1.27.2012

Tone Bender MK1 Clone by JERMS




 以前掲載したJマスシス(ダイナソーJR)インタビューで、彼が録音で実際に使用した、と言ってたTONE BENDER MK1クローン・ペダルは、BUILT TO SPILLというバンドのギタリスト、JERMSことジム・ロス氏が作ったもの、というのは、インタビュー中でも紹介した通りですが、実はつい最近、ジム・ロス氏が新しく作ったMK1クローンを本人が売りに出しました。

 当然ですがMK1フェチでもある当方はこれにすっごく興味があったので、早速ジム・ロス本人にコンタクトをとり少しだけ話を聞きました。よっしゃ買うかあ、と思ってたらeBayでこのペダルはあっという間に売れてしまい(しかも結構な高額で)、今回は見送ることになってしまったんですが、連絡を取り合っていた際に「今後MK1もMK2もMK3も作るつもり」なんて話も聞けたので、時期を見て個人的にオーダーでもしてみようかな、なんて考えてたりもします。

 さてさて、その今回売りに出されたMK1クローンをちょっと見ていきたいと思います。Jマスシスが使った四角いシンプルな筐体のモノとは見た目も中身もいろいろ違っていることが一見してわかります。筐体は65年のオリジナルTONE BENDER MK1と同じ、ゲイトフォールドで金色&黒の鉄製筐体ですね。これ、おそらくpigeonfx.com、というイギリスのエフェクター・キットを販売してるところが作ったモノ、と推察されます。
 実は当方もここでMK1の筐体を2ケだけ入手し、それはMANLAY SOUNDの65 BENDERスペシャル・エディション、もしくはなんか別なプロジェクトで使おうかな、と思ってたんですが、今のところ未定なママになってます。

 当方のことはともかく、ジム・ロス氏のMK1の続きです。トランジスタは、これもオリジナルTONE BENDER同様に、ブラックキャップのOC75と、テキサス・インストゥルメンツ製2G381が2ケ、という構成です。また、キャパシタも古いHUNTS製のデカいもの(色は赤茶のものですが)を使用していることから、ピュアにオリジナルのサウンドをクローンしようと意図したことが伺えますね。以前のJマスシスが使用したMK1クローンのときは、ムラードのマスタード・キャパシタを使用していたのですが。

 実際にこの現物の音を、製作者本人が演奏し動画をアップしてるので、ここに張っておきます。おー、やはり、というか当然ですが豪快で激歪みなMK1サウンドですね。ちょっとギターとアンプのスペックがわからないので、正確なことは書けませんけど、ATTACKのツマミが9時のあたりでもうガツガツに歪みのピークを迎えてるというあたりが御判りいただけると思います。

 それから同じこのブツを使用した動画をもうひとつ。こちらの動画は売りに出される前に pinstripeclips さん(YOUTUBEのアカウントネームです/この方は以前MK1回路のマーシャルSUPA FUZZのデモ動画をアップしていた方で、イギリスでハウやファズのハンドメイド・エフェクター・ブランドをやっている方です。いつもお世話になっております。笑)がデモ演奏を(完璧に曲に仕上げて)アップしています。彼はもうメチャクチャにTONE BENDERを持ってるし知ってるし、というコレクターさんでもあるのですが、ギターも上手いなあ(笑)。

 その pinstripeclips さんとか、さっきのジム・ロス本人のアカウント(YOUTUBEアカウントは jerms1162)の動画を他にも漁っていただければ、いろんなTONE BENDERのデモ動画を見る事ができますので、いろいろと音が聞きたい、という方は是非他にも漁ってみていただければと思います。

 今回のMK1クローンを作ったジム・ロス氏は上述したように、BUILT TO SPILLというバンドのギタリストですが、自身がステージで使うペダルはなんでも自作してしまう、というDIYな方でもあり、またファズ系のネット掲示板でもよく顔を出されて情報交換してるという有名な方なので、もしかしたら今後も面白いブツを作ってくれるかもしれませんね(てか、俺もオーダーしようかなと考えてますし)。でもバンドが忙しいであろうことも想像できるので、個人制作、という域を出てまで商品化することはないと思われますが。

 余談ですがTHE EFFECTOR BOOK編集長もJマスシス・インタビューを読んで「あ、BUILT TO SPILL? もし日本に来日してくれたら、絶対取材したいんだけどなー。あのバンド、エフェクターとか大好きなんだよね」と言ってました。つまりBUILT TO SPILLは(長いキャリアがあるのに)来日したことがないんですよね。願ってる人は結構多いんじゃないでしょうか。定かではありませんが。


1.17.2012

Tone Bender MK4 (1969-)



 自分で言ってることを、自分で再度まとめる、というのもなんだかカッコ悪い気もしますが、ちょっとそれにトライしようと思います。今回は TONE BENDER MK4 に関してです。まず、確認しておきたいのは、1968年、SOLA SOUND社が新しいTONE BENDERを開発・発売することになり、TONE BENDER(通称MK3)を発売しました。この中身に関しては、こちらのページ等で紹介してきた通りです。
 それまで作っていたTONE BENDERのMK2(=ゲイリー・ハースト・デザインで、3つのゲルマニウム・トランジスタをもったもの)から回路を変更し、新しい、安定したファズの回路として搭載されたその回路は、以前書いたように、実はBURNSのBUZZAROUNDとか、イタリアELKAのDIZZY TONEというファズの回路とそっくりだった、というのも前述の通りです。

 で、今回改めて、TONE BENDER MK4というブツの紹介になるわけですが、ハッキリと判っていることは「そういう商品名」のTONE BENDERがあった、というくらいしかありません。上に4つの「TONE BENDER MK4」を掲載していますが、ご覧のように色違い、というだけで他はまったく同じモノです。中身の写真も載せてますが、中身も同じことが確認できますよね。そしてその中身、つまり回路のことですが、それは1968年に製造されたTONE BENDER(通称MK3)とまったく同じモノです。

 ではMK4は一体MK3と何が違うのか。まずひとつは、このファズはどうも1969年以降になってから発売されたらしい、ということです。これはファズ・マニアの方がいろいろ仲間ウチの所持品のMK4のポットデートを見せ合いっこして、一番古いのが69年モノだったから、という根拠しかありません。だから当方も、こういうカンジで推測としてしか書く事が出来ません。

 ただしその推測には「なるほど」と多少納得できる部分もあります。というのは、SOLA SOUND社が COLORSOUND というブランド名を使い始めたのが、どうも1969〜1970年頃らしい、という事もあるからです。上記で掲載した「MK4」には一切「COLORSOUND」の表記はなく、ご覧頂けるように「SOLA SOUND」の文字しかありません。つまりこれは時間軸的に納得できる、というワケです。

 1968年に発売されたVOX TONE BENDER MK3(SOLA SOUND製品)、それと同年SOLA SOUNDブランドで発売されたTONE BENDER(通称MK3)、それよりは後に発売されたから、MK4、というワケですね。
 もしかしたら気付きにくいかもしれませんので書いておきますと、上の4つのMK4は、フットスイッチの上の部分に、ホントにちーーいさな文字で MARK IV と書いてあります。MK3とMK4の違いは外見上の違いしかなく、また(これが一番話を面倒くさくしているわけですけど)MK4が発売されてからも、TONE BENDER(通称MK3)はそのまま発売されつづけていた、ということもあり、もの凄く誤解を生みやすい状況となっています。

 MK4の文字が入り、筐体の上に「SOLA SOUND」と入っているTONE BENDERは、ゲルマ3石を使い、ダイオード整流回路を持ったファズであることは共通していますが、一部は途中で回路の設置向き(表・裏)が逆になったものもあります。この「表裏テレコ」はMK3でも見受けられる変更なので、MK3もMK4も「同時期に流通してた」ことが裏付けされます。

 さて、実はTONE BENDER MK4と名付けられたモデルは、早々にシーンから消えています。これも推測になりますが、どうやら1973年ころには無くなっていた、とのことです。
 1973年といえば、TONE BENDER MK3の回路がシリコンに変更された時期とだいたい重なります。TONE BENDER MK3は(VOX TONE BENDERも、SOLA SOUND TONE BENDERも)シリコン・トランジスタに変更されても、そのままの商品名で発売され続けましたが、この「MK4」はその時期にはシーンから消えていたようです。

 これは以前も書いたことですが、実はシリコンに変更された後のTONE BENDERの回路を「MK4回路」と呼ぶ人もいます。というか結構多くて、そちらのほうが話が早い、という場合が多いです。ですが上記したように「MK4」に搭載されてた回路は「MK3」とまったく同じものなので、「MK4回路」が一体何をさすのか、は人によって解釈が違うんですよね。以前の投稿でも当方が「本ブログでは(MK3とMK4の)厳密な境界を定めていません」と書いたのはそういう理由でもあります。


1.11.2012

JMI - Tone Bender Professional MK2 (Mullard OC81 Limited)


 遅ればせながら、新年最初の更新になります。本年も何とぞよろしくお願いします。いきなりですが昨年の年末、個人的にちょいとしたビッグ・ニュースが飛び込んできました。第一報は12月21日夕方6時からの英BBCニュースの中で報道されたのですが、どんなニュースかと言いますと、なんと1973年にデヴィッド・ボウイがBBC「TOP OF THE POPS」で演奏した映像が、38年振りに発掘された、というニュースです。
 当方はボウイ・ヲタクなのでそれだけで「何っ?」と大騒ぎしてしまうのですが、これだけなら本ブログとはあまり関係ありません。が、12月24日のTOTPクリスマス特番でその発掘映像がついに放送され、動画でこれを何十回も見て、もう黙ってはいられません(笑)。元々は1973年1月4日にTV放送されたソースですが、あまりにも奇麗な映像なのでその点にもビックリですけど、動いているミック・ロンソンを見るチャンスはそうそうないので、そういう意味でも驚愕の映像です。

 そんなことよりも何よりも、このギターの音にはさすがにドビックリ。スゲエ。テレビ放送なのでそういう点(卓調整等)は差し引いて考えざるを得ませんが、現在公式CDで入手できるボウイのジギー時代のライヴ音源は、実際の会場の出音とはほど遠いものです。なので、ここまで生に近いギターの音、マーシャルMAJORと、TONE BENDER MK1と、ミック・ロンソンの68年製LES PAUL CUSTOMをリニアに聴ける素材としては超一級品の素材かと思われます。そしてこの音がどうやったら出るのか、という永遠の研究課題がまたしても残されたわけですね。2:18を境にファズの音に切り替わるわけですが、このときワウはどうなってたんでしょうか?(2:48まではOFFのようにも聞こえますね) 勿論アンプのセッティングも気になる所です。
 「TOP OF THE POPS」は通常だと音が前録りで放送素材はアテフリなのですが、ここで見る事の出来る演奏は生演奏だと推測されます。後半でベースが2小節分尺を間違えた部分がそのまま演奏されていることが確認できますし、「完全なライヴ」とナレーションでも言ってますしね。
 アンプのツマミの位置とか、どのタイミングでファズを踏んでるかとか、ボウイ様のジャケットの素材は一体なんなのか、なんてことも含めてこの映像をそれこそ何十回も凝視してるわけですが、そんなオタク心とは一切関係なく、やっぱり「カッコイイ」というのはこういうことだな、とか確信を深めたりもしました。



 さて、今回の本題は実は別にあります。左に掲載した写真は最新入荷した英JMI製の TONE BENDER PROFESSIONAL MK2 の、MULLARD OC81トランジスタを使用した限定品というものです。一応ラインナップとしては以前こちらでご紹介したものと同じということにはなるのですが、マイナーチェンジが施されることになりましたので、ご紹介がてら、ご検討願いたいと思います。

 まず大きな違いの1つめ。それはトランジスタです。以前掲載したものは名前の通り「MULLARD OC81D」というトランジスタを使用した、限定10ケのみの製造品、ということになってたのですが、実は合計製造数が10ケにも至らない段階で「最高のOC81Dトランジスタがもうストックがない」ということになりました(つまり、相当数の貴重なトランジスタを捨てるハメになったワケですね)。ですが、以前にも当方が指摘したように、実はOC81DというトランジスタはOC81と基本的スペックは同じパーツとなります。そこで「ではMULLARD OC81Dではなくて、MULLARD OC81にしよう」ということになったんです。
 パーツのレア度でいえばOC81もOC81Dも同じくらい貴重ですし、値段も変わりません。が、OC81Dでファズを製造するのが困難となった今、OC81でなら作れる」ということになり、今回の仕様変更と再入荷、となったワケです。

 まだあります。変更点その2。それは塗装の「色」です。写真では、もしかしたらパっと見では変わってないように思われるかもしれませんが、塗料を変えました。以前よりももっと銀色に近い、シルバーグレーのハンマートーン塗装になっています。以前から当方が「あんなツブツブのグレーじゃなくてさあ、もっと銀色に近いし、ハンマートーンも大粒、ていうか、なめらかでしょ、本物は」と何度かJMIに指摘したこともあって、今回からその新しい「シルバーグレー・ハンマートーン」を試してもらったわけです。

 実は上のトランジスタの件も、この塗料の色の件も、こんなクダラナイFUZZブログをシコシコと書いている(笑)日本人の当方個人が、無理を言って本国JMIで実現してもらったことなので、もちろんJMIスタッフには感謝感激です。内部の製造工程はこれまでの製品と変わりなく、また実際に以前のOC81D版と今回のOC81版の出音を比べてみても、音は同じです。個体差のレベルでの違いはあるかもしれませんが、たまたま今回比較した上ではその個体差もあまり感じない、というくらい同じ傾向です。MK2回路で、しかもOC81特有のミッドレンジの飽和感と密度の濃さは、遜色なく堪能していただける、と思っています。

 お問い合わせやニーズがあったにもかかわらず、以前の「MULLARD OC81D版MK2」は当方の手元に結局計5ケしか入荷しませんでした(それらは全て販売済みです)。で、今回のこのOC81は今現在手元に3ケ入荷しています。1つは当方が使おうかな〜と思ってるのですが、他の2ケは販売可能です。価格は以前のOC81D版より少し下げました。これは特殊な事情があったワケではなく、単純に円高の恩恵です。とはいえそれでも新品のファズとしてはベラボウに高額商品であることには変わりありません。また、今回以降このファズが再入荷するかどうかは現時点で未確定です。それでも、もしご興味を持たれた方がいらっしゃれば、価格と在庫に関してはこちらからメールでお問い合わせいただければと思います。お早めに(笑)。