8.13.2011

Manlay Sound - 65 Bender (Special Limited Walnut Edition)


 この夏、到着したばかりのMANLAY SOUNDの限定品、65 BENDER LIMITED EDITIONのお話、その続きです。まず本稿をお読みいただく前に、こちらの方からお読みいただけると助かります。

 前回はZELKOVA(ケヤキ)の筐体の写真だけを載せましたが、こちらではWALNUT(クルミ)の木の筐体の写真を掲載します。ご覧のように、焦げ茶色のシックで重厚感ある風合いになってます。
 とはいえ中身はどちらのバージョンも同じです。トランジスタはOC75と2G381、回路はオリジナルのTONE BENDER MK1を基本的に踏襲。そして配線方法も、オールドファッションなタコ足配線で組んでいます。

 筐体のやトランジスタの選定方法に関しては前回でも書いた通りですが、他の使用パーツに関してはいろいろ試行錯誤がありました。例えば以前もこちらで書いたような、いにしえのHUNTS製キャパシタは入手可能か、といったことも含まれます。
 HUNTSのキャパシタは、モノによってはまだ海外(主にイギリス)で入手可能なのですが、例えばMK1回路で使うような0.1uFの数値のモノは殆ど手に入りません。あってもいいコンディションのものは殆どない、とイギリスのヴィンテージ・パーツ屋さんに直々に言われてしまいした。ムラードのイエロー・キャップとかであれば、まだ入手可能なんですけどね。

 どうせオリジナルと同じパーツにならないのなら、ということで、数値的に完全に信用できる現行品を選択してるのはそのためです。また、「音」の面で新たに試行錯誤をするためにも、数値は誤差のないモノを使いたかった、ということもあります。
 じゃあその「音」の試行錯誤って何さ、というわけで、前回 4.で書いたことを説明させていただきます。
 ちょっと前に当方は念願の1965年製オリジナルTONE BENDER MK1を入手したわけですが、結論を先に書くと、オリジナルのMK1の音は、今まで入手したり経験したことのあるあらゆるMK1クローン(これはJMIだろうがD.A.MだろうがMANLAY SOUNDだろうがいろんな他のクローン・ビルダーものであろうが、全てに言えます)と、微妙に、ですけど音の印象が違ったんです。
 ハイエンドはシャーシャーしてないのに、中高域はやけに出っ張る、と言えばいいんでしょうか。正直今もウマい説明が出来なくて我ながらモドカシイのですが… いつも当方は「MK1の歪みは中域に偏ってる」と書きますけど、その中域が「中高域より」だ、というイメージを持っていただければと思います。
 同時に、ローエンドはそれほど出張ってはきません。MK1は大音量ファズであることは間違いありませんが、ローエンドはやや控えめに出てくる、そんなカンジです。

 実はひとつ、とても面白い記述を見つけました。以前もこちらで紹介したことのある、オリジナルのMARSHALL MAJOR「THE PIG」をお持ちだというジェイソン・クイックさんがこちらの動画でD.A.M製のMK1クローン・ファズ「HOLY ROLLER」のデモをアップロードされていて、その中でMK1サウンドの特徴を説明しているんですが、いわく「MK1のトランジスタを暖めたときの音は、奇妙なことにDALLAS RANGEMASTERのいいライバルになり得る」「MK1のトランジスタが暖まると、歪みが和らぎ、トーンのフィルターの効きが強くなる」

 これを読んで当方はピクッ!としてしまったんです(笑)。RANGEMASTERとTONE BENDER MK1は全然違うペダルですし、エフェクターとしてその音は全然似てません。が、ジェイソン・クイック氏のその表現は、まさしくナルホドと膝を叩きたくなるようなものでした。ただ、中高域の出っ張り具合、といいますか、パリっと張りのある歪み方は、ああなるほど、ライバルだよな、と思えるような音だったのです。

 話を戻します。結構ミッドローまでドカーンと出てくる傾向にあるMANLAY SOUNDの65 BENDERですが、上に書いたようなポイントを再現できないだろうか?というオーダーをしたわけです。基本はオリジナルのMK1回路、歪み方とか音量は65 BENDERのママで、でも「中高域の出っ張り具合が目立つように」というワケです。
 MANLAY SOUNDのみならず、他のメーカーのMK1クローンでも、高域がヤケに耳につくものは(これまでも紹介してきたように)いくつもありました。ただ、モノによっては「あまり歪まない」とか「歪み過ぎ」とか、「音量が小さい」とか、「シャーシャーとしたトップエンドが耳にウルサイ」とかそういう違いも発見できています。今回の65 BENDERスペシャル版は、なんとかオリジナルのTONE BENDER MK1の音で、より中高域にポイントを置けないか、という思考錯誤をしてもらったわけです。

 正直言えば、古いゲルマニウム・トランジスタ(皆様ご承知のように、温度の変化に敏感なパーツです)を3ケも使った古くさい回路です。今回出来上がった15ケ全部が完全に同じ音か、またオリジナルのTONE BENDER MK1と完全に同じ音なのか、といえばホントにビミョーな精度でやはり違いはあると思います。ですが、なんとか当方もROMAN GILも双方納得のいったサウンドが出来上がったと自負しております。

 重ねて書きますが、上では出音の比較対象の一例としてDALLAS RANGEMASTERの名を挙げていますが、エフェクターとしては全然違います。MK1はそれほどはギターのボリュームに反応しない性質ですが、RANGEMASTERはビンビンに反応します(笑)。また、今回の65 BENDERでもはやり「大音量/激歪み」であることは変わりません。なんといっても、オリジナル同様の回路/トランジスタですから。
 以上ちょっと大げさに書きましたが、基本的には音は通常の65 BENDERとほぼ同じです。若干の差がある、と思っていただければと思います。んー、ノブのこととか細かいパーツやデザインに関してもいろいろと書きたいのですが、今回はここまでにします。余談ですが、ただ今、THE EFFECTOR BOOKの制作が佳境にありまして、いつも以上に難儀しております(笑)。そちらの告知は次の機会にさせていただこうと思います。

 このMANLAY SOUND製の「65 BENDER スペシャル版」は、(ケヤキ版とクルミ版、併せて)限定15ケ、基本的にこのウェブサイトを通じてのみの販売となります。既にご予約を頂いているお店、お客さまに数ケ出荷することは決定しているので、実際の販売個数は10ケ以下になります。もし興味をお持ちの方がいれば、直接こちらまで在庫/価格のお問い合わせをいただければと思います。何とぞよろしくお願いします。(この項つづく)
 

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