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9.21.2012
VOX - Wow Fuzz (1970's)
今回はVOXネタです。VOXていうブランドはその長い歴史において、いろいろと面倒くさい経緯がある、ということは何度も書いてきましたが、今回は70年代のお話です。
1968年、ROYSTON GROUPという投資会社がVOXという楽器ブランドの名前を買い取りました。実はその直後、ROYSTON GROUPが(管理下にあった)別会社の経営不振に伴って、VOXのオリジナルでもあるJMIに「VOXの権利を買い戻すつもりはないか」というオファーをしたそうです。
以上のことはVOXの公式ヒストリー文に出てくることです。ただし正確に書くのであれば、この時点ですでにJMIという会社はありませんでした。JMIの創始者であったトム・ジェニングスは同年「JENNINGS ELECTRIC DEVELOPMENTS」という新会社をおこしていますが、おそらくその会社を指すのだと思われます。
そんな話し合いを経て、同年 VOX SOUND LIMITED という会社が作られています。ただし、この会社の代表が誰だったかはわかっていません。トム・ジェニングスが買い戻したかどうか、もわかってはいません。
ところが、69年には「VOX SOUND LIMITED」という会社はそのまま丸々売りに出されます。この時シュローダー・バンクという銀行投資部門がこの会社を買い取ります。70年にはイギリスの一番南東に位置する海沿いのド田舎、SUSSEX州HASTINGSというところに会社の住所が移され、工場も作られた、とのことです。
時期としては69年から73年まで、約4年にわたってVOXという会社はここにあったのですが、73年には「VOX SOUND LIMITED」は会社を畳み、全ての権利をCBS/ARBITERに売り渡しています。
当方がこのブログで「VOXという会社は過去も現在も存在していない。ただし、一時期だけVOX SOUND LIMITEDという会社があったけど」と書いているのは、そういう経緯によるものです。
さてさて、今回の本題はそんなことではなくて、こちらのペダルのご紹介だったりするわけです(笑)。こちらはVOX SOUND LIMITEDが存在した時期に製造・発売された、VOXブランドのファズ・ワウ複合ペダルで、VOX WOW-FUZZという名前のブツです。
ご覧頂けるように裏蓋には「MANUFACTURED BY VOX SOUND LIMITED, HASTING, SUSSEX ENGLAND」とありますが、まあ誰がどう見てもこれを作ったのはロンドンのSOLA SOUNDであることは一目瞭然です(笑)。
その証拠となるような記載は一切ないのですが、筐体はSOLA SOUND/COLORSOUNDのTONE BENDERと同じモノが使用されています。また、回路もSOLA SOUND/COLORSOUNDが発売していたWAH FUZZ SWELLと全く同じモノが採用されています。まあ、SOLA SOUNDがVOXブランドのOEM製品を供給していたことはその何年も前からあったことなので、このペダルに関しても同様の経緯で製造されていたことは容易に想像いただけるかと思います。
この黒い筐体で、金色+ブルーという、見慣れないロゴ・ステッカーが貼られたVOX製品(他にもTONE BENDER MK3や、純粋なワウ・ペダルもあります)は一部で「VOX HASTINGS SERIES」と呼ばれているようです。もちろんそんなシリーズが当時実際にあったワケではなくて、VOX SOUND LIMITEDがHASTINGSにあった時期の製品だから、そう呼ばれている、ということになるんでしょうね。
それはともかく、中身は70年代のCOLORSOUND FUZZ WAH SWELLと同じモノです。FUZZ部分は2ケのシリコン・トランジスタ(写真を掲載した当方の所持物は、BC184Lが2ケ)搭載されています。ファズのサウンドとしては、所謂60年代のTONE BENDERの面影は殆どなく、シリコン・ファズ特有のシャリシャリしたトレブリーなファズ・サウンドです。ただし、トランジスタ2ケ使いなので、ギターのボリュームを絞れば、よりカリカリなクランチが生み出せます。
このVOX WOW FUZZに限らず、COLORSOUNDのFUZZ WAH SWELLでも同様なのですが、初期のモデル(おそらく74年くらいまで)は、ワウ回路とファズ回路が、それぞれ独立した2枚の基板が用いられており、筐体の中に基板が2枚内蔵されている、というモノでしたが、その後これらの2つの回路は1ケの大きな基板にまとめられています。中古で目にするCOLORSOUNDのWAH FUZZは、2ケの基板モノと1ケの大きな基板モノ、両方ありますがどちらも基本回路は同じです。
余談ですが、二年ほど前にイギリスのD.A.M.がこの「2ケ基板」回路を忠実に再現したワウ・ファズを復刻製造したことがあります。オリジナル同様にシリコン・トランジスタを用いたペダルで、筐体はCOLORSOUNDの長方形の筐体を採用していましたね。
しかし、ご覧頂けるようにこのVOX WOW FUZZも、COLORSOUND WAH FUZZ SWELLも、どちらも(ワウの足踏みコントロール以外は)ツマミで音色をコントロールすることが出来ません。内部回路にはアウトプット・トリマーのための内部トリムポットが1ケありますが、歪みとか、トーンとか、そういうコントロールは一切できません。なかなか使い勝手はよろしくないエフェクターです(笑)。
とはいえ、このペダルがFUZZ回路もWAH回路もともに英国製で、VOXのブランドで発売された製品であることには間違いありません。VOX製のファズやワウ、といえば大方がイタリア製であったりしますが、そんな意味でもちょっと珍しい部類に入るだろう、と思われます。
それにしても、このペダルはファズのスイッチが筐体前面(ツマ先の部分)、ワウのスイッチが筐体後方(カカトの部分)、にあるわけですが、やっぱり使い辛いですねえ(笑)。同様のスイッチ配置のブツは、例えばドイツのSCHALLERのFUZZ WAHとか、他にもあったりはしますが、淘汰されるのも仕方ないなあ、とも感じるワケです。
5.10.2012
Orange Boxes from England
1970年代の半ばを過ぎると、COLORSOUNDのエフェクター製品は既にシーンのトップランナーとは言えなくなってしまいます。つまり、他にもバンバン人気エフェクターが発売されるようになった当時のシチュエーションの中で、時代遅れ感が先だってしまったのだと思われます。それがイメージの問題なのか、純粋に製品力の問題なのかはわかりません。ただ、そういう状況にマーケットが変わっていったのは、日本製品の質の高さと価格の手軽さ等も強く影響していることは間違いないと思います。
今回掲載するのは、1980年に一度会社を畳んでしまうことになったMACARI'Sの最後の方のリリース製品です。どういう経緯かはわかりませんが、当時MACARI'Sは「SOLA SOUND」でもなく、「COLORSOUND」でもなく、いろいろなブランド名を新しく用意して、製品ラインナップを拡張しています。実はその中身がまったく進化もないままの昔のママのブツなんですよね。
まずは1977年に発売されているGEMCOというブランドのTONE BENDERです。そう、これもTONE BENDERなんですよね。真四角でオレンジの鉄製筐体に入れられたファズで、ご覧のように回路は3トランジスタのTONE BENDER JUMBO回路そのままです。ただしコントロールは2ノブになっており、「VOL」と「TONE」のみがあてがわれています。内部に可変抵抗が入っているので、もしかしたら歪みはこの内部でコントロールする仕様なのかもしれません。
当初このTONE BENDERは(例えばVOXとか、B&Mとか、CARLSBROのOEM製品のように)他社のために作ってあげてたブツなのかな、と思っていたのですが、どうもGEMCOという会社は無かった模様です。ただし中身を見れば、これを作っていたのはSOLA SOUNDで、シリコン・トランジスタを用いたJUMBO TONE BENDERそのまんまだ、というのは一目瞭然ですが。

さらに続けます。正確な年代は不明ですが、おそらく1979年頃に発売されたIMP(INTERNATIONAL MUSIC PRODUCTS)というブランドのファズで、もう詳しく見るまでもなく、上述のGEMCO TONE BENDERとまったく同じブツのリブランド製品だ、ということがお判りいただけると思います。一部、トランジスタや可変抵抗のパーツが違うブツが採用されていることが確認できますが、このあたりは改造とかMODではなく、単に採用パーツの「誤差」ですよね。
さらにさらに。こちらはAMP(ASSOCIATED MUSICAL PRODUCTS)というブランドで発売された「FUZZ」。中身はいうまでもなく、外観にいたるまで上述したGEMCO TONE BENDERやIMP FUZZと同じモノですよね。とりあえず3つほど70年代末に発売されたオレンジのTONE BENDERを並べてみましたが、これの正体がおぼろげながら見ることが出来る資料画像がありますので、下の方に掲載してみます。これは1980年に「AMP」ブランドの新製品をユーザーや楽器店に報せる書面なのですが、差出人は「ジュリア・マカリ」。会社名は「EUROTEC LONDON」。ブランド名は「AMP」となっています。
COLORSOUNDというブランドは1980年まで続いていたことは確認できていますが、マカリ・ファミリーは1980年に一度SOLA SOUND/MACARI'Sという会社を畳んでいるというのは前述の通りです。しかしその直後、(おそらくラリーかジョーのどちらかの奥さん、と思われます)代表者を変えて、別な会社を興した模様です。で、この手紙の文言にもあるように、ユーロテックという会社の1ブランドとして「AMP」という名を用いたことがわかります。そして推測の域を出ないながらも、まず間違いないだろう、ということのひとつに、上で掲載した「IMP」とか「GEMCO」とかの正体不明のブランドも、同様にマカリ・ファミリーが新しく用意したブランドだろうと思われます。

以前1度だけEUROTECブランドの黒い「BLACK BOX」というファズの写真を掲載したことがありますが、結局EUROTECというのはSOLA SOUNDの再出発会社/ブランドだ、ということになりますね。右下に掲載したのは1980年のEUROTEC社「BLACK BOX」の雑誌広告ですが、「BLACK BOX MODULES」というペダルを紹介しています。これは「FUZZ(中身はシリコンのTONE BENDER)」「WAH」といった同じデザインのモジュールを繋げて「あたかもマルチ・エフェクトのように」使える、という古くさいアイデア(笑)の製品だったのですが、EUROTEC BLACK BOXはそのシリーズの「ファズ部分」に相当するペダルだということが判明しました。
それはともかく、この広告で要チェックなのは、広告主の住所です。これはMACARI'Sのあった住所そのままなわけです。上の手紙や、この広告の住所から、それら2つ(それ以上)のブランドは全部同じ「元SOLA SOUND」がやっていたもの、ということの証拠になるわけですね。当時既にSOLA SOUND/COLORSOUNDというブランドはなくなっていましたが、それでもしぶとく形を変え、社名も変えて「いにしえの」TONE BENDERというファズ回路はオレンジ色の箱に入って80年代をサバイバルしようとしていた、ということになります。

4.22.2012
Vox Tone Bender MK3 with Treble 'n' Bass Boost (1969)
長い歴史があり、しかも関連製品も膨大な種類があるTONE BENDERというファズ・シリーズにおいては、回路構成上時代的トレンドであったハズの「シリコン・トランジスタを用いる」というアップデートが行なわれたのは、結構遅かった、と言わざるを得ません。当時最先端のエフェクターであったにも関わらず「イギリス製の機材だ」という点が、回路開発において保守的な面を後押ししたのではないか、とも考えてしまうのですが。まあ元々「ジョンブル」なんていう言葉もあるくらいガンコで有名なお国柄ではありますが(笑)。これがアメリカの話であれば、簡単に言えば「合理化」というお題目とともにガシガシと新しいトレンドを回路デザインに用いて「ブランニューなファズできましたぁ!」として大規模に売り出せるわけで、そうした点はエレハモの製品を見るとよくわかりますよね。
恐らくTONE BENDERと名のついた英国製ファズの中で、いちばん最初にシリコン・トランジスタを用いたモデルだろう、と思われるファズを掲載してみます。1969年製造、と思われる、VOXブランドのTONE BENDER MK3 WITH TREBLE'N'BASS BOOST、というモデルです。今のところ、2〜3ケが現存することがわかっていますが、果たして何個作られたか、はまったくの未知数です。既に何度も書いているように、この前年68年に、SOLA SOUNDは3度目のフル・モデルチェンジをTONE BENDERに行ないました。その68年モデル(通称MK3)は、自社SOLA SOUNDブランドで発売されただけでなく、VOXブランドで、PARKブランドで、ROTOSOUNDブランドで、等々他社にもOEM製造されていたことは既にご承知かと思います。
一般に、(わずかな例外を除いて)MK3系のTONE BENDERはノブが3つありますが、それらの殆どはシルバーキャップのゲルマニウム・トランジスタを用いていました。前回までに書いた様に、TONE BENDERが一般的にシリコン・トランジスタを採用したのは1974〜75年頃と思われますが、その際にも大規模なモデルチェンジを行ない、回路も大幅に変更されSUPAやらJUMBOやら新しい名前もついているわけです。
が、こちらにあるように、実はさかのぼる事5年以上も前の1969年頃には、シリコン・トランジスタを採用したモデルもあるわけですね。ご覧頂けるように、このファズはMK3と書いてありながらも、他のMK3系TONE BENDERとは全く異なる回路を持っています。またノブも2ケしかありません。ノブは「ボリューム」と「トレブル/ベース」にあてがわれているので、歪みの量(MK3での「ファズ」ノブに相当するコントロール)は可変できないことになります。
回路に目をやると、トランジスタは2N2926というシリコン・トランジスタが3ケ用いられています。当方も回路図を入手しようとヤッキになっているのですが、今の所入手できていません。これは完全に当方の個人的な推測になるのですが、このモデルはおそらくプロトタイプに近いもので、殆ど製造されていないのではないか、と思っています。その理由のひとつはまず基板にあります。ご承知のように、一般的なMK3であればプリント基板が用いられていますが、こちらのWITH TREBLE'N'BASS BOOSTではユニバーサル基板を用いており、ワイアリングも手作業であることがわかります。基板の設置方法も通常のMK3とはまったく異なる方法であることも確認できます。わざわざ(MK3の)後発製品に、古い製造方法を用いることはないだろう、と思われるからです。
理由その2は、もちろん「シリコン・トランジスタ」を使っている、という点です。2N2926はNPNトランジスタなので、これまでの回路(PNP回路)を流用することができず、まったく新しい回路を用意する必要があったわけですね。筐体に堂々とMK3と書いてはあるものの、それらの意味からも回路はMK3ではないと判ります(一見して、キャパシタの数がMK3回路よりも多く、またMK3回路の特徴でもあるダイオードが見当たらない等)。ただし、MK3回路とこちらの回路、どちらが先に「開発」されたかは不明なのですが。
そしてホントかどうかわからないけど、もしかしてもしかすると、という理由その3は、丁度同じ頃、60年代末に同様の製品が他社から出ていた、ということも考えられます。それはJHS社が発売したSHATTERBOXという金色のファズで、これはシリコン・トランジスタを使ったFUZZ FACE回路に、同じくシリコン・トランジスタを用いたトレブルブースト回路を付け加えたモノ、ということが判っています。それを真似した、というわけではないでしょうが、同じようなことを考えた、というのは十分あり得ますよね。写真に掲載した「VOX TONE BENDER MK3 WITH TREBLE'N'BASS BOOST」の固体は、オリジナルではPP4という円柱状の電池用スナップが用いられていたっていうこともわかっていて、60年代末の製造ということは間違いなさそうです。
ちなみにこのファズ、音を聴いた事も触った事ももちろんありません。どっかにあれば是非とも欲しいブツではありますが、まあ無理でしょうねえ(笑)。以前アメリカの楽器屋さんにてこれが売りに出されたことがあるんですが、その際お店の人に「どんな音なの?」と聞いた事があります。答えは「バランスの取れた倍音」「スムースな歪み」「最高だぞ」とか、そんな文言ばかりで、あまり参考になるようなモノではありませんでした(笑)。そりゃあ、シリコン使えばそんなカンジになるだろうよ、て思うのは当方だけではないと思うのですが。
4.15.2012
Silicon Powered Tone Bender (Part 2)
シリコン版TONE BENDERの続きです。前回既に「スリムケース時代のTONE BENDER MK3」は、途中から回路が全部リファインされて、シリコン・トランジスタに変更になった、という旨を書きました。今回は更にその後、ワイドケースになってからのTONE BENDER関連ペダルです。
回路は以前紹介したものと同じ、シリコン・トランジスタ3ケの回路そのままですが、筐体が大きくなったのを気に新しいペダル・シリーズとしてTONE BENDERは TONE BENDER JUMBO として生まれ変わりました。74〜75年頃、と思われますが正確なそのモデルチェンジの時期は判っていません。ここに掲載したシルバー&ブルーのペイントが施されたTONE BENDER JUMBOは1975年9月、という製造スタンプが残されています。
このTONE BENDER JUMBOにもいつくかのバリエーションがあります。一番大きな違いは(大きさはそのままながらも)筐体のデザインが変更になり、ノブやスイッチの配置された上面がポコっとへこんだ面になっていることが挙げられます。また小さい変更点ではありますが、トーンのノブの利き方が「BASS/TREBLE」の方向が逆になりました。これまでは左に回せば高音が強調、だったのに対し、変更後は左に回せば低音が強調、になります。
また、このTONE BENDER JUMBOはいくつかのカラー・バリエーションもあります。ペイントが変更されたものは「JUMBO」の文字の位置が変わってしまったので「JUMBO TONE BENDER」と呼ばれることもあります。まあ、どっちでもいい話ですけど。
それから、このワイドケースの新しいシリーズには SUPA TONE BENDER という名前のペダルもラインナップされました。これは全く新しい回路を採用し、トランジスタも4ケ使用した回路でした。「全く新しい」と書きましたが、既に多くの場所で指摘されているように、この回路はもうほとんど「BIG MUFFじゃねえか」と言えるようなモノで、既に60年代のTONE BENDER的な要素は(名前を除けば)見る影もない、というモノではあります。
とはいえ、時代背景を考えれば爆発的なディストーション、それから延々と続くサスティーン、というのはギタリストの要望を叶えるためには必要だった、とも言えるかと思います。外観上はご覧のように3つのノブはそのまま、なんですが、ひとつはSUSTAIN、ひとつはVOLUME、そしてもうひとつがTONEとなっていて、その配置場所も上記の「JUMBO」とは異なっています。
ところで、このSUPA TONE BENDERにはいくつかの「面倒臭い」エピソードがあります。まずひとつは、このファズは元ジェネシスのギタリストだったスティーヴ・ハケットが使用した、ということもあって、90年代に スティーヴ・ハケット・モデルとして復刻されたことがあります。彼のサイン入りエンブレムが埋め込まれたもので、現在でもたまに楽器店で売りにでてるのを見かける事がありますよね。
それほどスティーヴ・ハケットに詳しいわけではないので偉そうなことは書けませんが、たしかに彼は70年代にいくつかのCOLORSOUND製品を使用していたことが確認できます。けど、SUPA TONE BENDERを使った写真は見当たりませんでした。そのかわりこんな写真が出てきました。これは70年代の写真ですが、JENのCRY BABY、COLORSOUNDのオクターヴ・ファズ、マーシャルSUPA FUZZ、マエストロECHOPLEX、独シャーラーのVOLペダル、という機材が足下に並んでいるのが確認できます。時代がSUPA TONE BENDERよりちょっと前なので、本稿とは関係ないんですが、スティーヴ・ハケットも長らくTONE BENDER使いのギタリストだったんですね。
それからもうひとつ。実はCOLORSOUNDブランド自体が、あまり「SUPA TONE BENDER」と「JUMBO」を正確に区別して発売していなかったんじゃないか、というちょっと可愛らしい証拠写真があります(笑)。こちらは1978年にCOLORSOUNDブランドが作った自社製品のチラシです。下の列の左から2番目にTONE BENDER JUMBOの写真が載っていますが、このペダルの紹介文にはなぜか「SUPER TONE BENDER」なんて書いてあります。ただのミスかとは思うんですが、SOLA SOUND/COLORSOUNDの末期(80年に一端歴史を閉じます)にあたる時期なので、まあいろいろあったのかなあ、なんて想像するのはさすがに失礼でしょうかね。
ちなみに、現行のMACARI'Sの復刻品ペダルの中に、スリムケースの真っ赤な筐体で、FUZZ-4という名前のついたファズがあります。これが一応「シリコンを4つ使った、BIG MUFF系統の回路を用いたもの」ということになっており、ラインナップ上ではこのFUZZ-4がSUPA TONE BENDERの復刻という位置づけになっているもの、と思われます。こちらに関しては回路を比較したわけではないので確証がありませんが、D.A.M.のデヴィッド・メインが「MUFF回路を使ったブツ」と言ってるので、多分間違いないと思われます。
4.09.2012
Silicon Powered Tone Bender (Part 1)

別にシリコンがダメってワケじゃないんですよ。ていうか音だけの話なら(回路さえ同じなのであれば)もはやシリコンもゲルマもそんなに違うわけじゃない、ということは確証してますし。ただし、どちらが好きか、といえばゲルマのほうが好きなんです、個人的に。理由を聞かれても困るんですが、出来ない子ほど可愛いっていうちょっとマヌケな定説に、一番近いかもしれません(笑)。さて、冒頭で掲載した雑誌記事のような写真は、海外のギター雑誌のカラーサウンド特集ですが、雑誌名が判別できません。が、この原稿を書いているのは世界的なTONE BENDER研究家として知られるジェイムス・スティーヴンソンさんという方で(彼は各所がTONE BENDERクローン・ペダルを製作する際に、オリジナルの実機をよく提供している方でもあります)、彼が「COLORSOUND製品の歴史を紐解く」という原稿になっています。が、実は当方もこの文献をちゃんと読めていません(この画像しかないので)。是非全文を読んでみたいですねえ。
ところで今回は、COLORSOUNDというブランド(何度も書いていますが、イギリスのSOLA SOUND社が70年代に新しく作ったブランド名)から発売されたTONE BENDERで、シリコン・トランジスタを用いたモノの紹介です。上の雑誌記事でもSOLA SOUNDとCOLORSOUNDの分別をはっきりさせていなかったり、という点も問題を複雑にしているキライがありますけど、COLORSOUNDといえば、やっぱりシリコンのTONE BENDER、ってイメージは強いと思います。記事で掲載されているTONE BENDERの大半がシリコンものだってことからもそういう点が見えますよね。
ハッキリした時期、そして発売順に関しては、未だ正解が見えてはいませんが、その時期はおそらく1975年前後に集中しています。先ずご紹介するのは70年代中期に発売された銀色の筐体に収められたTONE BENDER(3ノブ)です。
ご覧頂いて判るように、このペダルにはどこにも「COLORSOUND」というブランドが入っていません。というか、外見は以前掲載したゲルマ版のTONE BENDER MK3とまったく同じです。つまり、ある時期をさかいにして、TONE BENDER MK3が完全に回路をリファインしシリコン化たモデル、ということになります。
ほぼ時を同じくして、OEM製品であるVOX TONE BENDER MK3もシリコン・バージョンに変更になりました。これの回路は上記したTONE BENDERと同じものです。外観に関して言えば、以前もちょっと触れた事がありますが、黒い筐体、オレンジのロゴ、という共通点がありながらも、TONE BENDERのロゴが筐体下の方に移動されています(註:ただし、シリコン版が全部ロゴが移動している、というわけではありません。回路が変更になった時期と、ロゴの位置が変更になったのは同時ではなかった、ということです。とはいえかなり近い時期なのは間違いありませんけど)。
両方とも、回路は同じです。一部キャパシタや抵抗のパーツが違いますが、定数もほぼ同じもののようです。トランジスタにはBC184Cというシリコン・トランジスタが3ケ使用されています。以前紹介したB&MブランドのOEM製品「FUZZ UNIT」もこれと同じ回路を採用していましたね。シリコン・トランジスタを使用したTONE BENDERの殆どは、ワイドケース(=幅広の新しい鉄製筐体)というイメージもあるかと思いますが、それは間違いではありません。というかその通りなのですが、いわゆるスリムケース(ここに掲載したもの)でもシリコンものがあったんですよ、という意味でまとめています。デカい筐体になってから、に関しては次回別項にて改めて触れます。

ところで、(現行COLORSOUND製品を発売している)現在のMACARI'Sのラインナップにも、スリム・ケースに入れられたTONE BENDERと名のつくファズ製品が2ケあります。ひとつはグレーのケースに収められたTC TONE BENDERという名のファズ。もうひとつはその名もズバリの黄色い筐体に入れられたYELLOW TONE BENDERというファズです。今回これらも同時にここで触れてみたいと思います。グレーのほうは「現行品のスタンダードTONE BENDER」という位置づけで製造・販売されているモデルで、商品説明いわく「70年代中期のJUMBO TONE BENDERの音を再現するファズ/どんな音かを知りたければエドウィン・コリンズ “A GIRL LIKE YOU” を聞けば一発でわかるでしょう/もしくは70年代中期のシン・リジー、アイズレー・ブラザーズ、バーナード・バトラー、プライマル・スクリームを要チェック」と書いてあります(大意)。回路の配置は一部違う箇所もありますが、結局このグレーの現行品TONE BENDERは、上のほうで掲載したシリコン版TONE BENDER(3ノブ)を復刻したもの、ということになります。
さて、では黄色いほうはなんなのさ、というワケですが、限定版という触れ込みで(でも今も売ってますけど)発売されたこのモデルは、回路はそのマンマなんですが、トランジスタが違います。製品説明文には以下のように書いてあります。「これは72年のTONE BENDERをもとにして復刻したものだ/我々はSUPA TONE BENDERの基板回路に、60年代のBFY71というシリコン・トランジスタと、同じく60年代のOC72というゲルマ・トランジスタを搭載した/これにより、クラシックなファズ・トーンを再現した」。ただし、データ通りであれば、BFY71はNPNトランジスタで、OC72はPNPトランジスタです。72年のTONE BENDER(=3ノブのMK3)は、3つともPNPのゲルマ・トランジスタを使用していた回路なので、そのまま同じではありません。また、トランジスタ以外の回路もシリコン・サーキット版の回路を踏襲していることからも、ハイブリッド仕様である黄色い復刻品が正確な72年製TONE BENDERと同じではないことは確かなので、どこを狙ったのかはいまいち定かではありません(註;ただし、もしかしたらこういう回路のモノがどこかにあったのかも知れませんので、断言はできないんですが)。ちなみにこの黄色いスリムケース入りのMACARI'S復刻版TONE BENDERには、上記した組み合わせとは異なるトランジスタを持ったバージョンも存在しています。ここに掲載したブツでは、ゲルマ部分にOC75(ブラックキャップ)、シリコン部分にBC184Cを使用していることがわかります。(この項続く)
4.03.2012
B&M - (Champion) Fuzz Unit
1970年代中頃、おそらく1976年から、とされているようですが、イギリスの楽器ブランド、B&M(BARNES AND MULLINS)というところがTONE BENDER系ファズ・ペダルを発売しています。これに関して今回は触れてみようと思います。イギリスのBARNES AND MULLINSという会社は実は楽器の輸入代理店会社です。1894年創業、というやたら歴史のある代理店さんなわけですが、たとえばドイツの有名楽器ブランドのヘフナー(HOFNER)をイギリスで販売していたのはこの会社だったりもします。そんなBARNES AND MULLINS社が、70年代中頃に自社ブランドのエフェクト・ペダルを発売しました。同じくイギリスのSOLA SOUND社に製造を委託し、まずファズが発売されています。それがこちらのFUZZ UNITとなります。
最近このファズを目にする機会も多いかもしれません。その点については後述しますが、縦長でちょっと珍しいノブ配列をもったこのオレンジ色のファズは、中身を見ればすぐにSOLA SOUND/COLORSOUNDブランドのTONE BENDERのシリコン版回路と同じもの、ということが判ると思います。ちょうど同時期、COLORSOUNDブランドのTONE BENDERがシリコンに変更され、SUPA TONE BENDERとかJUMBO TONE BENDERなんてカンジで各種モデルチェンジが行なわれた時期と重なりますので、その回路をそのまま流用したであろうことは容易に想像できます。
また面倒臭いことに(笑)、OEM製品であるこのB&M FUZZ UNITも、時期によって細かい違いがいろいろあります。基本回路はまったく変わっていませんが、ある時期は商品名が「CHAMPION FUZZ UNIT」となったり、ある時は筐体の色が黒になったり、という具合です。また写真で確認できるように、ある時期は基板が薄い茶色で、ある時期は濃い茶色だったり、キャパシタが緑のものだったりトロピカル・コンデンサだったり、という具合です。基本的なファズとしては全く同じなので、まあどうでもいいことではありますが。

ノブ以外でも珍しいポイントのひとつに、インプット/アウトプットのジャックが筐体の右側に集められて配置されていることがあげられます。これは同社の他製品と同じ筐体を使って制作されたことからくるものです(B&Mブランドのフェイザーも、イン・アウト共に筐体右側に配置されていました。これは足踏みペダルのついた、ワウのようなルックスをもった製品でした)。回路的にはこれまでも何度か触れてきたように、シリコン・トランジスタを使用したJUMBO TONE BENDER回路と同じもので、基本的にはトランジスタはBC184Cが使用されていました。いわゆる「BIG MUFFにそっくりな回路になった時期のTONE BENDER」と言われるモノです。
さてさて、昨2011年、ジョエル・リードさんというビルダーが主催するスペインのハンドメイド・エフェクト・ブランドFAUSTONEが、このB&Mのオレンジ色のファズ・ペダルのクローンを製作・販売しました。その「FAUSTONE FUZZ UNIT」は現在日本でも販売されているため、目にする機会も多いだろう、と先ほど書いたわけです。
ただしこのFAUSTONE FUZZ UNITはオリジナルのB&M製品とは若干の違いがあります。製作にあたってはビルダーさんが所持する(黒い色で、1977年4月製造とのスタンプがある)B&M CHAMPION FUZZ UNITをクローンした、とのことで、そのモデルのトランジスタはBC184CではなくZETEというブランドのトランジスタ(型番不明)が用いられていたとのこと。だからクローン・ファズにもそのZETEXのトランジスタを使用した、ということです。
最大の違いはワイアリングでして、FAUSTONEのクローンはラグ板を使いPtoPで手配線されています。ここまでパーツの多い回路であれば、本来ならプリントにしたほうが楽だし音も安定するとは思うのですが、まあPtoPというのは作る側にとっても醍醐味のひとつではありますもんね(笑)。代理店さんの説明文では「オリジナルと同じようにタグボードにPtoPで配線」と書いていますが、おそらくここは単純な誤訳です(英語の原文にはその文言がないので)。
とはいえ現在入手できる唯一の「JUMBO TONE BENDER」クローン、ということにもなるわけですから興味深い製品ではありますよね。そして面白いことに、FAUSTONEの宣伝文句の中にはこうあります。「オリジナルのB&M FUZZ UNITは、エドウィン・コリンズのヒット曲 “A GIRL LIKE YOU” でフィーチャーされたファズ・ペダルだ」と。
さて、今日本の洋楽ファンでエドウィン・コリンズの「A GIRL LIKE YOU」を知ってる人はどれだけいるのでしょうか?(笑)。僕は勿論知ってますよ。何と言ってもネオアコ世代の人間なので(笑)。この曲はネオアコのカリスマ・バンドだったオレンジ・ジュースの美形ヴォーカリスト、エドウィン・コリンズがソロになって唯一放ったヒット・シングル曲なんですが、バンド時代から10数年も経た後の95年の曲で、時代に不似合いなシンセ・エレポップ曲なんですよね。

それはともかく、今では「A GIRL LIKE YOU」の一発屋、などとイギリスで呼ばれるようになってしまった(…悲しいですねえ。笑)エドウィン・コリンズは、実際にこのB&M FUZZ UNITを使用してる動画がありますので張っておきます。フランスのTVに出演したときのライヴです。が、正直いってファズがどうこうよりも、リング・モジュレーターのほうがあまりに強烈なので、そっちみばかり耳がいってしまいますね。足下にはオレンジのファズがちゃんと確認できます。実は現在COLORSOUND製品の復刻を行なってるMACARI'SのHPにおいて、TONE BENDER MK3(銀色の筐体のペダル)の説明文の中に「エドウィン・コリンズが “A GIRL LIKE YOU” で使用した」という文章があります。この文章は実は「半分正解だけど半分間違ってる」んですよね。というのも、上記したようにエドウィン・コリンズが使ったのはオレンジ色のB&M製品なわけです。しかしながら、現在MACARI'Sが復刻発売している銀色のTONE BENDERは「中身がシリコンを使ったJUMBO TONE BENDER回路である」ため、間違いとも言いきれない、という複雑なことになってしまってるんですね。
そしてどうでもいいことですが最後に2つほど。ここでドラムを叩いているのはポール・クックという人。そう、セックス・ピストルズのドラムだった人ですよ、ということがまずひとつ。それから、大変残念なことではありますが、現在エドウィン・コリンズは髪の毛もちょっと寂しい事になっており、オレンジ・ジュース時代の麗しい姿は見る影もない、ということです(笑)。
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