7.14.2011

JMI Tone Bender - Players Series MK1 / MK2 / MK3

 
 イギリスJMIが「PLAYERS SERIES」と銘打って廉価版TONE BENDERを発売した、というニュースは以前こちらでも触れた通りですが、最近そのPLAYERS SERIESを一通り入手してみました。中身を検討してみて、お、これは面白いんじゃねえの?と思えたら、日本向けに輸入して販売しようかな、と考えたからです。

 もちろんこれらのファズが「面白いかどうか」はお客様それぞれに意見がある事とは思います。ホントなら本国で発売されている商品は全部輸入し、とりあえず店頭に並べる、というのが正しいディーラーのあるべき姿だろう、ということは承知しておりますが(笑)。でも、こちらも個人のリスクでシコシコと輸入/販売をしてるので、そんなにアレモコレモと商品を用意するわけにもいかないんですよ。もともと凄く趣味性の高いマニアックな商品ですので、バンバン売れるエフェクターでもないですし、ね。

 そんな貧乏性丸出しな当方のグチはともかく、とにもかくにも各1ケずつを入手しました。以前紹介した際の写真はJMIのオフィシャルから貰った写真だったんですが、こちらで掲載した写真は当方が実際に現物を撮影した写真です。実際に入手してわかったことは、当初の予定とはちょっと仕様が変更されていること、それから中身の正体が判明したこと、が挙げられます。加えて当然ながら全部をしばらくの間試奏してみて、ああなるほど、と気づいたこともあります。そんなワケでPLAYERS SERIESを改めてここでご紹介しようと思います。
 掲載した写真は上から順にMK1、MK2、MK3ですが、以下の文章は個別にモデルを追っていくことはせずに、ひとまとめに括って特徴を抜き出して書いてあります。なので、文章と写真の位置が離れてしまう箇所がありますが、その点はご容赦ください。ではまずはPLAYERS SERIESの大きな特徴を見ていきます。

1. 筐体 PLAYERS SERIESはみな26908PSLという型番のアルミ・ケースが採用されています。定番のハモンド社製品で、横幅98mm、縦は111mm、高さは38mm(裏蓋/ゴム足含む)というものです。いやー、小さいですよね。それに薄いです。まあ、いつものTONE BENDERに比べたら、という話ではありますが。

2. 電源アダプターとインジケーター ご覧のように、全てのPLAYERS SERIESにはACジャックが前面についています。センターマイナスの9Vアダプターが使用できます。もう詳しい方であればピンときたと思いますが、センターマイナスです。つまり、中身の回路にちょっとしたモディファイがあります。また、ダイオードのインジケーターが筐体の真ん中にあります。そのために、採用されているフットスイッチは9Pの青いクリフ・スイッチになっています。

3. トランジスタ 上でも書きましたが、電源はセンターマイナスを使用します。つまり、オリジナルの回路のように、PNPのゲルマニウム・トランジスタが使用できません。そこでJMIのPLAYER SERIESは、中身の回路にすべてNPNのトランジスタを使用しています。また、部分的にシリコン・トランジスタを使用した、ハイブリッド・ファズになっています。
 MK1では初段に2N3707(シリコン)、後段には2ケのAC127(ゲルマ)。MK2では初段にBC108C(シリコン)、後段には2ケのAC127(ゲルマ)。そしてMK3では前段にBC549Cを2ケ(シリコン)、そして後段に2N1306(ゲルマ)、という構成であることを確認しました。すべてNPNトランジスタです。
 JMIのカタログでは「NOSゲルマ・トランジスタを使用」とだけ書いてあったので、全部ゲルマなんだろう、と勝手に思っていたのですが、中身は違いました。もちろんこれは、電源アダプターを使用するためにこうしたんだろうと思います。そしてなんでシリコン・トランジスタを混在させたのか、それに関しては(当方の推測の域を出ませんが)後述します。

4. 基板 わざわざこうする意味はないと思うのですが、基板はユニバーサル基板を使わずに、全部もの凄い古くさい手法でタコ足配線がされています。そう、丁度1965年の最初のTONE BENDER MK1の回路のように、です。ハッキリいってこの手法には音的になんらメリットを見出せないのですが(笑)、もしかしたらこの手法は配線するのが楽なのかもしれません。

5. 音(その1) そう、肝心なのはここですよね。まず感心したのは、上記したようにオリジナルの構造とはほど遠い部品/仕様であるにもかかわらず、MK1はMK1らしい音が、MK2ではMK2らしい音が、そして当然MK3ではMK3らしい音がチャンとする、という事です。かつてD.A.M.のデヴィッド・メインも「トランジスタの型番にこだわるよりも、回路を正確に把握し再現することのほうが音のキャラクターには重要だ」ということを言っています。基板の色がどうだ、とか、筐体のデカさがどうだ、とかそういう細かいことは(ご承知のように、当方個人はそういうウンチクも大好きだったりするんですが。笑)音には関係ありません。
 今回のJMI PLAYERS SERIESは、他のJMI製品同様にすべてハンドメイドで、作ってるのは他のJMI製品同様ニック・ブラウニング氏なのですが、彼なら当然TONE BENDERの回路に関しては熟知しまくってる人間ですので、音が極端に違う、ということはないのも当然ではありますね。

6. 音(その2) などと言ったものの、このPLAYERS SERIESは他のJMI製品やオリジナルのTONE BENDERとは決定的に音の面で違いがあります。それは「音量」です。例えば過去に何度も当方は「MK1は音がバカでかい」ということを書いていますが、このJMI PLAYERS SERIESのMK1はフルアップしてもフツーの音量です。
 これは間違いなく、通常のギター・エフェクター製品の音量レベルに全部揃えるための仕様変更かと思われます。あまり面倒なことを考えなくても、エフェクターとしては間違いなくこのほうが使いやすいに決まってるわけでして、コンテンポラリーな機材のセットアップの中でも十分に使えるためには、このほうが便利ですよね。
 また、正直に書いてしまえば、シリコン特有の「臭い」(註:当方はよくこう書いてしまうのですが、シリコンの音とゲルマの音には、当方は音色/キャラクターとしてはそれほど差を感じないことが多いです。が、それでも「臭い」ともいうべき、どうしても違いを感じてしまう、ボンヤリとした差を感じるのも事実です)があります。とはいえ、MK1/MK3では他にシリコンを使ったという比較対象製品は世の中に存在しませんので、この「差」をどうとるかは所有者の判断に委ねるをえませんが。

 以上、簡単にJMIのPLAYER SERIESを見ていきましたが、ひとつだけ不満があります。それは「MK3だけインプット/アウトプットの位置が逆だ」ということです(笑)。MK1、MK2に関しては上から見たときに右が入力、左が出力、となっていますが、MK3だけはその左右が逆になっています。実はオリジナルのMK3がそうだから、おそらくこのPLAYERS SERIESもそうしたんだろうと思うのですが、そんな所で中途半端にオリジナルを尊重する意味ねーだろが(笑)、と思ってしまいました。

 なお、前述したように、このJMI製品は現在は当方で取り扱うかどうかまだあまり決めていません。ですがもし入手を希望される方がいらっしゃれば、お問い合わせいただければ対応/納品できます。正確にはまだ決めていませんが、価格はおそらく23000円前後になると思います。
 

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