3.30.2010

Tone Bender MK1 Clones (from D.A.M / Black Cat)

 
 ちょっとばかりヒストリーものの文が続いたので、一旦お休みして今回はTONE BENDER MK1のクローンものを見てみようと思います。まず、こちらはイギリス、ヨークシャーでハンドメイドにてファズを生産し続けるカリスマ(本人はこう言われてることをどう思ってるんでしょうかね。でもカリスマであることは間違いないですね)、デイヴィッド・アンドリュー・メイン氏率いるD.A.Mの製作によるTONE BENDER MK1のクローン・ペダル、1965です。
 D.A.Mはこのペダルを正式なラインナップに入れていません。つまり限定でカスタムメイドされた特注品、という扱いかと思います。ご覧のようにカッパーのカラーですが、これは木製プロトタイプのTONE BENDERのカラーを参考に採用した模様です。このモデルは完全限定で製作され、合計で40ケしか出荷されていないハズです。すごく欲しかったんですが、結局見ることさえできてません。
 本人に確認したわけではなく、彼がD.A.Mフォーラムで語っていた話を元にまとめてみますが、まず本人としてはMK1の回路はまとめあげるのに非常に苦労したこと、さらに、オリジナルのトランジスタでは満足する音にならなかったことなどに触れています。
 内部写真でも確認できる通り、キャパシタ等はブティック系ペダルでおなじみのマスタード・キャパシタですね。ただし、デイヴィッドはトランジスタにはOC78を使用しています。
 これはデイヴィッド本人の「絶対譲れない」というコダワリでもあるのですが、英国製パーツしか使用しない、という点があります(余談ですがD.A.Mが採用している筐体は、ノルウェーだったかスウェーデンだったか、確か北欧製だと記憶していますが、まあそんな細かいことはツッコム必要さえないですね。何よりも当方はD.A.Mの大ファンです。ただし高過ぎて買えないことが多いんですが。笑)。
 オリジナルMK1で使われたトランジスタは前にも述べたようにOC75と米製の2G381ですが、2G381は恐ろしいほどに入手困難であったこともあろうかと思いますが、デイヴィッドが満足するものはもう手に入らないと思われます。仮にあったとしても、英国製にこだわる彼は使わないでしょう。そういったこともあって、OC78の3ケ使い、という構成になったと思われます。
 このD.A.M 1965はYOUTUBEに音がアップされてますので、その音を確認できます。やはり、予想通りのMK1サウンドですね。ただし、このデモ奏者の方はセッティングを変えていないので、実際にどんなカンジで音が変化するのかはちょっとわからないのですが、D.A.M特有の、トップエンドのエッジが丸い、ウォームなサウンドになっていますね。この「1965」には同じくD.A.M「1966」同様にSUPER BEEスイッチが見えますが、動画で確認する限りこれは(切り替え式の)スイッチではなく、ポットによる連続可変のコントロールになっているようです。おそらくレンジを変えてるのだと思うのですが、動画ではあまりその辺を確認できませんね(笑)。ただ、上にある内部写真ではここのパーツは切り替えスイッチになってるので、もしかしたらブツによってはそのあたりの仕様は統一されてないのかもしれませんね。

 それからもうひとつ、TONE BENDER MK1のクローン・ペダルをご紹介。こちらは米国製のもので、ブティック系ペダル・ブランドとして既に高い評価を得ているBLACK CATというブランドが製作したTONE BENDER MK1 AMERICANOというモデルです。
 こちらも正式なラインナップではなく、たしかこれは5ケしか制作されていないハズで、写真はそのシリアル5番のものです。買おうかな、と思ってたんですが、オークションで寸でのところでヤラレちゃいました(笑)。
 そのモロな名前が示すとおり、こちらはメイド・インUSAのTONE BENDER、をうたったモノでして、ビルダー自ら「だからトランジスタはアメリカ製のものを使った」と言っています。
 そのトランジスタはテキサス・インストゥルメンツ社製の2N404というゲルマニウム・トランジスタを3ケ使いで使用してますね。そしてカスタム・ペダルのマニアにはおなじみ、キャパシタにはSOZO(もちろんZEPのアレからロゴを拝借してると思われます)のブルー・キャップを使用しています。SOZOはアンプ用パーツを供給してるブランドなんですが、高いんスよね。青いのはマスタードの3倍くらいの値段がします。
 内部写真でもわかりますが、病的なほどに丁寧に組んでありますね(笑)。アメリカ人にも神経質なタイプのビルダーがいる、ってことですね。

 実はご覧のように、TONE BENDERのMK1クローンはJMIが現在発売している復刻品、我がMANLAY SOUNDが発売している65 BENDERの他には、上記2種くらいしかありません(もちろん個人製作のモノは除きます)。単純な回路なのに、思うような音にならない、という点が最大の難関であることは間違いありませんが、そのサウンドも(今の標準的な考え方からすれば)大暴れのジャジャ馬ファズであることも間違いないので、それほど認知がないことは否めません。これも何度も書いてますがMK1は他のTONE BENDERとは全然音の傾向が違います。ですがミック・ロンソン・サウンドにはTONE BENDER MK1とイタリアン・ワウが欠かせないように、やはり美味しいポイントが探し当てられれば唯一無二のサウンドになります。是非MK1の暴れっぷりを、多くの方に試していただければ、と思ってMANLAY SOUNDはMK1クローンを制作しております。
 そしてちょっとばかり、そのMANLAY SOUNDのペダルに関して進捗状況を兼ねたご報告です。現在多数のショップから当方にお問い合わせをいただいておりますが、全く生産が追いついておりません。お待ちいただいているお客様/ショップの皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ありません。近日中にまた、ほんの数ケずつ日本に到着予定ですが、今のところ既にいただいた予約分でハケてしまうことが決定しております。本ウェブ等での直接販売はもうちょっとだけお待ちいただきたく思います。

 ちなみにMANLAY SOUNDからは、3種のTONE BENDERクローンの他にも、FUZZ FACEクローン・ペダル、BABY FACEが2種類発売されることになっています。ゲルマ版、シリコン版の双方を発売予定ですが、ROMÁN本人が大のジミヘン・フリークであることもあって、なかなか難航してるようです(笑)。こちらも近日中には詳細をお伝えできると思います。

 また、既にスペイン本国のHPには掲載していますが、THE ALADDINという、なんだかモロにアレな(笑)ファズ・ペダルもあります。これも当方が無理言ってROMÁNに作ってもらったシリコン・ベースのファズ・ペダルなのですが、実は当初は発売する予定ではありませんでした。ですが彼がYOUTUBEに音をアップしてeBayで発売してみたらヤケに評判が良かったので、その後はオーダーがあれば作る、というスタンスになっています。こちらは現物が手元にあるので、その詳細は近々ここで紹介させていただこうと思っていますのでお楽しみに。
 さらに、実は最近当方がゲルマ・トランジスタ2G381をいくつか入手しました(メチャ高かったです……)。今スペインにてその動作確認を行っている最中なのですが、もしうまくいけば、OC75と2G381を使用した、MK1のクローンを制作しようと思っています。つまり65 BENDERのスペシャル・バージョンということです。まだ走り始めたばかりの計画なのでうまくいくかどうか不明ですが、進展があればそれもここでご報告します。
 

3.26.2010

Gary Hurst Interview Part 5

 ゲイリー・ハースト・インタビュー、第5回になりますね。今回はTONE BENDER MK2以降の話になります。
——MK1.5と呼ばれるTONE BENDERを経て、66年の中頃にソーラーサウンド社から、先ほどもおっしゃっていたTONE BENDER PROFESSIONAL MK2が発売になりますが、これでは再びゲルマニウム・トランジスタを3ケ使った回路になってますよね。回路をまた変えた理由は?
G:ファズを使うギタリスト達は、もっともっと長いサステインを欲していたんだ。特にソロ・ノートのためにね。だから、MK1.5回路の前段にインプット・ブースト用のトランジスタを1ケ付け加える事にした。それがPROFESSIONAL MK2となって発売されることになった。最初に「そうしてくれ」と私に言ってきたのはトム・ジョーンズのバック・ギタリストだったミック・ジー(Micky Gee)*1 だった。彼はエレキ・ギターでブラス・セクション(管楽器)のようなサウンドを再現したがっていたからね。レコーディングでも彼はMK2を使ってそういうサウンドを出してるよ。
——丁度そのMK2と同じ頃だと思うのですが、イタリアの工場に製造委託をしてVOXブランドがTONE BENDERを発売し始めています。それにもあなたは何らかの関与があるのでしょうか? 回路のデザインとか。
G:いや。あれはソーラーサウンドがVOXの名を付けて発売したPROFESSIONAL MK2、つまり私のデザインした回路を持った英国製のTONE BENDERのバッド・コピーだよ。なぜかトランジスタを2ケ、という回路に戻してしまった。
——ソーラーサウンドが手がけたファズで、1ノブで青い筐体に入った、FUZZ BOXというファズがあります。90年代に一時期リイシューされたりもしたのですが、そのオリジナルは、ちまたではジェフ・ベックやデイヴィッド・ギルモアのためにあなたが60年代の終わり頃にカスタムメイドしたものだ、と言われています*2 。それは本当ですか。
G:いや。違う。
——今、世界中でTONE BENDERのクローン・ペダルが沢山ありますが、オリジネイターのあなたとしてはどういったご感想をお持ちなのでしょう?
G:まったく心配していない。誰だってコピーしていいんだ。もし誰かが「ゲイリー・ハースト本人が作ったもの」がどうしても欲しい、というならば、私にコンタクトをとればいいだけだ。そしてコピーはコピー。それだけだよ。
——60年代以降、音楽シーンであなたが開発したファズ・ペダルが大人気になって以降、どういう気持ちでそれらの新しい音楽を聞きましたか?
G:ヴィック・フリックが最初のファズを使って以来、ヤードバーズやデヴィッド・ボウイのアルバムで私の機材が実際に使われていたんだからね。この音に「私は大きな貢献をした」という事実。そりゃあ、嬉しかったよ。
*1 60年代にトム・ジョーンズのバック・バンドに在籍。その後はジョー・コッカー、クラプトン、ゲイリー・ムーア・バンド等で活躍したギタリスト。現在ブログやってますね。
*2 これは90年代にソーラーサウンドFUZZ BOXが再発売されたとき宣伝文句として使われた説明文です。現在ソーラーサウンドのオフィシャルHPを読めばわかりますが、FUZZ BOXはもともとVOX/JMI社のディック・デニーがテープエコー・マシンに内蔵するために開発したファズ回路をもとに、それをノックダウンしてペダルとして再構成されたファズ、とあります。つまりゲイリー・ハーストとは関係ないだろう、と思ったので、その真偽を知りたくて聞いた質問だったのですが、回答はやはり予想通りでした。ただし、このディック・デニーのファズ回路は63〜64年頃に開発されたらしく、ゲイリー・ハーストのTONE BENDER MK1が世に出るよりも早い時期にあたります。
 おそらく前述したビートルズのTONE BENDERに関するディック・デニー氏の誤解は、このFUZZ BOX回路を自分が早い時期に作ったことに起因するもの、と思われるのですが、既にオリジナルのFUZZ BOX回路がどういうものだったかは現在では知る術がありません。90年代に復刻されたFUZZ BOXは、シリコン・トランジスタのBC109(もしくはBC108)を2ケ使用した回路になってました。それから、おそらく世界で最も単純なファズ回路のひとつだろうと思われるこのFUZZ BOXの基盤は 1cm × 5cmくらい、という小ささです。
 余談になりますが、横浜・元町にあるギター・ショップCRANE GUITARSが昨年VOX KENSINGTONという激レアなVOX製ギターのレプリカを製作したのですが、その内蔵エフェクターのファズ部分には、このFUZZ BOXの回路が組み込まれています。やはりビートルズ&VOXといえばディック・デニーでしょ、というわけで、製作の際に当方が助言させていただいた次第です。(この項続く)

3.22.2010

VOX Tone Bender (Made in Italy / 1966-)


 おそらく世間で一番有名なTONE BENDERであると思われますが、それと同時に「TONE BENDERってちょっとメンドクセーなあ」という印象をファズ・マニア達が持つことに貢献(?)してしまったであろうモデルをご紹介します。既に書いたように、65年に開発されて翌66年にはリニュアルを2度もしたTONE BENDERですが、同じく66年に、それらとは全く別にTONE BENDERという名前のファズ・ペダルが大々的に世間に登場しました。それがこのイタリア製のVOX TONE BENDERです。

 VOX/JMIはほんのわずかな期間だけ英国のソーラーサウンド社にてTONE BENDERを作ってもらってた訳ですが、そのOEM製品とは別に独自でTONE BENDERの大々的な大量生産に乗り出したというワケですね。回路を更に見直し、2ケのゲルマニウム・トランジスタ(数種類のヴァリエーションが存在しますが、主に使用されたのはSFT337、SFT363等です)を持つ回路に再構成され、製造をイタリアのEME社(詳細は後述します)に委託し、大々的に66年末から発売されました。
 ゲイリー・ハーストがこのイタリア製TONE BENDERをケチョンケチョンにけなしているのは前にご紹介したインタビュー等でも明らかですが、おそらく「イタリア製」に至ったその経緯というか、道義的なモンが多分に関係してると思われます(註:さすがに『なんでそんなにボロクソに言うんですか?』とは本人には聞けなかったもので……スイマセン)。なぜなら「ゲイリー・ハースト・デザインではない」TONE BENDERがデカい顔して、しかも自分が昔働いた馴染み深いVOX/JMI社から登場してしまったわけですから。

 CRY BABYというワウに関しても似たような現象があったと思われますが、TONE BENDERもそういう開発者とか発売元とか、いろんな人がいろんな利害関係で結ばれたり破局したり、という悲しい歴史をたどっています。Aさんに話を聞けば「いやアレは……」、Bさんに話を聞けば「ウソこくでねえ、実はあれは……」ということになりがちなんです。そういうのをなるべくフェアに史実に則してまとめよう、と思ったのがこのブログだったりもするわけですが。
 前置きが長くてすいません。そのイタリア製VOX TONE BENDERを検証してみましょう。ここに4つのイタリア製TONE BENDERを載せていますが、上から順に「66年製」「68年製」「69年製」それと「JEN FUZZ(70年製)」です。色や筐体が異なってはいますが、これらはすべて同じ回路で構成されています。それぞれの内部写真も掲載しましたが、使っているトランジスタもキャパシタも(色こそ違えど)数値も同じもののようです。

 66年のものはグレー・ハマートーン塗装で黒いパネル、という、最も有名なTONE BENDERですね。68年のものは、同じくグレー・ハマートーンですが、パネルのデザインが変更されています。筐体がグレーだったころのTONE BENERには、どこにも「MADE IN ITALY」とは書いてありません。裏のパネルはグレーの塗りつぶしが施されているだけです。
 それから69年の黒いモデルですが(このデザインのまま、70年代初期までTONE BENDERは発売されていたようです)、形は同じですが実は筐体の型が異なります。内部のネジ受けのシェイプを見ると、丸くなっているのが確認できると思います。この黒い筐体はそのまま同じものが製造元JENが自らのブランド名で発売したJEN FUZZにも流用されています(ただし、JENのものはバックプレートに白いゴムのトリミングが追加されます)。写真に掲載してあるのは「JEN FUZZ」とだけ書いてありますが、全く同じ中身/デザインで「JEN TONE BENDER」とプリントされたものもあります。あまり名前に関して、その辺のこだわりはJENには無かったかもしれませんね(笑)。
 ちなみにこれ以降(つまり70年代に入ってから。おそらく72年頃)、黒い筐体で黒いパネル、という真っ黒ケなTONE BENDERもあるのですが、持っていないためその詳細をここで紹介できません。真っ黒なのはシリコンだ、という噂もあるのですが、いまだ確認には至っておりません。申し訳ありませんがご了承願います。

 内部に関して、66年のものは「右側のほうのキャパシタが一個足りないんじゃないか」と思われた方もいらっしゃると思います。左に66年のもの(上)と69年のもの(下)を別角度で撮影した比較写真を掲載しましたが、実は66年製は基盤裏にオレンジ色のキャパシタが配線されています(こんな位置にあるので、メーカーが読み取れませんでした。スイマセン)。このオレンジのパーツは68年製では青いARCO製のキャパシタに、69年製のものではPROCOND製の白いキャパシタに変更されたわけですね。ARCO、PROCOND共に、イタリア製ワウの重要なパーツとして既に有名だと思われます。

 肝心の音に関してですが、これまでの(英国製)TONE BENDERファミリーとの比較でも、もっともトレブリーな位置に歪みがセットされたこのイタリア製のTONE BENDERは、デイヴィッド・A・メイン氏の考察によれば「マーシャルやVOXといったダークな色合いの英国製アンプにマッチさせるためだろう」とのこと。たとえばレスポール+マーシャルのスタック、といったような最もヘヴィー・ボトムなギター&アンプの組み合わせであっても、このTONE BENDERを間に挟みVolを少し絞るだけで(まるでシングル・コイルのような)カリカリのクランチ・サウンドが生み出せる、という特徴を持っています。
 だからこそ、その逆を考えたのだと思いますが、デイヴィッド・メイン氏はD.A.Mでこのイタリア製VOX TONE BENDERのクローン・ファズ1966を製作した際に、「イギリス製っぽいダークなヘヴィー・ボトム(低音)も出せるように、SUPER BEEというスイッチを付加したのだと語っています。D.A.M製品に関しては、別の機会にその詳細を譲りたいと思います。

 後々日本製で復刻されたソーラーサウンドのMK2復刻品などがオリジナルとは異なる「2つのトランジスタ回路」にしてしまったのは、間違ってMK1.5の回路を参照にした、というデイヴィッド・メイン氏の考察も納得できますが、その一方で「最も有名なイタリア製VOX TONE BENDERの回路を参考にしてしまったから」という推論も成り立つんじゃないか、と思っています。

 実はゲイリー・ハーストがボロクソに言うのとは反対に、当方はこのイタリア製TONE BENDERもすごく好きだったりします(笑)。適度なファズの暴れ具合と、適度なマイルドさ、その両方がありながらも、MK2のようにやたらに図太い音ではない適度の痩せ方(枯れ方)があるので、これはこれで十分に素晴らしいTONE BENDERだと思っています。MK1、MK1.5、MK2、イタリア製、それぞれが違うサウンドを持っていて、それぞれに美味しいポイントがあるので、是非いろいろと試してみることをお勧めしたいと思います。

 そういうわけで、ちょっとだけまとめるなら「VOX TONE BENDER」はごく初期のみイギリス製(ソーラーサウンド製でMK2回路)ですが、そのほとんどはイタリア製です。作っていたのはEME社の工場で、後にJENとなる会社です。VOXのワウもごく初期のプロト・モデルのみがイギリス製で(作ってたのはソーラーサウンド社)、実際に製品になったのはイタリア製のCLYDE McCOYだ、というのは有名な話ですが、VOXのTONE BENDERもそれと同じ道を辿った、と考えるとわかりやすいかと思われます。



(2011年11月加筆)実はこれまで当方は本サイトにて、JENという会社に関して記載を曖昧にしてきた部分があります。それは何かというと、実際にそのイタリアの工場というのは(これは「THE EFFECTOR BOOK」、もしくは海外のサイト等で既に書かれていることですが)1960年代後半までは、EME(EUROPEAN MUSCIAL ELECTRONICS)という社名だった、ということです。このEMEはイギリスのJMI社、アメリカのTHOMAS ORGAN社、そしてイタリアのEKO社の合弁企業であり、ようは既存の体勢ではまかないきれなくなった需要に対してイタリアで大量生産するために興された企業でした。この会社は1958年からオルガンの製造を行っていました。

 もちろんその事は当方も承知していたのですが、このEME社は初代社長が亡くなり、2代目の社長が誕生後すぐにJENと名前を変えています。そこで、何年までがEMEで何年からJENか、というのが曖昧だったこともあり、これまでは全部まとめてJENと書いてきました。先日とある方から「JENは1968年から」という指摘をいただき、そのソースも確認したので、本サイト内にあるJEN関連の記載は順次修正していきたいと思います。実質その中身はJENと社名が変わって以降も何も変化していなこともあって「JMI/VOX関連製品のイタリアの工場」という役割だったことには違いありませんが、一応「史実に基づく」ために随時記載を修正したいと思います。写真はJMIのボス、トム・ジェニングス氏(左)と、EKOの社長オリビエロ・ピッジーニ氏(右)がEME設立に伴い握手する、という図です。
 

3.19.2010

Manlay Sound - Super Bender (MK2 Clone)


 スペイン・バルセロナ発のMANLAY SOUNDからリリースされているTONE BENDERクローン・シリーズの最後(一応、ですが)となるのが、このSUPER BENDERです。ソーラー・サウンドが66年に発売したゲイリー・ハースト・デザインのPROFESSIONAL MK2のクローンです。一個一個テストの上で選別したゲルマ3石のMK2回路を用いて、もちろんハンドメイド、PtoP配線、トゥルーバイパス、という作りになっています。

 MK1クローンが「65 BENDER」MK1.5クローンが「66 BENDER」だから、MK2クローンは、実際にマーシャルSUPA FUZZが67年に発売されてることもあって「じゃあ「67 BENDER」にしよう」と最初に考えたのも事実なんです。が、既に述べたようにMK2は66年夏頃には既に登場してますし、別にその数字にこだわりがあったわけでもないので、マーシャルSUPA FUZZにあやかって「SUPER BENDER」としてみました。もちろんここには「SUPA FUZZは実はTONE BENDER MK2なんですよ」という当方の(全くどうでもいいような)メッセージも込めてあります(笑)。

 こちらの基本回路には、数々のテストの上(実際、20種類以上のトランジスタをテストしました)今のところ日本製2SB324と、ロシア製MP20を2ケ、もしくはAC125MP20を2ケという組み合わせを用いています。オリジナルのMK2にはムラード製OC75、もしくはOC81Dが使われているわけですが、それらを3ケ組み合わせてみても、なかなかいい結果がでませんでした。何度も書いていますが、現状でファズに使用するための十分条件を満たしたOC75を探すのが大変なわけで、しかもOC75は価格がベラボウに高いこともあって、早々に見送ることにしました。抵抗他の数値はもちろんオリジナルに準じて構成されているので、その回路にあうトランジスタ、という前提で、現状では上記の組み合わせにしてあります。

 実はご多分に洩れず、筆者もジミー・ペイジの大ファンだったりするのですが(スペインのビルダーROMÁN氏は「俺はそんなでもない」とかいってましたけど。笑)、出音の基本として念頭にあったのはツェッペリンのファーストとセカンド・アルバムです。ジミー・ペイジがどうTONE BENDERをセッティングしていたかは未だに数多くの説と疑問が残されたままですが、TONE BENDERを通す、という行為が一般的なエフェクターという意味での「大爆音で激歪み」というファズの用途に限定されたものではなく、「レスポールでテレキャスみたいな音をだす」という効果を生み出した/広めた、というペイジ先生は、やっぱり尊敬しちゃいますね。

 そんな敬意を込めて、というわけでは全くなかったのですが(笑)、このSUPER BENDERには一番上のシンプルなロゴ模様のほかにも、ここに掲載したような「ZEP仕様」ラベルもあります(当方とROMANの間では、通称ZOSOラベル、と呼んでいます)。こちらはとある海外のZEPマニアの要望に答えるために、当方がサササっとコサえたデザインなのですが、一応スクリーンもそのまま残っていますので、ご希望の方がいらっしゃればこちらのラベルにて製造することも可能です。その場合も価格はかわりません。ただし、このZOSOロゴのモデルは作り置きをしていないので、ご要望があってからの製造になります。多少のお時間をいただくことをご了承ください。

 そして、このSUPER BENDERも、ビルダーのROMÁN本人によるデモ映像がYOUTUBEに既にアップされていますので、こちらを是非参照してみてください。ソロノートでの超ロング・サスティーン、それからギター側のヴォリューム・コントロールに敏感に反応するその歪みの量と、しぼった際のクリアかつふくよかな音を是非チェックしてみてください。これまでの「65 BENDER(MK1クローン)』「66 BENDER(MK1.5クローン)」のいずれとも違う、独特のファズ・テイストだと思います。ファズ側のATTACKノブも、ゼロ、12時、最大、とパターンを変えてデモ演奏しているので、そのあたりも参照していただけたらと思います。
 経験者の方であればおなじみとは思われますが、TONE BENDERにあまり馴染みのない方には、レスポール/ハムバッカーPUで、TONE BENDERを通してヴォリュームをしぼるだけで、ここまでチャキチャキのサウンドが出せることを知らない人も多いかと思われます(ちなみにROMANの持っているレスポール・カスタムは75年製のメイプルネックのLPCで、ギターには全く改造されていません。ピックアップもオリジナルのTトップ・ハムです)。その辺を楽しんでいただければ幸いです。

 そして更にもう一つ、このMANLAY SOUND SUPER BENDERには特別仕様ともいえるモデルがあります。それはトランジスタにOC75を使用したバージョンです。ただし、上述の通り「試してみて、うまくいった場合のみ」に製造することになっているため、生産数のメドがたたないということもあり、受注をお受けすることはできません。実は当方がどうしてもOC75のバージョンが欲しかったので無理をいっていろいろやってもらってたのですが、今のところ2ケしか完成していません。OC75バージョンの為に、決して安くはないOC75を100ケほどいろんな場所から入手したのですが、今後全部をチェックしてみてMK2としてバッチリなサウンドになるものが何個できるかはこれからのテスト次第、ということになります。

 もし音の面でうまくいけば、今後そのOC75バージョンはすべて日本に入れてもらうことにしているので、他のMANLAY SOUNDのペダルとともに本サイトを通じて販売させていただきます。ただし、上記のような理由もあってOC75バージョンは価格が他よりもボンと跳ね上がることは、あらかじめご了承ください。

3.18.2010

Marshall Supa Fuzz (1967-)


 まだPROFESSIONAL MK2のお話が続きます。66年以降、前述したVOX/JMIの例のように、ソーラー・サウンド社はゲイリー・ハーストが開発したTONE BENDERを、他社のために製造し、OEM提供するようになります。その中でもこれまでのTONE BENDERの中でもかなり大きな成功を収めたものに、マーシャルSUPA FUZZがあります。

 マーシャルの為にソーラー・サウンドがOEMを始めたのは1967年とのことなので、VOXなどのOEMよりは1年ほど後の話になります。ちなみにこの時ソーラー・サウンド社はファズだけではなくSUPA WAHという名前のワウもマーシャルにOEM提供しています。その新しいワウ&ファズは、共にシルバーグレイのハンマートーン塗装で、マッチングを考えたのか、その筐体も(それまでのTONE BENDERが持っていた宇宙船のような筐体ではなく)、新たに角張った筐体を用意しています。ワウに関してはここで詳しくは触れませんが、その中身はソーラー・サウンド(後にカラーサウンド・ブランドになっても同じ)のワウと、コンデンサもインダクタもトランジスタも基盤も全く同じものでした。

 そして、当然ながらマーシャルに提供されたファズSUPA FUZZも、その中身はソーラーサウンド製PROFESSIONAL MK2と同じものです。そういうわけで、TONE BENDERというファズはMK1からMK1.5の時代(1965年夏から1966年春まで)はソーラーサウンドという1つのブランドのみでの商品展開でしたが、66年中頃のこのPROFESSIONAL MK2というモデル以降は、多くの企業/ブランドによってそれぞれ展開していくことになります。

 SUPA FUZZは1970年くらいまで、おおよそ3年ほど販売されていたようなので、細かな抵抗等のパーツ・チェンジはもちろんあるのですが、基本的にはトランジスタはOC75の3つ使い、ということもわかっています。もしかしたらオリジナルで製造されたMK2関連商品のなかでは、最も最近まで作られたものはこのSUPA FUZZかもしれませんね。

 SUPA FUZZの筐体は、ややスリムで段差のついた筐体ですが、時期によって細かく筐体のデザイン等は変更されています。下にその写真を掲載しましたが(おそらくこれで全部だろうとは思うのですが)ビミョーに小さな、でも結構多くの違いをそれぞれに発見することができますね。青いSUPA FUZZなんてのがあったとは、この写真を見るまでは当方もまったく知りませんでした。

 この写真は、左から順に発売順に並んでいるもの、と思われるのですが、左の2ケは筐体がやや幅広く、エッジに斜めの面取りが直線的に入っていますね。ロゴはマーシャルのロゴが筆記体、モデル名が太い文字で入っています。実はこの2ケはポットの配置位置が異なっています(左にあるほうが間隔が狭い)。真ん中の2ケは全体に丸みを帯びた筐体に変更になった後のものです。ロゴ・ラベルのデザインは、マーシャルの文字が太く、モデル名が細い筆記体になってますね。そして右の2ケは、筐体のシェイプ自体はかわりませんが、ご覧のように青やら黒やらというカラーがついています。そして青い方はロゴはプリントだった(ただし、既にはがれてしまっている)のですが、その後はロゴがプリントではなく筐体にそのまま浮き彫りで彫り込んである、というものに変更になります。更にこの時期から、FILTER(他のTONE BENDERでいうATTACKノブ。通常でいうとFUZZノブですね)とVOLUMEのノブの位置が左右逆になっています。写真にはありませんが、この時期のSUPA FUZZにももちろんシルバー・グレイのモデルもあります。

 マーシャルSUPA FUZZは前述したように、ザ・フーのピート・タウンゼンドが使用したってことがわかっていますが(彼にとってはTONE BENDER MK1、ユニヴォックスSUPER FUZZ、ダラス・アービターFUZZ FACEに続くファズがこのマーシャルSUPA FUZZだったそうです)、個人的に興味深いのは、イギー&ザ・ストゥージズのギタリスト、ジェイムス・ウィリアムソンがこのファズを使っていた、ということです。名作の誉れ高い73年作品「RAW POWER」の裏ジャケには、たしかに(解像度荒いのでわかりにくいですが)ステージ上で足下にこのSUPA FUZZがおいてあることが確認できます。

 以上、まとめると「ソーラー・サウンドの自社ブランド」「初期VOXブランド」「マーシャル・ブランド」から発売された3種が一般に“MK2”と呼ばれるTONE BENDER、ということが出来ると思います。このうち、初期の英国製VOXモノは実際には殆ど製造/流通されておらず、現時点でも発見・入手ともに極めて困難な状況ではあります。

 余談ですが、数年前にイギリスのJMIが復刻したTONE BENDER MK2のデザインは、VOX TONE BENDER PROFESSIONAL MK2(66年製)を模したものでしたが、そのオリジナルを知っている人は復刻当時はほとんどいなかったと思われます。その推測を裏付けるひとつのエピソードとしては、JMIがそのMK2を復刻した一番最初の頃は、回路がMK2とは全然違うものだったからです。現在はゲルマ3石(OC75もしくはOC81D)のオリジナル回路に修正されたものが出回っています。

 さらに余談を加えると、JMIの復刻より更にさかのぼること10数年、イギリスのソーラー・サウンド社も各種TONE BENDERを日本製造で復刻したことがありますが(90年代中頃の話です。SOUND CITY JAPANのロゴシールが張ってあるものをご記憶の方も多いと思われます)、彼らもPROFESSIONAL MK2を復刻した際にはオリジナルとは違う回路を使用して復刻した(AC125、もしくはAC128をそれぞれ2ケ、という回路)ために、当時のファズ・マニアは少なからず混乱したようです。D.A.Mのデイヴィッド・メイン氏も「むしろこれはMK1.5に近かった」と指摘してますが、その当時はTONE BENDERに関する資料も今ほどはなかったと思われるので、致し方ない部分ではありますが。(この項つづく)

3.15.2010

Tone Bender Professional MK2 (1966)


 TONE BENDERという名のファズは、1966年の春以降になると、枝分かれして発展し、多岐にわたって商品展開されていくことになります。つまり様々な会社が様々な回路で様々なTONE BENDERを手がけるようになるのはここから、ということになります。


 まず、前作MK1.5に引き継ぐ形で、ソーラー・サウンド社は自らのブランド・ネームのもとにTONE BENDER PROFESSIONAL MK2 を発売します。MK1.5と同じ形の筐体を使用しつつも、回路はムラード製OC75を3ケ使用したものに変更されました。回路的には、これはMK1.5回路(ゲルマ・トランジスタ2石)の前段に、増幅用のトランジスタを1ケ追加したもので、ゲイリー・ハーストによれば、このアップデートは「より太くてサスティンのあるサウンドを欲したミュージシャン達の要望によるもの」とのこと。つまり、このMK2の回路をデザインしたのは、これまで同様ゲイリー・ハーストでした。

 計3ケのゲルマニウム・トランジスタ構成に「戻った」この時期のTONE BENDERですが、野太い音かつ深い歪みと、ヴォリュームに敏感に反応するゲイン・コントロール、その2つが特徴的です。ただし、デイヴィッド・メイン氏(D.A.M)いわく「MK2は製造が難しい機種で、しかも温度の変化にとても敏感な回路とパーツ構成」とのこと。個体差も激しく、なかなか一言でサウンドの特徴を列記できないことをご了解いただきたいと思います。確かに回路に関しては、当方も関わったMANLAY SOUNDのクローン・ペダル「SUPER BENDER」を製作した際に、「なかなかウマくいかない」という、同じ苦労(笑)を経験しています。

 このソーラー・サウンド製PROFESSIONAL MK2はジミー・ペイジがヤードバーズ〜レッド・ツェッペリン初期まで使用したことで、ギター・ファンにはなじみ深いモデルですよね。やはりどうしても、MK2のファズにはテレキャスを刺して「HOW MANY MORE TIMES」をギュワギュワーンとやりたくなってしまうのが人の情、というものかと思われます(笑)。ちなみに、ジミー・ペイジは66年以降、ヤードバーズ〜ツェッペリン初期までこのPROFESSIONAL MK2を使用していますが、ZEP結成以降、人前でコレを使ったのは1971年8月8日モントルーでのライヴでのみ、なのだそうです。

 ジミー・ペイジ所有のPROFESSIONAL MK2はロジャー・メイヤーによって(時期は不明ながら)改造が施されており、アウトプットバッファーをかませていること、更にミッドレンジをブースト(これは抵抗値の変更なのか、それともミッドブースト回路を付加したものかは定かではありません)したものになっている、ということが現在わかっています。ジミー・ペイジに関しては当方よりその詳細を詳しい方が世界中に沢山いらっしゃると思うので、ここでは以上に留めておきます。

 そしてこの頃、VOXブランドを擁するJMI社も同じくVOX TONE BENDER PROFESSIONAL MK2と名付けられたファズ・ペダルの発売を開始します。ソーラー・サウンド製とほぼ同じグレー・ハマートーンの筐体で、トップ面に大きく「VOX」とプリントされたこのペダルは(註;写真右下のものは極初期のプロトタイプ、とされるVOX TONE BENDERで、こちらはソーラーサウンド製と全く同じラベルのプリント、更に小さくVOXとプリントが加えられたものであることがおわかりいただけると思います)、中身/回路も上記MK2と全く同じものです。ただし、これらは個体によってトランジスタにはOC75ではなくOC81Dが使用されたことも確認されています。これはVOX/JMI社からのオーダーによる、ソーラー・サウンド社のOEM製造商品でした。 

 TONE BENDERと言えばVOXのブランド名をすぐに思い出す方も多いとは思われますが、実はVOX/JMI社がTONE BENDERに関わるようになったのはこの頃(66年中頃)以降のことです。そしてそのVOXブランドが冠せられた最初のTONE BENDERは、ちまたに多く流通しているイタリア製(その詳細は後述させていただきます)のものではなく、イギリス/ソーラーサウンド製でした。回路も上述したような、OC75が3ケ(もしくはOC81Dが3ケ)の、MK2回路だったのです。ここまでが、1966年の中頃までのTONE BENDERの製品構成の流れになります。(この項続く)

3.12.2010

Manlay Sound - 66 Bender (MK1.5 Clone)


 MANLAY SOUNDでも、近年脚光を浴びた激レアTONE BENDERモデル、MK1.5のクローンをもちろん作りました。その66 BENDERを紹介したいと思います。名前が示す通り、ある意味金色のMK1クローン65 BENDERの兄弟のような存在、とも言えますね。
 こちらも回路はオリジナルのソーラーサウンド製 TONE BENDER MK1.5を踏襲し、トランジスタには日本製の2SB324、もしくはヨーロッパ製AC125SFT322、いずれかの組合わせで製作しています。
 ゲルマニウム・トランジスタに詳しい方ならお判りと思いますが、2SB324、AC125、SFT322はいずれも互換性の高い(というかほぼ同じ)規格をもつ部品であり、これらのトランジスタの種類ではほぼ音の差がありません。というよりは、組み合わせで使用する2ケのマッチングのほうが音に重要であり(この辺も、FUZZ FACEの回路にお詳しい方なら経験されたことがあると思います)、その結果を見て、MK1.5のサウンドが出るものだけを選別し、使用しています。

 オリジナルのMK1.5には、前述したようにOC75という有名なトランジスタが使用されていましたが、現在ドンズバでいい音の出るマッチングを期待できるOC75を探す事は非常に困難になっており、またむやみに価格が高騰していることもあって、このモデル「66 BENDER」ではOC75を使用する選択肢をあえて外しました。

 実は試作段階で何度も当方から「OC75でなんとかならないか」という要望を数度にわたってお願いしてみたのですが、何度やっても結果が芳しいものにはなりませんでした。上記のトランジスタを選択することになったのはそういう訳です。余談になりますが、全く同じ悩みをファズのカリスマ(笑)デイヴィッド・メイン氏も間違いなく抱えている訳で、彼は最近のD.A.M製品でOC75を使うことが殆どなくなりました(彼も近年はAC125等を使用していますね)。

 肝心の音ですが、もちろんこのモデルもビルダーのROMÁN自身によるデモ演奏がYOUTUBEにありますので、こちらを参照願えればと思います。
 MK1との比較で言えば、出力はそれほど高くありません(というか、MK1の出力が他と比べてやけに高いワケなんですが)。また、ゲインもノブに準じてゆるやかに上がっていくタイプです。ATTACKノブを思い切り回してブーブーいわせた音も、密度の荒れたカンジが適度に残る歪みです。

 そして最大の特徴は、FUZZ FACEファンの方にはお馴染みと思われますが、ギター側のVOLUMEを絞った際のクリスタル感のあるクランチです。TONE BENDERファミリーはどれもギター側のVOLUMEを絞った際の音が思い切りオイシイご馳走サウンドなわけですが、実はモデルによって音の傾向がそれぞれ異なります(回路が違うのですから、当然ですが)。やはりMK1.5クローンであるこの「66 BENDER」のそれは、FUZZ FACEに傾向が近いと思います。

 デモ演奏の最初のロングトーン、これはレスポール(カスタム)のフロントPUの音ですが、ファズ側のATTACKは最大になっています。MK1のサウンドと比べても、歪みのピークが高い位置にあることがお分かり頂けるかと思います。そしてギターのVOLを下げた音もいくつかのパターンで録画されていますので、是非参照してみてください。ROMÁNは御丁寧に、MK1の時と同じアンプ、同じギターでデモを録ってくれてるので、純粋にファズ・ペダルのサウンドの違い、歪みの傾向、操作性、ピッキングの強弱による音の差等がお分かり頂けると思います。

 ちなみにこのMANLAY SOUNDの66 BENDERは、ベースで使用した際にも、あのビートルズ「THINK FOR YOURSELF」のようなサウンドが出せるようにチューンしてあります。実は最初当方とビルダーのROMÁNのあいだで、既発品だった「RONNO BENDER」というファズにちなんで「じゃあこっちはBEATLE BENDERにしようか」等と相談してたのですが、さすがにそれは怖いなあということでこの名前に落ち着いたという経緯もあります。是非ビートルズ・ファンにもお試し頂けたらと思っています。