2.10.2011

Tone Bender - Leon Cook Collection (pt.1)

 
 先日、とあるイギリスの方とメールしてた時に、「ところでロンドンて冬メチャ寒いよね。最近どうなの?」と挨拶代わりに書いてみたら「今ロンドン寒くないよ。今日も12度くらいまで気温あったし」と返事を貰いました。へー、そうなの。当方の記憶では、今頃(1~2月)のロンドンは、それこそ靴の裏からも冷気がギンギンに染み渡るような記憶しかないんですが。そんなわけで本日、豪雪降りしきる極寒の東京にて、今これを書いています。

 さて、先日PAISLEY TUBBY EFFECTSというイギリスのブランドのMK1クローンを紹介した際に、ビルダーでありファズ・コレクターでもあるレオン・クックさんという方の話を書きましたが、彼がネットで公開している所有ファズの写真が大量にあるんですけど、それを「ウチのブログで使ってもいいかな」と聞いたところ「どうぞどうぞ」という返事を頂きました。並べてみるとナカナカ壮観です。というわけで、今回と次回の2回にわけて、彼のファズ・コレクションの中から歴史的にも貴重なTONE BENDERをあつめて見てみたいと思います。

 まずはなにはともあれ、というワケで彼が所持していたオリジナルのTONE BENDER MK1です。以前も2点だけこの個体の写真を掲載しましたが、数ヶ月前に売ってしまったとのこと。下品な話で恐縮ですが、お値段は「数十万」の後半の方、と言ってました。ほえ〜。ため息でますね。

 前にも触れましたが、金色の筐体に入ったゲイリー・ハースト製作のオリジナルTONE BENDER MK1には、(外観の小さな差異は無視しても)回路的には初期と後期の2つに分類されます。と言っても、初期は抵抗の値が一個だけ違ってて、そのせいで音量が控えめ、ということだけなんですが。D.A.M.のデイヴィッド・メインによれば、おそらくジェフ・ベックが使ったであろうMK1はその初期型だ、ということです。初期のものはご覧のようにロゴのプリントが直で筐体にペイントされ、すぐにハゲてしまうそうです。

 しかし、初期のファズの回路を見ると、その配線なんかが荒々しくて素敵ですよね(笑)。某雑誌編集者も、ゲイリー・ハーストの配線とハンダを見て「下手だなあ」などと言ってたくらいですから(笑)。こんにち的視点で見れば、そう思えてしまうのも当然ではありますね。

 本ブログでも以前、オリジナルMK1回路に採用された黒くてデカいHUNTSのキャパシタに関しては触れてきましたが、それと同様に今ではお目にかかる事さえない、バカでかい抵抗(レジスター)部品てのは、今も入手可能なのでしょうか?ちょっと今後調べてみたいと思います。

 さて続いてはオリジナルMK1と同年に発売された、青いMK1クローン、JHS社のZONK MACHINEです。形はもちろん、回路までMK1にそっくりなワケですけど、本人も言ってた通り、このファズはゲイリー・ハーストとは何ら関係がありません。形がそっくり、とは書きましたが、写真でもその筐体の構造は金色のオリジナルMK1とはいろいろと違っている部分も散見できますよね。固定ネジの位置なんかもそれにあたりますが、筐体の大きさもどうやら若干異なっているようです。筐体内部はアルミの素地そのままであることが、この内部写真からも判りますよね。

 中身を見ると、さらに違うポイントを沢山見つける事ができますね。まずはSWELLコントロール、つまりはレベル調整ポットですが、ご覧のようにスタック構造になっており、ここには切り替えスイッチが入っている模様です。つまり、プロトタイプ(木製筐体の)MK1のように、フットスイッチ以外にさらにもうひとつ、エフェクトのON/OFFスイッチがある、ということになりますね。
 トランジスタですが、掲載したレオン・クック氏所有品は、3ケともすべてムラードのOC75が使用されています。ただし、他のZONK MACHINEでは別な組み合わせも発見することができるので、もしかしたら銘柄は固定されていなかったのかもしれません。配線に関しても、オリジナルMK1よりもスッキリとしてますよね(笑)。

 続いては、そのJHS社が68年頃に発売した、とされる、複合ファズ機、SHATTERBOXです。複合とは何か、といえば、フットスイッチが2ケあることでも判るように、このエフェクターは「ファズ」(シリコン・トランジスタを2ケ使用した、おそらくMK1.5回路のファズ)と「トレブル・ブースト」(レンジマスター回路/ただしトランジスタはこちらもシリコン)をくっつけた、というペダルです。見た目(というか色)がオリジナルMK1にそっくりなんで、どうしてもこのペダルもMK1の系譜に置きたくなるのですが、中身はMK1とはまったく別のエフェクターということになります。

 複合機、とは言ったものの、ご覧のように回路自体は至極単純な構造のようで、言い換えてみれば(MK1.5回路をもったシリコン・ベースの)FUZZ FACEをトレブルブーストしたモノ、とも考えられるこのペダルは、これはこれで単体のファズと考えることも可能かと思います。ただし、大変恐縮ですが当方はこの機種を試したことがないので、音に関しては想像でしかありませんことをご了承願います。ちなみに、以前も触れたように、現在イギリスのVINTAGE PEDAL WORKSHOPブランドが復刻してるSHATTERBOXは、こちらの復刻品ではなく、後に別なブランドから出たSHATTERBOXを復刻したものです。

 そしてこちらは大変珍しい、JHS社が発売したBASS BOOSTERという据え置き型のエフェクターです。フットスイッチではないので、かけっぱなし、を想定したものと思われます。以前こちらのページで、JHS社のトレブル・ブースターを紹介したことがありますが、まったく同じ筐体を持つこちらはそのベース(低音域)版、ということになりますね。

 さて、TONE BENDERからどんどん話が離れていますが(笑)、そのついでにもうひとつ。オリジナルのダラスRANGEMASTERです。こちらは(当方も持ってますし)既に有名なので写真を検証するまでもない、というカンジですが、ちょっと以外だったのは、キャパシタがHUNTS製の銀色のキャップのパーツだったこと、です。
 これまでも何度も触れてきましたが、殆どのダラスRANGEMASTERではオリジナルMK1同様に黒くてデッカいキャパシタが採用されていたハズですが、なぜかこちらは違っているようです。写真では判別できないのですが、こちらのRANGEMASTERのトランジスタは、ムラードのOC71です。

 TONE BENDERと関係ない、とは言え、当方は実はダラスのRANGEMASTERも愛してやまないエフェクターのひとつなわけです。その豪快な歪み(とはいってもOD-1なんかのほうがギンギンに歪むエフェクターですけど。笑)と極端にシンプルな構造、そして無意味にデカい筐体、といったあたりもグッときます(笑)。RANGEMASTER使いと言えばちまたでは66年頃のエリック・クラプトン、それからブライアン・メイ(クイーン)やロリー・ギャラガーあたりがおそらく筆頭に挙げられるのだと思われますが、当方的にはRANGEMASTERといえばそれはもうT-REXのマーク・ボランしかいない、ということになっています。当方と同じ考えかどうかは知りませんが、ブティック・ペダル・ブランドとして既に世界的に有名なアナログマンは、自社のHPで丁寧で真面目なRANGEMASTERとマーク・ボランの検証ページを作っていますね。

 次回はMK2以降のTONE BENDERを、レオン・クック氏の所有品で見ていきたいと思います。(この項続く)

all photos courtesy of Leon Cook / Paisley Tubby Effects

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