の感想とは関係ないんですけど、VPWは同じ筐体で「MK1.5クローン」も発売しています。外見上はラベルの真ん中に小さく「MK1.5と入ってるか、MK2と入ってるか」だけの違いしかないので、結構判別が難しそうですが(笑)。おそらくVPWとしては、このいにしえの「VOX TONE BENDER」の筐体がお気に入り(?もしくは「有名な筐体だ」と認識してるのかもしれません)と思われます。MK1.5クローンではOC75を2ケ、MK2クローンではOC75を3ケ、というトランジスタ構成になっています。

 さて最後に、このグチグチャした基盤写真は何か、と言いますと、現在VPWでスティーヴ氏はイソイソとMK1クローンの製造に余念がないそうです。そのために準備された回路写真がこれ、というワケで、既に現在予約のオーダーを募っていますね。ただし、どんな筐体になるのかを確認できていないので、筆者はまだ予約できていません。だってダサい筐体ならイヤだし。
 トランジスタには3ケともOC75を使う、ということが今アナウンスされていますが、同時に「もし(オリジナルMK1同様に)トランジスタに2G381を希望するなら、別途相談にのる」とのことです。
 MK1、今まさにスペインのMANLAY SOUNDでも(限定スペシャル版「65 BENDER」のために)新しくその回路の製作をやってもらっているところなんですが、ほんの10数個作るだけでもかなり難儀してます。おそらく他のビルダーさんも同様だと思うんですよね。まったくもってMK1というジャジャ馬を扱うのは、作り手でも使い手でも大変だなあ、と痛感しています。大好きですけど。
 
all photos courtesy of Vintage Pedal Workshop / Richard Henry Guitars.

 

No comments:

Post a Comment