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6.18.2014
The Effector Book Vol.24 - Revenge of Wah Pedal
なんとまあ、約3ヶ月ぶりのブログ更新となります。実はその間いろいろとご連絡も頂きまして、商品在庫の問い合わせと共に「もうブログを止められたようですが」とお書きになられた方もいらっしゃいました(笑)。ホントすいません、別に止めたわけじゃあないんですよ。ただ本業のほうでドタバタしてまして、これを書く時間がなかったというだけなんです。
で、既に発売になっておりますが、例によってシンコー・ミュージックから発売されてるるTHE EFFECTOR BOOK最新号を、今更ながらご紹介したいと思います。
写真でご覧いただけるように、今回の特集はワウ・ペダル特集です。えっと、いきなり昔話になって恐縮ですが、同誌でワウ特集をやるのは2回目になります。とはいえ、以前その特集をやったのは今から4年前、しかも同誌の第2号だったワケです。当然のように既に入手不可能ですし、ヤフオクなんかでもすげえ高値がついたりして売ったりしてますもんね。
だから今このタイミングでまたワウ特集をやる、というのは意味があるとも思います。とはいえ同誌編集長には悩みがありました。「前と同じこと書いても意味がない」。ええ、それはまったくその通りですよね。しかしワウってえヤツはそれほど画期的な新製品がパカパカ出るわけでもなく、やっぱり今も昔もワウ使いにとって一番興味をそそるテーマは「ワウというのは本来どういう構造なのか」だったりします。
また、ワウの歴史(えっと、一応書いておきますが、歴史に詳しくなったからといって、素晴らしいワウ使いになるわけじゃないんですよね。それはこんなブログをやってる当方本人が一番よくわかってます。笑)に関してもオサライの記事が載っています。その原稿は当方が担当させていただきました。つまり、オタク魂満載の記事になってます(笑)。内容としては当ブログのワウ・ヒストリーの文とほぼ内容はダブリます。加筆訂正したもの、と考えていただいて構いません。
1966年に開発が始まったワウ・エフェクトですが、アメリカのトーマス・オルガン社、イギリスのJMI社、そしてその合弁企業としてイタリアに設立されたEME社(後のJEN社)、それぞれの思惑とか、初期ワウ製品の試行錯誤とか、そういう記事です。
開発はアメリカ西海岸で行なわれたこと。開発に関わったのはデル・キャッシャーというギタリストだったこと。イギリスではその回路を利用して独自のワウを製造したこと。イタリアでもその回路を利用してワウの大量生産に乗り出したこと。イタリアとアメリカが喧嘩したこと(笑)、そんな話が載ってます。
特に、イギリス製のワウに関して、例のシルバーハンマートーンのVOXワウ、それからそれ以降のイギリスのワウ事情に関しては、4年前の同誌ワウ特集でも触れられていなかったので、今回ガッツリと紹介してあります。
ワウの原型としてすでに名高いイタリアン・ワウ(60年代にイタリアで作られてた初期のワウ)ってのは、どんな構造で、どんな回路だからどんな効果があるのか、今のワウと何がちがうわけ?なんて検証記事もあります。
また、ジムダンのインタビュー。ワウを使った名盤100選——これ、いつも面白い記事ですよね。やっぱエフェクターって使い倒すことも重要なんですが、どんな使い方されてるのか研究するのも重要なんですよね。日本の某ロック・バンドの方から「某曲の冒頭で、MANLAY SOUNDのTHE ALADDIN使ってんですよ」と直接聞いた時に、ビックリしました。こちらは作った本人なのに、全然気づかなかったです(笑)——、それからインダクターの性能比較、なんて記事も載ってます。
さらにさらに、実は今回のワウ特集で最も重要な記事、と思われるテーマがあります。ワウってヤツには基本的に以下のパーツが使われますが、おさらいしてみると—— ●ポット(可変抵抗)、●抵抗(固定で信号に抵抗をかけるもの)、●コンデンサー(ちなみに英語ではコンデンサーとは言いません。キャパシター Capacitor といいます。電気エネルギーを蓄えたり放出したりする受動素子)、●インダクター(電流を流すことで磁力が発生し、その力で電気エネルギーを蓄えたり放出したりする)、●トランジスター(信号増幅)——ここらへんが基本ですよね。
で、それらをどう変えたらどう音が変化するか、という実験を踏まえた検証記事があります(担当されたのはSOUL POWER INSTRUMENTSのさいとう氏)。
どーですか。超ワウ・フリーク向けの本ですよね(笑)。まあ例によってそれだけではなく、御大スティーヴ・ルカサー氏のペダルボード紹介&インタビューとか、ポストロックの代表バンド、トータスのペダルボード紹介&インタビューとか、なかなか豪華な内容となっております。
すでに発売中であることは前述した通りですが、興味ある方は是非手に取っていただければと思います。
最後に、既に左のサイドバー部分にも表示をしましたが、また少しだけ米MENATONEのブライアン・メナ氏に「PIG」を作ってもらいました。今日本に向かってる途中です。これ、若干ですが今までと異なる仕様になってます。こちらも入荷次第販売しますので、もしお探しの方がいればお楽しみに。
さらに、今スペインのMANLAY SOUND(余談になりますが、今年のW杯のスペイン代表チームは一体どうしちゃったんでしょうか。心配でなりません。笑)によるTONE BENDERクローン・ペダルに関して、ちょっと新しい試行錯誤をしてみようかなとも考えています。考えてるだけで決まってはいないので、まあそちらは決まったらご報告させていただきます。それから、直接エフェクターと関係するわけではありませんが、当方がここしばらく執心していたプロジェクトに関しても近々形になりますので、ご報告したいな、とも思ってます。
10.03.2012
Schaller - Fuzz Wah
さて、今回もファズ・ワウを1ケご紹介となります。こちらは60年代末〜70年代にドイツ(当時はもちろん「西ドイツ」でした)のシャーラー社で開発されたものです。以前のポストで「ワウのスイッチがカカト側にあって、使いにくいったらありゃしない」と書いた(笑)ブツなわけですが、実は音に関しては結構個人的に気にいってるブツでもあります。
60年代末に、ドイツのシャーラー社は、エレキギター用のエフェクターを開発し始めています。実は自社開発する以前、50年代からシャーラー・ブランドのエフェクターというのは存在しており、例えば米ディアルモンド(外付けピックアップで有名な、あのディアルモンドです)・ブランドのトレモロ等をOEM製造していた時期もあります。早速の余談で恐縮ですが、実はその50年代のシャーラー/ディアルモンド製のトレモロっていうのがとてもユニークな機械式回路をもったエフェクターで、一部の好事家ではカルトな人気を誇るブツだったりもします(下にオマケで動画を掲載しておきます)。
さて、60年代、つまりロック・ギターの時代、ですね。ドイツのシャーラーはトレモロ(そちらはこんにち一般的な回路になっていましたが)、ワウ、そしてファズを新たに開発し、発売しました。その後「えーい、くっつけてしまえ!」という豪快な(笑)シャーラーの方針によって、いろんな複合エフェクターが登場しています。その当時のラインナップの詳細に関しては、既にお馴染みだろうと思われるデータベース/サイト「EFFECTOR DATABASE」あたりをご参照いただくとして、今回のファズ・ワウもそのうちのひとつ、ということになります。
実はこのエフェクターの面白いところは、まずワウ回路です。60年代末〜70年代という発売時期ですが、いわゆるHALOタイプのインダクターが採用されていて、つまりはVOXの初期型ワウ「クライドマッコイ型」の回路をクローンしたことが伺えるわけですね。当時も今も、ドイツとイタリアというのは工業製品に関して密接な関連があったので、ドイツのメーカーがイタリアの回路をコピーしたとしてもなんら不思議な点はありません。むしろ「独特の」スウィープ効果を持ったクライドマッコイ回路がこんな所にも存在したことが面白いですよね。実はこのワウ・サウンドが非常に当方の好みでして(笑)、それだけでも嬉しいわけです。
ただし、前述したように、スイッチには不満を持っています。更に加えて言えば、インプットが左側に、アウトプットが右側に、という例の大昔の「逆配置」でもあるので、そこもイラっとしますよね(笑)。そして、やはり注目はファズ回路のほう、ですよね。簡単に言ってしまえば極めてシンプルなファズ・フェイス回路そのままです。ここに掲載したモデルでは、トランジスタにはBC239というシリコン・トランジスタが採用されています。ちなみに本機では、ワウ回路のトランジスタにもBC239が使用されています。
基板回路は1つにまとめられていますが、この基板で面白いのは、やはり内部にファズ部のアウトプット・トリマーが1ケ、ワウ部のアウトプット・トリマーが1ケ、合計2つのトリムポットが採用されていることでしょう。ファズ・ワウの常識として、こちらのペダルもファズが最初で、その後にワウ、という構成順序になっていますが、内部のトリマーのおかげで微調整ができるのはありがたいことです。外部に唯一見える、INTENSITY と書かれたツマミは、もちろんファズの「ATTACK」に相当するツマミで、乱暴に言ってしまえばその効きはおおむねファズ・フェイスと同じ、です。ちゃんと他のファズ・フェイス系ファズ同様、ギターのボリュームには敏感に反応します。
実は独シャーラーはこのファズ・ワウ以前に「ファズ」単体機も発売していますが、回路自体はこのファズワウの「ファズ部分」と全く同じです。ただし、極初期のモデルにはゲルマニウム・トランジスタを用いたものがあることが確認できています。また加えて言えば、シリコンに変わった初期のブツでは、BC108という、例の有名な(=ファズ・フェイスと同じ)シルバーキャップのシリコン・トランジスタが使われていたブツもあります。
というわけで、実はこちらのブツも、今年の頭に出た「THE EFFECTOR BOOK」のファズ・ワウ試奏コーナーに登場したその現物です。掲載に際して前回同様M.A.S.F.さんによるデモ演奏動画がありますので、こちらに貼っておきます。まあ古いワウ回路の宿命でもありますが、もちろんトゥルーバイパスではなく、繋ぐだけで結構音ヤセします。ですが、逆に考えれば原音が痩せることによってファズ効果/ワウ効果はより強烈にかかることにもなるので、そのあたりは好きずき、ですよね。
ちなみに、シャーラー社はこのエフェクターを随分長い間、80年代後半まで製造し続けています(若干の使用変更はありましたが)。初期のブツはグレー・ハンマートーン塗装で、ご覧のようにSCHALLERロゴが筆記体で入っているブツです。80年代には足踏みペダル部分に金属の四角いプレートが配置されます。90年代には色も黒になり、ジャックの位置も変更になります。20年以上延々と発売され続けたペダルで(しかもその途中には国の形がかわる、という激変の時代を挟みながらも)筐体や回路、パーツはほとんど変わらずに製造され続けた、というちょっと面白い経過をたどったペダルでもあります。90年代の黒い筐体になってからは、そのネームプレートには製品名として「WHA WHA FUZZ」とプリントされていました。
その「一貫して変わらない」仕様ではありますが、この筐体はプラスティック製です。そして、裏蓋の鉄板だけでヤケに重量を稼いで安定させる、という作りなので、ハッキリいって壊れ易いです(笑)。
さて、上記のファズワウとは一切関係のない、余談を兼ねたご報告(笑)です。いくつか英国JMIのTONE BENDER関連製品のアウトレット品を入荷させました。ワケあり特価品、みたいなカンジではありますが、次回のポスティングでそれらのいくつかをご紹介できると思います。ほんのわずかの入荷なので限定ではありますが、特価販売しますので、ご期待下さい。
9.27.2012
VOX - Wah-Wah Distortion (Late 60's / Made In Italy)
前回VOXブランドの「HASTINGS SERIES」という英国カラーサウンド製ファズワウをご紹介しましたが、こちらはそれよりも前の製造による、VOXブランドのファズワウ・ペダルです。製造年は67〜69年、と思わしきブツですが正確な製造年はわかっていません。
これまでも何度か書いてきたように、VOXブランドは66年末からイタリアの工場で自社製品の製造を初めていますが、以来、イタリアのEME(後にJENとなる工場)、それから同じくイタリアのEL-EFといった製造元でのOEM製品があります。で、こちらはそのEL-EF製造のOEM製品、と思わしきブツでして、ご覧のようにEME/JENでの製造品とはいくつもの違いを散見することができますね(折り曲げ式の四角い鉄製筐体とか、VOXのロゴの形とか)。
製品名はVOX WAH-WAH DISTORTIONと名付けられているわけですが、勿論これは66年にVOXが開発し、イタリア工場で大量生産されたワウ回路、それから64〜65年頃に開発されたVOX DISTORTION回路をくっつけた複合ペダル、ということになります。もうお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、このペダルは雑誌「THE EFFECTOR BOOK」VOL.15にて、ファズワウのミニ特集コーナーに登場した実物なわけですが、ホントならワウの足踏みペダルの上部に「VOX」と書かれた黒い小さなステッカーが貼られていたハズです。しかし当方がこれを入手した時には既になかったので、ご覧のようなルックスでの登場、となったわけです。

ご丁寧に、このペダルは内部に回路図が貼られており(本稿の一番下のほうに画像を掲載しました)、既にご推察のとおり、ファズ回路はシリコン・トランジスタ2ケのMK1.5回路、そしてその後にVOXクライド・マッコイ・ワウ回路が続きます。ただし、回路図にもありますが、ファズ回路/ワウ回路ともにトランジスタはBC149、という指示になっています。なのに、この実機では、FMPS5172が2ケ(こちらがファズ用のトランジスタ)、それからBC209が2ケ(ドーム型/こっちがワウ用トランジスタ)という構成になっています。さすがイタリア。そんな小さなことはおかまいなし、といったところでしょうか(笑)。回路図にもありますが、トランジスタは共にNPNトランジスタです。
コントロールはDISTORTION(=ファズのATTACKに相当)、VOLUME(ファズのVOLUMEに相当)、そして足踏みペダル(ワウの可変)の3種類となります。また、ここが多少面倒くさい部分なのですが、フットスイッチも3種あります。ひとつはDISTORTIONと書かれた「ファズのON/OFF」、それからWAH-WAHと書かれた「ワウのON/OFF」、そして足踏みペダルの上部裏に配置された「エフェクトのON/OFF」スイッチ、となります。
つまり、右側2ケのスイッチは「プリセット機能」、そしてつま先スイッチは「バイパス・スイッチ」と考えることができるわけですよね。切り替え方式としては面倒なカンジも否めませんが、これがあることで「ワウだけ」「ファズだけ」「ファズもワウも両方」を使い分けることができる、ということになっています。回路自体は単純なもので、ホントにワウ&ファズをくっつけたシンプルなサーキットです。白いProCondo製のキャパシタはもうイタリアン・ワウではお馴染みのパーツですし、500mHのインダクタは、FASEL製インダクタの標準値でもありますし。
実際の音ですが、デモ動画としてTHE EFFETOR BOOK掲載時にM.A.S.F.のスタッフによって試奏されたデモ動画がアップされてますので、それを貼っておきます。いわゆるTONE BENDER系のファズ・サウンドとは遠いものですが、むしろFUZZ FACE系ファズのバリエーションの1ケとしては面白いサンプルだろう、と思います。ご覧いただけるようにギターはシングルコイルのストラト、アンプはJC120を使っての動画ですが、アンプのスピーカー経由ではなく、ライン出力したサウンドを用いた、と聞いています。
また、この動画のサウンドは(ファズ部分をOFFにしたときのサウンドでわかるように)アンプ側がややクランチ状態になったセッティングでの演奏となっています。
ていうか、おそらくファズとワウを一緒に踏む人は、当方を含めて、得てして大げさな(笑)エフェクト効果を期待する人が大半かと思われますので、むしろこのくらい極端な歪みのほうが使い勝手はいいのかもしれませんね。正直言ってしまえば、ファズ単体、ワウ単体としてはあまりカッチョイイサウンドにはならないペダルでもあります。ですが、動画でM.A.S.F.さんが試されているように、アンプ側のセッティングを凝らしてやるとかでいろいろ使えるペダルにもなるなあ、と今更の様に感心させられます。


9.21.2012
VOX - Wow Fuzz (1970's)
今回はVOXネタです。VOXていうブランドはその長い歴史において、いろいろと面倒くさい経緯がある、ということは何度も書いてきましたが、今回は70年代のお話です。
1968年、ROYSTON GROUPという投資会社がVOXという楽器ブランドの名前を買い取りました。実はその直後、ROYSTON GROUPが(管理下にあった)別会社の経営不振に伴って、VOXのオリジナルでもあるJMIに「VOXの権利を買い戻すつもりはないか」というオファーをしたそうです。
以上のことはVOXの公式ヒストリー文に出てくることです。ただし正確に書くのであれば、この時点ですでにJMIという会社はありませんでした。JMIの創始者であったトム・ジェニングスは同年「JENNINGS ELECTRIC DEVELOPMENTS」という新会社をおこしていますが、おそらくその会社を指すのだと思われます。
そんな話し合いを経て、同年 VOX SOUND LIMITED という会社が作られています。ただし、この会社の代表が誰だったかはわかっていません。トム・ジェニングスが買い戻したかどうか、もわかってはいません。
ところが、69年には「VOX SOUND LIMITED」という会社はそのまま丸々売りに出されます。この時シュローダー・バンクという銀行投資部門がこの会社を買い取ります。70年にはイギリスの一番南東に位置する海沿いのド田舎、SUSSEX州HASTINGSというところに会社の住所が移され、工場も作られた、とのことです。
時期としては69年から73年まで、約4年にわたってVOXという会社はここにあったのですが、73年には「VOX SOUND LIMITED」は会社を畳み、全ての権利をCBS/ARBITERに売り渡しています。
当方がこのブログで「VOXという会社は過去も現在も存在していない。ただし、一時期だけVOX SOUND LIMITEDという会社があったけど」と書いているのは、そういう経緯によるものです。
さてさて、今回の本題はそんなことではなくて、こちらのペダルのご紹介だったりするわけです(笑)。こちらはVOX SOUND LIMITEDが存在した時期に製造・発売された、VOXブランドのファズ・ワウ複合ペダルで、VOX WOW-FUZZという名前のブツです。
ご覧頂けるように裏蓋には「MANUFACTURED BY VOX SOUND LIMITED, HASTING, SUSSEX ENGLAND」とありますが、まあ誰がどう見てもこれを作ったのはロンドンのSOLA SOUNDであることは一目瞭然です(笑)。
その証拠となるような記載は一切ないのですが、筐体はSOLA SOUND/COLORSOUNDのTONE BENDERと同じモノが使用されています。また、回路もSOLA SOUND/COLORSOUNDが発売していたWAH FUZZ SWELLと全く同じモノが採用されています。まあ、SOLA SOUNDがVOXブランドのOEM製品を供給していたことはその何年も前からあったことなので、このペダルに関しても同様の経緯で製造されていたことは容易に想像いただけるかと思います。
この黒い筐体で、金色+ブルーという、見慣れないロゴ・ステッカーが貼られたVOX製品(他にもTONE BENDER MK3や、純粋なワウ・ペダルもあります)は一部で「VOX HASTINGS SERIES」と呼ばれているようです。もちろんそんなシリーズが当時実際にあったワケではなくて、VOX SOUND LIMITEDがHASTINGSにあった時期の製品だから、そう呼ばれている、ということになるんでしょうね。
それはともかく、中身は70年代のCOLORSOUND FUZZ WAH SWELLと同じモノです。FUZZ部分は2ケのシリコン・トランジスタ(写真を掲載した当方の所持物は、BC184Lが2ケ)搭載されています。ファズのサウンドとしては、所謂60年代のTONE BENDERの面影は殆どなく、シリコン・ファズ特有のシャリシャリしたトレブリーなファズ・サウンドです。ただし、トランジスタ2ケ使いなので、ギターのボリュームを絞れば、よりカリカリなクランチが生み出せます。
このVOX WOW FUZZに限らず、COLORSOUNDのFUZZ WAH SWELLでも同様なのですが、初期のモデル(おそらく74年くらいまで)は、ワウ回路とファズ回路が、それぞれ独立した2枚の基板が用いられており、筐体の中に基板が2枚内蔵されている、というモノでしたが、その後これらの2つの回路は1ケの大きな基板にまとめられています。中古で目にするCOLORSOUNDのWAH FUZZは、2ケの基板モノと1ケの大きな基板モノ、両方ありますがどちらも基本回路は同じです。
余談ですが、二年ほど前にイギリスのD.A.M.がこの「2ケ基板」回路を忠実に再現したワウ・ファズを復刻製造したことがあります。オリジナル同様にシリコン・トランジスタを用いたペダルで、筐体はCOLORSOUNDの長方形の筐体を採用していましたね。
しかし、ご覧頂けるようにこのVOX WOW FUZZも、COLORSOUND WAH FUZZ SWELLも、どちらも(ワウの足踏みコントロール以外は)ツマミで音色をコントロールすることが出来ません。内部回路にはアウトプット・トリマーのための内部トリムポットが1ケありますが、歪みとか、トーンとか、そういうコントロールは一切できません。なかなか使い勝手はよろしくないエフェクターです(笑)。
とはいえ、このペダルがFUZZ回路もWAH回路もともに英国製で、VOXのブランドで発売された製品であることには間違いありません。VOX製のファズやワウ、といえば大方がイタリア製であったりしますが、そんな意味でもちょっと珍しい部類に入るだろう、と思われます。
それにしても、このペダルはファズのスイッチが筐体前面(ツマ先の部分)、ワウのスイッチが筐体後方(カカトの部分)、にあるわけですが、やっぱり使い辛いですねえ(笑)。同様のスイッチ配置のブツは、例えばドイツのSCHALLERのFUZZ WAHとか、他にもあったりはしますが、淘汰されるのも仕方ないなあ、とも感じるワケです。
9.02.2011
JMI - Del Casher Wah
さて、延々と(しかも強引な流れで)ワウ・ヒストリーに関して書いてきましたが、前述したようにこれらはすべて現JMIが新しいワウ・ペダルを発売したので、その宣伝も兼ねているわけです。右上に掲載した写真はJMIが2010年にその新作ワウの告知を行った広告ですけど、前回載せた「67年のVOXの広告」をそのまんまパクってデザインされたわけですね。
そして別な広告には、若き日のデル・キャッシャー本人の写真が使用されています。商品名からも判る通り、このJMI 1966 DEL CASHER SIGNATURE WAHはデル・キャッシャー本人の承認を得た、公式のシグニチャー・モデル、として製造されています。このワウ「DEL CASHER SIGNATURE WAH」は当初2010年発売、とされてきましたが、実際にブツが出来上がったのは2011年になってからでした。当然当方でもその取り扱いを開始しており、日本でも現在入手可能です。早速そのワウの詳細を見ていただきたいと思います。
一見しておわかりのように、そのワウは67年の英国製VOX WAHのルックスを復刻したものです。これまでも数々のTONE BENDERリイシュー品の広告等でも打ち出してきたように、現JMIは「ブリティッシュ・メイドのブリティッシュ・トーン」にこだわっているので、ああナルホド、とその意図は判りやすいわけですよね。
ここで小さな余談を挟みます。JMIの本国ウェブサイトでは「限定200ケ」と書いてあり、商品の中に封入された保証書には「限定100ケ」と書いてあります。なのに、筐体の裏には「限定250ケ」と書いてあります。何やってんだJMI(笑)。


さらに、広告や保証書には「1967 WAH」と書いてあるのに、木箱や本体の裏蓋には「1966 SIGNATURE WAH」とか書いてあります。もーワケワカンネー、ということで早速本国に問い合わせしました。「ああスマンスマン。ミスっちまったな」。ったく、これだからイイカゲンなジョンブルさん達には困ります(笑)。どうかここはひとつ、日本の皆様にも大きな心と生暖かい目でJMIの連中の仕事を見守っていただければ、幸いです(笑)。とはいえ、デル・キャッシャー本人の協力を得られたのはさすがJMIですね。実はデル・キャッシャー氏は大変気難しい人物としても知られ、つき合うのは大変だ、という話を聞いた事があります。JMIのスタッフからも「その噂は本当だ」という話を聞きました。今回の製品が完成に至るまで、その中身とか外観とかに関して、アレもコレも、とデル・キャッシャー本人から指示が出ていた、ということも聞いています。もしかしたらデル・キャッシャー氏は、自分が言い出しっぺのエフェクターなのに、なんで製品化されたブツにはクライド・マッコイなんてヤツの名前が入ってんだよ!といまだに40年前のことを恨んでいるのかもしれませんね。勿論未確認ですが(笑)。
本題に戻ります。外観としては前述通り、1967年に英国ソーラーサウンドで製造されたVOXグレー・ワウをそのまま再現したこのワウですが、アメリカ人ギタリスト、デル・キャッシャーのシグニチャー・モデルでもあることから、英国製のオリジナルと比べるといくつかの大きな変更点があります。まずそのひとつは、インプット/アウトプットの位置です。向かって右側がインプット、左側がアウトプットです。つまり、現在一般に知られるワウ・ペダルと同じ向きになっています。67年の英国製VOX WAHはそれが逆だったわけですが、ここに関しては「デル・キャッシャーの持っているプロトタイプに準じた」とのこと。
そしてそのインプット/アウトプットの周囲にある「WAH WAH」のレタリングですが、オリジナルはステッカーだったのに対し、JMIの復刻品は塗装で処理されています。オリジナルのグレー・ワウではそのステッカーを剥がしちゃう人が多いわけですけど(笑)、JMIのほうはそういうわけにはいかねえぞ、ということになりますね(笑)。
そして中身です。インダクターは60年代のNOSパーツだ、という250Kのインダクターが採用されています。誰がどう見ても、そのインダクターに掘られているロゴは(我が日本がほこる)TDKのロゴなわけです。
ワウ・ヒストリーの中ではよく知られる話ですが、70年代にVOXのワウで採用された悪名高き(笑)TDK5103という四角い形のインダクタがありますけど、こちらのJMI復刻品で採用されたパーツはそれとは異なる、60年代のNOSパーツです。
基板はユニバーサル基板なので、若干その幅も広く、ルックスは英国製オリジナルとも米国製プロトタイプとも異なりますが、一応配列等は英国産VOX WAHを元に組んであるようですね。真っ赤で目を引くキャパシタですが、ここにはヨーロッパ製品ではなじみ深いWIMAの製品が採用されています。トランジスタは、英国産オリジナルと同様の2N3707が2ケ、です。ポットも同様に100Kのパーツです。グチグチとその外見を書いてきましたが、問題なのは音、ですよね。このJMI製DEL CASHER WAHはデモ動画が既にあるので、ここでも掲載してみます。
皆様既にご承知のようにワウの音ってのは入力される信号の周波数成分と、そしてアンプ側の周波数成分に大きく左右されるので、どんなギターでもこういう音になるぞ、てわけではありませんが、さすがに音は現行品のワウとは違います。多くのエフェクター・ビルダーが過去にも苦労されたように、やっぱり100Kのポット、そして250Kのインダクタ、それらと相性を併せたワウてのは、古くさくて美しいスイープを生み出しますよね。実はJMIもデル・キャッシャー本人もこの完成品のサウンドにすごく満足してるそうです。
以前のポスティングも含めてここまでワウの歴史とかデル・キャッシャーに関して書いてきた通り、実際には60年代当時デル・キャッシャーはこういうワウを使ったわけではありません(彼が使ったのはプロトタイプだから)。そして60年代に英国でほんのわずかだけ製造されたJMI/VOXのグレー・ワウも、細部に関していえばこの復刻品と同じではありません。今回のJMI DEL CASHER WAHはその折衷案ともいうべき商品なわけで、その辺の細かい事情を知っていただければな、と思います。そして最新の英国産ワウが生み出すクラシックなスウィープ・トーンを楽しんでいただければ幸いです。
さて最後に余談です。もうちょっとなんとかすりゃ、もっと面白くなるのになー、という当方の個人的なワガママを、既にイギリスJMIにぶつけてあります。当方の案とは「デル・キャッシャー・ワウは米国製プロトタイプのままで」そして「グレー・ワウは英国ソーラーサウンド製VOXワウそのままで」復刻品を作る、という案です。あまり期待はできませんが、まあ言っとくだけは言っとこうかな、と(笑)。
8.29.2011
Wah Wah and Del Casher (Part 2)
ワウ・ヒストリーのお話の続き、です。1967年、イギリスのJMI社(=VOX)がなんで英国製ワウを作らなければならなかったか、は前回に当方の推測を書きましたが、あくまでも推測でしかありません。とにかくイギリスJMIは、アメリカで開発されたその新しいエフェクター「ワウ」の回路を元に、イギリスのソーラーサウンド社に製造委託して英国産ワウの製造に着手します。
右の写真ではジョージ・ハリソンの前にワウが鎮座していますが、この写真は69年「LET IT BE」セッション時と思わしき写真です。そのワウは銀色で、筐体前面にはデカデカとVOXという文字が刻印されています。つまりこれが英国産のVOX製ワウなわけですね。以下、その細部を見ていきたいと思います。
既にその外観からして、以前紹介した「デル・キャッシャーのプロトタイプ・ワウ」とは異なります。ロゴの刻印も浮き彫りになっており、そしてラバーのデザインもシンプルに(というかなんら素っ気ない)滑り止めのラインのみ、となりました。
ただ、明らかにそれらよりも目につくのは、筐体の両脇にある、WAH WAHという文字の入ったステッカーです。そのステッカーのレタリングから、入力は筐体左側に、そして出力は筐体右側に配置されています。つまり、現行の一般的なワウとは左右逆になっているわけですね。しかし実はデル・キャッシャー本人が所有してるアメリカ/トーマス・オルガン製のプロトタイプ・ワウは、右が入力、左が出力、という、いわゆる「現行品と同じ」オーダーになっています。
なんでいっつもイギリスは左右逆なの?エスカレーターで並ぶ方向とかと関係あるわけ?などとツマラナイことまで考えてしまいそうですが(笑)、申し訳ありませんがそれに関してももう当時の実情を探るのは不可能かと思われます。とにかく入力は左、出力は右、です。それはともかく中身を見てみます。米製プロトタイプとは違って、細長い基板が筐体内部の中央にタテに配置されていて、そしてインダクターはその基板中央にデデンと居座っていますね。実はこのインダクターが何なのか、そのブランド等は現在も不明なのですが、後にソーラーサウンド社が制作したマーシャルSUPA WAHや、カラーサウンドのワウでも採用されていたものにそっくりなパーツであることは見ただけでわかります。ただし確証はありません。推測です、スイマセン(註:一説では、イギリス製のワウに採用されたインダクターは、アメリカのトーマスオルガンから提供されたパーツ、という話もあります。ただしその説もウラは取れませんでした)。
ワウ用のインダクターに関しては、HALOとか、FILMCANとか、赤/黄/白/緑のFASELとか、ちょっと調べるだけでいろいろと種類が出てきますよね。ただし今挙げたものに関しては、実は殆どその構造/中身はかわらない、というのが一般的です。ただし「VOX製のワウは当初コストダウンのために“安物の”ドーナツ状磁性体(トロイダル)インダクターを採用したので、そのことがかえって出音に影響を及ぼし、それが結果的に人気を集めた」という面白い話もあります。後に70年代になってから、VOX製ワウでは高級なコアキシャル・インダクターを採用することになりますが、何故かそれ以降はあまり評価が芳しくない、という不可思議な結果も生んでいます。
67年のVOXグレー・ワウで採用されたインダクターの数値は(現在のワウ製品で使われるものは300K、もしくは500Kが多いと思われますが)250Kのものが採用されています。また、これは既に有名ですがトランジスタには2N3707というものが2ケ。ジャックは英国製のクリフ・ジャク。ポットは100K、というスペックです。
また、当方の所有ブツではすでに剥がれてしまっているのですが、本来この英国製VOXグレー・ワウには、筐体の裏にステッカーが張ってあり、DESIGNED AND CREATED BY JENNINGS MUSICAL INDUSTRIES LTDというクレジットがされています。
そういうわけで、いわゆるグレー・ハンマートーン塗装が施されたVOXワウはほぼイギリス製のもの、ということになります。前回掲載したイギリスのVOXの広告に掲載された写真は、そのイギリス製VOXワウの製品写真だったというわけです。実際に1967年にこのグレー・ワウは発売されたということですが、殆ど売れなかった、という話も残されています。
これまでも何度か書いてきましたが、たとえば後期ヤードバーズ〜初期ツェッペリン時代にジミー・ペイジが使用したワウは、まごうことなき英国製VOXグレー・ワウだったわけですね。そして、なぜかミック・ロンソンも(まだボウイと一緒にプレイする前の時代には)このグレー・ワウを所有し、使用していました。そして、冒頭の写真にもあるように、ザ・ビートルズのジョージ・ハリソンも、その英国製グレー・ワウを所持していたわけです。
余談ですが、知人のビートルズ・マニアに「ところで、ジョージがワウ踏んでるのって見た事ある?」と聞いたら「そういえばねえなあ」という返事を貰いました。「ACROSS THE UNIVERSE」でうっすらと聞こえるワウがおそらくジョージが踏んだワウの音だろう、という説がありますが、誰もそれを確認できていません(笑)。右の写真2枚は有名な1969年のルーフトップ・コンサート時のビートルズの写真です。ジョージの足下にはVOXのグレー・ワウが見えるのですが、残念ながらジャックは繋がっていません。なんだよジョージ、せっかくなんだから使ってくれよ(笑/ちなみにジョージ・ハリソンにはソロ作品にその名もズバリ「WAH-WAH」という曲もあるんですが)。しかしイギリス製VOXワウは、あっという間にその短い歴史を終えることになります。というのも、67年秋以降イタリアで大々的にVOX WAHが大量生産されることになったからです。その辺のいきさつは、丁度VOX TONE BENDER MK2(英国製)と同じ運命、ということができるかもしれません。
いずれにしろ、60年代中頃に開発されたワウという新しいギター・ウェポンは、当時の先鋭的なミュージシャンであるクラプトン、ジミヘン、ジミー・ペイジ、ミック・ロンソン、そして勿論ビートルズをも巻き込んで、当時全盛だったブリティッシュ・ロックとともに世界中へと広まっていったわけですね。
ワウ史に関してはここで筆を置きます。「ワウの歴史」などと偉そうなことを言っておきながら、クライド・マッコイの名が一度も出てこないという、ありえない(笑)文献であることは承知しています。が、それにもちょっとだけ理由があって、それは次回で触れたいと思います。(この項続く)
8.25.2011
Wah Wah and Del Casher (Part 1)
ちょっとだけTONE BENDERから離れて、ワウ・ペダルのことを書きたいと思います。TONE BENDERと比べると圧倒的にユーザーも関連製品も多種多彩ですし、なんと言っても現行品があるということは、40数年にわたって絶えず愛され続けたっていうことですから、世界中に真摯でディープなファンがいることも存じています。
ではなぜかというと理由がありまして、筆者が大好きだから、それと、現JMIから新製品ワウが発売されたから、という少々強引な2大動機に基づくわけです(笑)。JMIの新製品に関しては追ってご紹介しますが、簡単にワウの歴史を追ってみたいと思います。
ワウ・ペダルを開発したのはVOXというブランドということになっています。多くの文献が残されているのでそれをまとめると、60年代中頃、アメリカのトーマス・オルガン社(ご承知のとおり、当時アメリカでVOXのブランド・ライツを持っていた会社です)のブラッド・プランケットというエンジニアが米国の自社製トランジスタ・アンプ「SUPER BEATLE」のミッドレンジ・ブーストをいじっていたとき(註:これはアンプのコストダウンのために、回路の改良をいろいろやっていた、ということです)、奇妙なトーン・フィルタリング効果を見出しました。
当時アメリカでビッグ・バンドに参加していたギタリスト、デル・キャッシャーがその奇妙な効果に興味を持ち、ブラッド・プランケット氏に「それ、面白いね。その回路をボリューム・ペダルに入れたら、足でコントロールできるんじゃないか?」という案をオファーしました。当初は「面白い」という感想で進捗していったプロジェクトでしたが、直後にこのアイデアは「まるでトランペットのミュート音をシミュレートしているかのような」エフェクトだ、としてその開発は商品化を前提に進められたようです。ここで当然、デル・キャッシャーて誰よ?という話題になるのは必然です。前述したように、当時のセッション・ギタリストであり、一時はエルヴィス・プレスリーのバックも担った経験があるようですが。60年代中頃にはトーマス・オルガン社のコンサルタントも務めていて(技術的、というよりは宣伝に一役買うプレイヤーという立場だったようです)VOXブランドお抱えのビッグ・バンドでも演奏していたとのこと。
デル・キャッシャーは今だ現役のギタリストで(註:1938年生まれ/現在73歳)、本人のウェブサイトもあることですから詳しいプロフィールは本稿では省きますが、とにかくワウの第一歩という歴史的な地点に立っていた人物、ということですね。余談になりますが、デル・キャッシャー氏はなんとローランド社の創業者と友人関係にあり、最初にギター・シンセサイザーが開発された時に、世界で初めてそのシステムを導入したギタリストでもあるんだそうです。日本ととても関係の深いギタリストだったんですね。
それはともかく、デル・キャッシャー氏は今も「自分がワウ・ペダルを開発した」と言い張る方ですが(笑)、別に当方がそこにツッコミを入れるつもりはありません。上記のようにワウの製品スペック全てをデル・キャッシャーが開発したわけでもなく、VOXのエンジニアがその全部を開発したわけでもない、と今は全て判っているからです。
さて、では当時試作されたワウってのはどんな中身だったか。これはデル・キャッシャー本人がその現物を今も所持していることから、かなりの事実が既に判明しています。
筐体はVOXのボリューム・ペダルがそのまま流用され、スイッチはミルフィーユ状のもの(おそらくイギリスARROW製品かと推測されます)、ジャックはスイッチクラフト、そして一番気になるインダクターはスタックオブダイム、と思われる樹脂で固められたものです。回路はラグ板にハンドワイアードされたもので、筐体に直にネジ止めされています(註:右上に掲載した写真で、デル・キャッシャーが右手に持っているワウは紛れも無く本人のブツですが、掲載した他の写真は同時期に同スペックで制作された別個体のプロトタイプのワウです。一部パーツは交換されたようです)。
ついでではありますが、当時のVOX製ボリュームペダルの写真も載せてみました(インプット/アウトプットともにケーブルが直で延びているブツ)。当方の所持品ですが、まあこれはちょっと探せば今も比較的入手は可能ですしね。なんで写真を載せたかというと、前面のロゴは刻印になっており、白く塗装されていること、足で踏むラバー部分のデザインは(後の製品化されたVOXワウとは)異なること、そしてなんといってもグレイ・ハンマートーン塗装であること、というのがお判りいただけると思います。67年、デル・キャッシャー氏はVOXブランドで製品化されることになったその新しいエフェウター「ワウ」のデモ演奏をVOXのために残しています(レコーディングはカリフォルニアで行われました)。またその録音音源はサンプル7インチ・レコードにもなり配布され、またその音源を使用してアメリカではラジオCMも制作されました。
そんなわけで、その試作品を元にVOXブランドからギタリスト向けに「ワウ」ペダルが発売されることになったわけですね。試作機は1966年に出来上がり、実際に製品版が発売されたのは翌67年、とされています。
ところが、ここで奇妙な疑問が浮かびます。本稿の一番上に掲載した写真は、1967年にアメリカのVOX(=トーマス・オルガン社)が配布した店頭用チラシ(B4くらいの小さなポスター)です。そして本稿の一番最後に掲載した写真(右下)は、イギリスで1967年にVOX(=当時のJMI社)が出した広告です。上の方の赤いチラシに掲載された製品写真は現在もとても見慣れた、黒いボトム部分&クロームの足踏み部分、そしてデカいVOXロゴの入ったラバー、というルックスなわけですが、下に掲載した白黒イギリス広告の方に載った製品写真は、それとは全く異なるルックスをしています。
実は、イギリスのVOX、つまりJMI(当時)社は、当初「アメリカで開発された、なんだかワウワウワウワウって音がする奇妙なエフェクター」の英国発売には、あまり乗り気ではなかった、という記述を見つける事ができます。もちろん当時の詳しい状況の確証を得ることは今では不可能ですが、おそらく「米国製品を輸入するとコストに見合わない」という事情もあったのではないか、と推測できます。当時、英国が米国から楽器を輸入すると恐ろしい関税がかかったからです。このことは、ギターの歴史に詳しい方ならご承知かとも思われます。
そのこととどのくらい関係があったか、勿論それすらも推測の域を出ませんが、結果として1967年、イギリスではJMI社がVOXブランドで「英国製の」ワウ・ペダルを発売することになります。(この項続く)
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