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10.03.2012

Schaller - Fuzz Wah

 
 さて、今回もファズ・ワウを1ケご紹介となります。こちらは60年代末〜70年代にドイツ(当時はもちろん「西ドイツ」でした)のシャーラー社で開発されたものです。以前のポストで「ワウのスイッチがカカト側にあって、使いにくいったらありゃしない」と書いた(笑)ブツなわけですが、実は音に関しては結構個人的に気にいってるブツでもあります。

 60年代末に、ドイツのシャーラー社は、エレキギター用のエフェクターを開発し始めています。実は自社開発する以前、50年代からシャーラー・ブランドのエフェクターというのは存在しており、例えば米ディアルモンド(外付けピックアップで有名な、あのディアルモンドです)・ブランドのトレモロ等をOEM製造していた時期もあります。早速の余談で恐縮ですが、実はその50年代のシャーラー/ディアルモンド製のトレモロっていうのがとてもユニークな機械式回路をもったエフェクターで、一部の好事家ではカルトな人気を誇るブツだったりもします(下にオマケで動画を掲載しておきます)。

 さて、60年代、つまりロック・ギターの時代、ですね。ドイツのシャーラーはトレモロ(そちらはこんにち一般的な回路になっていましたが)、ワウ、そしてファズを新たに開発し、発売しました。その後「えーい、くっつけてしまえ!」という豪快な(笑)シャーラーの方針によって、いろんな複合エフェクターが登場しています。その当時のラインナップの詳細に関しては、既にお馴染みだろうと思われるデータベース/サイト「EFFECTOR DATABASE」あたりをご参照いただくとして、今回のファズ・ワウもそのうちのひとつ、ということになります。

 実はこのエフェクターの面白いところは、まずワウ回路です。60年代末〜70年代という発売時期ですが、いわゆるHALOタイプのインダクターが採用されていて、つまりはVOXの初期型ワウ「クライドマッコイ型」の回路をクローンしたことが伺えるわけですね。当時も今も、ドイツとイタリアというのは工業製品に関して密接な関連があったので、ドイツのメーカーがイタリアの回路をコピーしたとしてもなんら不思議な点はありません。むしろ「独特の」スウィープ効果を持ったクライドマッコイ回路がこんな所にも存在したことが面白いですよね。実はこのワウ・サウンドが非常に当方の好みでして(笑)、それだけでも嬉しいわけです。
 ただし、前述したように、スイッチには不満を持っています。更に加えて言えば、インプットが左側に、アウトプットが右側に、という例の大昔の「逆配置」でもあるので、そこもイラっとしますよね(笑)。

 そして、やはり注目はファズ回路のほう、ですよね。簡単に言ってしまえば極めてシンプルなファズ・フェイス回路そのままです。ここに掲載したモデルでは、トランジスタにはBC239というシリコン・トランジスタが採用されています。ちなみに本機では、ワウ回路のトランジスタにもBC239が使用されています。

 基板回路は1つにまとめられていますが、この基板で面白いのは、やはり内部にファズ部のアウトプット・トリマーが1ケ、ワウ部のアウトプット・トリマーが1ケ、合計2つのトリムポットが採用されていることでしょう。ファズ・ワウの常識として、こちらのペダルもファズが最初で、その後にワウ、という構成順序になっていますが、内部のトリマーのおかげで微調整ができるのはありがたいことです。

 外部に唯一見える、INTENSITY と書かれたツマミは、もちろんファズの「ATTACK」に相当するツマミで、乱暴に言ってしまえばその効きはおおむねファズ・フェイスと同じ、です。ちゃんと他のファズ・フェイス系ファズ同様、ギターのボリュームには敏感に反応します。

 実は独シャーラーはこのファズ・ワウ以前に「ファズ」単体機も発売していますが、回路自体はこのファズワウの「ファズ部分」と全く同じです。ただし、極初期のモデルにはゲルマニウム・トランジスタを用いたものがあることが確認できています。また加えて言えば、シリコンに変わった初期のブツでは、BC108という、例の有名な(=ファズ・フェイスと同じ)シルバーキャップのシリコン・トランジスタが使われていたブツもあります。

 というわけで、実はこちらのブツも、今年の頭に出た「THE EFFECTOR BOOK」のファズ・ワウ試奏コーナーに登場したその現物です。掲載に際して前回同様M.A.S.F.さんによるデモ演奏動画がありますので、こちらに貼っておきます。まあ古いワウ回路の宿命でもありますが、もちろんトゥルーバイパスではなく、繋ぐだけで結構音ヤセします。ですが、逆に考えれば原音が痩せることによってファズ効果/ワウ効果はより強烈にかかることにもなるので、そのあたりは好きずき、ですよね。

 ちなみに、シャーラー社はこのエフェクターを随分長い間、80年代後半まで製造し続けています(若干の使用変更はありましたが)。初期のブツはグレー・ハンマートーン塗装で、ご覧のようにSCHALLERロゴが筆記体で入っているブツです。80年代には足踏みペダル部分に金属の四角いプレートが配置されます。90年代には色も黒になり、ジャックの位置も変更になります。20年以上延々と発売され続けたペダルで(しかもその途中には国の形がかわる、という激変の時代を挟みながらも)筐体や回路、パーツはほとんど変わらずに製造され続けた、というちょっと面白い経過をたどったペダルでもあります。90年代の黒い筐体になってからは、そのネームプレートには製品名として「WHA WHA FUZZ」とプリントされていました。

 その「一貫して変わらない」仕様ではありますが、この筐体はプラスティック製です。そして、裏蓋の鉄板だけでヤケに重量を稼いで安定させる、という作りなので、ハッキリいって壊れ易いです(笑)。



 さて、上記のファズワウとは一切関係のない、余談を兼ねたご報告(笑)です。いくつか英国JMIのTONE BENDER関連製品のアウトレット品を入荷させました。ワケあり特価品、みたいなカンジではありますが、次回のポスティングでそれらのいくつかをご紹介できると思います。ほんのわずかの入荷なので限定ではありますが、特価販売しますので、ご期待下さい。
 

7.26.2011

JMI - The Zonk 2 Reissue

 
 JMIの新製品、できたてホヤホヤのブツをご紹介したいと思います。以前こちらで掲載したことがありますが、1965年、つまりTONE BENDERというファズが発売された同年、はやくもそのクローン・ペダルが世に登場しました。発売したのは英国リーズにあるJHS(JOHN HORNBY SKEWS)というブランドで、その青いファズはZONK MACHINEと名づけられました。

 最初のZONK MACHINEでは、オリジナルのTONE BENDER MK1とほぼ同じ回路で構成されていましたが、後にこのZONK MACHINEはモデルチェンジを経て、THE ZONK 2という名前で生まれ変わることになります。そのTHE ZONK 2はPNPシリコン・トランジスタを用いたMK1.5回路で、つまりは「FUZZ FACEクローン」でもあるわけですね。

 で、今回ご紹介するのはそのTHE ZONK 2のリイシュー品です。JMIでは以前から前述したZONK MACHINEのリイシュー品を発売していますが、2011年の夏、つまりつい先日、このZONK 2もJMIのリイシュー・ラインナップに加わったわけです。そんなわけでこの青いハンマーライト塗装が施された新製品を早速日本にも仕入れてみましたので、その詳細を見ていきたいと思います。

 まずその筐体ですが、当方はてっきり「MK1と同じ筐体だろう」と思ってたのですが、違いました。どうみてもそっくりではありますが、幅も長さも、折り曲げられたアルミ板の角度も、そして展開構成もちがいます(MK1は板2枚で構成されてますが、ZONK 2は板3枚から成っています)。ま、あまり大した事ではないですけどね(笑)。
 比較対象としてMK1と並べた写真も撮ってみましたが、2cmほど長さが短いだけで、随分とコンパクトに思えます。写真では実感が湧かないと思いますが、手に取ると「アラ、ちいさいな」とすぐに感じられます。
 コントロールですが、通常のTONE BENDERと違って正面左のノブにはSWELL、右のノブにはFUZZというレタリングがされてますが、文字は違えど、効用はいつもと同じです。SWELLは単純に「膨らます」という意味の単語ですが、例えばカラーサウンドの足踏みペダル製品でWAH/SWELLという(ワウのスイッチをオフにするとボリューム・ペダルになる、というエフェクター)製品があることでも分かるように、SWELLは音量の調整を指します。

 そして中身です。実はこのJMIのリイシュー品THE ZONK 2では、60年代のNOSシリコン・トランジスタを使用しています。以前も書きましたがPNPのシリコン・トランジスタなんてものは今では殆ど需要がないブツですので、見つけるのも面倒かと思うのですが、今回のZONK 2の復刻品では、オリジナルと全く同じ、テキサス・インストゥルメンツ製の2N4061というトランジスタを搭載しています。オリジナルにこだわるJMIらしいですよね。

 さてその基板構成ですが、オリジナルではもうすこし小さくて正方形っぽい板を使ってましたが、リイシュー品では(おそらくここはTONE BENDER MK1と同じと思われる)長方形の基板を採用しています。だからどうした、と言われても、何も意味はないのですが(笑)。

 回路ですが、やはりTONE BENDER MK1.5回路、つまりアービターFUZZ FACEとほぼ同じ回路、ということになっています。そこで大変気になるのは音、ということになりますよね。音に関しても、当然ではありますが、シリコン・トランジスタを用いたFUZZ FACEなサウンドです。ハムバッカーを使用しても、シングルコイルを使用しても、ギターのボリュームには敏感に反応します。ミッドはわりと厚めででますが、ロー・ボトムはそれほど出ていません。FUZZツマミをフルにすれば、ブワーっと分厚い例の轟音がうなります。是非、ワウと一緒に使ってみたいところではありますね(勿論個人的な嗜好で言いましたけど)。

 そして、これはFUZZ FACEにもTONE BENDER MK1.5にも同様に言える事ですが、FUZZのツマミを絞りきっていたとしても、SWELL(=VOLUME)ツマミをフルにすると、当然ですが出力がプッシュされます。多少歪むので、純粋なボリューム・コントロール機能、とは言えませんが、そんなポイントを押さえればブースター的な扱いも可能なペダルです。古くさいながらも魅力的なギター・サウンドのコツ、というのは、そんなところにも隠れているのかもしれません。

 さて、以下余談&近況報告です。先日ご紹介したJMIのPLAYERS SERIES等も同様ですが、これまで当ブログ等で紹介していなかったり、どの店頭にも出荷したことがないようなブツであっても、もし「どうしても購入したい」というJMI製品があれば、どのモデルでも取り寄せは可能です。イギリスでの在庫状況も刻々と変化するので、どのモデルが入荷までにどれくらいかかるか、はアチラさんに確認する必要があるので明言できないのですが、もしJMI製品で興味のあるブツのあるかたは、ご一報いただければと思います。

 近況報告パート2。最近、ゲイリー・ハーストが自分の持っているファズ・コレクションの一部を手放すんだけど、お前いるか?という話を貰いました。どうやらその中身は10数個のビンテージ・ファズ、それから60年代〜70年代にかけて彼自身が製作したブツ(プロトタイプを含む)とのこと。「オウ、マジ考えるんで、とりあえず写真とリストよこせよ」と返事しておきました。ホントに最近の話なので、どうなるかはわかんないですが、全容が解明できれば、ご紹介できるかも、と思ってます。

 近況報告パート3。スペインのMANLAY SOUNDから、すでに「65 BENDER」限定版が日本に向けて発送されています。もうじき到着すると思いますので、そちらも改めて近日中にご紹介したいと思います。
 

11.20.2010

Manlay Sound - Baby Face (BC183L prototype ver.)

 
 気がつけば、もう創刊から2年以上経ってることに驚かされますが(2年とはいえ、まだVOL.10ですけど)、今月末にはTHE EFFECTOR BOOKの最新号が発売になります。恒例の先出し、というカンジになりますが、いち早くその内容をご紹介したいと思います。

 今号はモジュレーション系の第2回、ということでコーラス大特集号です。日本が世界に誇るROLAND CHORUS ENSAMBLEを大研究。また、単なる機材誌の枠を越えて、「コーラス名盤100」と題してコーラス・エフェクトが印象的/面白いアルバムをドドンと100枚紹介しています。時代的に、やはり80年代モノはAOR〜フュージョンからニューウェイブ、HRにいたるまで、コーラスってのはハズセないですねえ。アンディー・サマーズ(THE POLICE)もジョニー・マー(THE SMITHS)も、コーラスなしには語れない、てカンジのギタリストだと思いますし・・・
 それから裏目玉として、長年謎のベールにつつまれた、廉価エフェクトの大定番、ARION(当方も高校生の時、かなりお世話になった記憶があります)の社長インタビューまで掲載。なにげに今もプロでも愛用者の多いアリオン製品を研究しています。
 その他、PERSONZのギタリストであり、近年は氷室京介のバック・ギタリストとしても知られる本田毅氏のインタビューも掲載。11月末にシンコーミュージックより発売になりますので、お楽しみに。



 さて、今回はいったんTONE BENDERネタから離れて、FUZZ FACE関連のネタをひとつ書きます。

 1966年の終わり頃に、DALLAS ARBITER社が(TONE BENDER MK1.5の回路をそっくり用いて)FUZZ FACEという有名なファズが出来上がったことはこれまでも度々書いてきた通りですが、そのFUZZ FACEに使用されたトランジスタは、いくつものバリエーションがあります。
 一番最初に使用されたのがNKT275だ、というのも有名ではありますが、これまで「〜年頃から〜年頃までは○○が使われた」と断定的に書かれた文献がないのは、文字通り最初の数年はいろんなパーツが混在して使われた形跡があるからです。
 登場から1年強経たあたりから、トランジスタにはシリコン・トランジスタが使われたこともよく知られていますが、1968年あたりにはBC183Lが、翌年頃にはBC209BC108BC109あたりが使用されたということが判っています。
 写真に掲載したものは1970年製、とされている青い筐体のDALLAS ARBITER FUZZ FACEで、トランジスタにはシリコンのBC183Lが使われたものです。ロゴが(シルク印刷ではなく)デカールで張られたものは70年代初期製、とのことなのですが、正確な製造年を推し量るのが難しいことは致し方ありません。第一この頃のFUZZ FACEは、モノによって抵抗値なんかも違ったりする事が日常茶飯事のようなので、おおまかな時代性、と言ってしまえばそれまでかもしれません。

 で、話が一気に現代に帰りますが、スペインのMANLAY SOUNDにて、FUZZ FACEクローンを作ろう、という話になったときに、そのシリコン版に使用してみたらいいんじゃね?と考えたトランジスタはBC183Lでした。それは「一番最初のシリコン版FUZZ FACEはBC183Lだったらしいから」という、ちょいとヒストリックな意味合いを込めて考えたものでした。
 結局、現在商品化されたBABY FACEはBC337というトランジスタを使用してるワケですが、これは今までも御説明させていただいた通り、実際の音といいますか、十分なゲインとサスティン、それから入力レベルに反応するクランクの具合、そして歪みのトーン等を総合して選んだものです。

 そのBC337に決定する以前に、BC183Lで実際にプロトタイプを製作しました。これは今ウチにある現物で、同じトランジスタを使用したモノはこれしかないのですが、そのプロト版=BC183Lを使用したBABY FACEは、最終製品版(BC337)と比べて、やや(本当に若干、ではありますが)歪みは控えめでマイルド、という印象です。もともとFUZZ FACEはゲルマ版/シリコン版ともに、そんなにギンギンに歪むファズ・ペダルではないですが、それでもややマイルドな印象を持ちました。

 ただ、以前もチラっと書きましたが個人的には「これはこれでいいなあ、アリだなあ」と当方が思ったことも事実でして、語弊を承知の上で書けば、体で感じるテイスト、という意味では、ゲルマ版(BABY FACE青)とシリコン版(BABY FACE赤/BC337)の丁度中間的なサウンド、と感じました。

 ワザと悪く表現するとBC183Lは「中途半端」とも言えるわけで(笑)、MANLAY SOUNDとしてはシリコン版としてはよりシリコンらしいスムース&ストロング、な印象を持ったBC337を最終的に採用した、というワケです。よりマイルドでオーガニックなカンジをお求めの場合は、ゲルマ版BABY FACE青の方をお試しいただければ、と思った次第ではあります。

 TONE BENDER系とは違ったブっといミッドロー、またギターのボリュームを絞った際のクランクの鈴なり、というポイントがFUZZ FACEクローンであるBABY FACEの特徴、と言えると思いますが、是非お楽しみいただければ、と思います。
 

7.25.2010

Manlay Sound - Baby Face (NKT275 Version)

 
 最近TONE BENDERの話題からちょっと逸れたポスティングが続いておりますが、懲りずにおつき合いいただければと思います。スペイン・バルセロナのMANLAY SOUNDが製作したFUZZ FACEクローン・ペダル、BABY FACEはおかげさまで赤・青ともご好評いただいております。お買い上げ下さった方々本当にありがとうございます。左の写真は、前回告知しましたが今後使用される「テクスチャー・フィニッシュ」の筐体ペイントです。今後はこのカラーにて出荷されますので、今後ともご愛顧いただければ幸いです。
 今回はそのBABY FACEの限定モデル、NKT275バージョンをご紹介したいと思います。

 先日お伝えしたように、BABY FACEのラインナップはトランジスタにBC337を使用したシリコン版の赤、それとPNPゲルマ・トランジスタを使用した青の2つがありますが、ゲルマ版を製作するにあたり、トランジスタを何にしようか、と考えた時に真っ先に候補にあがったのはやはり1966年のオリジナルと全く同じNKT275でした。そこで早速、決して安価ではないものの、NKT275を数十個入手し、製作にあたったわけです。

 先に結果を言えば、他に試したゲルマ・トランジスタの中でもやはりグっとくる(笑)サウンドでした。つまり、ゲルマ版FUZZ FACEクローンの中では、NKT275を使用したものはやっぱりイイねえ、これだねえ、と思ったのは事実です。ただし、幾分かのプラシーボ効果があったかもしれませんし、その点は否定できません。

 しかし、製品化/商品化する際にはいつくかの問題を解決しなければなりませんでした。まず、NKT275自体が高価であることです。とはいえ、まだムラードのOC75やOC81D、TI社2G381のようなとんでもない価格というわけではないので、まだその点だけならなんとかなります。

 ところが、それに加えてNKT275は歪み値がかなりバラつきがあります。かき集めたとしても、FUZZ FACE回路に使えるものの比率がかなり低いんです(一例を挙げれば、最初に当方が入手したNKT275数十個の中で使えるものは25%ほどしかありませんでした)。25%しか使えないのであれば、製品にはその4倍の原価を必要とします。また選別に手間もかかり、それはそのまま単純に価格が跳ね上がります。
 先日も書きましたが、恐らく同じことを最近デニス・コーネルも考えたハズで、彼もTHE 1ST FUZZ(写真右)を復刻するにあたり「使えるNKT275がなくなったら、THE 1ST FUZZは廃盤にする」と公式にアナウンスしてたそうです。やはり「ナイものはナイ」という基本的なことを思い知らされるワケですね。

 んー困ったなあ、これじゃあNKT275では製品にならんなあ、なんてことを当方とROMANで悩んだりしたんですが、まず音という面だけで言えば、前回ご紹介したように他のゲルマニウム・トランジスタ(AC125や日本製の2SB324など)を使うことで、FUZZ FACEらしいサウンドはほぼ再現できました。バイアスをキッチリ整えて、そして場合によっては気温等の環境にも対応するためにトリム・ポットで微調整することで、かなり「決定版」と言ってもよさそうな、ゲルマ版FUZZ FACEが出来たと自負しております。それが前回紹介した「BABY FACE青」です。

 しかし、筆者やビルダーのROMAN氏のように「NKT275版もやっぱり欲しいねえ」と考えてしまうファズ・クレイジーがそれでも存在するわけで(笑)、そういうマニアのために、NKT275版は「いいトランジスタが入手できた時だけ」製作することにしました。ちょうど、先にリリースしたTONE BENDER MK2クローン・ペダル「SUPER BENDER」に限定でOC75版を製作したのと同じカンジですね。それがここに掲載したBABY FACE NKT275バージョンです。価格は通常版より高めとはなりますが、いくつか既に完成しておりますので、興味のある方は是非手に取ってみていただければと思います。

 なお、当方がその完成版を試した際に感じたことを正直に書けば、音に関しては通常版のBABY FACE青とほとんど同じです。ブラインド・テストしてもわからないだろうなあ、というカンジです。歪み具合とか出力の大きさ、入力レベルを下げた際のクランク具合、そういった面でも(個体差があるのは事実なので、完全に同じ、ってワケじゃあないんですが)ほとんど同じです。
 それでも「やっぱりNKT275が欲しい!」という方、トランジスタの銘柄にはコダワリたい、という方がいらっしゃれば、こちらをお試しいただければと思います。
 なお、初回に製作したNKT275版はこちらに掲載したように、カラーリングは通常版と同じ青のテクスチャ・フィニッシュとなっておりますが、今後またNKT275版を作るときがきたら、カラーリングはもしかしたら変えるかもしれません。

 さて、気の早いファズ・マニアの方には、もしかしたらすでにYOUTUBEにてMANLAY SOUNDの他のファズ・ペダルの新しいデモ映像をチェックされたという方も多いかもしれません。「他の」と言ったのは、「THE XS FUZZ」と「THE ALADDIN」という、シリコン・トランジスタ・ベースのファズ・ペダルのことです。これらに関しては(話せば長くなるんですが。笑)次回、その詳細を紹介したいと思いますので、ご期待下さい。

7.16.2010

Manlay Sound - Baby Face (Germanium Version)


 ワールドカップはなんとスペインが優勝してしまいましたね。おかげでスペイン・バルセロナ在住のビルダー、ROMAN GIL氏も僕もすっかりその話で盛り上がってしまっておりました。というか今も興奮冷めやらぬ、という状態です。見た目も存在もあまり派手ではないMFアンドレス・イニエスタ(FCバルセロナの選手です)が決勝ゴールを決めた後にイエロー覚悟で披露した、ユニフォーム下のメッセージ、あれに涙した人は世界中に沢山いたことでしょう。スペインでは国中のアチコチで今でも大騒ぎなんだそうです。

 決勝戦ではスペインはアウェイのユニフォーム(紺)で戦ったわけですが、スペイン・チームはホームだと赤、アウェイだと濃紺のユニフォームになります。それとはまったく関係がないのですが(笑)、MANLAY SOUNDが発売するFUZZ FACEクローン・ペダル、BABY FACEにも、赤と青があります。前回ご紹介したように赤はシリコン版で、今回ご紹介する青はゲルマニウム版になります。

 これまでも書いているように、66年末の発表当時オリジナルのFUZZ FACEはまず最初にNKT275というPNPゲルマニウム・トランジスタを2ケ使いで採用していました。その直後にはBC183L、さらにその直後にはBC108というシリコン・トランジスタに変更されており、一番最初のゲルマ版は実質1年にも満たない限られた時期しか製造されていません。それがFUZZ FACEマニアの心をくすぐっていたわけですが、ゲルマニウムという魅力的な響きを持つ素材を利用したトランジスタを使って、わがMANLAY SOUNDもFUZZ FACEクローンを作ってみました。

 FUZZ FACEの回路自体は、以前にもご紹介したように基本的にTONE BENDER MK1.5とほぼ同じものです。また、BABY FACEで採用したゲルマニウム・トランジスタも、なるべく動作の安定している2SB324やAC125、MP20、CV7355といったトランジスタを使用しました。つまり、このBABY FACEのゲルマ版は単純に言えば、既に発売しているMANLAY SOUND 66 BENDERと中身は殆ど同じです。

 やはり、といいますか、今回はパーツの選定に難儀しました。オリジナルのゲルマ版FUZZ FACEは「一個一個音が全部違う」とまで言われるほどに個体差が激しいファズで、基本となるようなサウンドが特定出来ません。ファズの印象を決定づける重要な音成分として、歪んだ音のゲート感と、サステインの後半部分=減衰中の音のキャラクター、というものが考えられますが、回路自体は上記したように既に確定しているので、そのFUZZ FACEらしい音を何で表現するか、となった場合に、トランジスタの選定に頼らざるを得ません。

 そういうわけで、ゲルマ版BABY FACEはPNPのゲルマ・トランジスタを採用していますが、その銘柄はこれまでの製品同様固定させていません(とはいえ、主に上述したように2SB324やAC125あたりが主な選択肢になりますが)。なるべくベストなマッチングで、いわゆるFUZZ FACEらしい音、FUZZ FACEらしいサステイン、FUZZ FACEらしいゲート感とディケイが表現できるもの、を選定するようにしました。

 ご存知の方も多いと思われますが、10数年前にFUZZ FACEがアービター社名義でリイシューされたときに、ほんのわずかな期間ではありますが、AC128を使用したゲルマ版リイシューが出回った事があります。そんな記憶もあったので今回のBABY FACEゲルマ版作成に際してもAC128を試してみたのですが、どうも低域が無駄に出てしまって、しかも歪みがなんだか弱いなー、ということに気づきました。それが悪いわけではないのですが、今回はAC128は選択肢から外すことにしました。

 以下、音に関する当方の「感想」というか、インプレッションです。ユーザーそれぞれにそれぞれのFUZZ FACE感があると思いますので、異なるご意見を持つこともあろうかと思いますが、その点は予めご容赦下さい。実際に完成した「青」の実機を、ウチにある66 BENDER(MK1.5クローン)と比較しても、その音はやはり違います。どう違うか、と言われてもなかなか言葉では表現できない部分であり、かなり細かい違いだとも思うのですが、同じかと言われれば「やはり違う」と言わざるを得ませんが、66 BENDERよりはボトムがチョイ太め、というカンジです。

 また、これは製作当初からわかっていたことですが、ゲルマ版は元来それほどの歪み量とサステインが得られる回路ではありません(例えばTONE BENDER MK1やMK2のようには、という意味です)。逆に言えばシリコン版(赤)は、より歪み、サステインも得られる代わりに、ハウりやすくもなります(そう、丁度ジミ・ヘンドリクスのウッドストック・ライヴや、ワイト島ライヴでワウを踏んだ時にヒンヒンいってしまってるように、です)。ゲルマ版のほうはそこまでハウりやすいわけではなく、やはりまろやかな歪みの感触があるので「マイルド」と捉えられる方も多いのではないか、と感じています。回路がほぼ同じだ、とはいっても、セッティングではまったく違う音になっちゃうあたりがFUZZというエフェクターの面白いところでもあります。

 スペイン優勝で浮かれまくっているROMANに「気持ちはわかるが、はやくデモ・ビデオ作ってくれよぉ」とガンガン催促(笑)していたのですが、やっと今日アップしてくれました。このゲルマ版BABY FACEのデモ・ビデオはこちらになります。比較対象のために、アンプは今回もGUYATONE FLIP 2000、ただし今回はLES PAUL CUSTOMでの演奏になります。ハムバッカー・ピックアップとの相性、という観点や、66 BENDER(MK1.5クローン)との比較、という観点でもご検討いただけるのではないかと思います。このビデオでもワウをつないで、部分的にワウ+ファズのサウンドを披露しています。

 このBABY FACE青(ゲルマ版)も、他のMANLAY SOUNDのペダル同様、いくつかの楽器店を通じて、そして本サイトを通じてもすでに販売を開始しております。FUZZ FACEマニアの方も、そうでない方でも、是非お試しいただけたら幸いです。価格はこれまでのTONE BENDERクローンと同じ価格になります。他のペダル同様、手元にそれほど大量に在庫があるわけではないので、品切れの際がご容赦下さい。ご理解のほど、そしてご愛顧のほど、何とぞよろしくお願いします。他のペダルもそうですが、購入をご希望の方がいらっしゃいましたら、まずはこちらから直接メールをいただければと思います。

 なお、大変恐縮ですが実はこのページに掲載された青のBABY FACE、それから前のページに掲載された赤のBABY FACEは共にちょっとダークな色のスパークリング・カラーのフィニッシュとなっていますが、これらのスパークリング・フィニッシュは、初回限定のカラーリングとなります。というのも、スパークリングはちょっと値が張ることもあり(笑)、また当初のイメージよりダークすぎるキライがあったので、変更することとしました。今後出荷されるものは、テクスチャー・フィニッシュと呼ばれる、ボコボコの陰影がついたフィニッシュになります。そちらはちょうどオリジナルのFUZZ FACEで採用されているフィニッシュと同じカンジです。上の写真はそのサンプル画像ですが、メーカーのサンプル画像なので、イマイチ正確には判りづらいのですが、とにかく変更するという点はご承知置き願います。
 それと、こちらは予告を兼ねたご報告ですが、BABY FACEは通常の赤(シリコン)、青(ゲルマ)に加えて、スペシャル・バージョンを作る予定でおります。ひとつはゲルマ版の限定モデル「NKT275ヴァージョン」、それから、シリコン版の限定モデル「2010WCスペイン優勝記念モデル」です(笑)。そちらの詳細は追ってご報告させていただきたいと思います。
 

7.09.2010

Manlay Sound - Baby Face (Silicon Version)


 これまで何度か予定告知を書きましたが、やっと完成し、当方の手元に届きました。スペイン・バルセロナのMANLYA SOUND にてハンドメイドで制作された、FUZZ FACEのクローン・ファズ・ペダル BABY FACE です。まず今回はシリコン・バージョン(赤)をご紹介させていただきます。

 FUZZ FACEのサーキット自体は以前も書いたようにゲイリー・ハーストが1966年初頭にデザインしたTONE BENDER MK1.5とほぼ同じものを採用しており、1966年の年末にアービター社から初めてFUZZ FACEというファズが発売された際には勿論PNPのゲルマニウム・トランジスタが使用されていました(その最も初期のものがNKT275だったことは有名ですね)。

 しかし、そのFUZZ FACEを世界で最も有名にすることに貢献したギタリスト、ジミ・ヘンドリクスのFUZZ FACEがシリコンだったこともあって(註:実際にはゲルマもシリコンも両方、というか、ありとあらゆるFUZZ FACEを所有し使っていたようです。が、有名なウッドストックでのライヴやその前後はおそらくシリコンだった、という話が既に確定的な情報として広まっており、ジミヘンのギター・サウンドからイメージされるFUZZ FACEサウンドはシリコンのもの、というパブリック・イメージが定着していることも、事実と思われます)、シリコン・トランジスタを使用したFUZZ FACEはやはり「特別な」ファズの1つとなっています。
 そこで、ジミヘン・フリークであり、自身がスカイドッグなギタリストでもあるビルダーのROMAN GIL氏と何度も話しあい、まずシリコン版のFUZZ FACEクローンを完成させました。真っ赤な筐体を持つこちらのファズが「BABY FACE(シリコン・バージョン)」となります。名前は当方が付けました。このラベル・デザインは勿論オリジナルに敬意を表して作ったモノですが、出来上がったときに、(オリジナルの)丸い筐体よりもこのケースのほうがモロに「顔」ってカンジがしたので、じゃあベイビーフェイス(童顔、の意味)で、と決めました。スイマセン安直で(笑)。オリジナルの丸い筐体のデザインでは、実は泣いてるんですよね、あの顔。こちらのBABY FACEは純朴にニッコリさせてあるので、童顔、というワケです。
 さて中身です。実は試作品として、オリジナルのFUZZ FACEで採用されていたシリコン・トランジスタであるBC108、BC109、BC183L等をまず試してみました。が、結果を先に言えば、それほど美しい音ではありませんでした。動作が安定/確実なハズのシリコンなのに、なんでだろう?という疑問を持ったのも確かなのですが、DAMのデヴィッド・メイン氏が「今存在するBC108/BC109の85%はクソだ」という、なかなか思い切った発言をしている(笑)ことでもわかりますが、恐らく現存するBC108トランジスタは、その歪み値や数値的なスペックが、FUZZ FACE回路にはあまり向かないのだと思われます。残りの15%に巡り会うことを願うのもアリなのかもしれませんが、ハッキリいって文字通り砂漠の中からダイヤを拾うようなそうした根気があれば、他に使ったほうが生産的かなあ、とも思います(笑)。

 値段が安いんで、BC108は大量に購入しテストしたのですが、皆一様に同じ結果でした。BC183Lの場合はなかなかいい音だったので「これはこれでアリだな」と思ったのですが、ROMANと話し合い「もっといいのがあるハズだ。もう少し探そうぜ」ということになりました。しばらくして、コレがベストだろう、という結果になったのが、BC337でした。ゲイン、サステイン、ゲート感、いずれも「オオオッ」とうなるようなファズ・サウンドです。
 単純な回路であることも関与して、FUZZ FACEのペダルは作るのは簡単なのですが、いい音(これは人によっての感覚の問題なので、正解があるわけではないでしょうが)のポイントを得ることが難しいペダルです。TONE BENDER同様に、ギターやアンプとの相性もモロにでるファズだとも言い換える事ができると思います。TONE BENDERクローン同様に、トゥルーバイパス、PtoP配線、電池駆動のみ、という仕様です。

 百聞は一見に・・・、というわけで、ROMAN GIL氏本人のデモ演奏をご覧いただければと思います。アンプはグヤトーンのFLIP2000で、クリーン・チャンネルを使用しています(冒頭の数秒は、ファズをOFFにしています)。ギターはフェンダーのストラト、そしてファズの前にJENのCRY BABYワウをつないでいます。ワウは状況に応じてON/OFFしているので、その時の音の違い等もご確認いただけると思います。

 このBABY FACE(赤/シリコン・バージョン)も、他のMANLAY SOUNDのペダル同様、いくつかの楽器店を通じて、そして本サイトを通じても販売させていただきたいと思います。価格はこれまでのTONE BENDERクローンと同じ価格になります。今週末から出荷を開始しますが、実は手元にそれほど大量に在庫があるわけではありません。今までのTONE BENDERクローン同様、チマチマと家内制手工業でやらせていただいてるので、ご理解のほど、そしてご愛顧のほど、何とぞよろしくお願いします。
 さて、実は手元には既にこのBABY FACEのゲルマニウム・トランジスタ・バージョン(青)も届いております。そちらの紹介は次回のエントリーをご期待下さい。

 ところでスペインといえば、もうすぐWCの決勝戦ですね。実は最近当方とROMAN GILは毎日メールのやりとりをしてるのですが、その7割はサッカーの話題です(笑)。準決勝のときも「俺はドイツが勝つと思うんだけどなあ、正直」「なにいってんだ、ユーロ2008でスペインが優勝したのを忘れたのか」「んーでもドイツは進化してるぜ」「若いだけじゃん」なーんて話をしてたんですが。ご存知のとおり準決勝の結果はスペイン人のみならずタコにも予測できた結果となりました(笑)。すいませんでした。今は改心し、スペインの優勝を心から祈ってます(笑)。
 

5.07.2010

circuit of MK1.5 / Fuzz Face (part.2)


 ただ今、この5月末に発売されるTHE EFFECTOR BOOK最新号の制作作業がまさしく佳境を迎えております。ゴールデンウィークなぞどこ吹く風、五月晴れなんてカンケーネー、とばかりに、シンコーミュージックの編集S氏ともども当方もPCの前でシコシコと作業に没頭しております。ここでスクープ!というわけでもないんですが、今月末に出る「THE EFFECTOR BOOK」最新号の内容の一部を先取りでちょっとだけご紹介します(無断で勝手に暴露するわけではなくて、編集部の許可を得ていますよ)。

 アーティスト・インタビューのページではスガシカオ氏が登場、彼がワウ・ペダル(とマイケル・シェンカー!)への愛を語っています。愛機IBANEZのWH10とWF10の違いは何か等、例によってマニアックな内容の、他では読めないインタビューになっています。
 お前のペダル・ボードを晒してくれよ、のコーナー「PEDAL BOARD PROFILING」では、WILCOのネルス・クラインを捕獲。飛び道具系エフェクトだけでなく、スライド・ギターやコルグKAOSS PADまで駆使する彼のブっとんだサウンドの秘密に迫ります。
 そして今回の大特集は「モジュレーション・ペダル」です。今回は特にモジュレーションの中でもフェイザーを中心に、揺れもの系を総力検証しています。この特集の中で、数ある揺れものペダルをかたっぱしから試奏しそれぞれをレビューしているのは、バービーボーイズのいまみちともたか氏です。
 上の写真は、今号の表紙用にCG制作したバーチャル・スケルトンのMXR PHASE 90です。実はこちらの画像はアウトテイクでして、実際の表紙にはこれの別バージョンが掲載されています。この他いつも通りに(笑)ギュウギュウに情報を満載したTHE EFFECTOR BOOKの最新号、今月末の発売をお楽しみに。
 さて、前回に引き続きTONE BENDER MK1.5回路とFUZZ FACE回路の話の続き、です。前回書いたように、それらの回路はもう殆ど同じものなわけですが、世界中のファズ・マニアは、数多あるクローン・ペダルそれぞれが「ちょっとずつ音が違う」ということは既にご存知かと思います。今回は我がMANLAY SOUNDが制作・発売したTONE BENDER MK1.5クローンの「66 BENDER」と、FUZZ FACEクローン「BABY FACE」に関して、ビルダーのROMAN GIL本人の弁を交えてご紹介します。

 まず66 BENDERに関して。オリジナルではトランジスタには2ケのOC75が使われていますが「Q1(初段)のトランジスタのほうにゲイン値が高いものを置いた方が結果がいいので、Q1とQ2では違うトランジスタを使う事にした」とのこと。当初はQ1に日本製2SB324を使っていましたが、今Q1用に新たにIT1322というゲルマニウム・トランジスタをテスト中、とのことです。Q2にはAC125を使用しています。「TONE BENDER MK1.5は、ゲルマ2石のファズの最も原始的かつ洗練された回路なので、トランジスタのみならず抵抗やポットの数値の影響が音にモロに出る」んだそうです。

 それからFUZZ FACEクローン・ペダルBABY FACE ゲルマニウム・バージョンに関して(BABY FACEは「青」がゲルマ版、「赤」がシリコン版になります)。どのゲルマニウム・トランジスタを使うか、実は今だに決定していません。オリジナルで使用されたNKT275は今では入手が困難なこと(余談ですが、最近コーネルから発売されたFUZZ FACEクローン「THE 1ST FUZZ」は、NOSパーツのNKT275を使用していることで話題になりましたが、あっという間にNKT275のストックが尽きたらしく、早々に廃盤となる事が決定しましたね。デニス・コーネル本人は「なくなったら作るのヤメるから」と最初から告知していたそうですが、こんなに早いとは正直思いませんでした。笑)、さらに加えてROMAN本人が大のジミヘン・マニアなので、音に納得がいくまで延々とテストを続けているからです。
 当方が10ケほど持っていたNKT275も、既にスペインに送ってあるので、勿論それもテストしてもらっています。また、数多のFUZZ FACEクローンで使用されることの多い、傑作(鉄板?)ゲルマニウム・トランジスタのAC128も勿論テスト中です。が、最終的にどういうトランジスタの組み合わせになるかは、もう少々テストの時間をいただきたいと思っています。

 ROMANいわく「FUZZ FACEクローン・ペダルの殆どで、470Ωの抵抗の部分は1Kの抵抗に変更されている。コーネルのクローン・ペダル(写真左)もそうだった」そうです。これは「ハムバッカーピックアップを使用した際に、歪みが埋もれてしまって音量が小さく感じてしまうことへの対処のためのMOD」だそうで、今ではスタンダードなMODということです。勿論MANLAY SOUNDのBABY FACEでも、そのMODは加える予定でおります。
 さらに、オリジナルのビンテージFUZZ FACEに関してよく話題となっていた噂——「時としてラジオの電波を拾ってしまう」。実はこれは真実でして(笑)、古いFUZZ FACEをお持ちの方なら経験されたことがあると思います。この噂は日本だけの話ではなくて、スペインでも同様で、ROMANの持ってる古いFUZZ FACEもラジオの電波を良く拾うそうです。
 その弱点を回避するため、多くのFUZZ FACEクローンは抵抗値をかたっぱしから変えてしまうことが多いわけですが、BABY FACEに関しては、「最もシンプルに、オリジナル通りに」と考え、オリジナル回路とほぼ同様の数値の抵抗を使うことにしています。どれだけラジオ電波をよく拾うのか、はちょっと保証はできかねますが(笑)

 ところで、FUZZ FACEといえばシリコンだろー、という人が多いであろうことも事実なわけでして、BABY FACEシリコン・ヴァージョン/赤は、ゲルマ版に先行する形でつい最近やっと完成しました。使用したトランジスタはBC337です。こちらに関しては、近日中に現物が到着すると思われるので、後ほど改めてその制作過程も含めて、音や映像を交えて紹介したいと思います。写真はデモ演奏中のROMAN本人。今回はいつも以上に演奏がハデですね。あとシャツも(笑)。
 

4.29.2010

circuit of MK1.5 / Fuzz Face / Vox Tone Bender


 TONE BENDERの歴史を振り返った際に頻繁に言われる事ですが、66年に短期間のみ発売された通称ソーラーサウンドTONE BENDER MK1.5の回路。これは後(66年末)に発売された、有名なアービターFUZZ FACEのソレとウリふたつで、MK1.5こそが(その後ロックの歴史に大きく関与することとなった)名器FUZZ FACEの母体となったファズである、という史実があります。
 たしかに回路は似ています。というか、同じじゃねえか、と思ったのは当然筆者だけではなく、D.A.Mのデヴィッド・メイン氏も、ゲイリー・ハースト氏も、世界中のファズ・マニア達なら誰でも同様だと思いますが、では実際どう似ているのか、実際に電気回路に詳しいMANLAY SOUNDのビルダーROMAN氏の考察を交えて回路図を比較しながら検証しようと思います。

 まずは前年に開発されたオリジナルTONE BENDER MK1回路をゲイリー・ハーストが「リファインした」という、66年製TONE BENDER MK1.5の回路です(ちなみに回路図はいずれも当方がおこしたもので、クリックにて拡大表示できます。他のモデルとの比較がしやすいように書き直してありますが、その中身にはトーゼン一切手を加えていません)。オリジナルのMK1.5のトランジスタはOC75が2ケ使用されています。
 ちなみにトランジスタのゲイン値ですが、D.A.Mのデヴィッドが所持機のMK1.5に搭載されたOC75の歪み値を計測したところ、Q1の位置にあるOC75のゲイン値は120前後、Q2の位置にあるOC75は90前後、と結構低い値であることがわかっています。2ケのゲルマ・トランジスタの組み合わせは、マッチングと言っても単純に同じ数値をたたき出したものを選別すれば良い、というわけではないので、こういう結果にも納得がいきますね。そういった事例はFUZZ FACE回路等を自作したことのある方なら多かれ少なかれ経験しているかもしれませんが。
 以前から何度か書いていますが、実際にはこの回路でOC75を使うのは(少なくとも経験上)かなり難しく、同じゲルマ・トランジスタでも他のものを使用したほうが結果的にいいことが多い、という事象は既に確認しています。

 そういう事象が66年当時すでに確認されていたかどうかは今ではわかる術もありませんが、アービター社がこの回路を使ってFUZZ FACEのサーキットを同じく66年に組んだ際には、トランジスタにはご存知のようにNKT275を使っています(これも良く知られていることですが、他にもSFT363EAC128といったゲルマ・トランジスタも当時使用されていた事がわかっています)。キャパシタに関しても、ご覧のように細かい抵抗値がいずれも若干違うわけですが、それでもやはり、こうやって見比べれば「同じじゃん」と思ってしまいますよね。
 ちなみに、オリジナルFUZZ FACEのアウトプットの位置にカマせてある0.1µFの抵抗ですが、「おそらくこれは何らかのミスで選ばれた/つけられたんじゃないか?本来0.01µFであるハズだ」というのがROMANの主張です。ちなみに、ネット上で発見できる殆どのFUZZ FACEゲルマ盤の回路図(例えば有名なサイトfuzzcentral等で見ることが出来る回路図)では、ほぼ全てここは「0.01µf」と訂正されていますが、他のサイトではここに挙げたものと同様0.1µfと記載されているものもあります。何せトランジスタから何から使用部品さえ違いまくってる60年代のFUZZ FACEのことですので今確実なことが言えた訳ではありませんが、どっちにしろ電気的には「0.1µf」は間違いであることは事実なわけで、FUZZ FACEの後のバージョンではここが(0.1µfでも0.01µfでもなく)0.047µFという数値のキャパシタに変更されたことが分かっています。

 そして、これは今まであまり語られる事の少なかった話ではあるのですが、VOXがイタリアのEME工場(後のJEN)に作らせたVOX TONE BENDER。これもMK1.5やFUZZ FACE同様に1966年に初めて製造されたものなわけですが、実はこの回路ももの凄くMK1.5とかFUZZ FACEのソレに酷似しています。イタリア製VOX TONE BENDERには若干の回路違いモデルがあるのですが(回路図上でピンクの文字になっている部分が、モデルによって違いがあったりする箇所です)、その辺は時期や行程によって区別されているわけではなく、モノによってあったりなかったり、というレベルのモディファイ、と言えると思います。

 それらの「個体によって違う」部分を除けば、これはもうMK1.5回路と同じジャン、というものなわけです。ゲイリー・ハーストは「イタリアのVOX TONE BENDERはイギリス(ソーラーサウンド製)TONE BENDER MK2の劣化コピーだ」などと言っていますが、この回路図を見ればイタリア版は明らかにMK1.5回路をコピーしたであろうことが伺えますよね。

 こうやって見比べてみれば、回路上だけの話ではありますが、ソーラーサウンド製MK1.5、アービター製FUZZ FACE、イタリア製VOX TONE BENDERは、いずれも2つのPNPゲルマニウム・トランジスタを用いた「ヴォルテージ・フィードバック回路」によるファズであり、理論上はいずれもかなり近い、1卵性とまでは言えないけれど、少なくとも2卵性双生児と呼べるほどには近しい存在のファズ・ペダルだということがお判りいただけると思います。

 現在スペイン・バルセロナのMANLAY SOUNDでは、既に発売されているMK1.5回路のTONE BENDERクローン「66 BENDER」に続いて、アービターFUZZ FACEのクローン・ペダル「BABY FACE」を製作中です。まだ完成には至っておりませんが、その製作途中で実感として判明した回路構成上の事実等もいろいろありましたので、その辺のことは次回、ROMAN GIL本人の弁を交えてご紹介したいと思います。