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3.13.2012

Masayuki Mori Interview - Part 5



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——今思い出しましたけど、TUBE SCREAMERのモディファイものを片っ端から試してる、っていう森社長の写真をネットで以前拝見したことがあります。オーバードライブもやっぱり気になりますか?
M:ああ、楽器屋で、って写真ね。そんなに懸命に試したんではなくて、あの楽器屋さんにはフラっと入ったカンジですけどね。たしかにTS系はマーシャルとの相性はいいとは思いますけど、TS系っていっちゃえばランドグラフもその系統ってことになっちゃうし。でもさあ、たとえばオーバードライブの名器といわれるBOSSのOD-1だけど、そんなに有名な使用者が海外にはいないですよね。DS-1とかも。
——んー、僕が知ってる中では、カート・コバーン(註:BOSS DS-1を使用)くらいですかね。
M:単体のエフェクトとしては、オーバードライブもディストーションも中途半端なカンジがするんですよね。それだったら、もっと潔いファズのほうが楽しいジャン、って(笑)。
——潔い、つまり不器用なってコトですけどね。
M:ところがさっき言ったように、「巧み」が使うと素晴らしい音をヒネリ出すんですよね、ファズって。そのファズの中でも、例えばさっきのシンエイ(UNIVOX)のファズなんかは、海外の人には作れないだろうっていう、変わったモデルですよね。低い音だとディストーションなのに、12フレット以上の音だと発振しまくる、っていう(笑)。日本人もスゲエだろ、ってカンジですよ。
——「日本をなめんなよ」と(笑)。でも森社長のエフェクターは、みんなスゴイ奇麗ですねえ。
M:ギターもそうなんですけど、出会った時が買うとき、なんですよね。「おっ、いいねえ、じゃあ今度考えよう」とか思ってると、もう次がない、というブツばかりですから。
——余談ですけど、今森社長はギター何本お持ちですか? あのー、その中身が凄いのは今までの雑誌やなんかで承知の上なんですが、どうやって管理とかしてるのかなあ、と思いまして。
M:随分ギターも減らしたんですけどね。でもギター用の部屋を設けてます。空調2台入れてますね、そこには。
——2台(笑)。
M:でもねえ、空調がどうだろうが湿度をどう管理してようが無理なモンは無理(笑)。ほとんど諦めてますね。
——オーダーでギター作ったり、なんてことは?
M:いえ、僕はオーダーをしないんですよ。僕はね、楽器職人が「楽器としていい音」を目指して作ったギター。それを使い倒したいっていう考え方なんですよ。
——なるほど、楽器職人さんとの勝負、ですね。
M:いやいや、そんな偉そうな話じゃないですけど(笑)。関係ない話だけど、マスタービルダーのジョン・イングリッシュ(1970年からフェンダー社でギターを製造したビルダーで、カスタムショップにおける「マスタービルダー」のトップに位置した人物。2007年逝去)と偶々話をする機会があって、その時に聞いたことがあるんですよね。あなた方マスタービルダーは、材のチョイスとか作り方とか、そういうスキルが素晴らしい方々ばかりなのに、なぜみな「ビンテージ」のギターを再現するのにこだわるのか、と。つまり50年代はパートのオバチャンが決められたネジの数と行程だけでオートコンベアで出来上がったギターなハズでしょ。マスタービルダーはネックの材をひとつひとつ選び、行程も理想に近いものを毎回試行錯誤して作る、という、全然別な方法でギター作りをする人なのに、なぜ「自分の理想のギターを新しく作らないのか」ときいたんですよ。
——ほぉー。
M:そしたらね、彼が言うには「大変いい質問だ」と(笑)。「だが、我々とあなたではひとつだけ誤解がある。ベルトコンベアで何万本か作られたギターなのはたしかだけれど、古ければ全部ビンテージ・ギターというわけではない。その何万本の中で、いまの時代、現在に求められるプレイヤビリティーとサウンドに応えるギターは数本か数十本しかない。我々はそれを求めているんだ」と。「ワインと一緒だよ。何年に製造されていようが、今飲んでマズイものはマズイ。ウマイものはウマイ。自分たちは今飲んで旨いワインを作りたいんだ」と。それとね、ジョン・イングリッシュがこれまた面白いことを言ってたんだけど、「我々は製作家ではあるが、その前に演奏家なんだ」と。
——えっ、そうなんですか。レオ・フェンダー(1909年生まれの電気技師。フェンダー社の創業者だが、自身はギターが弾けなかったことは有名。1991年逝去、92年にロックの殿堂入り)とは大違い、というか真逆ですね(笑)。
M:「プレイヤーが何を求めているか、その汎用性を兼ねそなえた現代のギターを作るのが我々の仕事なんだ」とね。でもね、そこでもうひとつ質問したんだけど「じゃあ形は?あのストラトの形から離れないのは何故?」って。
——そうですよね。可能性は他にも探るべきですよね。
M:そしたら「テレキャスターが出来上がったことが、まず最初の奇跡。あれはレオ・フェンダーの理想だったハズだ。次に生まれたストラトキャスター。これは最初の奇跡を越えた奇跡中の奇跡。もうひとつの奇跡があって、それはギブソン社で生み出されたレスポール。その後の試行錯誤はもちろんあり得るかもしれないけど、その3つの奇跡を越える奇跡を生むのは、計画しても生まれないだろう、というくらいの完成度がある」と。
——んー、確かに人体工学とか素材とか新しい試みで出来たシェイプのギターが、過去のストラトとかテレキャスを凌駕するようなことは、今の所ないですもんね。アラン・ホールズワースが「スタインバーガーはストラトが発明されて以来の革命だ」と言ってましたけど、今はもう彼はスタインバーガーを使わないですからね(笑)。
M:たしかに昔のギターに関して言えば、パっと見て「〜〜の〜〜年製だ」とわかるくらいにはなりたいと思ってたこともあるんですけど、「あそこのネジが何個かだけマイナスだ」とか、だんだんドーデモイーヤ、と思うようになってきてね(笑)。使えないペグとかサビたマイナスネジとか、どうでもいいじゃんか、と。僕とは関係ない話だ、と思ってますね。だから個人的にはコンバージョンものでも大歓迎、ってカンジだし。
——森社長はバーストをお持ちでしたよね。
M:ええ、58年と59年。60年は持ってないんだよね。太いネックのほうが好きなんで、あの60年の平べったく薄いネックを握ると、もうどうしていいかわかんない(笑)。SGなんかも一緒。ボキっと折れちゃうんじゃねえか、と。
——クラプトンはスリムネックになった60年製こそがすべて、って言いますし、ジミー・ペイジのもあんだけ薄く削っちゃってますよね。女子高生向きなんじゃねえか、っていうくらい(笑)。どっちがいいかは置いといても、ネックの太さってギターの音にダイレクトに直結しますよね。
M:ジョン・イングリッシュはね、「ギターはネックだ」って断言してましたよ。ネックがしっかりしてないとしっかりした音は絶対でないって。だからねえ、GIBSONでもレスポール・ジュニアとかのネックは、侮れないんですよね。ナンダこりゃ!ってくらい凄い太い音だもんね。1マイクで、ブリッジもあんな原始的なモノなのに(笑)。
——これは僕の個人的な見解なんですけど、あの時代のホンジュラス・マホガニー材って最強だあ、って思ってるんですよね。重さはもちろん重いのも軽いものありますけど。今のモノとは音が全然違うなあ、と。
M:あ、それはもちろんそうですよね。今の製品をあんまり批判するつもりはないけど。ただ「同じか?」と言われれば「違う」としか言い様がないよね。
——他にもレスポール、沢山お持ちですよね。
M:うん。56年のゴールドトップとか。TOMになった最初の年のもの、ね。マイクはP90で。
——森社長のバーストは、やっぱり虎杢に惹かれてほしくなった、ということですか?
M:いや、僕の59年はほぼプレーン。58年の方はちょっと虎も入ってるけど、フレットはフェンダーものより細いんじゃねえか、ってくらい細い。
——バーストの伝説のひとつに、トップのメイプルの厚さが全部バラバラで違う、っていうのがありますけど、森社長はメイプルの厚さ測ったりしたことありますか?
M:いや、そこまで確かめたことはないですね。僕のはそんなに重いギターじゃないけど。ダブルホワイツ(57〜60年頃に生産されたPAFピックアップでも、59年中頃以降に製造された、ボビンが両方ともクリーム色のもの。PAFの中でも最もレアなものとされる)のせいかもしれないけど、他のギターに比べてとにかく音はバカでかいですね。あのー、僕もいい加減なので偉そうなことは言えないんですけど、最近は「音を追求する」ってことのプライオリティーが下がってきてる、と思うんですよ。エフェクターの場合でも、安いオーバードライブがダメっていう意味じゃなくて、安いオーバードライブでなんでもかんでも出来るわけじゃない、ってところを考えちゃうんですよね。
——んー、なるほど。同時に「値段が高ければいいわけでもない」に通じますよね。まあ、最近の音楽という意味では、ギターソロの需要さえ少ない時代ですし…
M:最近の音楽…… こんな言葉使うと「またジジイがなんかいってらー」とか思われるんだろうけど、たとえば「歌が上手い」っていうのは「カラオケが上手い」ってことと意味が違いますよね。そういう点がね、今はどんどん曖昧になってると思うし。
——あ、それはそうかも知れませんね。今の時代は、ギタリストっていう存在意義も変わってきたとは思うんですよね。たとえばツェッペリンってバンドには、大暴れするリズム感の悪いギタリストと、暴走しまくるドラムがいますが(笑)、それなのにちゃんとボトムもリズムもキープさせるベースがいますよね。彼がいるから、ペイジもボンゾもひっくるめてツェッペリンの「音」は凄まじいものになったのかも、と思うんです。
M:ジョン・ポール・ジョーンズがいないと、成り立たないバンドなんだよね。ロバート・プラントってギターとの掛け合いのアドリブの時「ah yeah」「a-ha」くらいしか言わないで、あんまりダラダラとつき合わない、ってのもよく判るんだよねえ。そんないつまで続けるのか判らないペイジ&ボンゾのデタラメな掛け合いに、そんなに従順につき合ってらんねえよ、みたいな(笑)。
——(笑)ツェッペリンはあの時代だからこそ成立したのかもしれませんね。
M:でも、ジェフ・ベックの場合は今でも昔のままのジェフ・ベックで、あれはあれで笑っちゃいますよね(笑)。もうサイコー。まさに円熟期。ベックはムラが酷い人だから、気分次第でメロメロになることもあったんだけど、今はすごい安定してるし。ベースの彼女(タル・ウィルケンフェルド)つれて世界回るのが楽しいのかなあ、とか(笑)。
——今はドラムの彼女(ヴェロニカ・ベリーノ)ですね。しかもどうやらベックはあの娘をYOUTUBEで見つけた、っていう(笑)。
M:えっ、そうなんだあ(笑)。ったく、何やってんでしょうね(笑)。

special thanks to Office Kitano and The Effector Book. ©2012 Tats Ohisa / Buzz the Fuzz

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森社長のコレクション その5 CARLSBRO SUZZ + UNIVOX SUPER-FUZZ

 CARLSBROといえば、TONE BENDER MK3と同じ青いファズで知られると思いますが、70年代に入ってからはSOLA SOUND以外でもOEM製造を委託して別なペダルも発売しました。こちらの「SUZZ」はその名の通り「FUZZ+SUSTAIN」をうたったもので、よりディストーションに近いファズ。71年以降に製造されたもので、その初期モデルはシリコン・トランジスタ、70年代後半にはオペアンプを使用したものが製造されています。筐体を見て思い出した方もいると思われますが、このペダルの製造はおそらく(以前紹介した)WEM(ワトキンス)社の後期型RUSH PEP FUZZと同じ工場だと思われます。
 最後のUNIVOX SUPER-FUZZは、既にファズの世界では有名なペダルですよね。日本のシンエイという会社がOEM製造を行なっていたもので、ピート・タウンゼンドが70年代に使用したことでも有名です。ただし同機は時代によってスペックが変わり、写真にある初期モノはノブ2ケが筐体横に配置。後期モノはラバーパッドのついて、ノブの位置も筐体前面に移動されてます。歪みを増やせばアッパーオクターブ成分が徐々に追加される、という仕組み。この初期型のSUPER-FUZZは日本のHONEYというブランドが出した「BABY CRYING」というファズと見た目も中身もほぼ同じ、とのこと。



3.12.2012

Masayuki Mori Interview - Part 4



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——TONE BENDERに限らず、ゲルマニウム・トランジスタを使ったファズって「もの凄くアンプを選ぶ」と思うんですけど、いつもアンプ側はどうセッティングされてるのかなあ、と。
M:特にこの季節(冬)、鳴らない日は鳴らないですからねぇ。
——イギリスも冬は寒いですけど、知り合いに聞いた所、みんなドライヤーとかであっためるそうですね。
M:まあ僕は最近はすっかり自宅ギタリストですから、盆栽を楽しむ感覚でしかギターに触ってないですけど。
——なんか、スッゴイ高級な盆栽が目の前にゴロゴロと置いてありますが(笑)。
M:いえいえ(笑)、何年もかけて結果的に集まった、というだけなんでね。一気に集めたわけでもないですし。
——TONE BENDERクローンも色んな所からいろいろ出てますけど、どの辺りをお持ちですか?
M:もちろんJMIのは持ってて、それからD.A.M.のも持ってます。あとMACARI'S(現行のSOLA SOUND製品)も。あとね、個人製作家のモノもかなり持ってますね。OC75を使ったTONE BENDERクローンは割と手に入りやすいですよね。
——そうですね。とはいえ、楽器屋さんに行って手軽に買える、ってモノではないですけど(笑)。
M:D.A.M.のは試してみて「あー、いいじゃない」と思ってたんだけれども、OC81Dていうトランジスタはどこか神格化された部分があるでしょう? D.A.M.のクローンでもOC81Dを使ったものがあるんだけど、それはなかなか手に入らないし、あってもメチャクチャ高いし(笑)。それでそれ以降意識していろんな製作家のMK2でOC81Dを使ったモノを集めたりしたんですよ。
——SMITTY PEDALSとかLUMPY'S TONE SHOPとか、ですかね?
M:んー、名前は覚えてないんだけど、フランスの製作家もいたり、イギリスの人もいたり。でも、音はたいてい似通ったようなモノですけどね。
——あー、それはやっぱりD.A.M.フォーラムの影響が大きいでしょうね。今ブティック系ビルダーは皆あそこで情報共有しちゃうので。パーツとか定数とか全部ディスクローズしますからね。
M:MACARI'SのTONE BENDERで、D.A.M.が作ったのがあるじゃない?あれは石は何だったっけ?
——いまMACARISから出ていものは、ムラードのOC84を使ってますね。
M:でもカスタムメイドかなんかでOC81Dを使ったのもあるんですよ。
——あ、それは知りませんでした。お持ちなんですか?
M:うん。でもね、D.A.M.が作ったそのOC81DのMK2は、全然抜けなくて、コンプがかかったような抜け切らない、埋もれた音なんですよね。他のD.A.M.のTONE BENDERは、それなりに抜けのいいファズなんだけどね。そうは言ってもD.A.M.のファズは、たとえどんな石を使っててもやっぱり「D.A.M.の音」がするんだよね。
——あ、そうですよね。一定のカラーがありますよね。
M:あと安定してる。でも今MACARI'Sから出てるMK2っていうのは、D.A.M.製なんだけどあんまり安定してない。どうしてなんだろうね。やっぱり石の問題なのかな。それとも作る方向性を変えてきたのかな。
——どうでしょうね。彼はいまだに延々と試行錯誤してる、というカンジですもんね。トランジスタに関しては、今はMAGNATECのAC128をよく使うようですけど。
M:D.A.M.が最近作ってる小さくてカラフルなペダルって、「日本のエフェクター」、それこそBOSSとかマクソンなんかのコンパクトなエフェクターに対する憧れがあって、ああいう色にしたんだって聞いたよ。ああいうBOSS的な体裁にしてみたい、っていう。
——へー、そうなんですか。森社長はJMIのTONE BENDER PROFESSIONAL MK2のMULLARD OC75版を既にお持ちとのことですが、今回入手されたMULLARD OC81D版は実際に音出されてみて、いかがでしたか?(註:写真は左から、ムラードOC75を使ったJMIのMK2、OC81Dを使ったJMIのMK2、それからD.A.M.製造のSOLA SOUND MK2復刻版)
M:なんて言うんだろう、ほとんどもうニュアンスの違いくらい、ですよね。どっちがどう、とは言いきれるものではないですよね。
——ええ、それはその通りですね。それでもほんの僅かですが、僕が試した印象ではOC75版のほうは埋もれずにスッキリと抜けてくれる、という印象だったんですが。
M:少〜しね、OC81Dのほうは若干おとなしい、というカンジがしましたね。
——あ、そうですか。暴れるカンジではない、と。
M:そうね、OC81D版はよくも悪くもまとまってるというか。個体差もあるから一概には言えないんだけど、とても「整ってる」という印象ですね。メーカーはもちろん「音をまとめよう」として作ってるんだろうけど(笑)。 
——ちなみに森社長は、乾電池なんかもいろいろ試されるタイプですか?
M:あ、いやそこまでこだわりがあるわけじゃないです。基本的にデュラセルに統一してますけど、他をアレコレ試すことはないですね。
——ウチのHPでファズを購入されるお客さんには、結構電池にこだわる方もいらっしゃるんですよね。〜〜が一番いい、とか〜〜ボルトまで電力の落ちた状態が一番いい、とか研究されてる方が。さっきのオリジナルのTONE BENDER MK2 OC81Dに話が戻りますが、入手は大変だったんじゃないですか?
M:でも、どこまでがオリジナルか、は保証できないですよね。売る方は「オリジナルだ」って言いますけど。まあご丁寧にダメになったゴム足まで付けてくれた、ってことは「ほら、嘘じゃないぞ」っていう売り手のアピールなんでしょうね。でもヘンな位置に小さい穴が開いてたり、裏蓋がビミョーにずれてたり、「え?ホントにこんなにいい加減な作りなのかなあ?」って疑心暗鬼にはなりますよね。
——僕の知る限りでは、この位ならよくある、ってレベルでいい加減だったようです、当時は。作った本人(ゲイリー・ハースト)に聞いても覚えてない、っていうことも多いんですよね。
M:まだFUZZ FACEのほうが、TONE BENDERよりは判ってる事が多いでしょうね。TONE BENDERに使われてるトランジスタに関してもね、たとえばD.A.M.なんかがよく解説してるようなトランジスタの特性は、まあ一応僕もその通りだとは思うんだけど、実際にオリジナルのOC81DのMK2を買ったら、そんな細かいことなんて関係ねー、ってくらい音もバカでかくて。
——例えばジミー・ペイジ本人は、石がOC81Dかどうかとか、おそらく気にしてなかったと思うんですよね。
M:絶対気にしてないでしょう。ジミヘンのFUZZ FACEも、シリコンかどうかを気にしてなかったでしょうね。
——これは聞いた話ですが、ジミヘンが使うギターを選ぶ方法っていうのは「その日一番チューニングが合ってるギターを手に取る」だったそうなんですよ(笑)
M:(笑)。でも「奥が深い」てのはそういうことなんですよね。いいモノかどうか、いい音かどうか、っていうのは使われてる石とか、スペックとかでは判明できないですからね。
——TONE BENDER以外のファズで、いろいろ研究した、というのは?
M:やっぱりエレハモ関係(BIG MUFF)かなあ。トライアングルとラムズヘッド。その初期のほうが面白いですね。今でもエレハモは面白いモンが出すんですけどね。グラフィック・ファズとかね。
——ラムズヘッドの頃までは、全く同じ回路のBIG MUFFはひとつもない、ってことなんですが。当然音も違って、マフもホント難しいですね。
M:トライアングルもそうだし、当然TONE BENDERなんて全部一個一個音が違うんですけど、開発者がどういう音を目指してたんだろう?とかよく考えちゃいますよね。
——トレブルブースターなんかはどうでしょう?
M:一時ハマりましたね。今もOC44を使ったのを1ケだけ持ってるんですけど。トレブルブースターもフルレンジ・ブースターでもそうなんですけど、最初は僕もブースターの使い方がよく判ってなかったですね。プリアンプ的な使い方がおそらく一番多いパターンなんでしょうけど。僕がピート・コーニッシュのブースター(註:右の写真はTB-83TM。同機種はフットスイッチのついたカスタム版もある)を入手した時に、「これは一体どうやって使うモンなんだろう?」って悩んだんですよね。あれはフットスイッチもついてないし。で、そんなことを考えてたときに「これは全部ギターのボリュームで調整するモンなんだよ。トレブルブースターてのは、本来はそういう使い方をしたモンなんだ」と聞いて。あ、なるほど、と思ったんですよね。以前はそういうことを楽器屋さんも知らなかったですし。楽器屋さんならたいていブースターを「ソロでオンにして歪みや音量を増やして〜」って説明することが多いと思うんですけど。
——そうですね。
M:ブースターも結局本来は、「ソロになったら音をブワーとデカくする」というエフェクターではないんだぞ、ということですね。それに「トレブル」ブースターっていうくらいだから、アンプ側のトレブルをどうしとくかも重要なわけで。
——ロリー・ギャラガーもブライアン・メイも、AC30のノーマル・インプットを使いますもんね。
M:そう。そしてロリー・ギャラガーもギターのツマミをこまめに気にしてる。だから、TONE BENDERもトレブルブースターもそうなんですけど、使ってみて教えられること、っていうのが非常に多いですね。オーバードライブを使い続けていたら、知る事はなかっただろう、っていう知識。
——なるほど(笑)。オーバードライブの方がたしかに明解で判りやすいすもんね。
M:ましてや今はデジタルの時代ですからね。私はもの凄いアナログの人間ですから、その便利さはわかりますけど、あまり持つ気にはなれないですねえ。
——まあ、デジタルのマルチをドライヤーであっためるなんて人は、世界中のどこにもいないでしょうねえ(笑)。
M:今日はエフェクターの機嫌が悪いぞ、とか(笑)。デジタルではあり得ない、っていう。

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森社長のコレクション その4 PARK FUZZ SOUND (1968)
 1968年にSOLA SOUNDが他社ブランドのために製造したTONE BENDER MK3のOEM製品のひとつが、このPARKのFUZZ SOUND。既に有名ですが、PARKはマーシャル社のサブ・ブランドとして機能していたブランドなので、考えてみればマーシャル・ブランドのSUPA FUZZの後継機種としてこのFUZZ SOUNDを売り出した、と言えるのかもしれません。写真を一見してわかるように、SOLA SOUND製MK3との違いは表の塗装だけです。が、個体差の問題や製造時期による細かな定数/パーツの違いもあってか森社長いわく「音は違う」とのこと。PARKのFUZZ SOUNDには、こちらのようにSOLA SOUND製品と同じ筐体/コントロール(3ノブ)のものと、それとはちょとだけ違う2ノブ(こちらは筐体がVOXのTONE BENDER MK3のような形のもの)とがあります。どちらも回路はMK3回路で、2ノブのほうは「TRABLE・BASS」のノブがありません。そちらは機会を見てまた改めてまとめて紹介するつもりです。



3.09.2012

Masayuki Mori Interview - Part 3



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M:で、今日このへんを持ってきてみたんですが。
——あ、ホント申し訳ありません。重くてデカいのバッカリで、恐縮です。
M:これがね、OC81Dが使われてる、60年代のTONE BENDER PROFESSIONAL MK2
——えっ! うわー、僕ホンモノ触るの初めてです。開けて中見せてもらってももいいですか?
M:ええ。どこまでオリジナルかは、僕には断言できないんですけど。これねえ、ボリュームのノブが10時くらいでもう爆音。音デカくってねえ。
——あ、そうなんですか。MK2はそれほど出力がバカでかい、ってカンジではないものが多いんですけど、そのあたりは石のせいなのかもしれませんね。トランジスタが1ケだけホワイトジャケットなんで、もしかしたらトランジスタは後でちょっと弄られたっていう可能性も否定できないですね。
M:あと、マーシャルのSUPA FUZZね。これがまたスッゴクいい音なんですよね。これはねえビックリしました。
——こっちのトランジスタは?
M:OC75。さっきのOC81Dより出音はオープンなんだけど、枯れたカンジがして、音的にはこれが一番好きかも。SUPA FUZZもそうだけど、TONE BENDERは同じモデルでも中身はけっこう違うのが多いですね。
——さっきのOC81Dの入ったMK2とマーシャル SUPA FUZZとの比較でいうと、どういう差をお感じになりますか?
M:「コレでも食らえ!」っていう使い方をするなら、OC81DのMK2ですね。とにかくサスティンが凄いあるので。SUPA FUZZはそこまで強烈ってカンジではなく、枯れたイメージがあるから、音も控えめに出してやったほうがすっごいいい音になるんですよね。ストラトでこれ通せば、もうタマンナイ!って音になりますよ。
——OC81Dのほうでストラトを通すと、どういう印象でした?
M:もうストラトもなにも関係ない、ってくらい直線的ですね。ワビサビもへったくれもない、っていう(笑)。
——OC81Dはいわゆる“ジミー・ペイジ仕様”なわけですけど、レスポール使ってペイジはコピったりしましたか?
M:ん、まあやってみたけど、でもあのムチャクチャさは真似できないですよね(笑)。それに、レスポール使うくらいなら、テレキャス使ったほうが所謂ペイジっぽい音にはしやすいし、ね。
——TONE BENDERのMK1であれば、「爆音・爆歪」なんで、僕もツマミは9時くらいまでしか回さないんですけど。このOC81DのMK2も、そんなカンジですか?
M:うん、10時とか、そんなモンですね。いきなりピークが出ちゃうというか。コントロールは難しいですね。それから次が、VOXのこれ(イタリア製TONE BENDER)。これはシリアルが凄く若かった(1500番代)、ということもあって買ってみたんだけど、これ、凄くいい音なんですよね。同じモノでシリアルが6000番代っていうのもあって、ミントっていえるくらい奇麗なのをこの後に買ってみたんだけど、音がちょっと違うんですよね。若いモノのほうがまろやか、っていうか太い。こっちの若いほうは、完全に音で決めて買いましたね。
——一般に、イタリアのTONE BENDERは「MK1.5回路」の中でも、カリカリで音が枯れる印象があると思うんですが。見せていただいた限りこれの回路はフルオリですけど、音はそんなに太いんですか?
M:うん、フットイですね。もう一個もってるVOX TONE BENDERは、箱にビートルズの絵が書いてあるもので、ほんとにド・ミントなんですけど、すっかり飾りですね(笑)。もうプラグインすることもないでしょうね(笑)。イタリアのTONE BENDERも、見るたびに中身違いますよね。
——ええ、全く同じ中身のもの、見た事ないですね。まあこの時期のイタリアものの場合はワウも同様ですけど。
M:それから、この青いヤツ。
——あ、PARK FUZZ。お持ちですねー。スゴイ。
M:これもねえ、凄いいい音ですよ。銀色の(TONE BENDER MK3)も持ってるんだけど、音が違いますねえ。
——回路は同じハズなんですが、トランジスタがモノによって全然違うモノを使用してる、っていう噂がありますね。僕の持ってるSOLA SOUNDのMK3は銀色で無印の石なんですが。
M:これもトランジスタはそれ。「歪み」のツマミを回すと、それに従ってちゃんと歪んでくれる、という(笑)。
——(笑)。ホントはそれがフツーなんですけどね(笑)。TONE BENDERとしては、逆に珍しい、というか。
M:出音のね、上っ面の部分だけが歪むんじゃなくて、コシのある歪みというか、しっかりと歪む、というか。
——TONE(TREBLE・BASS)のツマミが凄い効きますよね、これ。
M:凄い効くよね。それと僕が大好きな、日本が誇るシンエイのファズ(UNIVOX SUPER FUZZ)ね。オクターブ・ファズもいくつか試したんですけど、ラバーパッドのついたモノより、こっちのほうが凄く良かった。
——ツマミが時代によって違うんでしたっけ?
M:そう。この最初のモデルはオクターブ成分のコントロールができない。これねえ、何故か12フレット周辺より高い音を出す時オクターブ成分がブワーって出て、そうでない時はフツーのファズ、というか単純なディストーション・サウンドになる、っていう。まあいい加減といえばいい加減な作りですよね(笑)。それから最後に、これ。これはあなどれない、っていうCARLSBROのSUZZ。そんなにレアでもないし、あっても値段は安いんだけど。
——うわー、SUZZもお持ちですか。
M:これ、まったく正当な評価を受けてない、っていう気がしますね。いわゆるディストーション的なファズなんだけど、すっごくコントロールしやすい。
——トランジスタはシリコンでしたよね。
M:そうです。サスティン&ファズだから「SUZZ」だと思うんですけど。ちょっとコンプがかかったカンジで、歪みはそんなにバリバリって強烈なものではないけど、ディストーションよりはエッジが思い切り立ちますよね。
——TONE BENDERと同じように、アンプは選びますか?
M:いや、SUZZはそうでもないですよ。一時、多分70年代かな?クラプトンが使ってた、という噂がありますよね。
——え、それは知りませんでした。今のクラプトンはもう「機材?何でもいいよ」ってカンジだそうなんですけど。
M:私はね、フェンダーが一番最初に出したレースセンサーの載ったクラプトン・モデルのストラトってやっぱり名器だと思ってるんですよ。でも使ってる本人が「どうでもいい」ってなっちゃうと、ねえ(笑)。なんだかアルバムも最近はどんどん企画色の強いアルバムばっかりだし。
——(笑)。話が脱線しますが、森社長的には今回のウィンウッド&クラプトンのリユニオンはどうですか?
M:一応僕はリアルタイムでブラインド・フェイスを夢中になって聴いた方ですが、我々のような口の悪いタイプのファンからすれば「できればバラバラで来てくれた方が嬉しかったなあ」と(笑)。
——クラプトンの昔の機材っていうのも、謎が多いですよね。クリーム時代の歪みが何かは画像等で確認できないんですよね。ワウは当然のように使ってるんですが、アンプもコロコロ変わるし。あ、そういえば森社長の「スタンダード」アンプって何ですか? さっきのストラトと同じで、基準にしてるアンプ、っていう意味ですが。
M:最近はすっかりマーシャルに戻った、というカンジですねえ。ちょっと前にマーシャルの小さいのが出たんですよね。家ではもっぱらソレ。
——あ、5Wのヤツですか?(CLASS5) あれ楽しいですよね。
M:手間も楽だし、スピーカーも1ケだし。でも5Wでも音でかいです。5Wなのにアッテネーターかますっていうのもなんだか馬鹿馬鹿しいんだけど。でもあの歪みはいいですよ。しかもなぜかイギリス製だという(笑)。
——ええ、CLASS5最大の謎が「英国製」ってことですよね(笑)。

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森社長のコレクション その3 Marshall Supa Fuzz (1968)
以前こちらこちらのポストでマーシャルSUPA FUZZの年代ごとの違いを比較検討しましたが、それに照らし合わせれば、こちらの個体は筐体のエッジが丸みを帯び、ロゴがラベルプリントになったもので、恐らく68年頃に製造されたと思わしきマーシャルSUPA FUZZ中期の個体。極端に言えば、TONE BENDERのMK2回路を持ったファズは、ギターのボリュームに敏感に反応するオープンな歪みのものと、モーモーに暴れ狂う激歪タイプと、おおむね2タイプに分かれると思われます。こちらのSUPA FUZZは実際にお話を伺うと前者の方に分類されることがわかります。現行商品でたとえるならば、ムラードOC75を使ったJMIのMK2は前者に、ムラードOC81を使ったJMIのMK2は後者に、というカンジでしょうか。それにしても森社長の所持するペダルはどれもすごく奇麗な状態のモノが多くて、それを伺った所「出会った時が買うときだから」と仰ってました。


Masayuki Mori Interview - Part 2



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——ビンテージ・ペダル、つまりオリジナルの古いペダルにこだわりはありますか?
M:いや。エフェクターの場合はね、フェンダーやギブソンの初期のギターのように(その差が)大げさではないでしょう。けれど例えば最初のファズ、マエストロのFUZZ TONEね。あれさあ、正直言って今使えないでしょう?(笑)
——(笑)。とても難しいですよね。少なくとも近代的なファズっぽい用途には全く向かないですね。
M:ブチブチブチブチーっていう、あの音(笑)。あれを使うと、ギターがギブソンかフェンダーかはもう全然関係ねえや、っていう。
——アハハ、そうですよね。ストーンズの完コピする以外に、なかなか用途が見つからないっていう。
M:そこで考えるんですよね、ファズの完成形ってなんだろう?って。Z.VEXのFUZZ FACTORYなんかを試してみても、よく言われるように飛び道具的な使い方にやっぱり終始してしまうんですよね。
——FUZZ FACTORYも基本回路はFUZZ FACEを参照に作られてるハズですが、FUZZ FACEでは絶対にできないような使い方を想定してるっぽい作りですもんね。
M:で、そこで今でもよく考えるし、考えるのがまた楽しいんだけど、石(トランジスタ)によって音が違うとか、回路をちょっと変えただけで使い勝手が思い切り変わっちゃう、とか、歴史を含めてそういういろいろといい加減な部分が、楽しいんですよねえ。
——いい加減ですよね(笑)。で、一番楽しいんですよね。
M:だいたいFUZZ FACEにしたって基板には9ケしかパーツが載ってないし、TONE BENDERだってあきらかに無駄に大げさな筐体だし。でもそのガタイによって出音は変わるハズなんですよね。
——それは以前、土屋昌巳さんも同じ事を仰ってましたね(註:ギターマガジン2010年5月号のインタビュー)。鉄製の筐体に落とされるグラウンドの量に影響する、と語っていたのですが。
M:まあアンプにしても同じですけどね。回路が同じであっても、ガタイが変われば出音は変わりますよね。エフェクターは小さい機材だから、それほど大きな違いにはならないにせよ。
——試すときって、ギターはどういう基準で選びます? 試奏するときのギター、って意味ですけど。
M:最近はストラトが多いですね。あのね、レスポールって、音が安定してないというか、基準にしにくいんですよね。ストラトなら、たいていどんなギターでも「ストラトらしい」っていう基準がしっかり出てくれるから、判りやすい。ホントはレスポールのほうが自分の欲しい音を測るのにはいいんだろうけど、外ではストラト。
——ジミヘンの使ったストラトのグレーボビンPUは、出力が低いってことで有名ですけど、シーザー・ディアス氏(註:ギターテック/アンプ&エフェクト・ビルダー。スティーヴィー・レイ・ヴォーンの親友でもあり、SRVのギターやアンプを片っ端からイジリ倒した人物。SRVと共にジミヘンの機材/サウンドを研究しまくった人でもあり、本人もプロ・ギタリストとしてボブ・ディラン等のバックを務めた。2002年逝去)によればジミヘンがあれを使ってた理由って「エフェクトのノリがいいからだ」ってコトだそうなんですよね。そういう視点ってありますか?
M:そこまではないですね。そこまで気にしなくても、(ミッドブースターを組み込んだ)クラプトン・モデルみたいによっぽど基本回路をイジってるモノでない限り、ストラトであれば基本的なトーンはイメージできる通りの音になるから。
——お持ちのストラトで、基準にしてるモデルってありますか?
M:いや、そんなに気にしてないなあ。よく使うのは、71年くらいのラージヘッドなんですけど、別にそれはビンテージどうこう、っていう基準で買ったギターじゃなくて、ただなんとなくラージヘッドの見た目に惚れて、なので(笑)
——ラージヘッドですか。たしか森社長ってリッチーもお好き、でしたよね?
M:んー、いや、そんなでもないですね(笑)。ジミヘンのほうが大好き。リッチーも嫌いじゃないですよ。でもディープ・パープルはそんなに特別ってカンジじゃない。ホラ、リッチーってなんか恥ずかしいこともたくさんやってるじゃないですか(笑)。
——ん、まあそうですよね(笑)。ジミヘンとリッチーって、音の出し方が真逆なんですよね。ジミヘンは出力の低いストラトで、弦は太くて、であんまり歪まないFUZZ FACEとマーシャルの100W。リッチーは出力のバカでかいピックアップのストラトに細い弦張って、トレブルブースターとAKAIのエコーを挟んでマーシャルの200Wで。
M:でもジミヘンはFUZZ FACEをブースターのように上手いコト使うわけですよね。
——ハイ。あれがすごいんですよね。
M:で、ジミヘンもリッチーも、ギターのツマミは神経質にイジりまくるっていう。あの辺が「巧み」なんですよね。あの辺はもう「鬼」だな、と思いますね。
——かなり昔のインタビューだったと思うんですが、森社長はたしかエディー・ヴァン・ヘイレンにもの凄く影響を受けた、と読んだことがあるんですが。
M:いえ、エディーはもうね、好きだった、ていうだけですよ。
——タッピングとかアーミングとかに衝撃を受けた、ってワケではないんでしょうか?
M:いや、あんなのできないし(笑)。でもエディーのギターの音のツヤ、っていうか厚みっていうか、あれはジミヘン以来の衝撃、っていうものに近いかもしれませんねえ。エディーの場合はシンセ使った曲のほう(註:84年のヴァン・ヘイレン「JUMP」以降の作品群)が有名だったりして、コンポーザーとしてはそれほど有名になりきれないですよね。間奏はいつも最強なんだけどなぁ。
——他に大好きだ、ってギタリストは誰になりますか?
M:エリック・ジョンソンはずっと好きですねえ。
——なるほど。最初にファズを意識されたのはベンチャーズで、大人になってからジミヘンとかクラプトンとかペイジの研究をするようになって、ファズ再発見、というカンジですね?
M:そう。逆に言えば、しばらく長い間、ファズっていえばベンチャーズとかストーンズの、あのジージーいってるようなイメージしかなかったんだよね。個人的には距離感があって、親しみはなかった。ファズの前にはオーバードライブものにさんざんハマって、その後ファズに手を出して、その奥深さにハマってしまって、という流れですね。

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森社長のコレクション その2 SOLA SOUND TONE BENDER PROFESSIONAL MK2 (OC81D / 1966)

 いやー。ビックリしました。森社長はTONE BENDERのMK2で、OC81Dが入っているのをお持ちだったんですね。お恥ずかしながら、当方はこの現物を見るのが初めてでした。許可をいただいて、中身も撮影させていただきました。「どこまでオリジナルがキープされたモノかわからない」とおっしゃっていますが、勿論当方にも断定的に「どこまでがオリジナルか」は言えません。写真からも判る事は、まず裏蓋がサイズがいい加減にカットされており、ピタリと筐体にフィットしないこと。ただし塗装はオリジナルと思われる古いモノでした。昔のTONE BENDERはこのくらいいい加減なモノはよくあります。
 そして回路基板。ご覧のように幅の短いショート・サーキット・ボード仕様です。ここから、MK2の中でも初期に(おそらく66年内に)作られたものであろうことが推測できます。やはり一番気になるのはトランジスタでして、3つのOC81Dのうち、2つはシルバーキャップのもの(ムラード製でMADE IN ENGLANDのプリント入り)、もうひとつはホワイトジャケットと呼ばれる白いOC81Dで、これもムラード製です。このトランジスタが「混在」しているものを見たのも初めてなので、これだけでオリジナルかどうかの判別はつきませんが、当時のMK2回路では「違うトランジスタを混在させる」こと(例えばOC75とOC81D、とか)はないと思われるので、オリジナルかなあ、と思います。
 ただし、ショート・サーキット・ボードのMK2回路の場合は、一部のキャパシタが基板横/もしくは基板上にはみ出すように設置されるハズなんですが、こちらの回路はそうなっていません。その辺は(当方の調査不足もありますが)もうちょっと詳しく研究してからでないとなんとも言えません。ただしここから確認できることは、一部抵抗と、基板の止めネジは交換されたモノだということがわかります。それよりも「超・爆音」だというこのMK2、是非音を聴いてみたいところですね。



3.06.2012

Masayuki Mori Interview - Part 1



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 北野武監督映画の「プロデューサー」でもあり、あのビートたけしいわく「森さんはオレを使う人」という存在でもある、オフィス北野の社長・森昌行氏。たけしも頻繁にネタにするほどの「ギター大好き森社長」は、筋金入りの理論派であり、同時に求道的とすら感じるほどのギター愛好家。ファズ、特にTONE BENDERを愛してやまないという氏に、ファズ・コレクションの一部を持参していただき、その魅力と氏の「ファズ信条」を語ってもらった。



森昌行(以下M):実は僕の場合「昔からファズに興味があった」っていうワケではないんですよね。今でこそこんなですけど(笑)。でもねファズって何が面白いかといえば、「まさしくギター・エフェクターである」っていう面なんですよ。
——あ、いま早速名言をいただきました。有り難うございます(笑)。その点、詳しくお聞かせいただけますか?
M:ようするにね、エレキギター専用、とでも言えばいいのかな。たとえばワウ・ペダルでさえ、他の楽器に繋いでも効果が出る。マイルスがやったようにね(註:マイルス・デイヴィスはトランペットにピックアップを付けて電子化し、それにワウ・ペダルを通すという使い方をした人物。ワウはもともとはトランペットの奏法から考案されたエフェクトですが、電子機材でそれを実現したのはマイルス)
——んー、なるほど。オルガンとかエレピにワウを使う、というのはよくある例ですもんね。
M:そう、ヴォーカルにさえかけちゃうことが出来る。でもファズは「ギターのため」、しかも「歪みのため」に特化したエフェクトですよね。
——歌にファズかける人はいませんもんね(笑)。
M:オーバードライブっていうのは、ある意味プリアンプの特殊な形態、と考えることもできるでしょ。ギターの持ってる特性、それからアンプの持ってる特性、その中間において両方の特性を生かすための機材、っていうふうに僕は捉えてるんですよ。
——なるほど。ところがファズの場合は…
M:特性とかカンケーねえ!(笑) ギターがレスポールだろうがビザールだろうが関係ねえ、アンプがグヤトーンだろうがダンブルだろうが関係ねえ!っていう(笑)。その潔さ。
——素晴らしい(笑)
M:それは演奏の方法にも関係するんですよね。ファズを使ったギターのプレイは極めて直線的なものにならざるを得ない。ゆったりと表現にカーブをもたせたりもできない、極端にいえばスウィープもできない、っていうね。器用にピッキングの強弱でドライブさせるとか、タップでテクニカルにサスティンを活用するとかもできない。
——コード弾きさえ難しいですもんねえ。森社長が最初に手にしたファズって何か覚えてますか?
M:最初に買ったのは、たしかエレハモ(BIG MUFF)だったかなあ。あのね、最初にファズを聞いた体験は、ベンチャーズだったのよ。60年代の中頃。
——あ、そんな昔からファズを意識されてましたか。
M:でもね、当時はエレキギター持ってなかったから。フォークだったし(笑)。エレキギターの値段はサラリーマンの月収分くらいしたからね。当時エレキ持ってた人は、みな嫌みったらしい金持ちのボンボンばっかりだったわけですよ(笑)。そういうヤツはたいていドラムセットまで家に持ってたりして。
——金持ちのドラ息子、ってやつですか(笑)
M:そう。商店街で一番羽振りのいい店の息子とか。オレみたいな貧乏人のセガレには無理な話でね。ファズの音を知ったのはベンチャーズだけど、その後で強烈に「ファズの音」として認識したのは、やっぱりストーンズの「SATISFACTION」から、でしたね(註:日本盤の発売日は65年9月1日)
——それもリアルタイムでしたか。
M:うんリアルタイム。ビートルズに夢中になった、さらにその後だけどね。日本のラジオでストーンズの曲がバンバンかかるようになったのは「SATISFACTION」以降の話だから。で、あの例のリフ。マエストロFUZZ TONEで、単音のリフだけで、最後まで持っていっちゃう、という。
——ファズの一番基本的な使い方ですよね。
M:うん。恐ろしくシンプルな(笑)。
——キース・リチャーズもゲイリー・ハーストも偶然同じような事を言ってるんですが、最初はやっぱり「エレキギターでホーン(管楽器)のような音を出したい」っていうのが一番の理由だったようなんですよね、当時は。
M:で、それからずーっと後になって、エレハモのBIG MUFFを弾いてみたら、「ああ歪む歪むどんっどん歪む〜」ってカンジで(笑)。その頃にはもう「でも、こんなディストーション・サウンドって一体どこで使うの? ニール・ヤングなら使うかもしれないけどさあ(笑)」なんてカンジでしかファズを捉えてなかった。
——ニール・ヤングならアコギでも多分平気でファズを踏むかもしれませんね(笑)。
M:よっぽど計算して狙って使うのならありかもしれないけど、当時MUFFにもそれほど入れ込んだわけではないですね。でも更にその後になってから、やっぱり自分はジミヘンなんかも大好きだから、「ファズといえばFUZZ FACEは外せないな」ってことになるわけですよ。
——なるほど。森社長とFUZZ FACEとの出会い、ですね。
M:ところがFUZZ FACEってやたらと難しいでしょ?
——ええ、大変ですね(笑)。簡単にはいい音が出せた試しがない、という(笑)。
M:扱いが難しい。つまりね、もう「普通のファズじゃない」と。つまり、ジミヘンもそうなんだけどブワーっと歪んだファズの音を求めて使うっていうだけではなくて、例のボリュームを絞ったときのクランチで表現する「ワビ・サビ」の部分ね、そういうのを勉強するわけですよ。そのいい例はエリック・ジョンソンだと思うんだけどね。彼もいつもFUZZ FACEを使うんだけど、聴いてるだけじゃ一体どこでファズをオンにしてるのかわかんないっていうくらい「ワビ・サビの世界」ですよね。さっき言った「直線的」というファズの使い方とは真逆の、それこそ早いパッセージとかカッティングなんかでも生かせるファズの使い方。そういうのを学ぶようになりましたね。そして初めて気付くわけですよ。ファズはすごく奥が深いぞ、と。
——ほんと深いですねー。
M:我々が初めてエレキギターを手にするようになった、それこそグレコのEG360が出た頃…
——あ、成毛滋さんの教則カセットのついてたギターですよね(註:富士弦製造、グレコ・ブランドで72年に発売されたレスポール・コピー・モデル。当時の定価36000円。ピックアップは「ハムバッカー型」のシングル・コイル2機で、ホロウ・ボディ、デタッチャブル・ネック、というモデル。当時成毛滋氏が実演する教則カセットテープ、もしくはソノシートがオマケでついていた)
M:僕はいまだにあのカセットテープ持ってますけどね(笑)。で、当時成毛さんはね、「ジェフ・ベックもクラプトンも、ファズなんて使っちゃいない。あの歪みは全部マーシャルのアンプとギターだけで出る音なんだ」と言ってたわけですよ。
——80年代にラジオ(註:『パープルエキスプレス』のこと。成毛滋氏がインストラクターを務めるギター奏法の深夜ラジオ番組)に出演されてた頃にも「マーシャルとワウがあれば他には何もいらない」と仰ってましたね。
M:そう。ワウはトレブルブースター代わりに、ってね。昔からそう言ってた。でもね、すぐ気付く訳ですよ。クラプトンもベックもジミヘンもペイジも、みんなファズ使ってたじゃねえか、と(笑)。なんだよ、と(笑)。
——アハハ。結果的にはそうですね。
M:でね、いざ自分がファズを使うようになるとさらに気付くわけですよ。FUZZ FACEはメチャクチャ扱いが難しい機材だ、と。飛び道具的でもあり、繊細な音も出せると。で、自分ではなかなか出せない音なのに、ベックとかクラプトンのような「巧み」が使うと凄い音を出す。その特性を完全に判った人がそういう機材を使うと素晴らしいサウンドを奏でるわけですよね。オーバードライブとかディストーションでは、そこまでの差は出ないでしょう?
——そうですね。今のエフェクターは、いつ誰が踏んでも同じような効果が保証されるぞ、みたいなウタイ文句のモノが多いですね。
M:やっぱり僕にはあの当時、60年代後半のブリティッシュ・ロックのサウンドには強烈な憧れがありますからね。だからそこからTONE BENDERっていう言葉にも、憧れがあったわけですよ。当時はMK1だか2だか3だか何も知らないんだけどね。それ同様にいろんなメーカーからパカパカと発売されたTONE BENDERに片っ端から興味を持ってったってことですよね。
——そのあたりの経緯は、TONE BENDERに興味ある、っていう人にとっての、おそらく共通の経緯でしょうね。森社長はもう長年TONE BENDERを追っかけてる、というカンジですか?
M:長いですね。TONE BENDERに興味を持って、COLORSOUNDっていうブランドを知る。で「カラーサウンド? 一体なんだろう?」と新しい興味を持ってしまう、とか。それの連続ですよね。リアルタイムではなかなか判らない話ばかり多くて。ファズにかぎらず、ギターのスペックも一緒ですよね。

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森社長のコレクション その1 VOX TONE BENDER (Made In Italy 1966)

 取材日に実際にお持ちいただいたペダルの数々をご紹介。こちらはイタリアのEME(後のJEN)で製造された、VOX TONE BENDERの初期(66年)の個体。ハンマーグレーの筐体で、裏蓋も同じハンマー塗装が施されているもの。詳しくは後で出てくるインタビューの中で森社長が説明されていますが、同じものを2ケ所有とのこと。シリアルが若い(1500番台)ので購入してみた、とのことで、もう一個の同ペダルは6000番台。その音の比較を訊いたところ「音がちょっと違うんですよね。若いモノのほうがまろやか、っていうか太い。こっちの若いほうは、完全に音で決めて買いましたね」とのこと。ちなみにその6000番台のほうはドがつくほどのミント状態で、ビートルズの絵が箱に描いてあるもの(おそらくアメリカ流通のもの。当時のKING/VOX製ワウ等にも同様にビートルズの絵が描いてある外箱がある)。VOXのTONE BENDERは回路がMK1.5(ゲルマ2石)で音がカリカリにトレブリー、というモノが多いのが特徴ですが、こちらはずっとマイルド、とのこと。トランジスタは型番不明のシルバーのゲルマ・トランジスタ。