5.16.2011

Baja Tech Custom - Bone Bender

 
 さあ発売日まで2週間ねえぞ、という時期なのにまだ作業が全部終わってません(笑)。今月末に発売されるTHE EFFECTOR BOOKのことですが、恒例となりましたけど今回も先出しということで、その中身をご紹介しましょう。

 表紙画像にもあるように、今回はオーヴァードライヴ大特集です。まだ「THE EFFECTOR BOOK」が創刊される前のことですが、以前「OVERDRIVE BOOK」というムック本があったんですけど、そちらはTS808とかOD-1のような定番中の定番ともいえるペダルを研究してましたよね。ですが今回のこちらの本では、表紙がKLON CENTAURだということでもお判りのように、コンテンポラリーなオーヴァードライヴに特化した内容となっております(あ、でももちろんOVERDRIVEヒストリーみたいな記事もありますよ)。

 ペダルボードみせろよ、のコーナーでは、ジャパニーズ・ポストロックの雄、Sleepy.ab(.abはアブストラクトの略で、この部分は発音せず、スリーピー、というバンド名なのだそうです。たった今WIKIPEDIAで読んで知りました。笑)の山内憲介氏が登場。またベテラン・ギタリストに御指南いただくインタビュー・コーナーでは、四人囃子の森園勝敏氏が登場。森園氏は昔のこと(それこそ超名盤『一触即発』の頃のこととか)も凄い覚えてる方なんですね。ビックリしました。
 それから、以前ここでチョロっと告知させていただきましたが、当方がJMIのジャスティン・ハリソンにインタビューした記事が、本のケツのほうにババンと3ページも掲載されています。ポール・マッカートニー、ミック・ロンソン、ゲイリー・ムーア、ロバート・プラント、ピート・タウンゼンド、ジョン・エントウィッスル、ジョー・ペリー、そしてJマスシス(ダイナソーJR)といった、JMIと親交のあるミュージシャンの話をあれこれ聞いていますが、(編集長はおそらくあきれたと思いますけど)やっぱりTONE BENDER関連の話題が沢山でてきます(笑)。そんなワケで今月末発売の「THE EFFECTOR BOOK」VOL.12を是非お楽しみに。



 さて、今回のペダルは、アメリカのBAJA TECH CUSTOMというサンディエゴにあるカスタム・ペダル・メーカーのTONE BENDERクローンを取り上げます。公式HPはこちらになりますが、かなり早い時期からTONE BENDERクローンのペダルを作っているブランドで、クラシックなトーンを「コンパクトな」筐体で、というコンセプトでペダル作りを行っているそうです。
 コンパクトな、ということでもお判りのように、基盤はプリント、筐体はMXRのコンパクト・サイズ、ダイオードのインジケーターと、電源アダプターも採用、というアメリカらしい合理的で王道の作りとなっていることは写真で一目瞭然かと思われます。実は値段も大変お求めやすい価格帯のモノでして、150〜160ドル、という値段で直販されています。

 で、ご覧頂いている白いブツはBONE BENDERと名付けられた、このブランド最初のTONE BENDERクローンです。実は現在ではディスコン(廃盤)となった仕様のペダルなのですが、早速中身をチェックしましょう。
 MXR製品のように、基盤に直付けされた2ケのジャック)と、理路整然と配置されたコンパクトな中身のおかげで、たしかにギュギュっと小さいサイズに収まっています。実際に、当方が所持するいろんなTONE BENDERクローンの既製品の中では、このBAJA TECH製品が一番小さいですね、

 気になるのは回路でして、トランジスタはゲルマ2石のMK1.5回路です。ただし、抵抗のパーツ数からみて、おそらくイタリア製のVOX TONE BENDER回路を踏襲したと思われます。ここで使用されているトランジスタは、ひとつは文字がないので不明、もうひとつはRCA製のトランジスタですが、型番が判読できません。回路内部にはトリムポットがひとつ付いているのでおそらくバイアス調整の抵抗かと思われます。

 さてそのサウンドなのですが、当方が所持するTONE BENDER系FUZZの中で、このBAJA TECH製品がもっとも歪みません。そして最も出力も低いです。そしてそして、もっともトレブリーなんですね。
 たとえば以前「VOX TONE BENDER V829」のサウンドについて「カリンカリンにトレブリーで、ゲッソリとやせ細った」と書いた事がありますが、こちらのBONE BENDERではそういうゲッソリ細いという印象はありません。ややまろやかで、ゲルマらしい古くささは十分にある歪みサウンドです。
 それでもやはり、音はパキンパキンなわけです。そこで、これは筆者が勝手に思いついたことですが、実はこのBONE BENDERはいわゆるジミー・ペイジ的なレスポール・サウンドを作るのにヒジョーに手軽で便利なペダルだ、と思っています。
 ジミー・ペイジ本人は通常ファズをそれほど使いませんが、あの独特のパキンパキンなレスポール・サウンド(実際にはアレは特殊なレスポールと最高のマーシャル1959、その他多用なエフェクターがあってこそ、の音ですが)に擬似的に似せるために、これはアリだなと思ってます。つまりこれを通してギターのVOLはチョイと絞って、とすればパキパキなレスポール・サウンドが出来ますよという意味です。

 おそらく本ブログをお読みの方であれば、当方よりもっともっとジミー・ペイジ・サウンドに関してあれやこれやと思案を巡らせ、日々研究されている方がいるのは存じてますが、もうちょっと初歩的といいますか、敷居の低い位置から、こういう使い方もありかな、と思っています。たいていのハムバッカーとたいていのアンプの直刺しサウンドだと、音がモッコモコになるのは至極当然なわけですが、これを挟んでチョイとVOLを絞れば、全然違う世界が見える、というのはVOX TONE BENDER系ファズの魅力のひとつですよね。

 さてさて、現在サンディエゴのBAJA TECHでは上で紹介したBONE BENDERは製造していませんが、その変わりにモディファイ/アップデートされたBONE BENDERシリーズがいくつか発売されています。
 ひとつはBONE BENDER 1.5と名付けられた、MK1.5クローンです。こちらはノブが3つの仕様に変更されていますね。KILLと名付けられたその追加コントロールは「更なるゲイン/ブースト」のためのノブだそうです。上記したような低い出力を、この新しいノブで補っている、という構造になったようですね。

 続いてはBONE BENDER MK2と名付けられた2ノブ仕様。もちろんMK2クローンですね。こちらは当然ながら3つのゲルマ・トランジスタを使用した回路になっています。ちなみにこちらのMK2回路のBONE BENDERには、ごらんのように銀色の塗装が施されたモデルも存在しているようです。

 そして「最新バージョン」と喧伝されているこちらの3ノブのBONE BENDERは「無印」なんですが、上記した「1.5」と何が違うのか、説明されていません。ただしこちらは「VOX TONE BENDERクローン」であり、「1.5」同様にゲイン・ブースト用のKILLコントロールがついた、と書いてあります。見た目も構造も「1.5」と変わらないように見えるんですが、実際どう差別化されてるのかは確認できていません。

 BAJA TECH製品はみなトゥルー・バイパス回路で、インジケーターと9V外部アダプター・ジャック付き、そして塗装はパウダーコートのゴツい塗装が施されています。それから、正直気にする必要はまったくないと思うんですが、BAJA TECHのBAJAとはメキシコとアメリカの国境あたりにある半島の名前で、「バハ」と発音します。バハカリフォルニア半島はメキシコ領ですが、上記したようにこのBAJA TECHはアメリカのサンディエゴにあるブランドです。まあ、この中南米なカンジがバリバリなロゴのフォント(書体)の使い方を見れば、ラティーノの方のブランドだろうな、とは想像できるかもしれませんが。
 

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