12.29.2012

[SALE] JMI Tone Bender Outlet Sale (Pt.3)

 
 あらら、ウカウカしてたらもう年末なんですね。早いですね。というわけで、おそらく今年最後の更新になるであろう今回もイギリスJMIのアウトレット品の特売品のご案内です。おかげさまで以前ご案内させていただいたRANGEMASTER関連や、TONE BENDERのMK1ミック・ロンソン・モデルに関しては全てSOLD OUTとなっております。今回売却するペダルは4種類、それぞれ各1個のみ、となります。もし今回のペダルに興味を持たれた方は、この機会に是非、いかがでしょうか。

1. JMI TONE BENDER MK1.5 (MULLARD OC75 LTD)
 まずはこちら。以前こちらでもご紹介した、TONE BENDER MK1.5の限定復刻品。トランジスタには貴重な英国MULLARDのOC75を2ケ使用したもの、になります。当然トランジスタにはMADE IN GREAT BRITAINという文字が入ったブラックキャップのOC75が使用されています。
 ご覧の通り、筐体はシルバー・ハンマートーンのもの。以前も書いたのですが、トランジスタ、筐体の塗装ともにこちらからリクエストを出して、こんなふうに製作してもらったブツなんです。総製造数を本国に確認してないのですが、おそらく全部で7つしか作ってないハズです。
 今回のこちらのペダルは動作確認済みで、全く問題ないブツではあるんですが、2点ほどマイナス点があります。ひとつは筐体のトップ面に塗装の欠けがあること。写真で赤く囲った部分にチロっと見えると思います。
 それからもう1点はフットスイッチです。これ、最初からコレだったので理由は判らないんですが、本来JMIのMK1.5の復刻品では黒く横長のCARLINGスイッチ(6接点)を使うんですが、これは何故か最初から青いクリフ(9接点)が使用されていました。また、写真を掲載していませんが裏蓋は初期ロットで使われた黒い裏蓋(GARY HURSTのサインの入っていないモノ)になります。以上の点を予めご理解いただいた上で、ご検討願えればと思います。通常の製品同様に、本国の保証書、JMI布袋が付属します。数量は1ケのみ、価格は35000円(送料/税込)となります売却済みとなりました。


2. JMI TONE BENDER PROFESSIONAL MK2 (MULLARD OC81D LTD)
 続いてはこちら。こちらもイギリスJMIが限定復刻した、TONE BENDER PROFESSIONAL MK2、トランジスタに超貴重な英MULLARD OC81Dを使用したものになります。随分前に当方の手元に入荷し、かなりテスト使用したので、外観の程度はそれなりの「新古」とお考えいただけると幸いです。
 トランジスタはすべて英MULLARD製、シルバーキャップで、2つはOC81、ひとつはOC81Dとなっています。それらのトランジスタ名の違いに関しては、過去のポスト(こちらとか、こちら)をご参照いただければ幸いです。
 一番のマイナス・ポイントが、実は「裏蓋」でして(笑)。これ、向こうのミスで最初に「JMI TREBLE BOOSTER」てプリントしてある裏蓋が付いてたんですよね。で、なんだよコレ、間違ってるぞ、なんて文句を言って、裏蓋だけ送れよ、とリクエストを出したんですが、後から送ってもらった裏蓋(新しいブツ)がネジ穴のサイズがあわなくて取り付けられない、なんてことになっておりました。仕方ないので、自分で「TREBLE BOOSTER」ていう文字だけカリカリと削り落としたんですが、やっぱり痕は残ってしまってます。
 これ、JMIで一番最初に作られた「英MULLARD OC81D」のMK2だったので、筐体の塗装がまだ「グレーハンマートーン」だった頃のモノです(既に何度か書いていますが、それ以降に作られた同種の筐体は「シルバー」になっています)。
 こちらも通常の製品同様に、本国の保証書、JMI布袋が付属します。以上の点を予めご理解いただいた上で、もしこんな状態でよろしければ、と思い、安くしました。数量は1ケのみ、価格は45000円(送料/税込)となります。ご検討願えれば幸いです。売却済みとなりました。


3. JMI PLAYER'S SERIES TONE BENDER MK3
 さて、お次はこちら。既に本国でも製造終了となった「PLAYER'S SERIES」という廉価版TONE BENDER復刻品です。まずは同シリーズの「MK3」のアウトレット品です。トランジスタはゲルマとシリコンのハイブリッドで、電源アダプター使用が可能なモデル、となります。
 こちらも多少テスト使用にともなうキズがあります。写真で赤い線で囲った部分が一番目立つキズかと思われます。そして、お恥ずかしながらこのペダルにはさらに1点、重要なマイナス・ポイントがあります。それは現時点でスイッチをONにしてもLEDインジケーターが点灯しないという点です。
 実は入荷時にチェックした際には問題なく点灯していたことを確認してるのですが、いつの間にか付かなくなってしまいました。おそらくスイッチ不良だと思われるのですが、今日の時点までそのママにしてあります。なお、現在でも音のほうには問題がないことを確認しております。すべてのツマミ機能もスペック通りに作動します。
 こちらも通常の製品同様本国の保証書、JMI布袋が付属します。以上の点を予めご理解いただいた上で、もしこんな状態でよろしければ、ご検討いただければ幸いです。数量は1ケのみ、価格は17000円(送料/税込)です。もしご希望であれば、未使用の新品クリフ・スイッチ(青で、9接点のモノ)をおつけしますが、スイッチの交換は自己責任でお願いできればと思います。


4. JMI PLAYER'S SERIES TONE BENDER MK2
 最後も「PLAYER'S SERIES」から、TONE BENDER MK2です。今回こちらも同様にアウトレット販売しますが、こちらのMK2にはどこも問題がありません(笑)。ちゃんと動作確認もおこない、LEDも点灯します。上記したPLAYER'S SERIES MK3もそうなのですが、すでに本国で作っていないので、もし不良品が出ても、新しい同等品を別途用意する事ができないんですよね。なので、手持ちのPLAYER'S SERIESはこれですべて処分販売することにしました。上記MK3、それからこちらのMK2ともに、動作確認した上で販売しますが、そういう理由のために「アウトレットでの特価販売」ということをご理解願えればと思います。
 こちらのMK2のほうも通常の製品同様、本国の保証書、JMI布袋が付属します。数量は1ケのみ、価格は20000円(送料/税込)となります売却済みとなりました。

 なんだか今回は「ワケアリ品の処分」みたいなカンジで、ちょっと気が引けるのですが(笑)、今回も全部で4ペダル、の販売となります。もしご希望の方がいらっしゃれば、どのモデルをご希望か、を明記の上、こちらまで直接メールにてお問い合わせいただければと思います(ただし勝手ながら匿名でのメール/ご質問には基本的にお答えしていません。お名前の記載をよろしくお願いします)。各1ケずつの販売で、先着順となりますので、売り切れの際はご了承下さい。
 また、上記したアウトレットとは別に、いくつかのJMI製品は通常通り在庫を持っています。当ブログの左側のサイドバー部分、JMIのロゴの下に書いてあるモデルが在庫アリですので、もしそちらに興味のある方は別途ご連絡をいただければと思います。

 んー、そういえば「夏頃には」などと言っていた、MANLAY SOUND製のTONE BENDER MK3クローンもまだ出来上がっていません。なんとかしなきゃ。それに、前回チラリと告知したMENATONEの「THE PIG」もまだ手元に入荷してません。いずれにしろ両方近々にはケリをつけて、改めて告知したいと思います。年末だというのに、なんかこんな商売っ気あふれるカンジの文章(笑)で今年を締めるってのも恐縮ですが、来年も何とぞ当ブログをよろしくお願いします。
 

11.30.2012

[SALE] JMI Rangemaster


 前回、JMIのMK1ミック・ロンソン・モデルのアウトレット・セールをやりましたが、既に完売しました。お買い上げいただいた皆様、有難うございました。おかげでなんとか年末を迎えることが出来そうです(笑)。
 そんなワケで今回は、英JMIのアウトレット・セール第2弾、となります。今回もアウトレット品てことで、値段を下げて販売しますが、実はアウトレットな部分はどこもなくて(笑)、単純に長期在庫になっちまったから売りさばいてしまおう、という理由でしかありません。今回はRANGEMASTERを4つほどセールとして売り出します。ご興味をお持ちの方は、是非この機会に、よろしくお願いします。
 オリジナルのDALLAS RANGEMASTERに関して、それから現在イギリスのJMIが製造しているRANGEMASTERのスペックや商品詳細に関しては、以前のポスティングも併せてご参照いただければ幸いです。


1. JMI RANGEMASTER (NORMAL OC44)
 まずはこちら。「通常版」としてJMIが製造している、RANGEMASTERの復刻品です。いにしえのDALLAS RANGEMASTERの復刻品として、JMIが商標登録も保持しているブツですから、公式の復刻ということになります。内部の構造はもちろん、この可愛らしい(笑)外観もすべてオリジナル同様に復刻されたものです。
 トランジスタにはOC44を使用。トランジスタにはブランド名が記載されていませんが、60〜70年代のNOSパーツ(シルバーキャップ)を使用。ご承知とは思いますが、裏蓋からはアウトプット・ケーブルが直でのびています。写真を取り忘れたので恐縮ですが、その辺は予めご了承下さい。数量は2ケ、価格は30000円(送料/税込)となります売却済みとなりました)。


2. JMI RANGEMASTER (MULLARD OC71 LTD)
 それからこちら。JMIが限定20ケで製造した、RANGEMASTERの限定品です。トランジスタに英MULLARD製のOC71(ブラックキャップ)を用いたものです。JMIも商品説明で語っていますが、定番と言われるOC44トランジスタよりも、ややハイエンド、というかエッジの部分がギシギシと目立つ、というタイプになります。

 余談になりますが、当方が所持しているオリジナルの65年製RANGEMASTERもトランジスタはOC71です。なので弾き比べすることができましたが、正直音は同じです(笑)。そりゃ当然ですよね。JMIが製造したOC71版RANGEMASTERは、公式サンプル動画があるので、そちらもあわせてご参照下さい。
上に記載した「通常版」とこちらの「限定版」は、見た目はまったく同じです。違いは「トランジスタが違う事」以外は、裏蓋に「MULLARD OC71」と書いてあるかどうか、だけになります。
数量は1ケのみ、価格は40000円(送料/税込)となります売却済みとなりました)。


3. JMI PLAYER'S SERIES TREBLE BOOSTER
 それと、最後のこちら。実は今回売ろうかどうしようか最後まで悩んだブツでした(笑)。というのも、ちっちゃくて便利、しかも音も十分満足いくブツ、と個人的に思ってたのですが、結局自分では使うことはありませんでした。なので、新品です(笑)。こちらは「PLAYER'S SERIES」というシリーズ名でJMIが製作した、コンパクト・タイプのトレブル・ブースターです。回路はRANGEMATSERと同じですが、基板構成も(当然ながら)違いますし、トランジスタはAC127を使用、LEDと電源アダプター対応、というユーザー・フレンドリーな仕様です。既にPLAYER'S SERIESは本国で全種廃盤となっており、最後の販売となります。
こちらも数量は1ケのみ、価格は18000円(送料/税込)となります売却済みとなりました)。


以上、今回は全部で4ペダル、の販売となります。冒頭でも書きましたが、アウトレット・セールではありますが商品はすべて新品のブツです。箱、証明書、本国イギリスでの保証書、あと布製のJMI袋が付きます。

 もしご希望の方がいらっしゃれば、どのモデルをご希望か、を明記の上、こちらまで直接メールにてお問い合わせいただければと思います(ただし勝手ながら匿名でのメール/ご質問には基本的にお答えしていません。お名前の記載をよろしくお願いします)。限定数での販売/先着順、となりますので、売り切れの際はご了承下さい。また、JMI製品ではこの他にももう少しアウトレット品を用意するつもりですので、今後の続報もご期待ください。



 上記の英JMIとは関係ありませんが、最後に余談です。以前MENATONEのTHE PIGというカスタムメイドのエフェクターを当ブログで紹介しましたが、「オレも欲しいんだけど、どうやったら買えるの?」というご連絡をいくつか頂きました。基本的に直接メールでMENATONEにオーダーするしかないのですが、ビルダーのブライアン・メナ氏から「通常製品の製造でメチャ忙しいから、カスタムメイドを受け付けてるヒマがない。おそらくもうTHE PIGは作らないだろう」みたいなメールを貰いました。んー、惜しい、惜しすぎる。TONE BENDERとは関係ないですが、個人的にここ数年では最も「オッ!こりゃスゲエ」と感動したペダルだったからです。そこで、ブライアン・メナに無理を言って、3ケだけ当ブログ向けに作ってもらうことになりました。入荷したら、改めて告知しますので、もしご希望の方はそれまでお待ち下さい。
ていうか、実はMENATONE製品も、入荷まですごーく時間がかかります。なので、正直今でも不安です(笑)。実際に入手してから、改めてご報告したいと思います。

11.22.2012

The Effector Book Vol.18 - Tube Driver Special

 
 今月も月末にはシンコーミュージックからTHE EFFECTOR BOOK最新号が発売になります。「4回くらい出せればラッキーっしょ」なんて言いながら始まったこの本も、なんと開始から4年をゆうに過ぎ、VOL.18という前人未到の領域に達しております。そりゃあ当方も年を取るワケです(笑)。

 てなワケで、その中身をご紹介します。VOL.18は真空管エフェクター特集。真空管はもちろん増幅回路に使用するテクノロジーですから、プリアンプ、オーバードライヴ、ディストーション、そういったゲイン稼ぎ系のエフェクターが沢山紹介されていますが、今回の特集ではむしろ製品の特徴と同時に「さて、真空管てなんぞや?」というアカデミックな記事も豊富です。
 真空管のブランド、製造国、製造工場、型番による音の違い、とかそんな話も盛り沢山です。コワイですね。そんな話で本ができてしまうのですから(笑)。もしかして、いつか将来「シリコン・トランジスタ特集」なんていうことになったりするんでしょうか?(笑)。
 真空管の魔術師、ともよばれ、フェンダーCHAMPの伝説でも有名な技師、ポール・リヴェラのインタビューとか、本編の特集とは別のブランド特集としても、真空管を使用したゴツいエフェクターも沢山出している真空管アンプ・ブランドBLACKSTARの特集とか、そんな記事も掲載されています。

 そしてベテラン・アーティスト・インタビューのほうでは、元ボアダムズ、現在人力トランスのユニットROVOで勢力的に活動されている山本精一が登場。また、「お前のペダルボードみせろよ」のコーナーでは、出ました、ダイナソーJRのJマスシス登場です(註:当方は、まあどっちでもいいんじゃね? というスタンスなので、こう書いていますが、シンコーミュージックでは彼の名字表記を「マスキス」に統一しているそうです)。
 ダイナソーの新作の発表に伴い、こないだバンドで来日したJを急遽捕獲、おそらく日本一Jの機材に詳しいTHE EFFECTOR BOOK編集長が、突撃インタビュー&機材撮影を敢行しています。今回の来日で、Jが受けたインタビューはこのEFFECTOR BOOKのもののみだったそうで、その理由は単純に「時間がまったくなかった」からだそうです。結局、公演直前に20分だけ時間を貰い、「さあ喋れ、ホレ喋れ、機材のことだけ喋れ」みたいなカンジで進められたインタビュー、なかなか面白いモノになっています。

 編集長から許可を貰い、以下彼の発言の一部を先だし披露します。というのも、編集長も「えっ!マジすか? いやあどうしよう」とアセった、と言っていた重要な発言が飛び出したからです。
 Jマスシス「知人にRANGEMASTERとTONE BENDER MK1を一緒にしたようなのを作ってもらったんで、それを使ってる。あと、それを作ってくれた同じビルダーが作ってくれたTONE BENDER MK1のリメイク・ペダルもあって、ここ数作のアルバムではかなりの割合でそれを使ってるんだ。最近のレコーディングではBIG MUFFは一度も使ったことがないよ。TONE BENDERはいっぱい使ってるけどね」。

 そりゃあダイナソー・ファンであればBIG MUFFラムズヘッドこそがキモ、と思いますよねえ。当方もそうでした。でも、スタジオではほぼMUFFは使わない、てことは以前のインタビューでも言ってましたが、そんなにTONE BENDER使ってる、とは新発見かもしれませんね。
 これも以前ご紹介したことがありますが、もちろん上記の発言ででてくる「知人」とはBUILT TO SPILLというバンドのギタリストでもあるJIM ROTH(JERMS)氏で、最初に作ってもらったTONE BENDER MK1クローンに加えて、TONE BENDER MK1にトレブル・ブースター回路をブっこんだ新しいカスタム・ファズ(右の写真の、金色でノブが4ケついたブツ)も作ってもらったようですね。特に後者は今回のライヴでも使用していて、ソロ・ノートになったときにオンにすることが多い、とのことです。

 最近も世界中でヒッパリダコの人気もののJさんですが、今年の夏イギリスの音楽誌のインタビューで「昔、カート・コバーンから2回くらいニルヴァーナに入ってくれと誘われたけど断ったんだよね」なんていうブッチャケっぷりを発揮する彼ですから、それに比べれば小さなネタですが、TONE BENDER専門ブログ、を標榜する(笑)当ブログとしてはこっちのほうが重要発言、となるわけです。

 それから、小ネタをもうひとつ。今回のTHE EFFECTOR BOOKの新製品レビューには、以前こちらで紹介したROTOSOUND社製のTONE BENDER MK3回路の復刻ファズ・ペダルFUZZ RFB-1の製品レビューが掲載されています。まだ店頭で見かけた事がないので、当方も現物をみたことがないのですが、編集部に現物が届いた、ということなので、写真をお借りしました。

 今回その中身をやっと確認することができたワケですが、基本的に回路はMK3回路をそのまま踏襲しているようです。が、ご覧いただけるようにプリント基板で、トランジスタは日本製の東芝のゲルマ・トランジスタ(AC128)のNOSパーツが使用されているようです。東芝のロゴが入ったAC128。ちょっとレトロで素敵ですね(余談ですが、こないだ『タモリ倶楽部』で「自作ファズ特集」というとんでもない内容が放送されたわけですが、ひらがなの文字が印刷された東芝製のゲルマ・トランジスタが紹介されていて、個人的にもグッときちゃいましたね。笑)。

 回路基板には2つの内部トリマーも設置されていて、やはりバイアスの調整は個々のパーツで苦労させられそうですね。ちょっと短めですが、サンプル・デモ動画があったので、貼っておきます。

 とまあそんなワケで、今回はTHE EFFECTOR BOOK最新号絡みのことだけで全部費やしてしまいました。他にもジムダンが出した「ジミヘンのトリビュート・シリーズ」の紹介とか、M.A.S.F.がシンエイのファズを弾き倒す、という動画連動企画とか、雅-MIYABI-のペダルボード紹介、等いつも以上にマニアック情報テンコ盛りの雑誌です。月末発売です。ご期待下さい。
 

11.06.2012

Manner of Mick Ronson (with Menatone "The Pig" Pt. 2)

 
 またブランクが開いてしまいました。ちょっと私生活でゴタゴタがありまして、大変落ち込んでいたものですから(笑)スイマセン。まあ逆にそんな時こそカラ元気だしていこうぜ、というワケで更新します。えーと、ミック・ロンソン・サウンドのキモとも言える、MARSHALLの初期型MAJOR、通称THE PIG、そしてそのシミュレート・ペダルである、米MENATONEのTHE PIGのサウンド・デモのご紹介です。
まずはこちらを是非お聞き下さい。1970年、デヴィッド・ボウイのラジオ・ライヴのセッションで残された音源です。ギターはロンソンの1本のみ、もちろんレスポール・カスタムですね。で、アンプは例の初期型MAJOR、なんとワウもファズも挟んでないピュアな初期型MAJORの音が、しかギシギシと歪ませたMAJORの音が聴けます。

 よくチマタで言われる「ミック・ロンソンの中域モッコリなサウンド」は大方がソロ・ノートでファズをONにして、ワウを反踏みした時の音、を指していると思われますが、もちろんそんなのはソロの時だけ、ということはボウイ・ファンであればご承知のことと思われます。そうでない部分の音は、基本的にレスポール・カスタムとマーシャルMAJORだけでの音、ということになります。

 昔「ミック・ロンソンのギターには鉄板が仕込まれてる」なんていうテキトー極まりない(笑)噂が流れたことがありました(ホントなんですよ。笑)。もちろんそれは彼の“金属的な”エッジの利いたギター・サウンドとロング・サスティーンに由来したものですが、当然そんなウワサは大嘘です。
 そんなワケで、この動画をご堪能いただければ、カッティングであるとか、ピックスクラッチであるとか、あらゆる場所に「ああ、ロンソンのサウンドだあ!」とご納得いただける箇所が沢山ありますよね。やはりキモはMAJOR、しかも初期型、ということがこれでハッキリしたと思われます。

 さて、ではそのMARSHALL MAJOR初期型をシミュレートしたMENATONE THE PIGのデモ動画となります。まずはこちら。ご自身もSONIC VIというブランドでカスタムビルドのエフェクター・ブランドをお持ちの方が、ギターとTHE PIGだけでシンプルなデモ動画を作っています(途中、ワウ、それからTONE BENDER MK1クローンを試している箇所もあります)。

 うーん、素晴らしいペダルですね(笑)。ただ単純に俺の好みにドンズバだ、ということもあるのですが、今までかなり多くの「マーシャル・シミュレート」ペダルを試しましたが、当然のようにこの「MAJOR初期型」の音が出るものはひとつもありませんでした。遂にそれが世界に登場した、ということになりますね。
個人的に、やはりキモは例のパラレルでの2トーン・コントロールと、それをミックスしたときのフェイズ効果、というのに尽きるのだと思います(その詳細は、前回のポストをご覧下さい)
 そしてもうひとつ動画をご紹介、といいたいのですが、埋め込みができない設定になっているので、動画のワクの「YOUTUBEで見る」を是非クリックしてご覧下さい。実はこの動画の主こそが、MENATONEのブライアン・メナ氏に「ロンソンの音がでるペダル作ってよ」と最初にオーダーしたJ.J.氏ご本人のデモ動画となります。説明欄にあるコメントを、簡単に翻訳してみます。
 「67年製(初期型)のMARSHALL MAJORは、ほぼ入手不可能だ。数多くの素晴らしいアンプ・シミュレート・ペダルを作っているブライアン・メナとの出会いから生まれたこのペダルは、ブライアンがいくつものチャレンジを経て完成したMARSHALL MAJORのサウンドを再現するペダルだ。我々はいくつもの回路図や内部写真を参照し、ブライアンの知人が持っている現物とも照らし合わせて、そうして生まれたメダルでもある」

 そしてこの動画のコメント欄にもご注目。ロビン・メイヒューという人がコメントを寄せていますが、前にも書いたのでご記憶の方もいると思いますけど、1970年代のジギー・スターダスト時代のバンド・エンジニアをやっていた人です。彼が「完璧なロンソン・サウンド」とコメントを寄せていますね。「サウンドチェックをやってた時代にタイムスリップしたよ」なんていうコメントも寄せてて、ちょっと泣かせてくれます。

 最後のほうではJ.J.氏本人が喋ってますが、うわー、この人ロンソン・マニアだけでなく、マーク・ボラン・ファンなんですね。こんだけVAMPOWERのアンプ持ってる人って、おそらく世界で彼だけでしょうね。スゲー。
 それから余談ですが、J.J.氏もホンモノの初期型MAJORを持ってるワケではないので、YOUTUBEにあるジェイソン・クイック氏の動画の音を参照した、と明かしています。これはブライアン・メナ氏からも同様のことを当方も聴いています。やっぱり、あの動画の音、素晴らしいですもんね。

 さて、では同じ60年代のマーシャル・プレキシ系なのに、なにがそんなに初期型MAJORは違うのか、のサンプルとしてもうひとつ動画を載せます。同じMENATONEブランドでは、プレキシ・マーシャルのシミュレート・ペダルでWORKINGMAN'S BLUEというペダルがあります。これ、当方もなかなか好きなペダルではあるのですが、ロンソンのようなギャリンギャリンというエッジの利いた歪みとはやはり異なります。むしろ純粋にクリームとか60年代クラプトンのサウンドを出したい、もしくはコンボのJTM45のサウンドを狙いたい、というのならこちらのほうが絶対にいい、とは思います。が、とにかくロンソンのサウンドとは別物、ですよね。

 MENATONEのブライアン・メナ氏がいうところの、ミックスしたときの独特のフェイズ・キャンセリング効果によって、ペコっとへこむ中域が存在することが、逆にそのスイープに含まれない中低域+中高域をグワっと持ち上げることで、例のギャリンギャリンなサウンドが生まれるのではないか、と思っているのですが、いかがでしょうか。
 ちなみに、以前もチラリと書きましたけど、ホントに多くの紆余曲折もありまして、当方は今年になって念願の初期型MAJORを入手しました。以前持っていた後期型MAJORを処分し(今は若きジョン・フルシャンテ・ファンのギタリストが愛用されているハズです)、ちょくちょく音出してひとりでニヤニヤしてるわけですけど(笑)、さすがに都内の狭い賃貸住宅、とてもロンソン同様に歪ませるワケにはいきません。はやくアッテネーター作ってもらわなきゃ(笑)。
 

10.24.2012

Manner of Mick Ronson (with Menatone "The Pig" Pt.1)


 前回のポスティングで告知したJMI TONE BENDER MK1 ミック・ロンソン・モデルのアウトレット品ですが、多数のお問い合わせ有難うございます。一応まだ残ってます。もしご興味のある方は、お早めにご連絡いただければと思います。(追記:全て売り切れました。お買い上げ下さった皆様、有難うございました)さてさて、そんな話に関連して今回はまたしてもミック・ロンソン関連のヨタ話です。
 上に掲載した写真の左側のもの、これは1970年にロンソンが初めてデヴィッド・ボウイとバンドを組んでライヴをやらかしたとき(バンド名はハイプという名でした)のものです。スーパーマンみたいなヘンテコな衣装を着たベーシストはトニー・ヴィスコンティ。そしてこの写真では殆ど切れてますが、ボウイの後ろにチラっとだけ黒いレスポール・カスタムが見えますけど、そのギタリストこそがミック・ロンソンでした。

 このハイプのライヴは1970年2月5日に行なわれています。実はこれまで音楽雑誌、もしくは当ブログ等で当方は「ミック・ロンソンがギターの塗装を剥いだのは1969年のどこかで」と書いてきましたけれど、上述のハイプのライヴ(ほんの10数秒だけ、動画が残されています)が証拠となって、「塗装を剥いだのは1970年の頭」ということが確実視されます。もし、その事実を気に留めていらっしゃった方がいれば、本稿にてお詫びとともに訂正させていただきたいと思います。

 完全な余談になりますが「ミック・ロンソンが一体いつギターの塗装を剥いだのか」ということと「ボウイがいつ眉毛を剃り落としたか」は、当方個人にとって長年の疑問でして(笑)、ボウイの眉毛に関しては「1972年の11/26〜12/3のどこか」ということがわかってはいるのですが(笑)。まあ完全にどうでもいいことですね。

 ところで今回の本題は、マーシャル・アンプのシミュレート・ペダルの新作をひとつご紹介することです。もちろんロンソンと関係があるブツだからです。
アメリカのカスタム・ペダル・ブランドとして既に有名なMENATONEというブランドは、日本でもモリダイラ楽器を通じて流通されてる有名なブランドですが、その製品ラインナップ群とは別に、ビルダーのブライアン・メナ氏がカスタムメイドで手がけるカスタム・シリーズがあります。その限定生産のカスタム・シリーズにて、なんとマーシャルMAJORの2インプット・モデル、つまりミック・ロンソンが使用した極初期のMAJORアンプの音を再現した、というフレコミのペダルが発売されました。名前はマンマTHE PIGといいます。

 当方もボウイ・ヲタク/ロンソン・ヲタクですから(笑)、早速入手しました。その音は後述するとして、到着する前にブライアン・メナ氏といくつかこのペダルに関してやりとりをしたので、それを元にこのペダルを紹介してみたいと思います。

実はこのペダルの開発のきっかけは、JJというニックネームで有名なミック・ロンソン研究家のひとりがMENATONEに「ロンソンのMARSHALL MAJORの音をペダルにできないか」という相談をしたことからスタートしています。

 以前から何度か書いていますが、ロンソンが使用したマーシャルMAJORは、通称「THE PIG」という、激レアな1967年製の初期型のモノです。2インプットで1チャンネル、アクティヴEQ回路、というものです。そのサウンドは、同じMAJORの後期型(4インプット2チャンネル、パッシブEQ)とは違います。ロンソンのギター・サウンドの核といってもいいそのアンプの音を再現せんと、今回のペダルは企画・制作されています。

 MENATONEのブライアン・メナは、幸運にも「初期型のマーシャルMAJORを持っている」という知人がいて、その回路を研究して今回のペダルを制作したとのことです。メナ氏いわく「実は俺は、4インプットの後期型MAJORの音を聞いたことがないから、そっちとの比較ができない」と言ってました(笑)。また「ミック・ロンソンの音を再現するために研究したけど、ロンソンの所持したアンプにはいろんな噂があって、どれがホントなのか判らないママだ」とも言ってました。いろんなウワサとは、以前にも書いた「キャノン端子の増設」とか「4インプットへの改造」とか、他にもいろんなモディファイがされたことを指します。ロンソンのMAJORに関しては、以前のこちらを参照していただければと思います。

 しかし、ブライアン・メナ本人も明解に説明しています。「このペダルの核となる回路は、トーン・コントロールだ。TREBLEは、トレブル成分とハイ・ミッド成分を増幅する。BASSは低音成分とロー・ミッド成分を増幅する。その2つのトーン回路を経由した後に、ミックスされる」。フムフム。つまりオリジナルのマーシャルMAJOR初期型と同じ回路構成だ、というワケですね。

 そして、とても重要だ、と思われるコメントを聞くことが出来ました。「2つの信号がミックスされるときに、フェイズアウト(OUT OF PHASE/位相反転する部分があって、信号がキャンセルされる仕様)をおこす。TREBLE回路とBASS回路の信号でダブリがある帯域はキャンセルされることになる。その回路の為に、ギターの増幅信号の中域の一部が<ペコっとヘコむ>ことになり(原文でブライアンは、THIS PRODUCES A MID DIP AT THE OVERLAP POINT、と言っています)、そのために、重厚ながらも、とても珍しい特徴的な中域の歪みを生み出す回路となっている」と説明しています。

 何よりも気になるのは、実際の音、というワケですが、本稿が随分と長くなってしまったので(笑)音のサンプルに関しては次回の投稿に回します。その前に、MENATONE「THE PIG」の特徴を先に書いてしまおうと思います。

 写真でもお判りのように、コントロールは4ノブ。右からTREBLE、BASS、の2つのトーン・コントロール。この2つは前述したようにゲインを稼ぐ仕様になってるので、両方をゼロにすると音は出なくなります。次にPOWER GAINと書かれたゲイン回路があり、ここがアンプでいうところのMASTER VOLUMEになります。初期型MAJORはここでもゲインを稼ぐので、ここを上げるとギシギシと歪みだします。パワー・チューブでの歪みを再現した、と考えればいいでしょうか。そして最後のVOLUMEが、このエフェクターのアウトプット・ボリュームとなります。
 MENATONEブランドのエフェクターは、すべてカスタムメイドされたトランジスタを使用している、というウリ文句なので、いくつかのシリコン・トランジスタが見えますが、型番等は一切記載されていません。

 当方の手元にあるブツはシリアル7番なので、他にあと6人はこのペダルを持ってる人がいることになりますね。店頭で購入するのは無理ですが、MENATONEに直接オーダーすれば世界中の誰でも入手することが可能です。オーダーメイドなのでちょっと時間がかかることと、MENATONE製品の中でもかなり高額(送料を入れると400ドルくらい)なペダルではありますが、とても特殊な、しかし大変興味深いペダルであることは間違いありません。

 というわけで、次回は実際のミック・ロンソンの音、それから実際のマーシャルMAJOR初期型の音、そしてこのMENATONE THE PIGの音なんかを全部並べて比較検討してみようと思います。(この項つづく)
 

10.12.2012

[SALE] JMI Tone Bender MK1 - Mick Ronson Sig.


 さて、前回チラリと告知しましたが、英国JMIの製品のアウトレット・セールです。チマチマとやってる当ブログですし、セール、と言ってみた所で大々的にやるようなモノではないのですが(笑)。

 今回のブツは、4ケのみ限定、ということになりますが、JMIのTONE BENDER MK1リイシュー品のミック・ロンソン・モデルのアウトレット品です。2010年にリイシューが始まったMK1ミック・ロンソン・モデルですが、新品で売り出すのはこれが最後になります。つまり、もう作ってないんですよね、JMIでは。

 以前当ブログにてこのモデルの2010年版を紹介した時の仕様と比較いただければより判り易いとは思うのですが、今回のこの4ケの「何がアウトレットなのか」を以下に記します。まず大きなポイントは「木製の化粧箱がない」ことです。
 既に「ミック・ロンソン・モデルは作ってない」ことを以前にJMIから聞かされていたんですが、「だって通常版MK1はあるんだから作れるでしょう?」と質問してみました。そしたら「木箱がもうない」ていうことになってたんですよね。

 さらに、当初と違う点があります。それはトランジスタです。2010年の段階では、ブラックキャップのOC75が1ケ、それとテキサス・インストゥルメンツ製の2G381が2ケ、という合計3ケのトランジスタを使っていました。これが、今回のブツでは初段がOC75ではなく、無印(註:おそらくRCAかTEXAS INSTRUMENTS製だと思うのですが、文字が読めませんでした。ご覧のように、シルバーのTO-5ケースに入ったモノです)のゲルマ・トランジスタとなっています。後段2ケはそのまま2G381なんですが、何故初段を変更したかは理由が判りませんでした。
 基板上の他のパーツとの接触を避けるため、写真でご覧頂けるようにトランジスタの下に絶縁用のテープがペタッと貼ってあるのがわかります。今回販売するもの4ケとも、全てこうなっていますことを予めご了承下さい。

 もちろん気になるのは「音が違うのかどうか」ですが、今回の4ケ、全部試してみたところ、いつも通りのJMIのTONE BENDER MK-1の音でした。やはり、TONE BENDER MK1の回路、そしてその回路の核となる後段のトランジスタにオリジナル通りの2G381を使えば、こういう音になるんだな、とあらためて確認できました。当然当方が持っている2010年版のMK1ミック・ロンソンSIG.とも比較しましたが、音には違いがありません。以前から「JMIのMK1のサウンドは、トップエンドがややシャーシャーする」と書いてきましたが、今回の4つもその点もまったく同じです。音のクオリティーは他のJMI製品と同じです。ただし、初期のブツとはトランジスタが違うことも事実です。

 さて、この限定4ケのアウトレット品は、新品として販売するものではありますが、長いあいだJMIのファクトリーで放ったらかしになっていた鉄製ケースを使って製造したものなので、若干の塗装カケがあります。写真で撮影した部分は、今回4つあるブツの中でも一番デカい塗装カケ部分の写真です。ネジ穴の下のところがチロっと禿げている部分です。これより大きなカケはなく、他は至って新品同様ではありますが、現在の状態で既にこんなカンジであることを予めご報告させていただきました。

 そして最後の写真でご覧いただけるように、ファズ本体以外の付属品は、ミック・ロンソンの伝記本「THE SPIDER WITH THE PLATINUM HAIR」、そしてミック・ロンソンの生写真、以上になります。今回はアウトレット品なので、JMIの証明書等は付きませんが、製品シリアルをこちらで控えておきますので、勿論保証等はこれまで当サイトを通じて販売したもの同様に対処させていただきます。

 価格は40000円(送料/税込)とさせていただきます。最初にも書きましたが、4ケのみです。もしご希望の方がいらっしゃれば、こちらまで直接メールにてお問い合わせいただければと思います(ただし勝手ながら匿名でのメール/ご質問には基本的にお答えしていません。お名前の記載をよろしくお願いします)。

 限定数での販売/先着順、となりますので、売り切れの際はご了承下さい。また、JMI製品では他にもアウトレット品を用意するつもりですので、今後の続報もご期待ください。



 11月16日追記:上記のJMI TONE BENDER MK1 MICK RONSON SIGNATUREのアウトレット品は完売しました。お買い上げいただいた皆様、有難うございました。
 

10.03.2012

Schaller - Fuzz Wah

 
 さて、今回もファズ・ワウを1ケご紹介となります。こちらは60年代末〜70年代にドイツ(当時はもちろん「西ドイツ」でした)のシャーラー社で開発されたものです。以前のポストで「ワウのスイッチがカカト側にあって、使いにくいったらありゃしない」と書いた(笑)ブツなわけですが、実は音に関しては結構個人的に気にいってるブツでもあります。

 60年代末に、ドイツのシャーラー社は、エレキギター用のエフェクターを開発し始めています。実は自社開発する以前、50年代からシャーラー・ブランドのエフェクターというのは存在しており、例えば米ディアルモンド(外付けピックアップで有名な、あのディアルモンドです)・ブランドのトレモロ等をOEM製造していた時期もあります。早速の余談で恐縮ですが、実はその50年代のシャーラー/ディアルモンド製のトレモロっていうのがとてもユニークな機械式回路をもったエフェクターで、一部の好事家ではカルトな人気を誇るブツだったりもします(下にオマケで動画を掲載しておきます)。

 さて、60年代、つまりロック・ギターの時代、ですね。ドイツのシャーラーはトレモロ(そちらはこんにち一般的な回路になっていましたが)、ワウ、そしてファズを新たに開発し、発売しました。その後「えーい、くっつけてしまえ!」という豪快な(笑)シャーラーの方針によって、いろんな複合エフェクターが登場しています。その当時のラインナップの詳細に関しては、既にお馴染みだろうと思われるデータベース/サイト「EFFECTOR DATABASE」あたりをご参照いただくとして、今回のファズ・ワウもそのうちのひとつ、ということになります。

 実はこのエフェクターの面白いところは、まずワウ回路です。60年代末〜70年代という発売時期ですが、いわゆるHALOタイプのインダクターが採用されていて、つまりはVOXの初期型ワウ「クライドマッコイ型」の回路をクローンしたことが伺えるわけですね。当時も今も、ドイツとイタリアというのは工業製品に関して密接な関連があったので、ドイツのメーカーがイタリアの回路をコピーしたとしてもなんら不思議な点はありません。むしろ「独特の」スウィープ効果を持ったクライドマッコイ回路がこんな所にも存在したことが面白いですよね。実はこのワウ・サウンドが非常に当方の好みでして(笑)、それだけでも嬉しいわけです。
 ただし、前述したように、スイッチには不満を持っています。更に加えて言えば、インプットが左側に、アウトプットが右側に、という例の大昔の「逆配置」でもあるので、そこもイラっとしますよね(笑)。

 そして、やはり注目はファズ回路のほう、ですよね。簡単に言ってしまえば極めてシンプルなファズ・フェイス回路そのままです。ここに掲載したモデルでは、トランジスタにはBC239というシリコン・トランジスタが採用されています。ちなみに本機では、ワウ回路のトランジスタにもBC239が使用されています。

 基板回路は1つにまとめられていますが、この基板で面白いのは、やはり内部にファズ部のアウトプット・トリマーが1ケ、ワウ部のアウトプット・トリマーが1ケ、合計2つのトリムポットが採用されていることでしょう。ファズ・ワウの常識として、こちらのペダルもファズが最初で、その後にワウ、という構成順序になっていますが、内部のトリマーのおかげで微調整ができるのはありがたいことです。

 外部に唯一見える、INTENSITY と書かれたツマミは、もちろんファズの「ATTACK」に相当するツマミで、乱暴に言ってしまえばその効きはおおむねファズ・フェイスと同じ、です。ちゃんと他のファズ・フェイス系ファズ同様、ギターのボリュームには敏感に反応します。

 実は独シャーラーはこのファズ・ワウ以前に「ファズ」単体機も発売していますが、回路自体はこのファズワウの「ファズ部分」と全く同じです。ただし、極初期のモデルにはゲルマニウム・トランジスタを用いたものがあることが確認できています。また加えて言えば、シリコンに変わった初期のブツでは、BC108という、例の有名な(=ファズ・フェイスと同じ)シルバーキャップのシリコン・トランジスタが使われていたブツもあります。

 というわけで、実はこちらのブツも、今年の頭に出た「THE EFFECTOR BOOK」のファズ・ワウ試奏コーナーに登場したその現物です。掲載に際して前回同様M.A.S.F.さんによるデモ演奏動画がありますので、こちらに貼っておきます。まあ古いワウ回路の宿命でもありますが、もちろんトゥルーバイパスではなく、繋ぐだけで結構音ヤセします。ですが、逆に考えれば原音が痩せることによってファズ効果/ワウ効果はより強烈にかかることにもなるので、そのあたりは好きずき、ですよね。

 ちなみに、シャーラー社はこのエフェクターを随分長い間、80年代後半まで製造し続けています(若干の使用変更はありましたが)。初期のブツはグレー・ハンマートーン塗装で、ご覧のようにSCHALLERロゴが筆記体で入っているブツです。80年代には足踏みペダル部分に金属の四角いプレートが配置されます。90年代には色も黒になり、ジャックの位置も変更になります。20年以上延々と発売され続けたペダルで(しかもその途中には国の形がかわる、という激変の時代を挟みながらも)筐体や回路、パーツはほとんど変わらずに製造され続けた、というちょっと面白い経過をたどったペダルでもあります。90年代の黒い筐体になってからは、そのネームプレートには製品名として「WHA WHA FUZZ」とプリントされていました。

 その「一貫して変わらない」仕様ではありますが、この筐体はプラスティック製です。そして、裏蓋の鉄板だけでヤケに重量を稼いで安定させる、という作りなので、ハッキリいって壊れ易いです(笑)。



 さて、上記のファズワウとは一切関係のない、余談を兼ねたご報告(笑)です。いくつか英国JMIのTONE BENDER関連製品のアウトレット品を入荷させました。ワケあり特価品、みたいなカンジではありますが、次回のポスティングでそれらのいくつかをご紹介できると思います。ほんのわずかの入荷なので限定ではありますが、特価販売しますので、ご期待下さい。
 

9.27.2012

VOX - Wah-Wah Distortion (Late 60's / Made In Italy)


 前回VOXブランドの「HASTINGS SERIES」という英国カラーサウンド製ファズワウをご紹介しましたが、こちらはそれよりも前の製造による、VOXブランドのファズワウ・ペダルです。製造年は67〜69年、と思わしきブツですが正確な製造年はわかっていません。
 これまでも何度か書いてきたように、VOXブランドは66年末からイタリアの工場で自社製品の製造を初めていますが、以来、イタリアのEME(後にJENとなる工場)、それから同じくイタリアのEL-EFといった製造元でのOEM製品があります。で、こちらはそのEL-EF製造のOEM製品、と思わしきブツでして、ご覧のようにEME/JENでの製造品とはいくつもの違いを散見することができますね(折り曲げ式の四角い鉄製筐体とか、VOXのロゴの形とか)。

 製品名はVOX WAH-WAH DISTORTIONと名付けられているわけですが、勿論これは66年にVOXが開発し、イタリア工場で大量生産されたワウ回路、それから64〜65年頃に開発されたVOX DISTORTION回路をくっつけた複合ペダル、ということになります。
 もうお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、このペダルは雑誌「THE EFFECTOR BOOK」VOL.15にて、ファズワウのミニ特集コーナーに登場した実物なわけですが、ホントならワウの足踏みペダルの上部に「VOX」と書かれた黒い小さなステッカーが貼られていたハズです。しかし当方がこれを入手した時には既になかったので、ご覧のようなルックスでの登場、となったわけです。

 ご丁寧に、このペダルは内部に回路図が貼られており(本稿の一番下のほうに画像を掲載しました)、既にご推察のとおり、ファズ回路はシリコン・トランジスタ2ケのMK1.5回路、そしてその後にVOXクライド・マッコイ・ワウ回路が続きます。ただし、回路図にもありますが、ファズ回路/ワウ回路ともにトランジスタはBC149、という指示になっています。
 なのに、この実機では、FMPS5172が2ケ(こちらがファズ用のトランジスタ)、それからBC209が2ケ(ドーム型/こっちがワウ用トランジスタ)という構成になっています。さすがイタリア。そんな小さなことはおかまいなし、といったところでしょうか(笑)。回路図にもありますが、トランジスタは共にNPNトランジスタです。

 コントロールはDISTORTION(=ファズのATTACKに相当)、VOLUME(ファズのVOLUMEに相当)、そして足踏みペダル(ワウの可変)の3種類となります。また、ここが多少面倒くさい部分なのですが、フットスイッチも3種あります。ひとつはDISTORTIONと書かれた「ファズのON/OFF」、それからWAH-WAHと書かれた「ワウのON/OFF」、そして足踏みペダルの上部裏に配置された「エフェクトのON/OFF」スイッチ、となります。

 つまり、右側2ケのスイッチは「プリセット機能」、そしてつま先スイッチは「バイパス・スイッチ」と考えることができるわけですよね。切り替え方式としては面倒なカンジも否めませんが、これがあることで「ワウだけ」「ファズだけ」「ファズもワウも両方」を使い分けることができる、ということになっています。

 回路自体は単純なもので、ホントにワウ&ファズをくっつけたシンプルなサーキットです。白いProCondo製のキャパシタはもうイタリアン・ワウではお馴染みのパーツですし、500mHのインダクタは、FASEL製インダクタの標準値でもありますし。

 実際の音ですが、デモ動画としてTHE EFFETOR BOOK掲載時にM.A.S.F.のスタッフによって試奏されたデモ動画がアップされてますので、それを貼っておきます。いわゆるTONE BENDER系のファズ・サウンドとは遠いものですが、むしろFUZZ FACE系ファズのバリエーションの1ケとしては面白いサンプルだろう、と思います。ご覧いただけるようにギターはシングルコイルのストラト、アンプはJC120を使っての動画ですが、アンプのスピーカー経由ではなく、ライン出力したサウンドを用いた、と聞いています。
 また、この動画のサウンドは(ファズ部分をOFFにしたときのサウンドでわかるように)アンプ側がややクランチ状態になったセッティングでの演奏となっています。

 ていうか、おそらくファズとワウを一緒に踏む人は、当方を含めて、得てして大げさな(笑)エフェクト効果を期待する人が大半かと思われますので、むしろこのくらい極端な歪みのほうが使い勝手はいいのかもしれませんね。正直言ってしまえば、ファズ単体、ワウ単体としてはあまりカッチョイイサウンドにはならないペダルでもあります。ですが、動画でM.A.S.F.さんが試されているように、アンプ側のセッティングを凝らしてやるとかでいろいろ使えるペダルにもなるなあ、と今更の様に感心させられます。